鎌倉の海と江の島が見えるツルツル黒湯 - 稲村ケ崎温泉

稲村ケ崎温泉
考え方が年々保守的に傾いてリスクを取らなくなってきた温泉おじさん、真冬の遠征先は無難に箱根・湯河原とした。しかも車を使わず電車+バスで行く。よほど不運な南岸低気圧による大雪に当たらない限り、たいがい大丈夫でしょう。

ただし行く途中で1箇所だけ毛色の違うエリアを組み込むことにした。近年の大河ドラマの舞台にもなった鎌倉だ。といっても神社仏閣を見学したいわけではない。稲村ヶ崎の海のそばに日帰り温泉施設があるのだ。

その稲村ケ崎温泉は浴室から海、江の島、運が良ければ富士山や伊豆大島をも望むすぐれたロケーションにあり、冷鉱泉ながらツルツル系の黒湯を楽しめる。冷たいけど源泉水風呂もいい感じよ。

稲村ケ崎温泉へのアクセス

稲村ケ崎温泉の最寄り駅は江ノ島電鉄・稲村ヶ崎。訪日客を中心にオーバーツーリズムの問題が囁かれる鎌倉のイメージがあるから、時間に余裕を持って出かけた。最悪の想定では、たとえば江ノ電に乗車するまでに1時間並ぶとかね。

しかし平日だったおかげか、混雑度は控えめ。並ばず江ノ電に乗れたし車内はすし詰めじゃない。ああよかった。平穏無事に稲村ヶ崎で下車(下の写真はホームから改札への渡り通路で撮影)。
稲村ヶ崎駅で下車
予想通りに海外の人たちがぞろぞろ歩いてますな。とはいえ普通レベルであって、人をかき分けて進むほどの混雑じゃない。稲村ヶ崎が平日に当たるように日程を組んだのは正解だったな。

駅からは徒歩5分ってところだ。海の方へ向かって歩き、国道134号を渡ればすぐ海岸。東に稲村ヶ崎が見える。
稲村ヶ崎
南は鎌倉の海&水平線にうっすらと伊豆大島の影。晴天とはいえ空の大半が厚めの雲に覆われて、遠くを見るには明るさが足りないし空気も霞みがち。かつ逆光的な時間帯でもあったし、くっきり見えなくても仕方がない。
かすかに伊豆大島が見える
西には江の島。当館向かいの鎌倉海浜公園(稲村ヶ崎地区)がちょうどいい撮影スポットになっていた。空気が澄んでいれば富士山を拝めるそうだ。
江の島

立地にすぐれた黒湯の温泉

足湯カフェもあります

よそ者が抱くご当地イメージに合う洒落た雰囲気の建物を見るに、高齢者の寄合所となっているジモ専銭湯とは対極的な、若者や観光客が入ってもサマになるようなタイプだね。季節と天気がマッチすればとても絵になりそうな足湯カフェもあるし。
足湯カフェ
では入館。いきなり正面に畳の間があった。鎌倉時代の何々を再現した展示の間とかじゃないよな…単なる休憩コーナーだと思うけど…。写真の奥に写っているのは家族風呂(貸切風呂)の入口。
畳の間(休憩室?)
飲食系は屋外の足湯カフェだけでなく館内レストランもあった。ちょうど空いていて一人で利用しても違和感なくチャンスではあったが今回はパス。朝昼兼用ですませてきちゃったのよ。

景観を示す名前のついた浴場

券売機で入浴券(1500円)を購入し、下足箱の鍵とともに受付に提出すると、脱衣所ロッカーの鍵をくれる。あとは階段を上がって2階へ。女湯=大島之湯/男湯=富士見之湯と名付けられている。それぞれ大島・富士山が浴室から見えるということだろう。今日は残念ながら条件が整わないっすね。

脱衣所では受付でもらった鍵番号のロッカーを使う。泉質の書かれた分析書は2枚あって、1枚は「ナトリウム-炭酸水素冷鉱泉、弱アルカリ性、低張性、冷鉱泉」で、もう1枚は弱アルカリ性から弱が取れたやつだった。源泉温度は19℃台のようだ。加温はもちろんしているとして、その他の湯使いは不明。

浴室入ってすぐのかけ湯も温泉を使用しており、ぬるい。ぬる湯派としてはこの温度のまま浴槽へ投入してくれれば最高だなー。客の多数派の要望を考慮するとそうもいかないでしょうけどね。カランは8台。当時は自分以外に4~5名程度で混雑感がなく、洗い場にも余裕があった。

適温の黒湯から外を眺める

メイン浴槽は…誰も景観を背にして入りたくないだろうから全員が窓を向くとして…8名サイズ。景色が売りだから、窓の大きさや向きは計算されている。おおよそこんな感じの構図を2階の高さから眺めた景色が見える(下の写真は向かいの公園でズーム撮影したもの)。
富士見之湯から見える景色のイメージ
常時3~4名が浸かっていて半身浴体勢のままずーっと外を眺めている様子の人もいる。たしかに見飽きない風景ではある。これでもっと雲のない青空で富士山が見えたら最高ですな。

お湯はコーヒーのように真っ黒で浴槽の底はまったく見えない。たまに小さな白い粒状の湯の花を確認できるほか、匂いを嗅ぐとなんだかわからんが温泉らしき特徴は感じられた(モール臭といっていいのか自信がない)。温度はぬるくも熱くもない適温。温度計は42℃を指していたかと思う。お湯にややヌメリがあるので浴槽付近を歩いててつるっと滑りそうになった。注意。


源泉水風呂と組み合わせればハッピー倍増

慣れると気持ちが良い源泉水風呂

メイン浴槽の隣に2名サイズの源泉水風呂がある。サウナや水風呂は関心対象外なんだが源泉を使っているのであれば見逃すわけにはいかない。トライしてみた。メイン浴槽と同様の黒湯をまさに19℃のまま投入してますねって感じ。ヌメリは若干強まっているようだ。

当時の体調だと肩まで浸かることはできず、半身浴で胸下+腕の肘から先を突っ込むのが精一杯だったが、動かずじっとしていればしばらく耐えられる。するとなぜだか、結構悪くないな・なかなかいいんじゃないという気分になってくるのだ。

満を持して水風呂を出てメイン浴槽へ入り直すと、あら不思議…アツクナーイ! 温冷交互浴の快感に加えて、水風呂で肌にまとわりついた源泉がにゅるっと身体を包みこんでくれる感覚が生じてくる…まあ気のせいかもしれないがイメージも大事ですよと。

露天風呂と呼ぶのかわからないがもうひとつある

露天風呂もあった。ただし頭上がオープンだった記憶がない。天井なかったんだっけ…ちゃんと観察しておけばよかったな。個人の感想だと、窓を大きく開けることのできるサブ内湯という印象だった。

お湯は温度を含めてメイン浴槽と同じ。窓の外のルーフバルコニー状の部分(立ち入れません)に柵が立っているため、湯に浸かると景色が見えなくなる。その点では湯に浸かってもある程度の眺望を得られるメイン浴槽に分がある。

こちらは大勢が狙って詰めかけるような雰囲気ではなかったので、露天の開放感というよりは、独泉チャンスも狙える「おこもり感のある空間」と捉えるのがよさそうに思う。

メイン浴槽⇔源泉水風呂の往復+たまに露天風呂でまだまだ粘れそうだったけど、まだ旅は始まったばかりだし、小一時間であがることにした。今回は混雑せず、源泉水風呂の取り合いが起きず、メイン浴槽がのぼせる体感温度でなく、客層は主に単身の温泉目当てやサウナーっぽい人なので静かで、海で遊んだ帰りにウェーイみたいな雰囲気じゃなくて、お湯と眺望に集中できた。冬の平日昼間作戦は大正解だったといえる。