尖ってない、取っつきやすい公衆浴場 - 尖石温泉 縄文の湯

尖石温泉 縄文の湯
最初に正直に告白しておこう。うっかりおじさん、「尖石温泉 縄文の湯」と「八ヶ岳縄文天然温泉 尖石の湯」を取り違えてました。後者に行くつもりが前者に行っちゃったみたい。旅行から帰った後で気づいた。なにこのカレーライスとライスカレーみたいな関係。

両者の名前が類似している背景としては、尖石遺跡として知られる縄文時代の集落遺跡が付近に存在している事実がある。縄文時代からの因縁じゃ、しょうがないなあ。

まあこれも一種の天命ということで尖石温泉の方をレポートさせてもらいます。市の公衆浴場であり、硫酸塩泉の成分を持つささ濁りのお湯で露天風呂も備える。

尖石温泉 縄文の湯への道

北八ヶ岳ロープウェイを天候いまいちで回避

旅の2日目に尖石温泉へ至るまでに運命の分かれ道が2つあった。宿泊した奥蓼科・明治温泉をチェックアウトして最初に向かったのは北八ヶ岳ロープウェイ。この日の昼は観光にあてて、山頂駅周辺を散策したりパノラマ風景を展望してから次の地へ向かおうかなと。

しかし一応は日が差しているものの、雲が優勢な感じでちょっと空が怪しい。ロープウェイで上ってみたら霧に覆われてて何も見えない真っ白な世界という顛末は十分あり得る。多少開けた場所から雲の様子を確認するつもりでいったん蓼科湖へ逃げた。
蓼科湖
うん、だめですねこりゃ。北八ヶ岳ロープウェイのホームページが提供するライブカメラでも山頂駅は真っ白な世界だった。はい中止。ここが運命の分かれ道その1。

尖石マルチバース

計画を立ち寄り湯に切り替えて付近を探してみると、「八ヶ岳縄文天然温泉 尖石の湯」にピンとくるものがあった。なんか見覚えのある名前だな~。よくよく思い出してみると…5年前に行った川崎の日帰り温泉「志楽の湯」の館内で尖石の湯が紹介されていたんだった。志楽の湯も縄文天然温泉を名乗っているから、同じ系列なのではないか。姉妹店的な。

そういう縁もあったので、じゃあ行ってみるかと。そしてカーナビに入力したんです、ナチュラルに「尖石温泉」と。ここが運命の分かれ道その2。こうして尖石の湯に向かっているつもりで尖石温泉を目指すという量子重ね合わせ状態が発生したのであった(謎)。

15分ほど走って、さあ着いたぞー、脳内認識=尖石の湯/現実の観測世界=尖石温泉に…ああ面倒くせえ。以下では現況を優先して尖石温泉で通す。


現実に入浴した方の尖石温泉について

結構モダンな建物

午前中だったから駐車場には十分すぎるほどの余裕があった。駐車場から北方やや東寄りの方角を眺めると、山の頂上部をすっぽり覆う雲が広がっていた。やっぱりアカンですね。
八ヶ岳の上の方は雲の中
当館の建物は全然鄙びてなく、むしろモダンな雰囲気だ。券売機で入浴券を買って入館(茅野市民以外は600円)。ちょっとしたロビーのようなところから外のテラスへ出られるようになっている。テラスからは隣地との境になってる木々のゾーンが見える。縄文の森ということにしておこう。
テラスから見える木立
大浴場へ向かう通路の途中に休憩所が2室あった。手前側の部屋は座卓と椅子&テーブルが混在しているようだ。食事を提供しそうな雰囲気もあるが令和2年で終了しちゃったそうだ。
休憩室 その1
奥側は一般によくある畳の部屋。給水器とかテレビとかそういうのはなかった。湯あがりのお客さんたちがたくさんゴロゴロしている風景が“あるある”だけども、手前も奥もほとんど人がいなくて静まり返っている。活気という面ではちょっとアレですね。平日だったせいもあるかな。
休憩室 その2

絵の展示と分析書の展示

通路を先へ進むと、壁に絵がずらっと展示してあった。地元ゆかりの画家さんですかね。アート分野にはまったく詳しくないゆえ、実は大御所だったりしても気づかんので、すまんす。

通路には分析書を拡大したパネルも掲示されていた。こっちは多少わかります。源泉名が尖石温泉、泉質は「ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩温泉、低張性、中性、温泉」で源泉温度は40.9℃。脱衣所内には湯使いが書いてあって、加水なし、加温・循環・消毒あり。脱衣所のロッカーは100円リターン式。扉の内側にコインを入れるところがあるよ。

打たせ湯付きの内湯

浴室は万人向き安心感のあるつくり。初見でも戸惑うようなところはないだろう。カランは15台もあるから洗い場難民化するおそれはなさそうだ。奥に余裕で10名以上が入れそうなタイル作りの内湯浴槽がある。湯口からの投入量はまあまあ。

お湯はささ濁りで、色は判然としないが、うっすら黄緑っていう印象。浸かってみると適温だった。源泉温度が40.9℃だったら、加温を抑えて浴槽内で38℃くらいになる調整ができれば、いい塩梅のぬるめになるんだけどなー。ぬる湯派としては体温前後でもかまわないし。まあ最大多数の最大幸福を狙うとそういうわけにもいかないのは理解できる。

湯の花や泡付きはなし。匂いを嗅いでみると若干の塩素臭を感知した。浴槽の一部に気泡をぶくぶく出してる場所があったような…記憶があやふや。そして一方の端では二筋の打たせ湯が落ちていた。内湯から独立した打たせ湯コーナーではなく内湯浴槽内に落ちてくる形の打たせ湯。

内湯より若干ぬるい露天風呂

あとは水風呂と露天風呂への出入口(サウナは関心対象外)。じゃあ外へ出てみますかね。現れたのは5名くらい入れそうな岩風呂。光の加減によりお湯の見え方が少し違っているくらいで、基本的に内湯と同じ湯が投入されているはずだ。

その他の特徴も内湯と一緒。外気に触れる分だけ若干ぬるめかなという気がする程度。それも「気のせいかもしれない」レベルだからね。露天風呂の周囲は壁や塀ではないのだが、林と植え込みのために遠くまで見渡せるわけではない。でも窮屈な感じを与えないのはいいんじゃないですかね。縄文時代の野湯に入ってる気分になれる…かな?

入浴中にひらめいたアイデアにしたがい、あえて効率的でない時間のかかるルートで次の地へ向かうことにしたため、時間に余裕ありまくりだったはずが、実はあんまりのんびりしてられない状況に変わっちゃった。そろそろ出ようっと。

 * * *

市の公衆浴場ということもあって、名前は尖石温泉でも中身は変に尖ったところのない、万人向きの安心感ある温泉施設だ。近くには尖石遺跡に関連する史跡公園や尖石縄文考古館がある。それらとセットで、縄文時代に思いを馳せつつ入浴するってのは一興かも。