安達太良の恵みの白濁酸性硫黄泉 - 中ノ沢温泉 ボナリの森

中ノ沢温泉 磐梯名湯リゾート ボナリの森
福島県の中ノ沢温泉は安達太良山西麓に位置しており、同山の沼ノ平火口付近から湧出する源泉を7kmほど引湯して使っている。湧出量は毎分13,400Lもあって、単一源泉としては日本一だとか。※集計の仕方により諸説あります。

使い切れないほどの量であれば、どの旅館も源泉かけ流しなんだろうし、酸性の白濁泉という特徴も旅情に絡んだロマンを感じさせる。行ってみたいね。

このたび車で福島県北まで遠征することになったので、アクセスの問題を考えたら絶好の機会には違いない。日程の都合で宿泊できないのは残念だが、せめて日帰りで体験するだけも…ネットで調べて日帰り客の利用が多いという安心感から「磐梯名湯リゾート ボナリの森」を選んでみた。

中ノ沢温泉・ボナリの森へのアクセス

温泉街のメインストリートから少し外れたところ

中ノ沢温泉街の主要な旅館は母成グリーンライン沿いに立ち並んでいる。一方、当のボナリの森は母成グリーンラインから脇道に入ったところにある。この脇道は絶景スポットとして知られる達沢不動滝の近くまで続いている。※訪問時点の達沢不動滝は駐車場から滝までの遊歩道が土砂崩れにより通行できないため立入禁止。

それはおいといて鉄道旅だとアクセスがなかなか難しそう。一応、JR磐越西線・猪苗代駅から1日4~6本のバス便が設定されているようだ。あるいは当館が猪苗代駅までの送迎サービスを行っているけど、これは宿泊客向けで日帰り利用客は対象外でしょう。

自分の場合は旅の2日目に塙町の常世温泉をチェックアウトして車で中ノ沢温泉へ向かった。今日は時間に余裕があるからと油断して、羽鳥湖→猪苗代湖経由で行こうとしたのである。結果的に無謀だった。

時間が足りず羽鳥湖・猪苗代湖を断念

棚倉から矢吹の町を通過し、かつて訪れた(今はなき)新菊島温泉付近の見覚えのある風景に懐かしさを覚えつつ、向こうに広がる丘を見ながら「あそこがスターホースを多く抱えるノーザンファーム天栄かあ」と一人悦に入るまでは調子よかった。

そこから天栄村をひたすら走るうちに疑念が生じた…「全然羽鳥湖に着かないぞ。着いたとして、このペースで羽鳥湖を見学して猪苗代湖を見学して中ノ沢温泉だと? 時間が足りなくない?」…福島県の広さをなめてました。費やした時間の損切り承知で引き返し、鏡石スマートICから東北道→磐越道を駆使して磐梯熱海までワープ、そこから母成グリーンラインを30分ほど走って中ノ沢温泉に着いた。結果論でいえば単に直行でよかったな。

当館の手前に赤い鳥居がいくつも連なった竹駒稲荷大明神への入口を発見。これは通ってみたくなる。
竹駒稲荷大明神 参拝口
だが羽鳥湖チャレンジによって時間が押していたため残念ながら見学はパス。ボナリの森に着くと、駐車場はそこそこの台数の車で埋まっていたものの、全体の収容力は十分にあったから問題なし。スロープを上って2階部分にエントランスがあった。
ボナリの森 玄関口へのスロープ

内湯は見事なまでの白濁酸性硫黄泉

地酒が並ぶ通路を抜けて

やはり日帰り利用客には慣れているようで、特に引っかかるところもなくスムーズに受付完了(1000円)。下足箱は100円リターン式のロッカー型。館内はリゾートホテルの趣きでなかなかのグレード感だ。こちらがお土産コーナーでございます。
お土産コーナー
大浴場への通路はこんな感じ。
大浴場への通路
右の棚には地酒がいっぱい並んでいた。日本酒に詳しくないから知らない銘柄ばかり。でも飛露喜は名前だけ聞いたことある。プレミアムなお酒なんでしょう。あと自分の中で衝撃度No.1の国権もあるな(湯岐温泉に泊まった時に大吟醸を飲んだらまじで梨の香りがした)。
地酒がいっぱい
通路の奥まで進むと湯あがり休憩スペースがあって、正面が女湯・左手が男湯だった。男湯前には「泉温の低下が云々、急な温度変化の際は調整が間に合わず云々」の注意札が立つも気にせず先へ進む。脱衣所には100円戻らない式の貴重品ロッカーあり。

壁の分析書には「酸性-含硫黄-カルシウム・アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉『硫化水素型』、低張性、酸性、高温泉」と記されていた。PH2.0。源泉名はかの沼尻元湯。その実力、見せてもらおうか。

熱めでピリピリくるお湯

浴室に入ると硫化水素ぽい匂いが充満していた。来たよ来たよ。はやる心を抑えて様子をうかがうと、洗い場は9名分、奥に一列横並びで10名入れるサイズの内湯浴槽、その横に2名サイズの水風呂、あとはサウナ。客は自分の他に2~3名で混雑感はまったくない。

お湯は見事なまでに白く濁っており、浴槽の底がぎりぎり見えるかどうか。浸かってみると熱めだった。せっかくだから長く粘ろうなどと考えると、簡単にのぼせてぐったりしてきそう。なんだかピリピリくるのは熱いからじゃなくて酸性だからだろう。

この種の温泉に見られるように、お湯の中に白い粒がいっぱい漂っている。匂いを嗅いでみると、それっぽい硫黄を感じさせる特徴があった。旅行中は花粉症ばりに鼻がおかしくなってて細かい嗅ぎ分けができない状態だったけれども。

内湯は温度+ピリピリ+源泉かけ流しのおかげでとても力強さを感じるお湯だった。


母成の森の露天風呂

2つある岩風呂の片方はとても熱い

お次は露天風呂へ…白濁湯とあわせて旅情を盛り上げてくれる岩風呂が待っていた。7~8名サイズの丸い形をした2つの岩風呂が接触したようになっている。手前側の方にじゃぶじゃぶと歩みを進めていくと…熱ぅーーー!! なにこれ熱い。膝から腿にかけての突き刺すような痛みは明らかに酸性じゃなくて高温ゆえの刺激だ。

これはたまらん。飯坂角間あつみ須川高原などのあつ湯を体験してきたのだから、短時間なら頑張って入れなくはないだろうが、まだ無理する局面じゃない。温冷交互浴したくなったらチャレンジしようと後回しにした結果、最後まで入る機会は訪れなかった。

あらためて奥側の岩風呂へ入湯。こちらは適温だ。むしろ隣のあつ湯や内湯との相対比較でぬるめにすら感じてしまう。ガツンと来る感覚を味わえなくていいからゆっくり浸かりたいのならここだね。人の背丈ほどの高さに水平に生えた細いパイプからお湯が注ぎ込まれており、その様子は打たせ湯のようにも見える。

川の景色がなかなか良い

露天風呂の四方すべてが塀で囲われているわけではなく、川の方角は視界が確保されているため、露天風呂ならではの景観的な楽しさもちゃんと味わえる。谷底を流れる川と季節的にちょうどいい感じのまぶしい新緑がとても爽やか。いいですねー。

クールダウンしたければ脇に丸太椅子みたいのが4つほど設置されている。場所が場所だし、季節はまだ初夏だし、日陰を吹き抜ける風はやや肌寒いくらいで、熱い温泉との組み合わせが最強。

そんなこんなで小一時間ほどであがったが、湯あがりの肌はベトつかず、すっきりさっぱり。思ったほど身体に硫黄の匂いが染み付いていない。後味が良いですな。今回は日程都合により立ち寄り湯となったけど、湯質と風情はすぐれているので、いつか泊まりで来てみたい気もする。