思い出を超えた良きぬる湯との再会 - 石和温泉 ホテル八田

石和温泉 ホテル八田
梅雨に入る少し前、よく一緒に旅行するいつものメンバーで山梨へ行った。個人的な趣味である「ぬる湯めぐり」の世界に善良な一般市民を引きずり込んでいる気がしなくもないが、各位におかれましてはぬる湯の良さに目覚めて喜んでおられるようなので、まあいいでしょう。

特に今回はぬる湯三昧であった。そもそもメンバーの一人が「下部温泉ってどういう感じなのか、行ってみたい」と発言したことで計画が立ち上がっているからね。

2泊3日で計画し、下部を2泊目に持っていって、1泊目については過去に宿泊してなかなか良かった石和温泉ホテル八田への再訪と決めた。熱めの湯が多い石和にしては低温系も抜かりなくフォローされてて素晴らしい。

3年ぶりに石和温泉・ホテル八田へ

山梨に来たらほうとうを

JR中央本線に石和温泉駅がある。当然そこが最寄り駅だ。駅からは徒歩で20分弱だし、事前予約制で送迎もやってくれるみたいだし、電車でもアクセスに難はないと思われる。

我々はメンバーの愛車で向かった。観光スポットをあちこち回るつもりはなかったので、朝ゆっくりめに出発して中央道・勝沼ICを経由し、ほうとうの店・皆吉へ昼前に着いた。古民家風の雰囲気がいい。人気店らしく駐車場があちこちにあって、県外ナンバーがずらり。

幸い待たずに座れた。ボリューミーなほうとうなんか食べちゃって、旅館の夕食までに消化できるかなあと気にしつつも、きのこほうとうを注文。
皆吉 きのこほうとう
出たーーー! 麺も具もたっぷりの熱々。しっかり完食しました。店を出る頃には満席になってた様子だから、早めに着いて良かったわ。

こちらも3年ぶりの正徳寺温泉

チェックインできる時間までまだまだ余裕がある。続いて山梨市の日帰り施設「正徳寺温泉 初花」へ。ここは以前立ち寄ったことがある。とても良質のぬる湯だったな。温泉だけでなくおいしいうなぎも有名で、あちこちで紹介されているお店だから、知ってる人も多いだろう。
正徳寺温泉 初花
詳細を割愛して簡潔に…入浴料800円、泉質はアルカリ性単純温泉、大浴場前に飲泉場あり。内湯浴槽は向かい合わせに8名サイズの源泉風呂と、6名サイズの高温風呂。源泉風呂の方は体温より低い印象でヒヤッとする温度。高温風呂はあつ湯ではない適温で一部がジャグジー風。

露天風呂は15名入れてもおかしくない広さ。ここだけ妙にお湯がヌルヌルするのはなんでだろう。あとは2名分の寝湯に隣接して2名サイズの小浴槽、その奥に2~3名サイズの樽風呂。露天エリアのお湯はいずれも体温に近い不感温度だった。あとはサウナ小屋と水風呂。

90分ほど滞在した。あーいいお湯だった。初花初訪問のメンバーも気に入ってくれた様子だ。では石和へ向かうとしよう。初花から車で10分、あっさり着いちゃった。


今回は東館に泊まりました

武田二十四将に見守られて

ホテル八田のフロントでは団体さんとかち合ってしまい、どうなることかと焦ったが、待たされることなくチェックイン完了した。こちらがお土産コーナーでございます。武田二十四将をフィーチャーしたひな壇(?)が飾ってあるぞ。
お土産コーナー
ロビー兼コーヒーラウンジがこちら。一部は池につながっており、鯉に餌をやることができる(100円)。
ロビー兼コーヒーラウンジ
前回は本館に泊まったのだと思うが、今回は東館だった。雰囲気としてはややエコノミーな感じになる(実際とてもお得に泊まることができた)。とはいえ本館と比べての相対的な話なので、何か不満があったわけではない。いろいろな面でしっかりしているホテルなのは間違いない。
東館の廊下

桜の季節に良さそうな部屋

我々が入ったのは東館2階の10畳+広縁和室。布団は夕食中に敷いてくれるクラシック方式。
ホテル八田 東館10畳客室
シャワートイレ、洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、フリーWiFiあり。コンセントの位置と数の関係から、同室人数次第ではパソコン使用やスマホ充電に工夫がいるかもしれない。室内のお風呂でも源泉100%を体験できちゃうみたいよ。
客室内の風呂も源泉
南向きの部屋だったから窓から見えるのは用水路とさくら温泉通りになる。桜の季節は華やかなんだろうね。
窓から見える景色

石和といえば八田になっちゃう理由がお風呂

一風変わったワイン風呂は利用時間に注意

ホテル八田の大浴場は西館1階と本館7階にある。まず後者のワイン風呂について。8名分の洗い場に4名サイズの浴槽からなる。赤ワインエキスを入れた温泉だそうで、見た目が鮮やかな赤紫色。赤ワインを薄くして透明度を上げた感じかな。アルコール分は抜いてあるからご安心を。

前回はいかにもワインの甘い匂いがした記憶があったものの、今回はそうでもなかった。しかし気分は完全にワインの中だ。ぬるくない適温のため長湯は難しい。お湯の感触は普通にさらっとしており、入浴後にベトベトしたりはしない。

このワイン風呂には夕食後に1回だけ入った。入浴できる時間帯に限りがあるので(少なくとも朝は入れない)、狙うなら事前に利用可能時間を確認しておくこと。

本命はぬる湯のある西館「いやしの湯」

我々にとっての本命はやはり西館1階の「いやしの湯」だ。夕方・夜・朝起床後・チェックアウト前の4回、それぞれ1時間級の入浴をしてしまった。なぜならぬる湯浴槽があるから。

まず男湯女湯の入れ替えはない。脱衣所の分析書をチェックすると「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」だった。一部加水する場合あり、冬期加温あり、循環・消毒ありとのこと。

浴室の洗い場は12名分。今どきのソーシャルディスタンス基準だと7~8名サイズになる内湯浴槽のお湯は無色透明。壁に「FFC健康いやしの湯」についての説明板が見えるけど、読んでも内容が頭に入って来ず理解できてない。浸かってみたら適温だった。最後のあがり湯として使うのに向いている。

当時の意識が完全に露天風呂に向いてたせいで、内湯は雑な感想になっちゃって、すいませんね。

逸話を生んだ露天小浴槽

いよいよ本命視していた露天風呂へ。すぐに現れるのが2名サイズの四角くて白っぽい小浴槽。ここのお湯は、冷たいまではいかないが、かなりぬるい。ぬる湯派としては大歓迎のスペックなのである。永久に入っていられる心地よさであることは、次の逸話からもわかってもらえると思う。

--- 夜にみんなで露天風呂へ繰り出した。1時間ほど楽しんだ後、1名を残して自分を含む他の面々は部屋へ引きあげた。スマホをいじったり寝る準備をして、ふと気がつくと風呂へ行ってから2時間経っていたが、露天風呂に残ったメンバーが戻ってこない。おかしい。いくら長湯可能といっても2時間は長すぎだ。まさかとは思うが、心配になって露天風呂へ様子を見に行くと、小浴槽でしっかり寝落ちしてましたとさ ---。

そんな小浴槽の隣には小屋があって、中は2~3名サイズの岩風呂になっている。こちらもかなりぬるい。露天エリアには屋根がないため、夏のカンカン照りや雨の時は重宝しそう。前回は手を突っ込んだだけで、なぜかろくに入りもしなかった小屋の岩風呂、今回は何度か入浴させてもらいました。

メイン岩風呂横のぬるい区画がたまり場に

その奥にメインの岩風呂。10名、いや15名でもいけそうな広さに見える。とても熱い湯だった記憶があるので警戒していたら、いい塩梅の適温だった。これなら別にいいんじゃないの。先の団体さんの一員と思われるみなさんはここに浸かる人が多かったな。

メイン岩風呂の横にちょっと別区画のような感じで、4名まで入れそうなサブ岩風呂的な空間がある。上述の小屋に隣接するあたりだ。ここはぬるい。小屋につながる配管が通してあるようで、小屋岩風呂のぬるいお湯が流れ込んできている気がする。また、メイン岩風呂からも少しずつ適温湯が流れ込んできている。両者がうまく混じり合って適度なぬるさになっているようだった。

ぬる湯を求める我々はメイン岩風呂を避けて専らサブの方に入っていた。冷静に見たら、広いメインがガラガラで、狭いサブにみんな集まって埋め尽くしているという、なかなかシュールな光景だ。

あつ湯好き向けの源泉岩風呂もあるよ

ちなみに温度以外のお湯の特徴はどのお風呂も一緒。無色透明無味無臭ってところだ。湯の花的な白い粒がたまに確認できるかな。無臭といってもなんとなく温泉臭らしき匂いはある。変な癖がないので、ぬるいところに入ったら本当にいくらでも気分良く浸かり続けられるのが良き。

最後に、メイン岩風呂の奥に一段高くなったところがあり、上ると適温の小岩風呂と、結構熱い源泉岩風呂があるので見落とさないように。高い方から低い方へ、源泉岩風呂→小岩風呂→メイン岩風呂→サブ岩風呂というお湯の流れが存在するようだ。


食事はいろいろと充実している

夕食は完食が危ぶまれるほどの料理群

ホテル八田の食事は朝夕それぞれ別会場にて。夕食は本館2階の食事処。ちゃんと個室が用意されていた。スターティングメンバーならびに少ししてから追加されたのがこちら。
ホテル八田の夕食
テーブルをにぎやかにする品々が並ぶ。前菜はよもぎ豆腐やミニトマトのコンポートでさっぱりと。台の物は富士山麓牛の陶板焼き。お肉は塩でどうぞとのこと。牛肉をステーキ切りの厚さで食べられるのは旅行に来た時くらいだからな。ありがたくいただこう。ああうめえ。

蓋をされた鍋はほうとう鍋。昼がほうとうだったけど、やっぱり夜も出たか。麺の量は抑え気味といっても具との合せ技でなかなかのボリューム。追加で天ぷらまで出てきたよ。
ほうとう鍋と天ぷら
こうなるとお腹が苦しくなってくる。各料理を完食はしたものの、締めのたけのこご飯は3割程度片付けたところでギブアップ。残してしまった、ああ悔しい。しかし無理やり胃に詰め込んで膨満感で動けなくなるパターンだけは避けねばならぬ。少し休んだらまた露天風呂へ繰り出すつもりなのだから…。ああ、お腹が張った八田。

朝食ビュッフェは新名物ラーほーまで手が回らず

朝食は西館1階の宴会場だったかと思う。7時以降に行って9時までに終えられればOKのビュッフェスタイル。団体さんは7時きっかりに来るだろうと予想して、料理にわーっと群がるドタバタが落ち着く頃合いを計って7時15分に行ってみたら、やっぱりいました団体さん。雰囲気はもう落ち着いて中盤~終盤にさしかかる感じだった。

提供されている料理はとても多くはないけど、選択肢が少なくて困るほどでもない。自分は全種コンプできなかったし。目玉焼きとウインナーはライブキッチンで作ってくれる。
ホテル八田の朝食
鯛茶漬けは反則だよなー。こんなの取ってしまいますやん。そんでお腹いっぱいですやん。カレーとか新名物ラーほー(ほうとう麺のラーメン)をちょっと試したくても胃に余裕なく断念。この最初に取ったやつらと食後のコーヒーでもって終了。

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ホテル八田は、コロちゃんで“自粛が大正義”のご時世に(そのわりにGoToトラベルなんてのがあったな)初めて行ったんだよな。厳しい時代をよくぞ耐えてくれました。思い出は美化されるとよく言うけど、今回来てみて、むしろ思い出よりもはるかに良いぬる湯だった。滞在中に1時間級の入浴を4回もやるとは思わなかった。あんなに心地よいお湯だったとはね。

仲間内では「石和温泉でぬるいのが八田くらいしか見当たらないんだよねー」ということで当館が定宿化しつつある。まあ間違いなくまた来るだろうね。