関西最強の名はダテじゃない! 驚異のにごり湯 - 花山温泉

花山温泉
関西最強と謳われる温泉が和歌山市街にある。温泉マニアでない一般人ほど「そんな普通の街なかに最強の温泉があるの?!」と不思議に思ってしまうだろう。その手の温泉は気軽に行くことが難しい秘境にあるもんだとイメージするからね。

まあとにかく当の花山温泉にいつか行ってみたいという野望をずーっと持ち続けていた。今春の関西遠征の最大目的は若き時代を共に過ごした面々と旧交を温めることであったが、その前夜に花山温泉に宿泊して噂のお湯をたっぷり体験することを第2の目的に据えていた。

…すげえ。すげえよ。こんなの強烈過ぎますやん。いやあ、びっくりしたなあもう。これなら確かに最強と呼ばれますわ。

花山温泉へのアクセス

市街地だけどアドリブは非推奨

花山温泉は和歌山市街とはいえ駅からそんなに近いわけじゃない。JR和歌山駅からだと徒歩30分。和歌山電鐵に乗り換えて2つ目の日前宮駅で下車すると徒歩17分。和歌山駅から紀伊風土記の丘行きバスで秋月下車の場合だと10分弱ですむようだ。ただし朝夕のみの1時間に1本だからアドリブは危険。あるいは当宿から和歌山駅まで送迎サービスがあるようだから頼る手はある(要予約)。

自分は新大阪駅からレンタカーを利用し、まず奈良県五條市の金剛乃湯へ立ち寄り湯した。それから紀の川沿いを走って和歌山を目指すとしても、途中の九度山にちょっと寄り道しましょうかね。なにせ真田のアレだから。大河「真田丸」視聴勢として素通りするわけにはいかず。

時間の都合で真田ミュージアムに集中することにした。事前調査により駐車場はないとの情報を得て、近くの道の駅「柿の郷くどやま」に駐車させてもらい、現地まで5分ほど歩く。
道の駅柿の郷くどやま付近…丹生川と紀の川の合流

九度山の真田ミュージアムへ寄ったつもりが

たった今気づいた。訪れたのは真田ミュージアムじゃなかった。善名称院(真田庵)というお寺だった。しまったあああ!!! …まあいいや、善名称院は真田昌幸・幸村父子が住んでいた屋敷跡に建てられたらしいから、由緒的にはむしろオッケー。これは土砂堂。
善名称院 土砂堂
真田三代の昌幸・幸村・大助を祀った社がある。
真田地主大権現
さらに境内の真田宝物資料館では甲冑とか古文書とか真田紐とかを展示している。ここを真田ミュージアムと勘違いしていたわけだ。中はあまり広くなく、かつ無人。「これで“ミュージアム”なのだろうか」と当時から違和感はあったが…まさかの勘違いとは。
真田宝物資料館
九度山は高野山口エリアだから、いつか高野山をテーマにした旅でまた訪れる可能性はある。今日はこれぐらいにしといたるわ。あとは京奈和道→阪和道経由で和歌山ICを出れば花山温泉まで5分ほど。


我、念願の花山温泉に投宿す

やはりお客さんの姿は絶えず

人気施設でお客さんが絶えないんだろうという予想通り、駐車場はわりと埋まっていたけど、玄関に一番近い宿泊者専用区画が空いてたから、そこに止めた。駐車場脇にはご神木的なナニカが立っている。温泉の石灰華でできた石柱かしら。

では入館。玄関からフロント・ロビーにかけての雰囲気は日帰り温泉ぽい。お土産コーナーは2箇所に分かれている。紀州らしい梅入りカレーが面白そうだから買ってみた。
お土産コーナー
チェックインをすませて2階の宿泊区域へ(フロントも2階)。こんな感じで各部屋が並んでいる。
宿泊区域

石灰華柱が見える部屋

自分が入った部屋は6畳+広縁和室。一人で泊まるには十分だ。管理状態は良好である。布団は夕食中に敷いてくれる方式。
花山温泉 6畳客室
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり、ネットはフリーWiFiで。タオル・バスタオルはもちろん部屋に用意されているし、浴衣はフロント近くにサイズ別に積んである中から好きなのを持っていく。窓から見える景色はこんな感じ。
窓の外の景色
中庭と駐車場と先ほどの石灰華柱。その奥に高速道路の防音壁が見えるだろうか。あれは阪和道だ。温泉が先で阪和道が後にできたと思うが、道路工事が温泉湧出に深刻な影響を及ぼさなかったのは幸いですな。なお、車が走る音は気にならない。


これが関西最強の花山温泉だ!

良薬は口に苦し。超まずい飲泉

花山温泉の大浴場は2階。フロントからのびる通路を進むと、いきなり壁に透明なパイプが取り付けられた場所に出くわした。シュゴーシュゴーと音を立てながらパイプ内で源泉が噴き上がっている。元気いっぱいでよろしい。
源泉が噴き上がるパイプ
また飲泉所もあった。せっかくだから飲んでみるか。
飲泉所
まっずぅーーー!!! すっごくまずい。金属のやな感じが口いっぱいに広がり、後味が塩気というどうにもフォローしようのない味。食いしん坊ばんざいでいうところの「なんとも言えない味っすね…」だ。本来は水で薄めて飲むものらしい。

黄土色と千枚田の印象が強烈すぎる

脱衣所には鍵付きロッカーが並ぶ。自慢の最強温泉だけに壁にはいろいろと説明が張り出されている。分析書には「含二酸化炭素・鉄(II,III)-カルシウム・マグネシウム-塩化物泉、高張性、中性、低温泉」とあった。なるほど金属味と塩気がするわけだ。

純温泉協会から純温泉A認定されている加水・加温・循環・消毒なしのパーフェクト源泉かけ流し浴槽があるほか、加温した水を入れて温度調整しているだけの浴槽や、純温泉C認定されている加温のみの露天風呂があるようだ。

浴室の床は析出物で黄土色。一部は千枚田状態。もう浴室全体が黄土色だったかのように記憶が塗り潰されている。左側に12名分の洗い場、右側に水風呂と2つの普通の沸かし湯浴槽があるけど、あがり湯以外で入っている人をほとんど見かけない。そりゃあ花山温泉まで来てわざわざ狙って入らないよねえ。

そして出ました! 奥に噂の3兄弟。右に加温槽(その内部にぬる湯槽を含む)、左に源泉槽。いずれも浴槽の縁がもともとどうだったのかわからないくらい、黄土色の石灰華で覆われていた。お湯も濁った黄土色だし、あっちもこっちもえらいこっちゃ。

ベースキャンプ的な加温槽と絶妙温度のぬる湯槽

まず加温槽へ浸かってみた。6~7名までは普通に入れて、そこから先は「ちょっとすんません」的に加わるようなサイズ。温度は41.5℃と書かれている通りの適温。お湯は完全に黄土色に濁って浴槽の底まで、いや一寸先も見えない。湯の花と思しき細かい白い粒子が漂うのがなんとかわかる程度。泡付きは明らかでないけど、腕をさすると少しそれっぽい感触はある。

匂いは相当はっきりとした金気臭。ここまで強くアピールしてくるお湯は久しぶりだな。温度表記に比べて体感的にはもっとマイルドな温度のような気がするのは、炭酸その他の温泉成分のおかげか。ただし濃ゆい高張性温泉なだけに油断して長く粘ると危なそう。

加温槽の隅っこの一段高い場所に2名サイズ、詰めて3名のぬる湯槽がある。利用者が多いからうまくチャンスを狙っていこう。皆さん長時間居座ることなく(といっても10分はザラ)、適当に抜けてくれるのでノーチャンスってことはないはず。

ここは38℃と書いてある通り、体温に近い好みのゾーンでとても心地よい。いくらでも入っていられるぜ…※20分以内で交代しましょうという張り紙あり。個人的にはお気に入りの浴槽だ。もうちょっと広ければいいのにと思ってしまう。

冷たいが癖になる源泉槽

さて当湯の真髄であろう源泉槽へ行ってみましょうか。26℃と書いてあるから相応に覚悟を決めてかからないといけない。6名サイズの浴槽は奥の湯口が完全に石灰華ドーム状になっていて壮観なり。また湯口のパイプが洗い場近くまで延長されていて、確か「炭酸美容洗顔」とか書いてあったな。源泉で顔を洗えるのか。

では中へ…うっ冷たい。時間をかけてゆっくりと体を沈めていった。いったん全身浸かってしまえばあとはどうにかなる。見てると常連らしき方々は平気でざぶっと入るからすげーな。

うん、気分的なものかもしれないが、生源泉がばっちり肌に浸透してくる感じだ。慣れてくると爽快感もあるし、もうちょっとここにいようかなって気になる。指針によると加温層に10分→源泉槽に5分→…を繰り返すのがおすすめとのこと。

湯口とは別に浴槽中央付近の壁際には底(壁?)からぼこぼこと強く湧き出しているところがある。そこを狙って入る客が多かったな。自分はぼこぼこがあると落ち着かないため一番奥のお湯の動きが静かな場所専門で。

語らずにはいられない、湯の花最強形態

露天風呂もある。5名サイズで40℃。わりといつでも混んでいる。浴槽+歩行分のスペース+囲いなので庭があったり外の景色が見えたりするわけではない。露天風呂についての最大のエピソードは朝方のことだ。

花山温泉は朝8時から夜22時まで日帰り客を受け付けており、ずっと人の出入りは多いし人口密度高め。宿泊客だけになる夜22~23時と朝の6~8時がゆっくり入る狙い目だ。そこで朝6時に勇んで行った。空いててじっくり堪能できただけでなく、とんでもないものを見てしまった。

露天風呂に氷が張ってる?! いやまさか、なにこれ?! 厚さ数ミリのパリパリした白い膜状のものがお湯の上をすっかり覆っているではないか。ちょっと触ると簡単に割れる。割れた小片の群れはまるで流氷のようだ。

さらに細かく割っていくとボロボロに崩れて最後は小さな白い粒になった。ああなるほど、湯の花だ。深夜誰も入らない間に湯の花成分が凝集して巨大な1枚のマザー湯の花を形成したと思われる。こんなの初めて見たよ。おそるべし最強温泉。

ちなみにもう消失しかけていたが、ぬる湯槽にも流氷状のマザーの残骸が見られた。加温層はすでに粒状になった後で、源泉槽では見かけなかった。びっくりしたなあもう。

何度でも長湯したくなるクオリティ

結局夕方1回・夜2回・朝1回入った。濃ゆい温泉とはいえ、いったん大浴場へ出撃すれば40分~1時間は滞在してた。夕方の一発目なんて90分いたもんね。たいがいのお客さんも長く滞在する。

出る際にちょっと悩んだ。体に付いた温泉をシャワーなどで洗い流さない派だが、さすがにこの超濃ゆい黄土色源泉を付けたままにするかどうか…沸かし湯浴槽にさっと入ってから出ることにした。湯あがりはベトつかず汗も出ず、さっと乾いてさらっとした肌に。しばらく経つとてかてか・ハリのあるつや肌ぽく変化する。


和歌山の味、洗練された料理

夕食の完成度におじさん大満足

花山温泉の食事は朝夕とも1階の食事処で。夕食は17時半・18時・18時半から選べる。自分用のテーブル席にはすでにスターティングメンバーが配膳されていた。
花山温泉の夕食
若者向けがっつりというよりはシニアにも対応したお上品系。周囲の客層を見れば間違ってない。桜豆腐とかたけのことか牛山菜鍋とか春らしいメニューですな。ご飯は桜えびの釜飯だって。炊きあがりを考えて早めに着火してもらいました。

おほほほ、うまいうまい。花山温泉の源泉はまずいが料理はうまい。洗練された味っていうのかな、よくわからず適当に言ってるけど。途中で桜道明寺・イサキ柚庵焼・ホタルイカと菜の花の酢の物が追加され、完成した釜飯とあわせて後半まいりましょう、後半しゅっぱーつ(いかりや長介)。
花山温泉の夕食その2
量は多すぎず少なすぎずでちょうどいい。釜飯まで残さずしっかり完食した。

ミニバイキング付きの朝食

朝は7時半から。9時までにごちそうさまできる範囲で自由な時間に来ればいい。前夜と同じテーブル席に用意されていたのがこちら。
花山温泉の朝食
ミニバイキングのような感じでサラダ・青汁ジュース・金山寺味噌・生姜佃煮・温泉粥を取れる。卵焼きはライブキッチン風に熱々を作ってくれた。温めている鍋は湯豆腐だ。あと関西なのに納豆が出てくるのね。

金山寺味噌ってのは初めて。なんにでも合うそうだが、ご飯が進んでしまうやつだね。和歌山だから梅干しも気になっていて、食べてみたらさすが本場。はちみつ入りはいつも妙に甘くてパンチに欠けるなあと思っていたんだけど、こいつはマイルドでありながらぴりっと塩辛いパンチも効いていて、いいとこ取りな味で結構結構。最後にセルフのコーヒーで締めて終了。

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最強の呼び名の通り、いろいろとすごい温泉だった。濃ゆい温泉でありながらついつい長湯してしまうクオリティ。効能面のみならず五感で受け止める印象が強烈すぎる。これほどの温泉が市街地に湧いているのは驚きだし、百聞は一見にしかずで実際に入浴することができて大満足。貴重な体験となった。