首都圏からアクセスしやすい温泉地のひとつが湯河原だ。雪が降る・積もるイメージがないから、冬でも行き先候補にあげやすい利点がある。その反面、箱根と同じく相場面のハードルは高い…実際に高級宿が多いし、週末&おひとり様OKの条件を加えると門戸はかなり狭まる。
とはいえいろいろ割り切れば可能性は十分に開ける。ひとまず素泊まりで探したら光が見えてきた。見つけた中で「天然温泉旅館 雅竹」は、写真を見る限りモダンな雰囲気が安心感を与え、お風呂は源泉100%かけ流しのようで期待できる。自分はぬる湯好きだけど湯河原の湯が熱いことは承知の上で行ってみた、真冬だし。
うん、熱くてよく効く。さすが湯河原。お湯の質は間違いないと思われる。
湯河原温泉・雅竹へのアクセス
理想郷にある旅館
最寄り駅はいうまでもなくJR東海道線・湯河原。駅から歩くと30分。路線バスを使うなら奥湯河原行きに乗ること6分の理想郷停留所で下車して徒歩1~2分。大まかな目安でいえば大規模ホテルのニューウェルシティ湯河原(いずみの湯)がある一帯だ。川を渡るかどうかの違いはあるけど。
自分の場合は箱根湯本・近江屋旅館をチェックアウトしてから、道中トラブルもあったりして右往左往したあげく、近江屋旅館近くの「箱根の湯」へ立ち寄り湯した後に湯河原へ向かった。湯河原駅に着いたのが16時前後だったかと。駅前広場に手湯コーナーを発見。
湯河原で一人泊OKで2食付きだと8年前に泊まったグリーン荘がお値打ち感あっておすすめだけど、週末の空室を押さえるのは大変かもね。今回は素泊まり専門の雅竹なので、夕食は自力でなんとかせねばならない。
湯河原の有名ラーメンを夕食とする
居酒屋・小料理屋・バーに入り慣れてないぼっちおじさんが対応できる最も無難な「酒を飲める食事処」はラーメン店だ。ネット情報をもとに、駅から(旅館と反対方向へ)徒歩10分の「しあわせ中華そば食堂にこり」をあてにした。
ラーメン業界に疎いおじさんは知らなかったのだが、当店は完全予約制となるほどの湯河原の名店「らぁ麺飯田商店」の姉妹店だそうだ。なんかすごそう。幸いにも行列待ちなくすんなり座れた。日頃の食費よりもワンランク上のお値段だけど、旅先だし贅沢しちゃいましょうかね。ワンタンメンとビール。
やや太めのちぢれ麺とさっぱり系醤油スープ。脂・濃い味・大盛りの具に挑むという感じではなく、わりと頻繁に訪れてもいいような常用できる味だった。にっこり。
食後は駅へ戻って路線バスに乗る。あえて理想郷のひとつ先の道中停留所で下車して、コンビニで日本酒1合とおつまみを買い出してから理想郷まで歩く。たいした距離ではない。ちなみに翌朝、理想郷バス停近くの橋から撮影した千歳川がこちら。
奥の方に小さく看板が見えてるのが買い出しをしたコンビニ。雅竹は川の右岸から1本入ったところにある。川の左岸の建物がニューウェルシティ湯河原で、そちらは住所が静岡県熱海市泉となる。
グローバル時代に対応した合理的運用の宿
ではチェックイン。気楽な素泊まり宿にしてはスタイリッシュというか、グレード感があった。加えてグローバル時代に対応してる雰囲気。フロントで応対したスタッフさんは東アジア系ではない顔立ちの方でした(日本語は堪能)。料金は前払い、チェックアウト時にフロントが無人なら部屋の鍵を郵便受けみたいな回収ボックスに入れればOK、という合理的運用で、最後までほぼ誰とも顔を合わすことがなかった。そしてロビーはこのような感じ。
フロントを2階とするなら案内された部屋は3階の角部屋ダブル洋室。本当はカップルが泊まるべき部屋なんだろうけど、一人で占有してすいません。グローバル対応宿といっても、作務衣式の浴衣をはじめとして、通常のホテル・旅館にあるようなものはひと通り揃っている。
シャワートイレ・洗面台あり。金庫なし、空の冷蔵庫あり、WiFiあり。部屋の向きにもよると思うが窓から見える景色がこちら。奥湯河原~箱根の山の方ですかね。
滞在中に他の客と会わなかったのでインバウンド・ファミリー・カップル・ビジネスといった客層はよくわからない。とりあえず騒がしいことはなく静かに過ごせた。唯一…宿のせいではないし誰を責めるつもりもないが…夜中に壁を貫通してくる赤子の夜泣きが1時間続いたくらい。テレビの音や大人の声が貫通してくることはなかった。
熱めの本格温泉をどうぞ
源泉かけ流しの実力派
雅竹の大浴場は1階にある。つきあたりの右が女湯で左が男湯だったかな。時間による男女の入れ替えはなかった。脱衣所にはかご入りの棚が並ぶ。湯使いについての張り紙によれば、加水・加温・循環・消毒すべてなしの源泉100%かけ流しだから立派。分析書を確認したければフロントへどうぞ。脇の壁に貼ってあって「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」だった。
浴室には4名分の洗い場。その背後に4~5名サイズの浴槽。露天風呂とか寝湯とかジェットバスとかサウナとか水風呂はない。源泉一本勝負でございます。
しかし湯河原の源泉かけ流しだからあなどれない。湯口からの投入量はそこそこあって、しっかりとオーバーフローしている様子がわかる。そして湯口のまわりは白い塩の塊にも見える温泉の析出物がびっちりとこびりついている。ふほほほほ(謎の笑い)。
冬向きのガツンとくるあつ湯
浴槽の壁際に湯かき棒が置いてあった。熱かったらこれで湯もみしろってことだな。つまり熱いの確定。どれ入ってみるか…熱ぅー! さすが湯河原だぜ。源泉温度60.5℃って書いてあったしな。浴槽では41℃に調整してあるみたいだけど、体感的にはもっと熱い。
さっそく湯かき棒に活躍してもらった。他のお客さんがいなかったから遠慮なく湯もみしたら結構いい具合になった。自分はぬる湯が好きなのだが、冬は意識的に熱めの温泉へ行くこともある。歳のせいか近年は冬に身体が冷え切って堪えるようになってきたし、指のむくみやあかぎれに悩まされることも増えてきた。芯からガツンと温める機会を定期的に設けないといけないんじゃないかなと。
お湯の見た目は無色透明で、たまにふわふわと綿毛のような湯の花が舞っていることがある。泡付きはなし。お湯をすくって匂いを嗅いでみると、そんなに強い主張ではないにせよ、それっぽい温泉臭の特徴が感じられた。ふほほほほ(謎の笑い)。
なんだかんだでたくさん入ってしまった
ええじゃないか、ええじゃないか。熱めだから長湯はできないが、しばらく浸かったら浴槽を出てクールダウン、を繰り返して、なんだかんだで粘ろうとしてしまう。まあ短時間で大浴場に来る回数を多くするのがいいでしょうね。
夜は23時30分まで、朝は7時~9時30分までという入浴可能時間の中で夜2回・朝2回入った。ちなみに4回の入浴はすべて完全独占。誰にも会わなかった。いやー実質貸し切りみたいに楽しんじゃって、すいませんね。
この温泉旅行を通じて十分に温まった身体は湯河原でダメ押しを決められた。すっかりほかほか。これでしばらくは寒い中でも生きていける。肌はすべすべのテカテカだし、もうええでしょう。
* * *
現地の印象に加えてネット情報から判断してもインバウンドを意識した宿なんだろうなと思う。しかしながら一般的な国内の旅館のつもりで利用してもそんなに違和感ないし、お風呂を体裁だけの雰囲気狙いではなく本格的な湯使いにしてくれてるおかげで、温泉目的の客にも十分に応えている。湯河原への一人旅に希望を持たせてくれる宿だ。
おまけ:魚市場食堂でちょっと豪華な朝ごはん
覚悟して長い行列に並ぶ
素泊まりゆえ翌朝は朝食抜きで出発。ひとつの構想があった。小田原漁港(早川漁港)で朝昼兼用の海鮮といこうじゃないか。湯河原から東海道線で13分、早川にて下車。駅から徒歩10分かからないくらいで漁港に着いた。
いわゆる朝市を毎週末やっているわけではなく当時はお休み中。
2階の魚市場食堂がお目当ての店だ。開店が10時で着いたのは10時半頃、すでに長い行列ができてて、この階段の踊り場あたりが最後尾だった(帰り際に撮影したので列は当初よりも短くなっている)。
開店直後に入ったお客さんがまだ食べてるくらいの時間帯ゆえ列がなかなか進まない。半分くらい進んだかなというところで「ここから30分待ち」の張り紙が…。全部で50分くらい待ったかな。
海鮮てんこ盛りの小田原丼
ようやく入店。まず券売機で食券を買う。ネットでよくおすすめされている数量限定の小田原丼にした。値は張るけどここまで来たら悔いのないようにやり切るぞ。ぼっち客に疎外感を与えない仕切り付きカウンター席で小田原丼の登場を待つ。
キターーー!! 見てください、このてんこ盛りの海鮮(テレ東)。大葉の下にはアジのタタキが大量に隠れていた。丼のお米の量は多めだが、それでもバランスが取れないくらい大量の刺身が乗っている。パリパリに揚げて頭から尻尾まで骨ごと全部食べられるアジまで入ってる。加えてマグロ煮とつみれ汁。
時間をかけて完食したものの、胃はパンパンに膨れた。口の中に残る海鮮の後味がえらいことに。温泉面でもグルメ面でも思い残すことはもうございません。