ツルツル温泉の宿で自慢のはなわ牛を - 常世温泉 乙女姫の湯

常世温泉 乙女姫の湯
前回の遠征から早くも1ヶ月近くが経ち、初夏の季節を迎えていた。梅雨に入る前の爽やかな行楽シーズン中に温泉めぐりを一度やっておかないとな。いろいろと休みを画策した結果、3泊4日の行程が可能となった。そこで以前から構想していた車での福島一人旅を決行することにした。

長距離ドライブにはまだ慣れていない。1日あたりの運転距離が長すぎないように、福島県南/県北/栃木県那須あたりで刻んで各1泊する計画にしておきましょうかね。

と考えて1泊目に選んだのが塙町の常世温泉。“静かでなにもない”というフレーズが似合いそうな湯宿だが、実際はツルツル感のあるお湯・はなわ牛などのセールスポイントあり。

常世温泉へのアクセス

常磐道経由で行ってみた

常世温泉から一番近い駅はJR水郡線の磐城塙で5kmくらい離れている。1時間強を頑張って歩けば不可能ではないにせよ厳しい。このご時世にタクシーをつかまえるのも難しそうだし。

自分は諸事情により朝遅め(昼近く)の時間にマイカーで出発。高速の渋滞に突っ込むことになると嫌だなあと警戒していたら、常磐道ルートを選択したのが功を奏したか、意外とスイスイ流れてくれて助かった。あんまり到着が遅くなって、先に入浴する余裕もなく即座に夕食という展開を懸念してたのでね。

那珂ICを出たら国道349号をずーっと北上。竜神大吊橋袋田の滝とは筋が違うし、時間の都合で今日は観光なし。そうして茨城・福島県境まで来た。さあどんな峠道が待っているのかな?と身構えてたら、整備されてて走りやすい道だった。

最後だけ道が狭いので注意

矢祭町で国道118号にスイッチしてからもスムーズで、「道の駅はなわ」で久慈川を眺める心の余裕さえあった。
道の駅はなわ付近の久慈川
ちなみに塙町は漫画家・富永一朗先生との交流が深かったことから、このような看板をちょいちょい見かける。湯岐温泉へ行った時の磐城塙駅前にもあったな。お笑いマンガ道場での鈴木義司先生とのバトルを思い出す。土管に住んでるの、どっちだっけ。
塙町でよく見かける看板
さて、常世温泉のラスト1kmほどは道が狭くなるから注意。だんだんだんだん狭くなる。最後は対向車が来てもすれ違い無理ってくらいになる。前方の見通しはきくので、よく見てうまく立ち回ろう。実際に対向車と遭遇する確率はかなり低いはずだ。


喧騒とは無縁の静かな環境にある旅館

ひと通りのものは揃っている

旅館の前が駐車場になっており、駐車場の端っこには建物に背を向けて林の中を覗き込むようにして、ベンチが置かれていた。座るとなにか見えるのだろうか。
駐車場のベンチ
まあいいでしょう。では入館。ロビー兼湯あがり休憩コーナーがこちらでございます。ホワイトボードに宿泊者の書いたメッセージとイラストが残っている。
ロビー
チェックインの後に案内されたのが1階の6畳和室(※当館は平屋建てのようだ)。一人で過ごすには不足なし。布団は最初から敷いてあった。
常世温泉 6畳客室
反対側からも写してみましょうかね。これを見てわかる通り、金庫あり、中に別途精算のビール大瓶が1本入った冷蔵庫あり、あとWiFiあり。
常世温泉 6畳客室 その2

のんびりできてよさげ

カメムシが異常発生しているとのことで、ペットボトルで作ったカメムシ取りが配備されていたけど、宿泊中に1匹も見かけなかったのはラッキーだったのか。
カメムシ取り器
トイレと洗面所は共同。客室の近くに男女共用のがあるほか、少し離れたところに男女別もあり。男側は確か洗面台×3と小×2とシャワートイレの個室×1だったかな。

部屋の向きの関係で窓の外は玄関先と駐車場。景観はともかくとして周囲に緑が多く、街の喧騒とは無縁で本当に静か。鳥やカエルの声だけが聞こえてくるような環境だった。のんびりできますな。
窓の向こうは駐車場

ツルツル感のある乙女姫の湯

温泉テーマソングがあったとは

常世温泉の大浴場はフロントのすぐそば。客室からも非常に近い。壁の上の方には常世温泉のテーマソングが目立つように掲示されている。ただ作詞(作詩)者の記名はあれど作曲者が書かれていない。曲は募集中だったりして。
常世温泉の歌
脱衣所の分析書によればフッ化物イオン・メタホウ酸・炭酸水素ナトリウムの項により温泉法上の温泉と認定されている由。低張性、弱アルカリ性、冷鉱泉。加温・循環・消毒あり。加水は明記されてないから加水なしの可能性が高いと思われる。

ジェットバス的な仕掛けあり

浴室の広さは宿の規模相応だ。手前側に4名分の洗い場、奥に3名サイズの浴槽からなるシンプルなつくり。浴槽全体は違うと思うけど縁の部分は木製だった。明確な湯口が設置されてなくて、浴槽内のお湯に明らかな方向性を持った勢いのある流れが生じていることから、浴槽の内壁にお湯を噴き出す仕掛けがあるようだ。気泡を抑えたジェットバスだな。

いまいち判然としないが、どうやらジェット流は4本出ている模様。かといって1本につき1名ずつ割り当てると、いかにも狭苦しい感じで余裕がなくなってしまう。そのへんはこだわらずに好きな場所を陣取るのが吉。

そもそも小規模宿だから、宿泊者同士が互いに融通しあって暗黙の貸切方式のように利用すれば、いつでも独占状態を享受できるだろう。今回はまさにそういうパターンだった。

一見すると無色透明のお湯に思える。しかしかけ湯をするために洗面器ですくってみたら、白い洗面器との比較で淡黄色だとわかった。

ツルツルのお湯と謎の音

では浸かってみよう。うん、適温ですね。熱すぎてすぐに出たくなるほどではない。ぬる湯大好きおじさんとしてはもっとぬるくてもかまわないのだが、久々の温泉ということもあって、このぬくぬくした感じでほっとした気分になるのも悪くない。

湯の花や泡付きは特に見られず。ちょっとツルツルした感触がある。匂いを嗅いでみたら…よくわからん。旅の始まりから、鼻が妙にムズムズして鼻水も止まらない症状に悩まされていた。毎年この時期はそうなる。花粉か黄砂かなにかへのアレルギー反応かもしれない。そんなわけで嗅覚が終わっていたため匂いは自信を持って断言できない。温泉臭かもしれないし浴槽の木の香りかもしれない。塩素臭でないことだけは確かだ。

ジェット装置の音だろうか。時おりコォォォーーーッとかサァァァーーーッとかいう音が鳴り響く。いや、シャァァァーーーッかな。なんとなく「米原駅の新幹線ホームにて、のぞみ号が超高速で通過するのを見ているシーン」を連想した。

ふうー。冷鉱泉ながらも結構いいお湯だった。ツルツル感のある温泉だけに湯上がりの肌もツルスベ。さすがは乙女姫の湯ですな。乙女姫なのにおじさんが入っちゃって、どうもすいません(初代林家三平)。


自慢のはなわ牛を楽しみましょう

直営牧場産牛肉とともにボリューミーな夕食

常世温泉の食事は朝夕とも客室とは反対側の端っこにある大広間で。夕食は18時、朝食は7時半と固定されている。いずれも10分くらい早く用意がすんで「できましたよー」と部屋に声がかかった。夕食のスターティングメンバーがこちら。横に天ぷらもある。
常世温泉の夕食
結構なボリュームなのである。惰性でビールを頼んでしまったが、ビールの量と泡でお腹が膨れてしまうことを考えたら、日本酒でよかったかもしれない。道の駅はなわでこんにゃくをプッシュしていたから、塙町はこんにゃく産地なのかと思ってたら、出ましたね生こんにゃく。エビチリとともにお酒が進む一品。

肝心のはなわ牛は陶板焼きとして提供されていた…そういうプランを選んだので。自分がもっと若くてエネルギッシュだったらステーキのプランを選んでたかもしれないなあ。黄昏の年代の悲しさよ。
はなわ牛の陶板焼き
パクッ…おお、うまいぞ。いい牛肉って本当に口の中でとろけるんだね。こいつはすげーや。しかもくどい感じが全然なくて旨味だけが充満している。ちなみに当館はベルファームという直営牧場を持っており、牛肉はベルファーム産でしょう。だからクオリティは間違いない。
ベルファームのミニのぼり
案の定、天ぷらや焼き魚まで進んだところでお腹が苦しくなった。おかずは完食したものの、ご飯は茶碗に盛られたうちの半分を残してしまった。どうもすいません(初代林家以下略)。

人当たりのよい朝食のポテサラ

朝食もなかなかの布陣である。でも昨夜の分はすっかり消化していたから胃もたれなしで万全。さあ来い。
常世温泉の朝食
ここに大きめの焼き鮭が追加された。それだけおかずがあればご飯が足りないんじゃないか・おかわり必須でしょと思われるのも当然だ。しかし個人的には十分な量だ。おかわりせずとも、この日はランチ抜きで行動したくらい。※おかずとお米を別々に食べても苦にしない…焼き鮭だけ・納豆だけ・梅干しだけを各単体でもいけちゃうタイプ。

もうひとつ加えるなら、個人的にポテサラを苦手とするにもかかわらず、ここのポテサラは不思議とすんなり受け入れられて、ふだんあり得ないスピードでぱくぱくいけた。味付けに秘密があるとか?…そんな大げさな話ではないだろうし、よくわかんないけどフレンドリーなポテサラだった。

 * * *

チェックアウトの際、女将さん(?)が「ここは静かでなにもないところでしょ」と謙遜されていたが、むしろそういう環境を求める人も世の中には一定数存在する。自分もそっち系かな。そのような平穏と休息の時間を求める方にはおすすめの温泉宿といえる。ツルツル温泉とはなわ牛と鳥の声に癒やされてください。


おまけ:棚倉城跡(亀ヶ城公園)へ行ってみた

チェックアウト後に隣の棚倉町にある棚倉城跡を訪れた。現在は亀ヶ城公園として整備されている。かつてのお掘がなかなか美しい。
棚倉城跡のお掘
お城の建物が残っているわけではない。こちらは本丸の跡。
棚倉城本丸跡
あと印象に残っているのが大ケヤキ。ゴツい感じと根元付近のコブコブが妙に目を引くのだ。説明板によると樹齢650年とか。
大ケヤキ
周辺は細い路地が入り組んでて、車で近づけそうで近づけない。初見殺し属性高めな点には注意が必要だ。