秋の新潟遠征の最終日。清津峡にいたから、近隣の温泉に立ち寄って帰るプランを漠然と考えていたところ、急な気まぐれで、やっぱり三国街道(国道17号)を戻りながら道中のぬる湯に浸かっていくことにした。群馬県側になってもかまわない。
貝掛温泉・法師温泉などいくつかあてがあった中で、久しぶりに川古温泉へ行きたい気になってきた。考えてみたら初めて宿泊で訪れてからもう6年も経っている。ちょうどいい塩梅でぬるくて良きお湯だったなー。泡付き豊富な湯船もあった気がする。行ってみようかな。
やはり思い出の通り、良好なぬる湯だった。秘湯と呼んで差し支えない山の一軒宿であり、静かに湯治滞在するイメージがぴったりだ。
川古温泉への道
ころころ考えを変えるのが生存戦略
旅の最終日は朝から雨。清津館をチェックアウトしたら、とりあえず清津峡を見学して、あとはどうする? 予報によれば新潟から地元の南関東まで広く1日じゅう雨、ところにより強く降るとのこと。じゃあやれることといえば温泉めぐりしかない。天気関係なく、もとからそのつもりだったけど。
当初は関越道のスジへ出て越後湯沢近辺か、ちょっと北上して六日町までならいいかと視野に入れて考えていた。しかしだんだん「帰宅する方向へ下道を走りながら探す」作戦に傾いてきた。確固たるビジョンを持たず、ふわふわと考えを変えるのがおじさんの特徴である。ゆるふわ柔軟おじさんアンティークローズ&フローラルの香り。
とにかく石打から国道17号に入って南下。道中には貝掛温泉や法師温泉など名だたるぬる湯が存在するも、かなりご無沙汰となっている川古温泉を再度体験してみるという案に固まりつつあった。ほかに猿ヶ京温泉もあるけどO.A.K=お湯が.熱い.気がしたので。
新三国トンネルを越えて
雨の中をひたすら運転しただけだから特筆すべき出来事はない。強いてあげれば苗場の先でお猿さんの集団がのんびりと道路を横切る場面に出くわしたことと、新三国トンネルが開通していて走りやすくなっていたことくらい。
群馬県に入ったら永井宿・猿ヶ京を経て相俣の交差点を水上方面へ。ちなみに交差点付近には休石バス停があり、在来線の後閑駅もしくは新幹線の上毛高原からバスで行けて、そこからは当館の送迎サービスがあるみたい。
相俣から4~5kmで川古温泉および広河原温泉・旅館峰への分岐道が始まり、1kmほどで当館に着く。最後は道幅が狭いところもあるから注意。
ふわふわおじさんにぴったりの、ふわふわぬる湯
かつての記憶をたぐり寄せながら
初訪問時の教訓から、旅館より手前の駐車スペース風になっているところに車を置いた。旅館の玄関前まで行っちゃうと、止めるところはないし、Uターンする余裕もないしで大変よ。
玄関のところに猫のもらい手を募集する文章が書いてあった。その猫かどうかはわからないけど、ご主人が玄関先へ出た時に一匹の猫がふと現れて「おー、よしよし」みたいな場面はあった。あれから無事に里親決まったかな。
そのご主人に入浴料1000円をお支払いして入館。貴重品を預けたかったので、すぐ目についた100円ロッカーに荷物ごと保管した。しかし小物類だけであれば浴場の近くに無料らしき貴重品ロッカーがあった。客室や浴場への通路兼ロビーはこういう感じ。
この通路の先を右に折れるとエレベーターがあり、地下1階に出ると3つの浴場入口に続いている。女湯・男湯・混浴湯だ。細部の記憶はもう消えていたため、ひとまず男湯の脱衣所へ。壁の分析書によれば「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩温泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」とのこと。加水・加温・循環・消毒なしの100%源泉かけ流しは素晴らしい。
足元湧出風で泡付きがすごい男性内湯
脱衣所は外の通路(そこから露天風呂へ行けるのだろう)と浴室につながっていた。じゃあまず浴室内へ。洗い場は2名分。浴槽は3名サイズで底に丸くて平たい石が敷いてある。お湯は濁りも色みもない無色透明。浸かってみると体温よりほんの少し上くらいのぬる湯。じっくり長湯は可能。
匂いがいわゆる石膏臭というやつで湯の花は見られず。泡付きが豊富で今回体験した3つの浴槽の中では最大級だった。あれよあれよという間に肌が泡だらけになるからね。こりゃすごい。
もうひとつ気になったのが、ところどころで底から源泉がじわーっと立ち上ってくる感触がある。もしかして足元湧出なんだろうか。後日の調べによれば、昔は川底に浴槽を作って利用していた=つまり足元湧出だったと考えられる。現在の内湯は底から源泉を投入したり石を敷いたりして、かつての雰囲気を再現したものであろう。
好天時に魅力倍増しそうな広い露天風呂
続いて脱衣所から外の通路へ出て露天風呂へ。トータルで30名いけそうなサイズの岩風呂だ。一部に大きな岩が突き出して、凹の字というか口を開けたパックマンのような形状。混浴なので岩陰を利用して異性の客の視線が届かないようにする工夫かもしれない。※女湯側に女性専用露天風呂もあります。
手前側の一部は屋根がかかっていて4名程度はその下に収まれる。当時は雨だったから客はみな屋根の下にいた。せっかくの広い岩風呂が偏った使い方になってしまってもったいないけど、この天気ではやむなし。
湯口からの投入量はなかなかに豪快で多い。温度面は先ほどの内湯よりも微妙にぬるい。泡付きは確認できず。なお、旅館は川沿いに立っていて露天風呂も川寄りに位置しているのだが、若干距離があることと、外部からの視線を遮るためと予想される草木が茂っており、川面が直接見えるわけではない。
ぬるさでは一番の混浴内湯
あとは混浴内湯を体験してみたく機会を伺うも、なにせ中の様子がよくわからない。普通に考えてほぼ100%気にしなくていい状況のはずだがどうしよう…と躊躇してどんどん後回しになっていった。やがてある男性客が入っていくのが見え、5分しても平静な様子だったので後に続いた。
浴室内に洗い場は1名分。浴槽は3名サイズでやっぱり底に石を敷いている。湯の花は見られず、泡付きはちょっとだけ。温度は露天風呂よりさらにぬるく、体温と同じくらいといえる。
温度の違いはあくまで体感的なものだし差は微小だから、どの浴槽であっても「ぬる湯の快感」を堪能できて、他客との兼ね合いさえなければ30分とか1時間浴も可能だろう。個人的には男湯の泡付きか、天気次第では露天風呂の開放感を楽しみたい。
やさしくふんわりした感覚に包まれる良質の石膏泉をもって本遠征の見事な締めとなった。思い出が美化されてたわけじゃなく、思い出通りに良い温泉だったのだ。これぞまさにAI時代の強化学習(違う)。