暦の上では秋でもまだまだ真夏並みの残暑が続く頃、群馬への2泊3日グループ旅行が企画された。いつものメンバー…ぬる湯好きの沼に引きずり込まれつつある…だからぬる湯を求めたいが、予定日の有名どころは満室が多く、なかなか厳しそうだった。予約競争に出遅れちゃったかな。
ならばせめて涼しい土地ってことで、温泉の質に間違いはない万座に注目。中でも日進舘は比較的リーズナブルなお値段で、大浴場内の姥湯というお風呂がぬるめだとの口コミを見た。いいんじゃないか。
実際の姥湯は我々の考えるぬる湯ではなかったが、タイミングによっては温度低めのお風呂があったし、温度を抜きにすればどのお風呂も安定の万座クオリティで満足度は高い。
万座温泉日進舘へのアクセス
関越道のひどい渋滞にはまる
秋という名の真夏と変わらない暑い朝。某所に集合したメンバー一同は、ひとりの愛車に同乗して群馬を目指した。日程からして渋滞は覚悟の上だったにしろ、関越道のあまりの動かなさは常軌を逸していた。若者の旅行離れっていうニュース記事を読んだけど本当かよ。それともここに詰めているのは我々のような中高年だけなのか。
真実はこの際どうでもいい。とにかく動かなかった。ようやく埼玉県を脱出して群馬県に入り、スムーズに流れ出した頃にはとっくに午後の時間帯に突入していた。一番恐れていた渋川伊香保IC付近の渋滞がむしろ存在しなくて、以後は順調。
高速を出たら吾妻川沿いを西へ。自分は何度も通ったことのあるおなじみの道だ。ドライバーが「まだ八ッ場ダムを見たことがない」と言うので、八ッ場歴5回の自分が「国道からちょっと入ったところで寄り道しやすい場所ですよ。エレベーターがあって…」などと得意げに語るのであった。しかし関越渋滞のダメージは思った以上に大きく、寄り道すると宿に着くのが遅くなるということで、結果的に八ッ場ダムはパス。
新宿からの直行バスがあるらしい
2年前に一人旅で万座へ行った時(ホテルジュラクに泊まった)に立ち寄り湯した半出来温泉を通過し、JR万座・鹿沢口駅のあたりから万座ハイウェーに向けて坂を登っていくと、なんと、前を走るバスが日進舘の送迎バスだった。新宿から直行しているみたい。
じゃあ後ろにくっついて走れば自動的に現地まで連れて行ってもらえるじゃん。ラッキー。というところで記憶は途切れます…眠っちゃったようだ。目覚めたら万座プリンスホテルの前を通過するところだった。どこかでバスを追い越してた様子。あとは牛池・万座亭の前を通って一番奥まったところが日進舘。
この日は混雑していたため、目の前の駐車場はすでに埋まっており、スタッフの指示に従って坂下の第2駐車場的な場所に止めた。
大いににぎわう日進舘
第一印象よりもはるかに大規模な旅館
ではチェックイン。フロントの横にお土産コーナーあり。その前がロビー兼湯あがり休憩所のようなスペース。
とにかくお客さんが多くて、あっちもこっちも人だらけ。人間が写らないように撮影タイミングを図るのは非常に難しく、天井を見上げるくらいしかない。
当館は奥へ奥へ・上へ上へと続く構造になっている。建物の正面顔から判断する以上に規模の大きな旅館だった。
迫り来る令和の異常な気候の脅威
フロントは2階に相当し、我々に当てられた部屋は4階の10畳+広縁和室。明かり点灯前に撮影した写真のため暗いです。布団は夕食後にスタッフが訪ねて来て敷いてくれた。
シャワートイレ・洗面所あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。座卓上にペットボトルのミネラルウォーターが各自1本ずつあり。WiFiあり。管理状態は良好で特に不満なし。
エアコンに冷房機能がないのを気にする人がいるかもしれない。本来は夏もエアコンいらずの土地なんですけどね。当日は真夏並みの熱波が襲い、さしもの万座も屋外はともかく、室内はムシっとした暑さがこもっていた。扇風機で対処できるレベルとはいえ暑がりの人には辛かったかも。避暑のつもりで来る場合の落とし穴ですな。おそるべし令和の四季。
窓の外に広がる景色がこちら。噴気地帯や湯畑が見えるわけではないが、そういう要素を最優先にしたいわけじゃないから、まあいいでしょう。
安定の万座クオリティを楽しめる各種のお風呂
宿泊者専用の万天の湯
日進舘の大浴場は3箇所。チェックイン直後は6階の万天の湯へ行った。我々の部屋からだと下のような通路でつながった別館のさらに奥の別館にある宿泊者専用風呂だ。有料か無料かわからないけど貴重品ロッカーあり。あと男湯女湯入口前においしい万座の給水所あり。
脱衣所には、各自の館内スリッパを別の人が履いて出てしまわないよう、記名用のポストイットとペンが用意されている。また掲示されている分析書には「酸性-含硫黄-マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩泉(硫化水素型)、酸性、低張性、高温泉」と書かれていた。加水あり、加温・循環・消毒なし。
脱衣所、いやその前の時点ですでに硫黄というか硫化水素臭の気配ありありだったけど、浴室に入ったら容赦なく匂ってきた。さすが硫黄濃度日本一の万座。
6名分の洗い場と6名サイズの四角い檜の浴槽からなる。ガラス窓の向こうにベランダ風の涼み処も見えるが、本当に出られるかどうかは知らない。お湯はやや青みがかった乳白色で見事なまでに濁っている。
では入りやす。うん、適温だね。ちょっと入ったらいったん出てクールダウンして、また入って…のスタイルが合うお湯だ。漂う白い粒々とタマゴ臭は安定の万座クオリティ。ぬるいのが好きな我々は、夕食時間が早かったこともあり短時間であがってしまったが、ゆっくり楽しむ方がいてもおかしくない。ちなみに窓からの景色は林と駐車場。万天の湯といっても屋根付きの内湯であり、空が見える露天風呂ではない。
ワイルドな眺望も楽しめる(であろう)極楽湯
夕食後に行ったのは露天風呂の極楽湯。いったん館外へ出て、車を止めた第2駐車場の方へ坂を下ると湯小屋が現れる。翌朝明るくなってから撮影した姿がこちら。
中で男湯女湯に分かれていたはず。脱衣所で「キツネに荷物を取られないようにご注意ください」というフレーズを見かけた記憶があるのは気のせいだろうか。そんなシチュエーションがあるの?…動物つながりで言えば、極楽湯へ行くために館外へ出た際、いきなり小動物が駆け寄ってきたので猫かなーっと思ったら、ウサギでした。なんでウサギがいるの?、と後日調べたら日進舘で飼っている模様。
それはさておき、露天風呂に洗い場はない。四角い浴槽の縁に沿って四辺にきっちり並べていけば20名収まりそうな風呂があるのみ。お湯は万天の湯と同様で外気に触れる分だけ若干ぬるくなっている感じ。湯口からの投入量の多さやかけ流し状態になっている様子は暗くてもわかる。
また、眺望が良さそうだということも暗い中で認識できた。明るい時間帯なら白い地面の噴気地帯を眺めながら入れそうですな。翌朝チェックアウト直後に露天風呂から見えるであろう景色をアップで撮影したのがこちら。過去に散歩した万座温泉展望台のあたりだと思う。
当時の夜空は雲優勢で星が出ていなかったが、天気がうまくハマれば感動するほど見えちゃうのではないかと予想。露天風呂のワイルド感と白濁硫黄泉の組み合わせは多くの人を満足させるに違いない。
あつ湯からぬるめまで揃った長寿の湯
翌朝起床後とチェックアウト前に行ったのが1階の長寿の湯。洗い場は8名分で浴槽が4つある(苦湯・姥湯・滝湯・真湯)。実は苦姥湯・さゝ湯という2つの半露天風呂もあったらしいのだが休止、というより終了してしまったようだ。半露天風呂があったらしき場所はクールダウン休憩スペースになっていた。
苦湯は浴場内最大の浴槽で、向かい合わせに6名ずつのペアで計12名入れそうなサイズ。あつ湯と呼びたくなるくらいの温度で長くは入ってられない。ゆえに大勢がぎっちり占有する可能性は低く、比較的空いている。きりっと熱いのが好きな方におすすめ。
我々が期待した姥湯は確かにぬるめ。ここだけ源泉100%みたいな表示があって、つまりは加水なしってことだろうから、加水しないのにぬるめってのがちょっと不思議だなあ。熱交換器とかで頑張っているのか。
また、他と違うのは濁りが弱くて半透明風であること。日進舘の中では異色のお風呂だといえよう。ちなみに、ぬるめといっても体温前後のぬる湯ではない。あくまで適温の範疇で低め寄りという意味だ。まあそれでもだいぶ頼りにさせてもらいました。
滝湯は上から打たせ湯が落ちてくる1名用の浴槽だ。お湯の特徴は苦湯に近い。起床直後の入浴では触ってみたら熱かったので華麗にスルーしたところ、朝食後の時点では先に入ったメンバーが「滝湯がぬるくてとても良かった」と教えてくれたので、あわてて体験しに行った次第。確かにその時は姥湯以上にぬるくて好みにばっちりハマった。タイミング次第で変動が大きいのかな。何事も決めつけはいかんね。
真湯は万座の湧水を加温した非温泉だから割愛。全般に、温度の好みを脇におけば、どのお風呂も安定の万座クオリティで並ではないお湯だと思う。入浴後は肌のツルスベ感が半端ないし。おっさんの肌ですらすっごいスベスベよ。
自由度の高いバイキングを大活用
夕食で自分なりの楽しみ方を追求する
日進舘の食事は朝夕とも1階のダイニング「こまくさ」で。当時は客数がかなり多かったらしく、夕食17時~17時半スタートの組をおすすめされ承諾した。行ってみると、早い者勝ちで席を確保する競争などはなく、あらかじめテーブル席が用意されていた。ええでええで。
バイキング方式であって和洋中いろいろ取り揃えております。ライブキッチンではステーキも。しかし旅行前に動画配信サービスでドラマ:異世界居酒屋「のぶ」を視聴した影響から、トリアエズナマ=生ビールとつまみを居酒屋風に楽しみたい気分だった。なので最初から主菜含む希望の全品を集めることはせずに、お通しと前菜だけをゲット。
トリアエズナマを…いつものスタイルに似合わず…豪快にゴクゴク飲む。プハー。これだよこれ。うめえ!←グルメドラマに影響されやすいおじさん。きゅうりやおでんとともに再びビール。合うー!←グルメドラマに影響されやすいおじさん。
自分は海原雄山ではないので提供されたメニューとお酒で十分満足しました。その後も刺身・天ぷら・その他諸々・締めにはドライカレー、加えてトリアエズナマに続いては瓶ビールへ以降しつつ、やっぱり豪快飲みするなど調子こいちゃった。おかげで翌日からお腹がユルくなっちゃったのはここだけの秘密。
朝食も好きなようにやれ…海鮮丼でもいいじゃない
朝食は6時半開始を提案され承諾した。行ってみると、自由席方式とのことながら争奪戦は発生せず、平和に席を確保できた。和洋に幅広い組み立てができる中で、つい目が向いてしまったのが自分で作る海鮮丼。万座に来て海鮮丼でいいのかという理性のささやきはあっさり吹き飛んだ。
だってネギトロとかサーモンとかホタテとかトビッコとか松前漬けみたいなのがあるんだもん。逆にこれでお腹いっぱいになりそうで他のおかずを抑制してしまった。和食系に限っても山菜や漬物やお切り込みうどんとかあったけどね。
まあその時の気分で好きなチョイスができるのがバイキングの醍醐味だから。地のものしか認めないとか、取った品の数とか、原価を見越してのコスパ勝負とか、そういうことじゃないんだよ。そうだろスティーブ?(グラハム・カー)
最後におコーヒーをいただいて終了。ごちそうさま。
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3度目の万座も良質の温泉を体験できた。ぬる湯好き旅団による遠征なので温度面に注意が向きがちだったが…なのになぜ万座を選んだ?!というツッコミはご遠慮ください…客観的にみて良いお湯です。特に露天の極楽湯は多くの人を満足させるだろう。
冬の雪見風呂もワイルド感マックス&ぬるくなってる期待で面白そうだとしても、スキー・スノボの習慣がないだけに冬の万座へ行くということに現実味を持てなくて躊躇してしまう。そこはライフワークとして克服するしかないな。