2024年を締めくくる遠征は、1年前と同じノリになってしまうとは思いつつ、伊豆の海鮮づくしでワッショイというコンセプトで企画した。そこで候補にあがったのが西伊豆の雲見温泉だ。過去に2回泊まりがけて訪れていてなんとなく勝手がわかっていたのと、比較的お高くないお値段で泊まれて海鮮ワッショイの期待にも応えてくれる民宿が多いイメージがあったからだ。
ネットで気軽に予約できて一人泊OKのところから「温泉民宿さかんや」さんのお世話になることにした。お風呂は民宿規模相応の大きさだが、熱めで力強い100%源泉かけ流しのお湯を体験できる。そして海鮮ワッショイは期待をはるかに超えていた。結論としては食べきれませんでした。
雲見温泉「温泉民宿さかんや」へのアクセス
バス停が近いので鉄道+バスの旅も可能
宿のすぐ近くに雲見入谷というバス停があり、東京方面から当宿まで電車とバスで行ける。伊豆急行で蓮台寺→堂ヶ島行きバスで松崎→雲見入谷行きバスで終点、もしくは伊豆箱根鉄道で修善寺→松崎行きバスで終点→雲見入谷行きバスで終点。
自分はマイカーで行った。三島のゆうだい温泉で立ち寄り入浴をすませて、あとは修善寺→船原→土肥→堂ヶ島→雲見と走るのみ。伊豆縦貫道の有料区間を避けて伊豆内をノーマネーで移動してやったわ。
上空は雲のない快晴だけどひどい強風で、西伊豆の海沿いを走っていたら海水のしぶきがフロントガラスにもサイドガラスにも雨のように叩きつける。波は荒れまくり、海の青さには泥の色が混じってる。堂ヶ島なんかこれよ(撮影中は海水しぶきを全身に浴びている)。
強風により観光面はおあずけ
風強すぎてなんもできねー。もう宿に直行するしかないな…今回も雲見の観光スポットをめぐる余裕はなかった。せめてもと、翌朝の去り際に牛着岩&富士山の景色をちょっと眺めるのが関の山。
本当は千貫門とか下の写真の想い出岬とか探索してみたかったですけどね。
なんとか無事にやってきた1年の最後に無理して何かあったらつまらないし、あとは温泉と海鮮に集中しましょうかね。アクセス面について補足すると、松崎の中心部を離れて雲見へ向かう道路は、崖にへばりつくように通されたカーブの多い道で、ところどころセンターラインがなくなって離合が厳しい幅になる。見通しが良くないわりには対向車が結構いるので注意。
名前に込められた左官屋の雰囲気を残す民宿
さかんやの先代が左官屋さんだったそうで、冒頭写真に見える玄関周りの壁にその雰囲気を感じ取ることができる。建物の前の敷地は砂利敷の駐車スペースになっている。
玄関入るなり女将さんが待ち受けていて、流れるように説明を受けながら部屋へ案内された。かなり手慣れてますな。その前にロビー兼談話室がこちら。ビール含む自販機あり。
客室は2階に集まっており、案内された部屋は6畳和室。布団はセルフでお願いします。
反対側はこんな感じ。エコノミーな民宿ゆえバスタオルはないから必要なら持参を。普通のタオルと浴衣はある。
金庫なし、冷蔵庫なし(共同のがたぶんある)、WiFiあり。トイレ・洗面所は共同。男子トイレは洋式シャワートイレの個室×2+小専用の個室×1の構成だった。北西向きの部屋なので窓から駿河湾がちらっと見える。
ぴかぴかの新しさはないけれど居住性に不都合なく、ひとりでまったりする分には全然十分だ。
小さめのお風呂ながら本格温泉を楽しめる
100%源泉かけ流しの湯
さかんやのお風呂は1階。先ほどのロビー兼談話室の左手前くらいのところに男湯と女湯がある。扉の前でスリッパを脱いでから脱衣所へ入る。スリッパの有無を見れば、いま誰か入っているのかどうかがわかりやすいおかげで、客同士が互いにいないときを狙って融通し合う暗黙の貸し切り運用になっていた。もちろん誰かいる時に入ってもルール違反ではないので、実際そうなったとしても文句は言えない。
脱衣所は小さめ。2段の脱衣棚に4つの脱衣かごだったかと。分析書をチェックすると「カルシウム・ナトリウム-塩化物泉、高張性、中性、高温泉」だった。加水・加温・循環・消毒いずれもなしの100%源泉かけ流しは素晴らしい。源泉名が三浦の湯だから、過去に訪れた近くの高見家と同じところから配湯してもらってるんだと思う。雲見全般がそうなんじゃないかな。
ガツンとくる熱めの温泉
浴室にカランは2台。あとは3名サイズの石積み風の内湯浴槽。その石は温泉の作用で茶色く変色している。典型的な形状の湯口ではなくて、一角の壁の湯面ぎりぎりのところに丸く口を開けたような穴があり、さかんにボコンボコンと音を立てている。そこから源泉を投入しているのだろう。
浴槽の縁のどこということもなく、あらゆる箇所から、あふれたお湯が流れ出ていた。…よく見たら仕掛けが1箇所ありました。小さなパイプが浴槽の側壁に突き刺さってて、そこを通ってお湯が排出されるようになっている。とはいえそれだけじゃオーバーフローをさばききれてない。湯船の大きさに対する投入量はわりと多いのではないか。
では入ります。うーん、熱い。適温の上限、あつ湯と称したくなるレベルに近い温度だ。過去の経験から雲見はそうだとわかってましたけどね。好都合なことに、ちょっと前の猛暑の影響を永遠に引きずるかのような気候から急激に冷え込みが厳しくなって、でも家では変に暖房をけちって我慢してたもんだから、身体の芯まで冷え切っていた。ガツンと熱めの温泉は活を入れるのにちょうどいい。
短時間×回数多くで攻める
お湯の見た目は無色透明。湯の花も泡付きもなさげ。匂いを嗅げばしっかりとそれっぽい温泉臭がするから、ただのお湯でないことは明らかにわかる。浴感的にも温泉の効き目がゴリゴリと攻めてくる印象があり、やはりただものでないことは、うまく言語化できないけど確かだ。
入浴後にも本格温泉を実感する現象を確認できる。まずお肌がやたらすべすべになる。そしてやけに身体じゅうがポカポカと温まっているのだ。のぼせとは違う感覚で不快感がないし、湯冷めみたいなこともない。こいつはすげえや。
長く粘って浸かるタイプのお湯ではない。頻繁に浴槽から出てクールダウンする必要があるし、それでも長時間の入浴は難しい。他の客との兼ね合いもあるから、堪能したければ短時間で回数多くする作戦で。当時は20~30分の入浴を夕方2回・夜1回・早朝1回・チェックアウト前1回実行した。
予想を超えた海鮮ワッショイの夜
1人前とは思えぬ大盛りの刺身
必ずかどうかは断言しかねるが、今回の自分の場合は朝夕とも部屋食だった。夕食は18時から。準備ができると部屋に内線電話がかかってくる。
海鮮ワッショイに備えて策を講じていた。空腹状態で臨むため、朝は足柄SAのしらすコロッケ1つ、昼はめんたいパーク伊豆の明太子おにぎり1つですませ、夕食前には風呂あがりのビールを飲まずに我慢した。準備は万全、さあ来い。
キターーー!! 鯛がまるまる刺身になって出てきた。少なくとも22切れはあったぞ。プラスでイカ×2、マグロ×3、エビ。これで1人前とな。期待をはるかに突き抜けて、もはや時空が歪んでいる。
さらにボイルしたエビ、もずく、1.5人前どころか2人前といってもおかしくないようなボリュームの海鮮鍋が後に続いてこうなった。
この時点で敗北を覚悟した。飲む量と炭酸で腹が膨れがちなビールを避けて日本酒(開運 特別本醸造生)にしたものの、完食できる自信はない。
ちょうどよいアクセントになる濃厚ビーフシチュー
せっかくの旅先で不安がっていてもしょうがない。刺身から手を付け始めたところ、言うまでもなく新鮮でうまい。こういうのをあてにして来たので、見事期待に応えてくれて…いや期待を超えている…うれしい限り。鯛なんかまさしく「食べても食べても減らねー」状態。無限に続くかと思った。
まだ刺身の一部と海鮮鍋がそっくり残っている状態で追加の料理が出された。うおお。
金目鯛の煮付けとビーフシチューだって。金目鯛の身がまたでかくて敗北感が一段アップ。ビーフシチューは一見すると場違いに思えるかもしれないが、なかなか濃厚な味わいでよい。しかも魚介の風味で塗りつぶされた口の中を牛肉の旨味がいったんリセットしてくれるから、再び盛りだくさんの魚介と対峙する助けになる。
だがさらに天ぷらが出てきてとどめを刺された。もうお腹いっぱいすぎてギブアップ。どうにか大半は片付けたが、金目鯛の半分と海鮮鍋に入ってた野菜の多くを残す羽目になった。せっかくの金目鯛を残すなんて痛恨の極み。しかも静岡産のうまいに違いないお米も一口が限界だった。あーちくしょー。もったいねー&申し訳ねー。いつかバチが当たっても文句は言えんな。
朝も海鮮あり…しっかりいただきました
朝は7時半。前夜にお米をほとんど食べなかったせいか、思ったより胃の消化が進んでいて膨満感はなかった。これなら朝は普通にいけそう。さあ来い。
冬にピッタリの湯豆腐は海鮮鍋に使ったカセットコンロを再利用。朝からネギトロってのはすごいな。そして伊豆といえばアジの開き。これだけおかずがあれば、軽い盛り方ながらご飯をおかわりして2杯いけました。前夜無理して胃に詰め込まなかったのも良かったみたい。敗北してもただでは転ばぬ。
前夜の反省もあり、今度こそ完食しよう(お櫃のご飯を除く)ということで、3つ用意されていた梅干しもしっかり全部いただいた。梅干し食べてスッパマン。
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ぬる湯派にとって熱めの雲見温泉は相性どうなのよと思われるかもしれない。しかし湯使いがしっかりしており、特に冬であれば、結構いい感じで浸かることができた。湯船で長く粘らなくても、たとえ短時間でも温泉の効果を感じることができたし。
食事面は言うことありません。年忘れの海鮮ワッショイは大成功、それどころか事前の対策を軽く打ち破り、あっさり敗北させるほどの大漁大量まつりであった。さかんや…恐ろしい子!(白目)