ワイルドすぎる野天風呂群が待つ秘湯 - 蒸ノ湯温泉 ふけの湯

蒸ノ湯温泉 ふけの湯
この遠征の2日目はいよいよ八幡平アスピーテラインを秋田県側へ下っていく。そちら側にも有名かつすぐれた温泉がいくつかあり、当然体験してみる気満々だった。ただし前泊地からあまりに近いのと、日程にうまくはまる空室が見つからないため、立ち寄り湯で体験させてもらうことにした。

まずは有名どころで蒸ノ湯温泉へ。名前の語感から、サウナ・蒸気浴が充実してるように錯覚するけど(自分だけ?)、口コミによるとワイルドな露天風呂群…野天風呂と称している…がウリだそうじゃないですか。自分のようなぬる湯派が期待する温度じゃないのは承知の上で、噂の野天風呂に入浴してみたくて乗り込んでみたぜぇ~。ワイルドだろぉ~?

ふけの湯へのアクセス

JR田沢湖駅から八幡平頂上方面への路線バスが休止してしまってる現在、ふけの湯を通る公共交通機関はないことになる。田沢湖駅もしくは鹿角花輪駅からアスピーテライン入口というところまではバスで行けるので、そこからの送迎を相談してみるとか(できても宿泊者限定だろうけど)。当地域で完全予約型の自家用送迎サービス「ドラゴン号」が始まったとの情報もあるが詳細は不明。

盛岡からのバスも八幡平頂上レストハウスまでが限界。やっぱり送迎頼みになりそうだね。ちなみに11月から4月下旬の当館は冬季休業に入る。

自分は機動性を重視してレンタカーを利用した。旅の2日目に岩手側の藤七温泉・彩雲荘をチェックアウトしてふけの湯へ向かう。好天で見晴らしが良ければ八幡平頂上レストハウスでちょっと景色を眺めようかと思ってたら、めっちゃ霧の中だった。どこを見ても真っ白な世界。

天気予報は悪くなかったから、山頂付近だけ雲にすっぽり覆われるパターンでしょう。しゃあない。気を取り直して当湯へ直行したのである。

…そういえば蒸ノ湯休憩所ってところに寄ったな。トイレの建物はあるけど閉鎖中。背丈の伸びた草が邪魔だが展望所ぽい雰囲気になっている。白い煙が上る地獄谷風の白い地面がちょこっと見えますな。あそこがふけの湯なんだろうな。
蒸ノ湯休憩所からの眺望
休憩所から当湯までの1kmは狭い道。とはいえ対向車とすれ違う確率はかなり低いので極度に恐れなくていい。たまに団体ツアーのバスが乗り付けたりする観光名所だから油断はできないけども。


館内のお風呂をまず体験

急がば回れ(裏へ)

建物が見えてもすぐ玄関ではない。建物の反対側へ回り込んだところが正面玄関だ。車で正面玄関の前まで行けるし駐車スペースもある。そこらへんの理解が薄くて、手前の第2駐車場的な場所に止めて数十メートル歩いてしまった。下の写真は車を止めた付近から見た旅館。正面玄関はこの裏側になる。
ふけの湯の建物
ん? なんか団体さんがぞろぞろ歩いてるぞ。大型の観光バスがいるし、混み合うタイミングに来ちゃったかな~、と不安を覚えつつフロントにてお支払い。700円。

即興で作戦を組み立てた。どうやら館内に内湯と露天風呂があるほか、外をちょっと歩いた先にワイルドな野天風呂がいくつかある構造になってるみたい。団体さんは観光の目玉としてまず野天の方へ殺到するだろうから、先に館内の風呂をクリアしておこう。スケジュールに縛りのある団体さんはその間に去ってるかもしれない。

というわけで館内が先。フロントそばにふけの湯神社があった。蒸ノ湯温泉は子宝の湯でもあるのかしら。朝ドラ主人公のモデルとなった牧野博士との関係を示す記事や写真も張り出されている。
ふけの湯神社

素朴な湯治場風情の内湯

右手の廊下つきあたりに男女別の内湯浴場。脱衣所には100円戻らない式のロッカーあり。壁の説明には「単純硫黄温泉(硫化水素型)、低張性、酸性、高温泉」と書いてあった。はっきりと記憶していないがたぶん加水あり、加温・循環・消毒なしではないかと思う。

内湯の浴室は小ぢんまりしたもので、洗い場は一般的なカラン器具ではなくて木製の細長いかけ湯槽のようなところからお湯をすくい出して使う。素朴な湯治場風情によく似合ってる。

浴槽も3~4名サイズの素朴な木の浴槽。中は白濁と透明の中間くらいな半濁りのお湯だった。浸かってみると適温。酸性の硫黄泉といっても極端な刺激・クセがあるわけではなく、わりと入りやすい。しかし風呂の多さから逆算して、あまり長い時間をかけられず、妙にソワソワした気分に支配されてたこともあって、結構短時間で出ちゃった。

眺望が相応にある館内露天風呂

いったん服を着て脱衣所を出ると、すぐ近くに男女別の露天風呂がある。こちらの脱衣所でまた服を脱いで浴室というか外へ出ると、5~6名サイズの四角い露天浴槽があった。岩風呂じゃなくて木のやつ。

お湯は完全に白濁して浴槽の底が全く見えない状態。温度は内湯と似たようなものかな。こういう白濁湯は光の当たり具合で青白く見えたり緑寄りだったりするけど、この時はまさに無彩色。同系統の温泉が続いたせいで硫化水素臭には慣れっこになってしまい、どうしても匂い面の印象が弱くなるのはやむなし。

三方は壁なれど、ワイルド野天風呂群の方角に眺望が広がっており、開放感はある(高低差や草木に遮られるため野天風呂が直接見えるわけではない)。あと、トド寝をしてるおじさまがいました。浴槽の脇に寝転んで、たまに腕を伸ばして湯船からお湯をかき出す動作が見られる。東北だなあ。


いよいよ本命のワイルド野天風呂群へ

熱すぎず独占狙いも可能な男性用野天風呂

さて、そろそろ向こうのワイルド野天風呂の方へ行ってみるかと、玄関でサンダルを履いて外へ。ほとんど地獄谷見学路のような雰囲気の区域内は当然ながら撮影禁止。数十メートル歩くと最初に現れるのが女性用野天風呂だ。安心してください、囲いで目隠しされてますよ。

その先の道は川と並走するようになるが、川を流れるのが青白く光る白濁湯の色であった。お風呂からの排湯だけでこんなになるとは思えないし、上流からすでにこんな色で流れてきてるから、もともとが白濁湯の川なんじゃないの。すげーな。

続いて現れたのが男性用野天風呂だ。こちらも丸見えにならないような工夫はされてる。脱衣所というよりは、すのこと2段の棚による脱衣コーナーがあり、すぐ隣がもう浴槽。7~8名サイズでお湯は完璧な白濁だ。館内にあったお風呂に比べると少しぬるめなのはありがたい。

誰もいなくて誰も来なくてずっと独占だった。地獄谷特有の、草も生えない白い地面と点在する噴気孔から上る白い煙、そんな環境の真っ只中に作られた硫化水素臭のする白濁湯の露天風呂。うーん、やっぱとんでもないな。ふだんの生活環境では絶対あり得ないシチュエーションだからね。観光名所になるわけだよ。

いやあハッピーな時間を過ごさせてもらった。しかし欲張って長居はできない。まだあと1箇所、お風呂がありそうなのだ。名残惜しいが出よう。立ち去るタイミングでお客さんがやって来たし、ちょうどいい潮時だったね。

最奥の混浴野天風呂は浴槽がいっぱい、ぬるいのもあり

男性用野天風呂を出て、また数十メートル歩いていくと、最後のワイルド野天風呂が現れた。そこは混浴だった=男女別の脱衣小屋が設けられている。内部の様子をエスパーセンシングすると(謎能力)、男性客がいるようだったから、じゃあ気を使う状況ではあるまいと判断して中へ。

ここには複数の浴槽が集まっている。6名、いや8名入れそうな四角い浴槽が2つ並び、その奥に4つの壺湯。さらに一番奥には6名サイズの岩風呂があった。お湯の特徴はいずれも男性用のところと同じような白濁。

奥へ行くほどぬるくなるようで、手前寄りの2つの四角い浴槽は熱すぎなくて入りやすい適温、4つの壺湯はぬるめ、一番奥の岩風呂はかなりはっきりとぬるかった。壺湯については4つのうち1つにお湯が入ってなかったのと、足元はジャリジャリした砂っぽい感覚あり。このへんのコンディションは時と場合次第なんでしょう。

自分はぬる湯派だから岩風呂にずっといたかといえばそんなことはなく、各浴槽を適度にローテーションした感じ。人の出入りはそこそこあって、急にお仲間同士でどっと来たりするし、独占状態は期待しにくいかと。開放感の面で一番だし、中にいろんな浴槽があるぞということで集まりやすいんじゃないかと思う。

こうして敷地内の4箇所を湯めぐりしていたら、あっという間に1時間が過ぎた。個々の湯船にはじっくり浸かった気がしない。ふけの湯は時間に余裕を持って訪れないともったいないところだね。まあとにかくワイルドなので一度体験してみることをおすすめする。