すべてを飲み込む圧倒的存在感を放つお湯 - 温泉津温泉 薬師湯

温泉津温泉 薬師湯
以前からずっと温泉津温泉に行きたかった。温泉の質に関して評価が高いようだし、温泉街のレトロな雰囲気がとても良さそう。そしてなにより映画「男はつらいよ 寅次郎恋やつれ」(第13作)のロケ地でもあるのだ。

導入部からいきなり寅さんが温泉津のお絹さんと所帯を持つとか重大発表しちゃって、寅さん・さくら・タコ社長の3人で温泉津まで確認しに行ったんだよな。特急車内で買った弁当+お茶が3セットで1290円。

そんな温泉津温泉へ、ついに来てしまった。せっかくだから旅館のお風呂だけじゃなく共同浴場にも入ってみますかね。で、観光客も多く訪れてそうな薬師湯へ。大正ロマンな風貌がひときわ目を引く建物で、浴室の様子やお湯の印象が強烈。

温泉津温泉「薬師湯」へのアクセス

温泉津湾を眺めつつ

最寄りであるJR山陰本線温泉津駅から薬師湯までは1km以上離れていて徒歩だと15分以上かかる。いったん温泉津港・観光案内所まで行ってから温泉街の細い道をずーっと進む、Uの字コースを歩くことになる。

しかし自然環境と温泉街の景色がいいので天気が良ければ散策がてらにちょうどいいでしょう。こちらが温泉津駅。寅さんたちもここに降り立ったんだなあ…。
温泉津駅
温泉津温泉の看板が出てくると観光案内所が近い。
温泉津温泉の看板
観光案内所の駐車場から温泉津湾を望む。小さな入り江とローカル色豊かな漁港がうまくマッチしていて、箱庭感のある風景がいいね。※温泉津港はかつて石見銀山の積出港でもあったそうで、写真で死角になってる右奥の湾入口部には大きな船も停泊できる規模の港が整備されている。
温泉津湾と温泉津港

温泉街をぶらぶら散策するのが楽しい

車で行く場合は温泉街の道路が狭いから運転注意。自分は宿泊先の「のがわや旅館」をチェックアウトした朝、車を旅館に置かせてもらって徒歩で薬師湯へ向かった。昔ながらのレトロな雰囲気に満ちた町並みがたまらなくいい。
温泉津温泉街の道
途中に西楽寺という立派なお寺さんがあった。
西楽寺
いったん薬師湯を通過。薬師湯向かいの後楽という旅館は、寅さん映画ロケの際に渥美清や山田洋次監督が滞在したらしい。※休業中との未確認情報あり。
薬師湯と旅館後楽
温泉津でしか摂取できない栄養がある。
温泉津温泉のとある建物

やきものの里まで足をのばす

ひたすら先へ進んで温泉街を抜けてもまだ進み、さらに急な坂を上って「温泉津やきものの里・やきもの館」まで来ちゃった。なぜなら映画のロケ地だったからだ。お絹さんは窯場で働いてる設定だったね。
温泉津やきものの里・やきもの館
こんな登り窯が映るシーンがあったような。
寅さんが出てきそうな登り窯
ミニ聖地巡礼はこれにて終了。じゃあ薬師湯へ戻りますかね。


とにかく強烈で忘れられない薬師湯

事前の説明からして強烈そうな温泉

大正ロマンな薬師湯の建物は温泉街でもひときわ目立つ。旅のワクワク感とシンクロして、入る前からドキドキしてきたぞ。いざ入館して受付で600円をお支払い。「入浴方法はおわかりですか?」と訊かれて「初めてです」と答えると、いろいろ教えてくれた。

…脱衣所でイオン水を1杯飲む。十分にかけ湯をしてから入る。石鹸・シャンプーはない。温泉効果により、温に浸かるだけでも汚れは落ちる。熱くて強い温泉なので長湯は禁物、3分を上限に休憩を。置いてある椅子を使って浴室の端っこで休憩する。これを繰り返す。あがったらイオン水を1杯飲む…。

男湯に他の客の気配なし。やったぜ独占。脱衣所は昔懐かしな感じでベンチや脱衣棚が並び、鍵付きロッカーもあった気がする。分析書は「ナトリウム-塩化物泉」と「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉」の2枚が貼られていた。いずれも低張性、中性、高温泉。100%源泉かけ流しは言うまでもないでしょう。

浴槽も床も温泉に蹂躙されている。そして人間も…

浴室に入って一瞬「うぉぅ?!」と声が出そうになった。目に飛び込んできた温泉成分の強烈な痕跡が予想を超えていたからだ。小判型の4~5名サイズの浴槽が中央に鎮座しているのだが、浴槽の縁から床にかけて肌色と茶色の中間くらいな析出物が溶岩となって流れ出た跡みたくなっている。

その凹凸が作る模様は千枚田というより、凹んだ谷筋が赤黒く映るので、血管と筋肉繊維の絡み合った皮膚…エイリアンやモンスターのグロいクリーチャーを連想させる。もっと具体的にいえば戸愚呂弟の首~肩を連想した。いま画像を比較するとそんなに似てないけど当時はそう思ったのだ。

お湯の見た目は白めのモスグリーン。完全に濁っていて浴槽の底はまったく見えない。浸かってみると熱い。しかも濃ゆい温泉がガツンガツン攻めてきます。これは効くう。3分を上限と決めずとも、もっと早く出ないとやばそうな感じ。

なんだか地の底から現れたお湯に、自分も含めてあらゆるものが蹂躙されてるような気分だ。まるでゴジラのごとき圧倒的存在感。

ただおそれをなしてひれ伏すのみ

入ってしまえばツルツル・ヌルヌル感は特にないけど、入湯時に浴槽内に足を踏み入れた際、見えない底の部分がつるっとすべりやすそうだったから転ばないように注意。

湯口からはザバザバ投入あり。当然オーバーフローも多い。湯口はもともとパイプ管だったのかな。析出物にすっかり覆われて天然の造形物のようになっていた。その両脇を固めるように立っている石はなんですかね。

濃ゆいお湯に真正面から対抗して粘っても、ぐったりへばってしまうのは明白。今日は空港まで運転して戻らないといけないし、天気悪そうだから温泉めぐりしかやることがない。あと1~2湯トライする予定を思えば無理は禁物。

ちょっと入ったら無理に粘らず出て隅っこでしばらく休憩してまた入る、を何セットか繰り返しているうちに、数名の客が脱衣所に入ってくるのが見えた。ちょうどいい潮時でしょう。もうあがろう。なんだかんだ30分以上いたし。

入浴後は2階や隣のカフェへどうぞ

湯あがり後は2階の休憩室へ。ここがまた独特のいい雰囲気なのよ。
薬師湯 休憩室
2階の一部は屋上状態になっていて展望所として使われている。港方向の景色はこんな感じ。海までは見えませんね。
薬師湯屋上展望所より
反対のやきものの里方向はこんな感じ。石州瓦が映えますな。
薬師湯屋上展望所より その2
ちなみに薬師湯の隣はかつての薬師湯旧館だという。築100年の貴重な建築物で現在はカフェとして生まれ変わった。温泉津薬師湯でしか摂取できない(以下略)。
薬師湯旧館を利用したカフェ
スケジュールの都合で寄らなかったけど、入浴後はこちらのカフェでまったりするのも満足度高そうね。