日出づる処のハイレベルぬる湯 - 春日居温泉郷 旅館日の出温泉

春日居温泉郷 旅館日の出温泉
秋になって年内4度目の山梨遠征が実行された。これは夏の3度目の遠征時に急な事情によりキャンセル不参加となってしまったメンバーのリベンジマッチでもあった。あの時の忘れ物を取りに行く、ってやつですな。

ここで紹介するのは2泊目にお世話になった「旅館日の出温泉」だ。笛吹市の旧春日居町地区にある。狭義には春日居温泉郷の宿だが、近隣の石和温泉とあわせて石和温泉郷と呼ばれることが多いようだ。

当館を選んだ理由は、我ら一同にとってはいつもと同様で「ぬる湯があるから」に決まっている。実際はぬるいだけじゃなくて泡付きあり&飲泉可能な良きお湯だった。ボリュームたっぷりでおいしい食事もGoodね。

旅館日の出温泉への道

増富ラジウム温泉からの移動

旅館日の出温泉の最寄り駅はJR中央本線の石和温泉。北口を出れば徒歩10分かそこらで着くし、滞在中の観察によれば駅までの送迎をやってくれそうな様子だった。旅館の北方の山に旅館名を示す大きな看板が見えるから目標にしよう。山には登らない/山が始まる手前の平地がゴールなのでご安心を。

我ら一行は車を利用。初日は増富ラジウム温泉・不老閣へ泊まった。そちらの体験談は3ヶ月あまり前の宿泊記と大きくは違わないため割愛します(リンク先の最後に天然岩風呂についての補足あり)。

2日目は朝遅めにチェックアウト。晴れてるし紅葉の季節だから、温泉めぐりよりも景観めぐりや自然を散策しようという話になり、まず増富温泉から5kmほどのところにある塩川ダムへ向かった。この形状は重力式でしょう。ちょうど放水というか越流しているタイミングだった。
塩川ダム 下流側
ダム湖(みずがき湖)側がこちら。うまく撮れないな。
塩川ダム 上流側
近くのみずがき湖ビジターセンターからもダム湖を見学できる。前回は湖に一番近い歩道が立入禁止だったのに、この日は立ち入れた。ダムの方向に目を向けると鹿鳴峡大橋が見える。紅葉にはまだ早かったか。
みずがき湖と鹿鳴峡大橋
反対の温泉方向には増富大橋。湖岸がロックフィルぽくなっている。
増富大橋

秋の尾白川渓谷

さて、お次は夏にも訪れた尾白川渓谷へ。今回は川が完全に日陰になってしまい、引いて撮ると単に暗い景色にしか見えないのが残念だ。清流らしさがわかりにくい。
尾白川
川のそばまで行くと、エメラルドグリーンと謳われる水が黄緑色に見えるコンディションだった。前日までの雨の影響か、流れが速くて勢いがある。落ちたらやばそう。
尾白川と吊り橋
美観スポットの千ヶ淵は滝の水量がすげえ! 淵の水位もかなり上昇している。前回とはえらい違いだ。
千ヶ淵
尾白川渓谷も緑の葉が多く、紅葉はまだこれからっていう様子だったな。紅葉はお天気次第の「あわよくば」な目標だから、まあベストでなくてもしょうがない。では石和方面に向かいましょう。


背後を山に守られた一軒宿

2つの棟からなる旅館

当館の正面背後は山になっているほか、別のアングルで見ると背後はマンションになる。周辺には分譲地の売り出しなんかもあったし、温泉地というよりは甲府近郊の住宅開発地といった趣き。
日の出温泉の裏はマンション
本館らしき棟の隣に別棟風の建物があった。両者の間は中庭のようになっており、その奥で2つの棟は廊下によりつながっている。
別棟と中庭
では入館。早く着きすぎたためチェックイン開始時刻まで中で待たせてもらうことになった。こちらがロビーでございます。
ロビー
エレベーターホールにはミニ書籍&漫画コーナー。風呂に入ってばかりいたので本を読む余裕はなかったな。
ミニ書籍&漫画コーナー

おなじみ風の親しみやすい部屋

案内されたのは2階の8畳+4畳和室。最初から布団が敷いてあっても、4畳側に座卓が置いてあるから居場所は確保されている。よくあるタイプの広縁だと2人分のスペースなんだけど、この方式なら4人までいけるね。
日の出温泉 8畳+4畳客室
シャワートイレ・洗面所あり。金庫、空の冷蔵庫あり。WiFiは人によってつながったりつながらなかったりで、自分のスマホはNGだった。※ロビーと客室はSSIDが異なり、ロビーの方はつながったんだけども、客室の方がだめだった。

窓の外は別棟と右手にちょろっと山の気配が感じられる景色。中庭の木をもって紅葉を見たことにしようか。
窓の外の景色
ここで正直に告白しておこう。以前からネットで当館の存在を知ってはいたが、おっさん世代ゆえ画像・動画ベースのSNSでなくテキストベースの掲示板を情報源としていたせいか、頭の中で民宿風のイメージを勝手に膨らませていたのだった。実際は規模面も設備面もれっきとした旅館である。


良質湯の交互浴がたまりません

2つの源泉を提供している

日の出温泉の大浴場は1階の別棟側。本館から廊下を通っていくとつきあたりに手前=男湯・奥=女湯が並んでいる。男女の入れ替えはないようだ。下足箱のところには、館内サンダルを別の客が間違えて履いていかないように区別するクリップが置いてある。

脱衣所は比較的シンプルなつくり。掲示されている分析書をチェックすると源泉が2つあるみたいで、「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」と「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」だった。どうやら前者がぬるめの自家源泉、後者が石和から引湯している熱めのお湯らしい。加水・循環なし、加温・消毒あり。

浴室もシンプルなつくりで、4名分の洗い場(そのうちシャワー付きは2名分)と大小の内湯浴槽が2つ。ただし奥の窓ガラスの向こうにお湯を張っていない露天風呂の跡が見えるし、露天風呂へ通じているけど今は閉鎖してるっぽい出入口もある。かつては露天風呂もやっていたんだろう。

石和引湯の小浴槽は心地よき適温

ぬる湯大好きおじさんはさっそく…いや待て、あわてるな。まず熱い方のお湯に入って全身の毛穴を開かせるんだ(←不老閣で受けたレクチャーの受け売り)。ってことで3名サイズの小浴槽へ。

お湯は無色透明でわずかに微小な湯の花の粒らしきものが見られる。泡付きなし。匂いはあと少しでほんのり甘い硫黄臭に通じそうな雰囲気を感じた。温度は予想していたほど熱くはなく、入りやすい適温でなかなかに心地よい。ぬる湯派といえども最後に一瞬だけ入る「あがり湯」扱いしてしまうのはもったいないと思った。

もちろん熱めが好きなら小浴槽をメインに据えればよいが、サイズ的にサブな雰囲気があり、利用客もみな大浴槽をターゲットに来ている様子がありあり。大浴槽にじっくり長め→たまに小浴槽に数分、のパターンで交互に入るのがおすすめ。

自家源泉の大浴槽は素晴らしきぬる湯

さあいよいよ自家源泉を投入する5~6名サイズの大浴槽へ。お湯の見た目は小浴槽の方と違いがない。匂いは無味無臭に近いかな。一番の違いはやはり温度でしょう。冷やっとしない体温程度のぬる湯は、すぐ身体になじんで、最短で極楽タイムへと突入する。うっかり眠っちゃうこともあるから気をつけようね、っていうくらい快適なため、いくらでも入っていられる。

もうひとつ大きな特徴があった。泡付きがすごい。最初のうちは気づかない程度だけど、いつの間にか腕や足に細かい泡がびっしり付着する状態になる。肌をなでて泡を払っても、しばらくするとまたいっぱい付いている。泡の付くぬるい温泉が好きなので大変に喜ばしい。こいつは本物だぜ。

あと大浴槽は湯口にコップが置いてあって飲泉できることを示していた。コップでごくごく…ではなく、手のひらで受けた少量のお湯を口に含んでみただけだが、まあ癖のないすっきりした味だった。

ぬる湯に1時間続けて入る楽しみ方をしばしばやりがちなところ、今回は上に書いたように交互浴を意識して、大浴槽15分→小浴槽5分を2~3セット繰り返す入浴法を実践した。浴室内に時計がない(ガラス越しに見える脱衣所の時計は照明の反射具合により針と文字が白飛びして読めない)から適当な感覚だけど、細けえことはいいんだよ。結果的に最高だったからヨシ!


せっかくのいいお食事はお腹をすかせて臨みたい

わりと海の幸が多い、ボリューム十分な夕食

日の出温泉の食事場所はケースバイケースのようだ。1階フロント横の広間的なところに加えて、別棟にも食事処があるように見えた。我々はフロント横の広間だった。広間といっても団体さんが宴会をするレベルの広さではなくて個室として使えるくらいの広さ。

テーブル席に並んでいたスターティングメンバーがこちら。山梨は海なし県だからと油断してたら海のものが結構出されていた。鍋の具にも海老とか貝とかあったし。
日の出温泉の夕食
お味は野暮ったいところがなく万事に隙がない感じで大変に結構。調子に乗ってぱくぱく食べていたら、最初に大きめの煮魚を見た時点で予感した通り、途中で早くも腹八分目くらいの状態になってきた。そこに追加されたのがカキフライですよ。
日の出温泉の夕食 その2
カキフライ・鍋・煮魚がまだ丸々残っているんだが…。ビールも飲んでたし、全部やっつけた頃にはかなりお腹が苦しくなっていた。締めの炊き込みご飯は2~3口でギブアップ。またいつものパターンで終了してしまった。フルーツ王国・山梨の誇るデザート(柿とシャインマスカットとあと1種類あったような気がする)は部屋へ持ち帰って時間をずらしていただきました。

朝ごはんもしっかりとした内容で

朝食も同じ場所で。前夜の分は寝ている間に消化したみたいだから大丈夫。朝風呂に入って内臓もすっきり目覚めたようだし。さあ来い。
日の出温泉の朝食
オーソドックスな品揃えですな。鍋の中身は湯豆腐だ。きのこたっぷり味噌汁が良かった。そしてご飯の盛りが結構多め。やや大きめの茶碗に山盛りによそってから少し圧をかけて米粒を密集させた感じ。ふだんおかわりをする人でもこの一杯で十分なのではないだろうか。※おかわりはもちろん自由。

広間の掛け軸を何気なく見ていたら、カタカナで「ラグビー」って書いてないか?
掛け軸にラグビー?
大会の優勝を記念して書かれたっぽいけど、くずし字を解読できないため詳細は不明。そうこうするうちに朝食時間もノーサイド。

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電車でも車でも気軽に行けそうだし、以前から泊まりたい宿の候補には入っていたので、グループ内で日の出温泉を提案された際に即賛同したのであった。実際に体験してみると良好なクオリティの温泉で、よほどぬる湯が苦手でなければ、長湯でも交互浴でも高い満足感を得られるはず。

食事・設備・その他諸々文句なし。またひとつ、再訪したくなる「ぬる湯の宿」を見つけてしまった。山梨おそるべし。