秋田県大仙市にある強首温泉樅峰苑に行ってみた。こわくびおんせんしょうほうえん。一発で読める自信はないが、温泉界では有名な旅館らしい。第一に挙げるべきは大正時代に建てられたという、国の登録有形文化財にも指定された建物の圧倒的な存在感。おじさんもSNSで映える写真がアップされてるのを見てから当湯を意識するようになったのだ。
ただし今回の遠征は八幡平から田沢湖エリアを湯めぐりする旅。強首温泉はついでに寄るような場所ではなく、当初の予定にも入ってなかったのを、ある運命の導きで足をのばすことになったのだ。お湯は濃ゆくて熱い強塩泉の源泉かけ流しで、かなりガツンとくる。うっかりするとKOされちゃうよ。
強首温泉樅峰苑への道
迷いを断ち切った一言
旅の最終日の朝は田沢湖高原にいた。盛岡で夕方の新幹線に乗るまでにはかなり時間に余裕がある。旅の間じゅう強力な温泉群に入り続けたせいか、肌が異様なツルスベになってるし、正直ちょっとしたぐったり感も覚えていた。もう温泉に2つも3つも入ってられない、行くなら1箇所だ。
普通の発想なら近隣の乳頭温泉郷のいずれかに行くべきだろう。あるいは盛岡へ戻りつつ、途中のつなぎ温泉とか鶯宿温泉とか。それでも1箇所に限定すると時間が余っちゃうなあ。田沢湖観光は過去に体験ずみだし…小岩井農場なんてガラじゃないし…うーん。
心に迷いを残したまま田沢高原ホテルをチェックアウト。その時ご主人がおすすめしてくれたのだ。角館で祭りをやってますよ、山車が出てますよ、と。角館も行ったことあるんだが迷いは晴れた。
角館か…ここでおすすめされたのも何かの縁だ、行ってみるか。それに角館まで行くなら強首温泉が射程に入るんじゃないか。長い移動でドライブ主体の1日になったとしても、どうせ時間が余って迷ってたんだし、ちょうど好都合ともいえる。
角館を見学してから強首温泉へ
などと考えているうちに強首温泉を訪れる運命に引き寄せられてる気がしてきた。自分はべつに運命論者ではないが、こういうめぐり合わせに乗っかるのは嫌いじゃない。はい、角館と強首温泉に決定。
角館は確かに祭りをやっていて山車が出ていた…詳しくは後ほど。角館から強首温泉までは30km以上あって決して近くはない。盛岡から遠ざかる方向だし。しかし腹を決めたおじさんにとっては大事の前の小事。タイパとかコスパとか細けえことはいいんだよ。やるなら今しかねえ。
ちなみに当館の最寄り駅はJR奥羽本線の峰吉川。5kmほど離れている。駅までの送迎と有料ながら秋田空港までの送迎をやってくれるようだけど宿泊者のみでしょう。
いろいろと衝撃的な温泉体験
温泉宿とは思えぬ風格漂う建物
強首温泉に着くと、いかつい門が出迎えてくれた。とても温泉旅館に見えない。
車は脇のところから敷地に入って奥に駐車場がある。当館はもともと豪農・小山田家の邸宅だった関係で、駐車場そばには小山田家資料館なる棟もあった。こちらの建物も相当なオーラを放ってる。
本館向かって左の玄関は宿泊客専用。やっぱり温泉旅館に見えない。
日帰り客は右の日帰り用入口からどうぞ。
フロントで入浴料をお支払い。650円。内部は昔のままの雰囲気を残しつつ現代に対応してリニューアルしたところもある。ロビーとお土産コーナーがこちらでございます。
1階を少し奥に進めば大浴場。脱衣所には、というか浴室にも、人の気配はなかった。独占チャンス来たよこれ。さっそく分析書をチェックすると「含ヨウ素-ナトリウム-塩化物強塩温泉」とのこと。加水・加温・循環・消毒いずれもなしの湯使いは素晴らしい。ちなみにコインロッカーはなかった気がする。
全然甘くない、ガチの源泉
では浴室へ。さっそくアブラ臭がふわりと漂ってきた。ふむふむ、なるほどね(温泉通のふり)。見回すと4名分の洗い場と内湯浴槽からなるシンプルなつくり。情報によれば宿泊者専用の露天風呂が別な場所にあるみたいね。日帰りの今回は内湯に集中ということで。
浴槽からオーバーフローしたお湯は奥の端っこに設けられた排出路の溝を流れるようになっていたが、床は温泉の析出物によるものと思われる茶色が容赦なくこびりついており、そうなっちゃうよなと納得させるお湯の色であった。褐色系でありながらもモスグリーンの印象を抱かせる色。すっかり濁っていて浴槽の底はまったく見えない。
浸かってみよう。熱うーー!! めっちゃ熱いぞ。温度の数値そのものに加えて濃ゆい強塩泉の特徴が熱く感じさせているのではないかと思う。あっという間にのぼせてきそう。せっかく名の通った温泉に来たからと無理して粘ると簡単にKOされるやつ。
お湯の匂いを直接嗅ぐと、アブラというよりは金気臭ぽさがある。視覚的にも嗅覚的にも体感的にも、入浴者をやさしく包み込んでくれるなんて甘さはこれっぽっちもない。真剣勝負、かかってこいや!みたいな。
危うくKOされそうになった熱さと濃ゆさ
なんか遠くない過去に似たような温泉に入った気がするなあ。いろいろ記憶の引き出しを漁ってみたら、温泉津温泉の薬師湯だった。モスグリーンの塩化物泉で、速攻でレッドゾーンに達する熱さで、激しく攻め立ててくるガツン系。まさに「北の温泉津温泉」だ。
ならば薬師湯の入り方を真似したらいいんじゃないか。いったん浸かったら3分を上限に(実際1分で十分だが)出る→置いてある椅子を使って浴室の隅で休憩→落ち着いたらまた湯船にトライ、を繰り返す。それでもどんどん身体が熱くなる。
こいつはすげえや。すげえよ、おっつぁん。燃えたよ、燃え尽きた、真っ白にな…。って、いかんぞ、これから盛岡まで下道を100km運転しなきゃいけないのに、まだ燃え尽きるわけにはいかない。数名の客がやって来たところで、予定より早めだが潮時と判断してあがった。
いやー、やたらパワフルなお湯だったー。どうにかKOは免れたものの、大差で判定負けと言われても仕方ないな。でも思い出を改変して引き分けということにしてください。フフフ、ワターシ、ショーホーエントファイトシマシタネー、ユー、ベリーベリーストロングオンセン!
おまけ:角館の観光
角館武家屋敷のお祭り
強首温泉の前に角館に寄った。桜並木駐車場に車を止めて武家屋敷通りへ歩くと、おおー、山車がいる。しかも回転しだした。※昨今のプライバシー保護の観点から個々人のお顔をぼかしております。
先端を一軒の屋敷に向けると、2組の舞子(?)が踊りを披露した。
披露が終わると山車はまたくるりと向きを変えて去っていった。
踊りをどなたに披露したのかと見てみれば、佐竹北家当主御座席だった。そっか、角館だけに。
山車は他にもいた。
あるいはこちら。
武家屋敷の中も見学してみよう。過去に来た時は青柳家を見学したから今回は石黒家を。
短時間ながら解説員がついて説明してくれる。いろいろあったが例えば居間。
着物の展示。
応接の間。畳の並びは身分・格によって座る場所をきっちり区切るものだとか。
他に資料館になっている蔵も見学できる。
最後は盛岡冷麺で締める
角館→強首温泉をクリアした後はまっすぐ盛岡へ戻ってレンタカーを返して盛岡駅へ。帰りの新幹線までまだ1時間以上ある。ご当地グルメで一人打ち上げってことで盛岡冷麺をいただこう。
行列のできる店で何十分も待つ余裕はない。駅地下街にある寿々苑がたまたまカウンターに空席ある様子だったから即決で入店。盛岡冷麺とトリアエズナマ。
ぷは~、ビールがうまい。冷麺がうまい。ずっと気になっていた岩手~秋田の温泉群を湯めぐりできて、熊に遭遇することもなく無事に戻って来られて、お疲れ様でした>ミー。フフ、タノシイネ…。