島根県飯南町に頓原(とんばら)という地区がある。出雲国風土記に登場する琴引山の北部にあたる。当初そういう知識は全然なかったので、語感から真っ先に思い浮かんだのが「豚バラ肉が美味しそうだなあ」…失礼しました。
豚肉が名産品かどうかはさておき、頓原に名泉はある。それが「頓原天然炭酸温泉 ラムネ銀泉」だ。名前からわかるように炭酸成分を多く含み、炭酸を活かす湯使いをしているところはだいたいお湯がぬるめ。そしておじさん個人はぬるい温泉が大好き。丸尾君じゃなくてもズバリ行くしかないでしょう。
混雑している状況だったが、ズバリ間隙をついて潜り込むことに成功。いつもより短めの滞在ながら鉄みの強いぬる湯を堪能した。
頓原天然炭酸温泉 ラムネ銀泉への道
温泉めぐりも体力使うから
島根遠征2泊3日の最終日はどうやら天気が悪そうだった。いつ雨が降ってきてもおかしくないから景勝地を見て回るには条件が向かない。日御碕とか行ってみたかったけどね。こりゃあ温泉めぐりしかやることないな、と腹をくくった。
宿泊した温泉津温泉のがわや旅館の朝風呂で1つ目、午前中に共同浴場の薬師湯に入って2つ目、帰りの飛行機が夜だから時間的にあと2湯は無理なく行けるが、おじさんももう若くはない。体力まかせのゴリ押しはできない。1日で4湯も大丈夫かよ…せっかく来たからと各所で1時間オーバーも粘らず、控えめに40分くらいで出るようにしようと決めた。
温泉津を出発する頃にぽつぽつ降ってきた。ほうらね、やっぱり湯めぐり日和だ今日は。事前の下調べの結果、まず頓原ラムネ銀泉を目指すことにして国道9号を東へ。
仁摩サンドミュージアムの巨大な砂時計
15分ほど走って仁摩サンドミュージアムに入館(800円)。ここは屋内だし、なんとなく見ておきたかったのでね。駐車場は徒歩2分ほど離れているので注意。
館内は砂を材料に用いたアート作品が展示されている。
砂といえば砂時計。当館にはギネス認定された世界最大の砂時計がある。見上げてみよう。
砂時計の製作は素人が考えるほど単純ではなく、砂粒の大きさが影響するとか、温度で砂の流量が変わってしまうなど、考慮・解決すべき課題がたくさんある由。苦労話を羅列したパネルをつい読み込んでしまうのだった。
見学を終えて仁摩を発ち、石見銀山→美郷町→三瓶と前日通った場所を逆方向に走る。この辺はふっつーにキジとかサルがひょっこり出てくるなあ。運転気をつけよう。完全にカーナビまかせで、三瓶から先はおそらく県道40号→国道184号→県道326号のルートだったと思う。
炭酸ぬる湯で気分爽快
とっても混み合ってそうな不気味な予感
現地付近に着いたら、まず第3駐車場という砂利の未舗装駐車場が現れた。すでに車で9割がた埋まってる。もしかして客が集中して大混雑してる?…とにかく駐車難民リスクを考えて即断でここに止めた。第1・第2駐車場を探せばもっと当館に近い可能性はあったが、初見で冒険は禁物。
第3駐車場から徒歩30秒ほどのところにデイサービスらしき施設とラムネ銀泉の入口があったけど、そこは裏口らしい。入っていいのかな?
裏口の近くには水車と源泉汲み所が設置されている。※飲めません。入浴用。
やっぱり念のため正面玄関に回ってみよう。正面に回ると冒頭写真のような入口あり。「ただいま混みあっております!」の札がかかっているのが不気味だなあ。しかしあきらめるわけにはいかない。多少の待ち時間は覚悟の上でいざ入館。
色が日々変化する温泉
入ってすぐ雲太なる高層神殿の模型が置いてあった。昔の出雲大社の姿だという説あり。
受付で600円を支払ってロッカーの鍵を受け取る。混雑による人数制限のために待たされるパターンを覚悟していたら、「お客さんがたくさんお見えなんですけど、みなさんそこのテーブルで休憩中だから、浴室は空いてますね。大丈夫です」とのお言葉。確かにテーブル席でお爺さま方がなにやら食べたり談笑している様子。タイミングがうまくはまったね。やったぜ。赤名宿の皆の衆も喜んでくれてるようだ。
受付横の壁に説明が張り出されていた…「本日のお湯はイエロー:よくみられる色です」だと。説明によれば当館の湯色は、透明→グリーン→イエローグリーン→イエロー→オレンジへと日々変化するとのこと。銀泉だからいつも透明ってわけじゃない。
脱衣所には細長タイプのロッカーが並び、受付で受け取った鍵に対応する番号を使う。掲示された分析書には「含二酸化炭素-ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物冷鉱泉、低張性、弱酸性、冷鉱泉」とあった。源泉温度は14℃台。加温のみで加水・循環・消毒なし。
泡は見えずとも炭酸の爽快感あり
浴室には出入りを通じてつねに4~5名いる感じ。洗い場は3名分。あとは4~5名サイズの内湯浴槽がひとつ。あと少しで厳しい人口密度になるところだった。
では期待を込めて入湯。ああ、ぬるいね。体温よりちょっと上くらいの温度だな。いくらでも入っていられるが、混み合っている状況とスケジュールを考慮して30分を目安にしておこうと決断。限られた時間で思い切り堪能するぞ。
お湯の色は説明通りに黄色っぽい。銀泉というより金泉ですな。匂いははっきりとした金気臭。炭酸成分豊富とはいえ、肌に泡がまとわりつく様子は確認できない。それについては壁に説明が書いてあった…「泡が見られないかもしれませんが、炭酸成分はお湯に溶け込んでいます。効果は変わりません」的な。言われてみれば炭酸シュワシュワの爽快感に近い印象はある。おかげでぬる湯の清涼感がさらに増すわけで。
血行が結構良くなった気がする
壁から生えた細いパイプがお湯の中に突っ込まれてて、それが湯口になっているようだ。パイプ付近の湯面はブクブクとあぶくが浮かんでは消えている。二酸化炭素の気泡ですかね。その近くはなんとなくスペシャルな場所のような気がして、しばらく陣取ってました。
あともうひとつ、壁から生えている蛇口が気になる。出てくるのは水道水か源泉か…いずれにしろ蛇口胴体の金属部分はすっかり緑青色がこびりついている。なんだかすげー。
また、壁には琴引山の解説も掲げられていた。といった具合にいろいろ気になるブツはあれど、まわりの目があるのでワクワク感丸出しで浴槽内をうろついたり、あれこれ凝視してたら不審者事案が発生してしまう。平静を装っておとなしくしてました。
さあ30分経った。そろそろあがろうかな。先ほどまでの清涼感とは裏腹に、湯あがりは妙に体がぽかぽかする。きっと血行が良くなったからじゃないの。同じ日の3湯目ということで警戒した倦怠感・ぐったり感はなく、むしろ軽快な気分。さすがは爽快ラムネの湯だ。