高湯温泉は奥州三高湯に数えられる知名度とクオリティを誇る。おじさんも過去に訪れたことはあるのだが、その時は温泉ではない別の目的を持ったグループ旅行だったため、遅めチェックイン・早めチェックアウト・宿泊ついでの温泉という感じで、じっくり入浴する余裕がなかった。
そこで今回は「温泉をメインに据えてゆっくり楽しみましょう」という趣旨で、当時のメンバーの一部とともに、久しぶりに高湯温泉を再訪したのであった。
お世話になったのは前回と同じ玉子湯さん。これぞ白濁硫黄泉というような美しいお湯は、さすが名湯と謳われる高湯温泉ですな。露天風呂の風情も良し。おかげさまでゆっくり楽しませてもらいましたよ。
※本記事公開の少し前に高湯温泉で硫化水素中毒による死亡事故が起きた。源泉の取り扱いは危険と隣り合わせなのだとあらためて認識させられる。事故で亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。
紅葉を探しながら高湯温泉へ
明るいムードの陽林寺
JR福島駅から高湯温泉まで、1日3~5便の路線バスが設定されているようだ。所要時間は35分前後。旅行者目線で使いたくなる時間帯にも走っている。乗り継ぎの時間をちゃんと調べていけば、わりとアクセスしやすい方ではないだろうか。
玉子湯の方でも送迎バスを出してくれている(福島駅14:30発、玉子湯10:00発)。あるいは自分の車で行く場合は東北道福島西ICから県道70号を30分。
我ら一行はメンバーの愛車で東北道を北上。出発時点で雨だったが、福島県に入る頃から天気が回復してきた。安達太良SAで見た安達太良山はちょっと雲で隠れちゃってるな。
時期的に紅葉を狙ってみようといろいろネットで調べて、まず福島松川スマートICを出て位作山陽林寺へ。
山門をくぐった先の紅葉がばっちりでした。
こちらが本堂でございます。写真には残っていないし詳細を忘れてしまったが、着飾ったお地蔵様やその他もろもろ、明るく陽気なムードのお寺だったな。
大規模な摺上川ダム
お次は知る人ぞ知る「へたれガンダム」だ。個人的には半年前の微温湯温泉への一人旅で見学ずみである。陽林寺に近いからということで立ち寄った。相変わらずのヘタレっぷりが素晴らしい。各メンバーも満足したようだ。
お次は紅葉が見頃との情報をもとに摺上川ダムへ行ってみたところ、たしかにいい具合に色付いていた。
この形状はロックフィルですな。高さ105m、天端は700m超、結構巨大なダムだ。天端の中央付近まで歩いて下流側を撮影したのがこちら。
ダム湖(茂庭っ湖)の水位はかなり低いように見えたけど、この後入館したインフォメーションセンターの表示によれば貯水率55%で、スタッフさんの説明でも正常な範囲とのこと。冬を越して雪解け水なんかが集まってくれば水位も上がってくるんでしょう。
観光はここまで。今回は温泉を最重視するため可能な限り早くチェックインしたい。ってことで高湯温泉に向かった。玉子湯は県道沿いに並ぶ旅館群の中で最も手前に位置するようだ。
昔ながらの温泉旅館の雰囲気がいいね
チェックイン一番乗りィィィ! かと思ったら、送迎バスが一足早く着いていて、一時的な来客集中により手続きに少し待たされた。その間はロビーで無料コーヒーをどうぞ。
お土産コーナーもございます。館内に自販機あったかもしれないけど、湯あがりのビールはここの冷蔵ケース内のやつをレジでお会計して飲んだ。小銭の持ち合わせもなかったし。
玄関・フロントのあるフロアが4階で、案内された部屋は3階。10畳+広縁の和室だった。昔ながらの温泉旅館な雰囲気はおじさん世代をほっとさせてくれる。布団は夕食中に敷いてくれた。
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、フリーWiFiあり。古い歴史を持つ玉子湯とはいえ、ハード面は古さを感じさせず、管理状態良好だ。とくに不都合を感じることはないだろう。散策路や有名な湯小屋や露天風呂へ通じる道側を向いた部屋だったので、窓から見える景色は次のような感じ。
散策路を登っていくと温泉神社があるそうだが、今回も外を散歩することはなかった。どうしてもお風呂と部屋でゴロゴロに全振りしちゃう。
相変わらずハイクオリティだったお風呂
大浴場があちこちに散らばっている
玉子湯のお風呂について、以下の体験談は今回の印象を書いたもので、前回宿泊時の体験談と整合しない記述があるかもしれないけど気にしないように。
お風呂は5箇所プラス1。
- 館内4階:男女別内湯「滝の湯」
- 館内1階:男女別内湯「仙気の湯」
- 館外:男女別内湯「玉子湯」
- 館外:貸切露天「瀬音の湯」
- 館外:男女別露天「天渓の湯」(男女入れ替えあり)
- 館外:足湯
前回との違いは、瀬音が女性専用から貸切風呂に変わったことと、男女入れ替え制の露天風呂をそれぞれ天渓/天翔と呼び分けていたのが天渓に統一されたことかな。
各所で掲示されている分析書をチェックしたところ、全部「酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩泉(硫化水素型)、低張性、酸性、高温泉」だった。PH2.7。高湯温泉全体が源泉かけ流し宣言をしている通りで加水・加温・循環・消毒すべてなし。
洗い場を備えた適温の滝の湯・仙気の湯
実際に入浴した順番を無視して上記の順に紹介しよう。洗い場を求めるなら滝の湯へどうぞ。9台のカランが用意されており、内湯浴槽は横一列に並んで7名いけるサイズ。木の浴槽だからそれなりに雰囲気はある。夜に入った際は完全な白濁でなく浴槽の底が見える程度の半透明なお湯で、翌朝には露天風呂などと同じような、いかにもな白濁を呈していた。
温度は適温。前回強く印象に残った「かなり熱め」レベルではなくて普通に温まることができた。湯口からの投入量は多く、一方で浴槽の縁の欠けた一部からどんどん流れ出ていく。しっかり源泉かけ流しだ。
仙気の湯にも2名分の洗い場あり。小ぶりな内湯浴槽は足を伸ばして入ろうとすると2名サイズ。3名並ぶと肩身が狭くなる。それなら足を少し折りたたんで向かい合わせに2名×2組の体勢になった方が楽かと思う。こちらのお湯も適温、かつ濁りが弱くて半透明の時がある。メンバーのひとりは「湯の花が多くて好みだった」との感想を漏らしていた。
旅館のシンボル的存在の玉子湯
1階の裏口から屋外へ出ると、部屋から見えた散策路や水路に沿って玉子湯の湯小屋がある。茅葺き屋根の湯小屋は中もレトロ感たっぷりだ。入るといきなり脱衣コーナーと小さな木の浴槽が同居している。洗い場はない。浴槽は向かい合わせを許容して4名、詰めて6名までのサイズ。名前からして玉子湯を代表する湯船であり、人気を集めて混雑しがちな気がするけど、当時は運良く独占状態だった(ちなみに前回は芋洗い状態で落ち着かず、すぐに出た)。
まあなにせ湯小屋の雰囲気がいいからね。お湯は熱めで長く粘るようなものではないが、まったく見通しがきかないほどに濁って、かつ青白く光るようにも見える白濁硫黄泉の王道というべき美しいお湯だ。これは満足度高いでしょう。腐卵臭までいく手前の強烈すぎない硫化水素臭も王道をいく要素。
浴槽の脇に「山の水」と書かれた冷水槽がある。人が入るサイズではなくてかぶり水用のサイズ。おいしい湧き水のイメージを抱くも、残念ながら「飲めません」と書いてある。
貸切の瀬音の湯は利用しなかったため省略。
ぬるめ浴槽があって景色を楽しめる天渓の湯
屋外エリアの奥にある天渓の湯は、夕方~夜は右が男湯、翌朝は左が男湯だった。どちらも洗い場なし。前者は大小2つの浴槽が連なっていた。大浴槽は10名以上いけそうなサイズで適温。背後に積み上げた岩の間から流れ落ちるようにして源泉が投入される。
大浴槽のお湯は隣の5名サイズの小浴槽へ流れ込む仕掛けになっており、このため小浴槽のお湯はややぬるめで入りやすい(小浴槽が浅めに作られているおかげもある)。我々はぬるいのが好きなので、広い方ではなくわざわざ狭い方に固まって入るという、傍目には不可解な光景を演出することになった。
翌朝の入れ替わった男湯は5~6名サイズの浴槽のみ。こちらも背後に積み上げた岩の中腹から源泉が投入される。前回はぬるかった印象も今回は普通に他と同程度の適温だった。露天風呂の期待点・利点としては、頭上がぽっかりオープンになっているため、晴れていれば夜に星がよく見えそうなことと(当時は曇っててアウト)、水路側に目隠しの塀がなくて紅葉を鑑賞できたことかな。
一度入るだけで手のひらはテカテカ、お肌はすんごいスベスベになる。翌日身体がちょっと火薬臭くなるのはご愛嬌。
お風呂もいっぱいだが料理もいっぱい
夕食はあったか芋煮鍋をどうぞ
玉子湯の食事処は館内のあちこちに分散していて、客層・プランにより異なるかもしれない。我々は朝夕とも3階「花山水」だった。泊まった部屋から近くて都合良し。で、夕食のスターティングメンバーがこちら。
オレンジの四角いやつは柿豆腐だって。主役と思われる福島牛の芋煮鍋は、久しぶりに牛肉の旨味を堪能しただけでなく、これだけでお腹いっぱいになりそうな一品。しかもさらに茶碗蒸し・炊合せ・鯛黄金焼きのこソテーまで追加された。こりゃすげえや。
とくに根拠なく、なんとなくのイメージで昔ながらの湯治宿ぽい素朴系の料理かと思えば、そんなことはなかった。食材のバリエーションや彩りが考えられており、ボリュームは十分。締めのご飯はほんの一口レベルでギブアップ。ぎりぎりの計算で残しておいた余力でデザートのマロンプリンをいただいたのであった。
食後すぐには風呂に行けず、しばらく腹を落ち着かせるための休憩が必要だった。
朝食で福島イカ人参を体験する
朝も同じテーブル席で。朝ごはんにお品書きがあるのは珍しいかもね。小鉢を収めた重箱スタイルで提供される品々がこちら。
玉子湯の湯小屋を連想させる(?)屋根飾りの付いた容器で温めるやつは温野菜だった。タマゴは生じゃなくて温泉玉子。重箱の中のニンジンが絡んでるやつは福島市郷土料理のイカ人参だそうだ。へー、初めて知ったかも。これらに白米またはおかゆとけんちん汁が付く。
なお、セルフで牛乳・リンゴジュース・オレンジジュース・コーヒーをいただける。朝ごはんとしては隙のない布陣でしょう。食後はもちろんラスト入浴へ。
* * *
温泉体験を主目的として高湯温泉を再訪したかったものの、一人泊だと敷居が高い感じもあり、どうしたもんかと思っていたところ、同じような考えを持って企画に乗ってくれるメンバーがいたおかげで実現にこぎつけた。決してぬるくはない玉子湯といえども、そのクオリティには我らぬる湯好き集団も一目置かざるを得ない。再訪叶ってめでたしめでたし。
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