明るい共同浴場の熱めでフレッシュな湯 - 有福温泉 御前湯

有福温泉 御前湯
島根県の歴史ある温泉場のひとつが有福温泉。開湯から1300年以上だそうだから相当長い歴史を持つ。ということで知名度があり、街の雰囲気がいいとの評判も知っていたので興味はあったが、今回は日程的に難しいかなと思って計画から外していた。

しかし初日の湯めぐりを想定以上に前倒しで消化できたおかげで2日目に余裕ができた。…もしかして有福行けるんじゃね? 所要時間を見積もると無理なく訪れることができそうだった。だったら行くべきだ。はい決まり。

3軒ある共同浴場のうち、いろいろ調べて最も観光客向けと思われた御前湯を利用させてもらうことにした。大正ロマン風の建物と浴室で熱めのお湯を源泉かけ流し。

有福温泉・御前湯へのアクセス

バスを使うなら下調べは入念に

昨今のバス廃止・減便のトレンドもあって公共交通機関で行くのはなかなか厳しい。JR山陰本線江津駅もしくは浜田駅から有福温泉行きのバスが出ているようだが、いずれもぎりぎりの体制みたいで本数は少ない。事前の入念な下調べを要す。

自分はレンタカーだから融通が利く。2日目の朝、国民宿舎さんべ荘をチェックアウトして、最初に立ち寄る計画だった千原温泉は前日のうちにクリアずみだったため、三瓶山エリアをすぐに発つことができた。江津市方面へ向かう途中で石見銀山を見学した件については別記事にて。

石見銀山から有福温泉まで1時間弱だったかと。道がよくわからんのでカーナビに従い、基本は国道9号で、江津IC~江津西ICまで一区間だけ有料道路を使った。江津西ICからの下道は崖と川に挟まれたすれ違い困難な区間もある道路。ひいいいい。

有福温泉街のメインストリートも道幅は広くない。「この先駐車場あります」の立て札を信じておそるおそる進むと、共同浴場さつき湯の前に入浴客用の無料駐車場があった。こちらがさつき湯。
さつき湯
もっと先まで進むとさらに広い第2駐車場もある。

ノスタルジックな雰囲気の街歩きが楽しい

温泉街はコンパクトにまとまっていて、石段の入り組んだ立体構造が面白くも美しい。
石段の多い有福温泉街
どこを切り取っても絵になるなあ。
湯の町神楽殿と旅館群
小さな路地の雰囲気がたまりませんな。ムーディーなカフェなんかも見られ、街歩きやノスタルジー大好き民はハマるんじゃないかな。
有福温泉街の路地
ちなみにこちらは共同浴場やよい湯。ここの隣地が第2駐車場になっている。
やよい湯
御前湯は共同浴場の中では最も高い場所にあるし、大正ロマン風の外観だから目立っている。あえて路地をあっちへこっちへさまよいながら近づくのがなんだか楽しい。
神楽殿から見上げる御前湯

共同浴場ながら非日常感の楽しさもある御前湯

休憩室で往時を偲ぶ

では入館。内部は決して古いわけじゃないけどやっぱりどこか懐かしい雰囲気を醸し出している。入浴料400円を支払って中へ。
御前湯のエントランスホール
2階に休憩室あり。昔のご当地の写真がいくつも飾ってあった。往時のにぎわいが偲ばれる。
御前湯2階の休憩室
男湯女湯は1階。脱衣所では100円リターン式のコインロッカーを使うようになっていた気がする(あまり記憶に自信がない)。分析書はあったかどうか。少なくとも「アルカリ性単純温泉」というのをどこかで確認できた。源泉かけ流しではないかと思われる。

大正ロマンで明るい浴室

浴室も大正ロマンなデザイン。なんと言いますか西洋建築にありそうな形の大きめの窓や、白を基調とした壁・天井のおかげで、明るい雰囲気に満ちている。先客と入れ替わりだったのでいきなりの独占状態だ。やったぜ。

素朴な温泉場の共同浴場だから露天風呂とかサウナとか壺湯とかの仕掛けはない。シンプルに内湯浴槽がひとつだけだ。カランは6台で、そのうちシャワー付きが3箇所。シャンプー・ボディソープの類はあったはず。

浴室の中央に主役たる浴槽が配置されている。四角形の角をカットして八角形にしたような形をしており、8名は収容できるサイズ。浴槽の真ん中からにょきっと生えているミニタワーが湯口の役割を果たしている。ミニタワーから水平に突き出した3本のパイプを通じて無色透明のお湯が流し込まれているのだ。

浴槽内部の水色のタイルが大正ロマンな窓から差し込む柔らかい光に照らされて、まるでお湯が鮮やかな水色であるかのように映ってしまう。もちろん実際はなんの変哲もない無色透明なのだが。不思議なことにお湯がきらきら輝くように映えるんだよね。

熱くて鮮度抜群なお湯

さて浸かってみましょうか。うむ、熱い。適温の範疇とはいえ自分には熱かった。少なくとも長湯を楽しむような温度ではない。何度か出たり入ったりでクールダウン休憩をはさむ必要があるでしょう。

湯の花や泡付きといった特徴は見られず。肌触りの面ではツルスベ系の感触があった。また匂いにはほんのり硫黄系のタマゴ風味を感知した。温泉らしさはしっかりと感じられるし、なによりもお湯が新鮮だなという印象が強かった。フレッシュ! フレッシュ! フレッシュ!…夏の扉を開けちゃうぜ。

こういう温泉に入った後は当然ながら肌がやたらすべすべになる。熱めゆえあまり長くは滞在せず短めで切り上げたにもかかわらず、やっぱりすべすべ天国になった。やばいねこれは。

新鮮・輝く・明るい…思い起こせば当湯はポジティブな形容が似合う温泉だったんだなあ。まあ「有福」の「御前」なんだから、そりゃそうだよな。