本格温泉の良心的お宿 - 田沢湖高原温泉郷 田沢高原ホテル

田沢湖高原温泉郷 田沢高原ホテル
最大400mを超える日本一の水深とたつこ像で知られる田沢湖。その田沢湖を一望するロケーション、かつ秋田駒ケ岳登山口にも近いのが田沢湖高原温泉郷だ。知名度でいえば近隣の乳頭温泉郷が強くて、とくに遠方のお客さんはどうしてもそっちへ行きたがってしまうのだが。

今回の遠征の2泊目に田沢湖高原温泉郷ってどうなんだろうと思って宿を探していたら、田沢高原ホテルの評判が良さそうだった。お値段がそんなにお高くなくて、一人泊OKで、お風呂は源泉かけ流し。おー、いいじゃないですか。はい決定。

ハード面の若干古びたところはサービス面でカバー。登山客の利用が多そうな印象だけど、温泉目的での利用も十分あり。

田沢高原ホテルへのアクセス

場所は「アルパこまくさ」の近く

JR田沢湖駅から乳頭温泉郷まで路線バスが走っており、1時間に1本程度は期待できるようだ。当館はこのバスの田沢湖高原温泉停留所で下車して徒歩1分。近隣の観光拠点「アルパこまくさ」で下車した場合でも徒歩5分。

自分はレンタカーで藤七温泉ふけの湯後生掛温泉を体験した後、南下する形で田沢湖方面を目指した。まともに直行すると着くのが早すぎちゃうから少し寄り道しよう。後生掛温泉を出てまもなくの八幡平ビジターセンターにイン。

いくつかの展示を見て、はい終了、って早いな…向かいの八幡平大沼をちょっと見学するか。
八幡平大沼

ビビりながらの八幡平大沼散策

30分程度で沼を一周する遊歩道を歩けばちょうどいいアクティビティとなる。しかしビジターセンターで見た「熊に注意!!」の警告文と写真が脳裏をよぎる。熊が普通にそのへんを歩いてるかのような写真じゃん。やばいよやばいよ(妄想100%)。

遊歩道にほとんど人の気配はない。そこらの茂みから熊さんがぬうっと、なんてね(妄想120%)。やっぱ一周はやめとこう。湖畔にタッチしたらすぐ戻ろう。
八幡平大沼の遊歩道
いい景色の中を一周歩くと楽しそうだけどなあ。熊さえいなければ、熊さえいなければ!(妄想150%)
八幡平大沼の湖畔
種類は不明ながらいくつかの花がぽつぽつと咲いていた。中でも半分つぼみ状態の青紫のこいつが気になる。なんだろうこれ。
遊歩道脇に咲いてた花
あの日見た花の名前をおじさんはまだ知らない。

美しい玉川ブルーはおあずけ

それから国道341号に入って、かつて訪れた新玉川温泉を過ぎ、過去に通算2往復半した…うち1往復は自分が運転…既視感ありありの川沿いの道路を南下。やがて玉川ダムが現れた。今日は天気も悪くないし玉川ブルーが見られるかもしれないぞ。寄ってみるか。
玉川ダムと宝仙湖
うーん、ブルーというよりグリーンが強まってるし、もう一声ってところだな。水位が低い・厚い雲が多い・夕方近いのが影響したか。本気の玉川ブルーはこちらの記事の終わり近くを参照されたし。

あとは寄り道なしで直行。田沢湖の手前で乳頭温泉方面へ向かう県道127号に入ったら10分くらいで田沢高原ホテルに着いた。ホテルは県道沿いにあり、すぐにわかるはず。


温泉めぐり目的には十分なお宿

言うて、気になる古さはありません

物腰柔らかな感じのご主人の受け付けによりチェックイン。フロント向かいのロビー・ミニ売店・食事処と大浴場へ向かう廊下を1枚に収めたのがこちら。風呂上がりに冷蔵ケース内の缶ビールを買って飲みました。
田沢湖高原ホテル1階廊下
3階建ての館内にエレベーターはない。1階の階段のそばにアメニティ類が置いてあるほか、小さな漫画コーナーがあった。
階段脇の漫画コーナー
今宵の部屋は3階の8畳+広縁和室。布団は最初から敷いてあった。
田沢高原ホテル 8畳客室
ハード面に少し古びた様子は見られるが、個人の感想をいえばとくに気になるレベルではない。トイレ・洗面台あり。内風呂もあるけど「老朽化のためサビが混じる場合があります。お風呂は大浴場をご利用ください」と注意書きされている。もともと大浴場しか使わないつもりだから無問題。

田沢湖&駒ケ岳ビューが良かった

金庫と空の冷蔵庫あり。WiFiもあるけどやけに重かったため動画やゲームは厳しいかもしれない。エアコンはあったはず。夏も安心ね。

チェックイン時に「眺めの良い部屋をお取りしました」とコメントされた通り、窓から秋田駒ケ岳と田沢湖が見える方角だった。駒ケ岳はちょっと強引に左側に首を曲げる感じになるし、山頂まで視界に入ってるのかどうか自信はないが、
秋田駒ケ岳?
田沢湖はわりと自然な体勢で見ることができて良い。※窓の開き方の都合でうまく撮れてないだけで実際はもっときれいに見える。
窓から見える田沢湖
SNSでドヤるようなキラキラの思い出を作りたいわけじゃない、枯れた温泉めぐりおじさんにしてみたら、十分なスペックと居住性であった。


100%源泉かけ流しで提供されるお風呂

水沢温泉を引いている模様

田沢高原ホテルの大浴場は1階廊下の奥。フロントそばに分析書が掲示されていて「含硫黄-カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩温泉(硫化水素型)」とあった。なんか字面に見覚えあるぞ…近隣の水沢温泉郷駒ヶ岳温泉がそんな泉質だったような。源泉名に「水沢温泉1・2・3・4号 新源泉1・2号混合泉」って書いてあるし。田沢湖高原温泉郷は空吹というところの噴気の造成泉と聞いたけど、ここは違うようだ。

加水・加温・循環・消毒なしのパーフェクトな源泉かけ流し。あと「冬は露天風呂がぬるくなります。ぬる湯にゆっくりとお入りください」的なフレーズも書かれていて、ぬる湯派としては大歓迎だ。ただし冬限定かもしれない点は気になる(訪問は晩夏~初秋)。まあ入ってみればわかるさ。

脱衣所は普通。浴室への戸がいつも開け放たれていたのはなんですかね。湯気がもれて湿気るから閉め切ってくださいが一般的だと思うけども。逆に浴室内に硫化水素ガスがこもらないように通気したいのだろうか。単に雑な客のしわざか。素人判断で勝手に開け閉めしない方がいいと思い、そっとしておいた。

濁りのない熱めの湯

浴室内にカランは5台。老朽化を感じさせるところはなく、安心感をもって利用できると思う。コンパクトかつシンプルなつくりで数々の仕掛けや設備があるわけではない。あとは5名サイズの内湯浴槽があるのみ。

お湯の見た目は無色透明に近く、やや黄色ぽく見える。へー白濁じゃないんだ。駒ヶ岳温泉は白濁だったし、ネット検索にヒットする水沢温泉郷のお湯も白く濁っているけどな。ただし濁り湯も湧出時点は透明であって、時間とともに濁りが出てくるものだとも聞く。透明ってことは鮮度が良い証拠かもしれないぞ。

浸かってみた。あちい。熱めの適温ってとこかな。温泉成分豊富で濃ゆい印象はあるし、温度の好みを別にすれば浴感は悪くない。泡付きはないが湯の花はちらほら見られる。匂いを嗅ぐと金気臭だったのに加え、何度も嗅ぐうちに焦げ硫黄臭も意識されるようになってきた。なかなかに複雑ですな。あとは肌触りがヌルヌル・ツルツルというよりはキシキシしてた。

熱めなのであまり長居はできない。こまめに浴槽外へ出てクールダウンする必要はあるだろう。ただし夕方は熱かったが翌朝はそうでもなかった。タイミング次第で大きく変動する可能性あり。

深めでぬるめの露天風呂

ぬるいとアピールされてた露天風呂はどうでしょうかね。ぬる湯派だから期待しちゃうな。2枚の扉を抜けて出ていくと奥行き狭めな、横並びに3名サイズの露天風呂があった。お湯の特徴は内湯と似ている。

まず一段掘り下がったところに腰掛けると半身浴の体勢になる。温度は内湯よりもぬるくて入りやすかった。ぬる湯と呼ぶゾーンではないけどね。冬にはおそらく外気でもっと冷めて本当にぬるくなるんだろう。田沢湖高原の冬の寒さを知らない身で言っちゃうと、その季節のぬる湯にも入ってみたいものだ。

半身浴の体勢からさらに一歩進むと意外に深くて立ち湯体勢になってしまった。田沢湖もびっくりの深さ。田沢湖と違うのは酸性じゃないってことだ。分析書にPH6.4と書いてあったから分類としては中性泉になる。まあとにかく、半身浴か立ち湯かのスタイルで入ることになる。

混雑と独占チャンスの波がありそう

露天風呂の目前には目隠しの柵が続いていて眺望はない(内湯もガラス窓越しに同じ景色となる)。屋根付きということもあり、開放感を楽しむ系よりは外の空気を吸いながら包みこまれたおこもり感を楽しむ系。

なお、夕方入浴時は最初のうち独占で、途中から登山グループらしき3名ほどがやって来た。ずっと本格温泉をめぐってきて反動が出たのか、夜はなんだか気だるくてお風呂をパス。もったいねーけどしょーがない。そして翌朝はずっと独占だった…登山客は早朝にチェックアウトしちゃったみたい。

ということで独占チャンスを期待しやすい一方、登山グループがどっと来ることで一時的に混雑する場面も考えられる。


お値段以上だと感じた食事

夕食はせっかくだから通常プランを貫く

田沢高原ホテルの食事は朝夕とも1階食事処で。開始時間をいくつかの選択肢から選べて、夕食に希望した18時に行くと、端の方のテーブル席に通された。温泉宿への一人泊が市民権を得てきたとはいえ、まだまだ好奇と警戒と哀れみの目で見られがち(妄想50%)。ぼっち客が部屋中央の席だと周囲の視線が痛いから、気を使って端っこにしてくれたのかも。ありがてえ。

料理は通常プランと控えめプランのうち…食が細い自覚があるのに…せっかくだからと標準プランを予約していた。はい、こちらです。
田沢高原ホテルの夕食
じゅんさい・いぶりがっこが秋田らしい。冷しゃぶサラダの豚肉も地元ブランドだったような気がしなくもないけど忘れちゃってすいません。

地酒ときりたんぽ鍋にご満悦

標準プランの量を攻略するために、炭酸で腹が膨れそうなビールを避けて、鈴木酒造店(秀よし)の飲み比べセットを注文した。よくわからんので、地元では1番人気という特醸酒・秀と田沢湖神代地区のお米で作ったという神代特別純米酒と純米吟醸松声をチョイス。べつに日本酒通ではないから、料理に合ってすいすい飲めちゃいます以上の論評はできません。

鍋はいうまでもなくきりたんぼ。お米を具材にするとはすごい発明だよな。汁に溶け込んだ旨味を吸っててうまいし。
きりたんぽ鍋
なんだかんだで量に苦しむことなく完食できた。とはいえ結構お腹いっぱい。きりたんぽでお米も摂取しちゃってるし。そのうえ締めのご飯となると、なかなか手が出なくて、ほんの少しいただいたらギブアップ。すまんす。

お風呂ならぬ朝ごはんの独占

朝食に希望した7時半に行くと、前夜いたグループ向けの配膳がなくて自分の分しかなかった。登山客はやはり朝早くチェックアウトしたのだろう。たった一人のために朝食の準備かたじけない。
田沢高原ホテルの朝食
ジュース・牛乳・コーヒーやちょっとした漬物類や海苔がセルフサービス方式。ご飯はお櫃にたんまりと用意されてる。納豆が見たことのないタイプで、パック容器じゃない小さな包みに入ったスティック納豆だった。

固形燃料で温めるやつがハムエッグならぬ魚介エッグ。自分で割った生卵を投入して蓋して待つ。火が消える前に蓋を取ったら中の様子次第で食べごろを判断する。ちくわを一瞬きりたんぽと見間違えそうになり、「やはりきりたんぽ!!…きりたんぽはすべてを解決する…!!」と思ったかどうかは定かでない。

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比較的お得に泊まれて食事やサービス面はお値段以上。ハード面については、老朽化を指摘する口コミや旅館側が謙遜するほどの古さだとは感じなくて普通に過ごせた。温泉面は田沢湖高原で水沢温泉に入れるという認識でいればよいかと。ストレートに旅情をかき立てる白濁湯ではないが、源泉かけ流しのクオリティに間違いはない。全般に良心的な姿勢が感じられる好宿だ。