黒川温泉といえば九州、いや全国でも屈指の人気温泉地。ハイグレードな宿が多くて敷居が高いイメージはあるけど実際どうなんでしょう。泊まれるものなら一度は泊まってみたいですな。という感じで現実には縁遠い存在かなと思っていたら、阿蘇へのグループ旅行で黒川温泉に泊まることになった。やったぜ。
選んだお宿「優彩」には、竹林に囲まれた和モダンお洒落な大浴場や、川を望む雰囲気の良い露天風呂など、いろんなお風呂があった。結果的に入らなかったけど自由に利用できる貸切風呂もある。風呂や客室に関しては温泉街全体と同様に雰囲気作りがうまいね。ビュッフェスタイルの食事は料理の選択肢が多くて飲み放題がうれしい。
黒川温泉・優彩への道
温泉街の中では車で通りやすい道沿い
旅の初日に阿蘇北側の外輪山に点在するいくつかの展望所で雄大な景色を楽しんだ我ら一行。今日はもう無理せず早めに投宿しましょう。北へ進路を取って南小国町を目指す。…あれ? なんか意識が…いつのまにか車内で爆睡しており、はっと気が付くと車は黒川温泉街の入口に来ていた。もう着いちゃったよ。
黒川温泉の主要な道は2本あるように見受けられる。1本は多くの観光客が散策する川沿いの細い道で、ある意味でメインストリート。ただし車の通行は不可能ではないがとても困難。もう1本は車が走るに十分な幅を持つアクセス用道路で、沿道には温泉旅館組合の施設「風の舎」と外来駐車場がある。優彩は後者の道路沿いだから行きやすい。
チェックイン開始時刻の前に到着したため、車のキーを預けて(あとで適切な位置に移動してくれた)、しばらく温泉街を散策することにした。旅館前にはいい感じの紅葉あり。
黒川温泉街の散策記
上述の風の舎から石段を下ってメインストリートへ出ると丸鈴橋がある。ここは道行く観光客がほぼ全員カメラを向ける撮影スポットだ。
うーん、情緒があっていいねー。さすが黒川温泉。左にちょろっと見えているのは共同浴場の穴湯だ。また、下を流れる田の原川は筑後川の最上流部だそうだ。そういう看板も設置されてた。へー知らんかったわ。
通りには旅館・土産店・飲食店が立ち並び、いずれも落ち着いた雰囲気を醸し出す佇まいに統一されているおかげで、変な俗っぽさがない。うまい演出だ。こりゃ人気を集めるわな。
日本秘湯を守る会の提灯を下げた旅館・新明館のところでUターンして戻った。メンバーの一人はかつてこの新明館へ立ち寄り入浴したことがあるそうだ。洞窟風呂があるとか。
帰り道の穴湯大杉なる場所には2本の巨木に加えていくつも傘が置かれていた。傘は夜になるとライトアップされて客の目を楽しませてくれる趣向になっている。こういうところにまで凝るとは、やるな。
優雅な雰囲気を感じられる宿
広々として気分の良いロビー
ではチェックイン。手続き待ちの間にロビーへ行ってみると、なんだか広々として雰囲気いいじゃないの。
隣接するラウンジスペースはスタイリッシュ&くまモン。これらは館内の4階に相当する。
情緒ある黒川温泉街を眺められる部屋
我々が案内された部屋は3階の12畳和室。広縁にあたるスペースがカウンター風になっているぞ。布団は夕食中に敷いてくれる方式。またウェルカムドリンクとして南阿蘇白川水源の名水ペットボトルが各自1本ずつ用意されていた。
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。タオルハンガーが見当たらないなと思ったら襖の陰にあった。風呂の後に飲みたくなるビールは1階大浴場前の湯あがり休憩処内の自販機で売っている。※そこの壁に貼ってあった人気宿ランキングのポスターでは優彩が結構上位に食い込んでた。
ビールは缶から直接でなくグラスに注いで飲みたい派だけど、部屋にグラスが見当たらず湯呑に入れて飲んだ。
窓の外は眼下に田の原川を望む景色。真正面よりも下流方向を見るアングルの方がわかりやすいだろう。くどいようだが温泉街全体の雰囲気づくりがうまいなあ。
ちなみに屋上には天文台がある。我々は結局行かずじまいだった。もしかしたら星空観察会とかやってるのかもしれない。
黒川の湯を湛えるマグニフィセント・セブン
ぬるめがうれしい湯滝の湯
優彩の大浴場は1階と地下1階に合わせて7箇所。貸切風呂は空いていれば自由に入れるが、自分はノーチャンスで体験できなかった。
- 湯滝の湯(1階、内湯、男女別、日帰りOK)
- 樹彩の湯(1階、露天、男女別、日帰りOK)
- 貸切風呂×2(1階、宿泊者専用)
- 竹林の湯(地下1階、内湯、男女入れ替え制、宿泊者専用)
- 双檜の湯(地下1階、内湯、男女入れ替え制、宿泊者専用)
- 渓流の湯(地下1階、露天、男女入れ替え制、宿泊者専用)
湯滝と樹彩は実際には同じ浴場の中の内湯エリアと露天エリアであった。黒川温泉の入湯手形があれば日帰り客も利用可能。脱衣所にはコインいらずの貴重品ロッカーがあったと思う。分析書は見当たらず。ネットで調べると「ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉、低張性、アルカリ性、高温泉」のようだね。源泉かけ流しだと思う。
客室にフェイスタオルを備え付けてあるほか、各脱衣所にも積んであってコンビニエント。浴室の洗い場は10名分。湯滝の湯は名前の通り、内湯浴槽の奥の壁をお湯が上から下へ垂直に伝って流れ込む仕掛けになっている。その壁の中央ではお地蔵さんが微笑んでいる。※下の写真は食事処の前にいた別のお地蔵さん。
浴槽は6名サイズ。お湯の見た目は無色透明で湯の花や泡付きは見られず。強烈な匂いはなくて、やさしいレベルの温泉臭がする。温度はややぬるめ。当館の他の湯船は適温~熱めだったので、ぬる湯派の自分としては重宝した。
眺望にすぐれた樹彩の湯
露天エリアの樹彩の湯は頭上が完全に屋根というか天井に覆われている。浴槽は向かい合わせを許容すれば10名いけるサイズ。こちらも湯口にお地蔵さん。お湯の特徴は湯滝と一緒で温度が若干上の適温。湯尻の縁の切り欠きから出ていく湯量がなかなかに多いのは、つまり湯口からの投入量が多いってことだろう。
こちらの売りは何といっても眺望でしょう。部屋から見えた感じの景色が風呂の中から楽しめるのだ。実際は立ち木が目隠し的にちょっと視界を遮るけどね。でも黒川温泉のあの風情は十分に味わえる。
チェックアウト前のラスト入浴で樹彩の湯へ行ったら、とてもいい雰囲気だった。朝日が差し込んで、湯面からもうもうと白い湯煙の立ち上る様子がはっきり見えた。いかにも映える光景だ。そして壁には湯面から反射した光が、波打つお湯に合わせてゆらゆらと踊っていた。おー幻想的じゃないか。いいものを見た。
広くてお洒落な竹林の湯
竹林の湯は洗い場が15名分で浴槽が広い。左右2つの区画に分かれており、右が30名・左が20名入れても不思議はなさそうだ。それぞれの区画の中央に湯口役の台柱がニョキッと生えていて、適温のお湯を吐き出している。台のてっぺんはプラスねじの頭を連想させた。
これだけ広いので客が多少集中したところで余裕ありまくり。しかも誰ひとりいないタイミングも珍しくなかった。なんという贅沢な空間。
浴室は和モダン風味。奥のガラス張りの外には竹林が広がっていてカッチョいい。夜とか早朝とかの、できれば外が暗い時間帯に行ってみてほしい。あえて室内の照明を抑え、竹林側をライトアップすることで、なんともシャレオツなムードになっているのだ。
双子の内湯+半露天風呂
双檜と渓流は同じ浴場内の内湯エリアと露天エリア。洗い場は8名分。双檜の湯はまさしく双子の檜風呂であった。5名サイズの檜風呂が2つ、隣り合ってなくて若干離れた場所に、それぞれ個室風の感じで用意されていたのだ。適温の範囲で両者の温度にちょっと差があった気がするけど、基本的にはもろもろ同じといえる。
渓流の湯は印象としては半露天の岩風呂かな。位置的に川が一番近くに見えるから渓流の湯なんだろうか。ただし夜中に行ったのではっきりとは見えず。お湯は今回体験した中では最も熱かった。
いやー、それにしても風呂の数が多い。貸切風呂を含めて1泊の滞在でコンプリートするのはなかなか大変だと思う。それぞれの浴槽が十分な広さを持ち、竹林の湯に至ってはかなり広い。これらすべてにケチらず源泉を投入しているんだから、湯量が相当豊富なんだと思われる。
豊富なメニューが並ぶビュッフェ
役者揃いの夕食はつい飲み食いしすぎてしまう
優彩の食事は朝夕とも3階のビュッフェ遊膳亭にて。宿の規模にふさわしい、とても広いレストランだ。夕食は希望時間を事前に聞いて調整するためか、空きテーブル探し難民や空席待ち行列は見られなかった。料理の前に大勢が群がって全然取れない、みたいなこともない。スムーズに確保できたのがこちら。
二巡目トライを見越して控えめに。やはり寿司・刺身は人気がありましたね。ローストビーフは熊本のあか牛だといいな。旅気分が盛り上がるんで、そういうことにしておこう。他のメンバーが取ってきた定番の着火鍋は豚肉と野菜。これを食べたら満腹で終わってしまいそうなので自分は避けた。
あと串焼き系はそういう専用の焼き物コーナーで提供されているし、天ぷらはライブキッチンで作ってくれる。もう記憶があやふやになっちゃったけど地元食材系もあったし、まあとにかく何でもあった。とても全部は試せないほどの種類。焼き芋なんかもあったけど、それでお腹をいっぱいにするわけはいかずパス。
ちなみにお酒を含む飲み物もセットになっている。つまりビール・日本酒・焼酎・ワインなどが飲み放題。やってくれますな。二巡目にもトライして、食べすぎた~というくらい食べて満腹・満足。
朝食でからし蓮根に挑戦
朝食は所定の時間内に自由に行ってよい。オープンと同時に行ってみたら結構多くの客が集まっていた。それでも苦労なくあっさりテーブルを確保して取ってきたのがこちら。
熊本といえばからし蓮根。名前だけは知っていて、もしかすると口にしたのが初めてかもしれない。お味は、うん、からしの付いた蓮根ですね。夕食と同様に上記は提供されてたメニューのごく一部にすぎない。
味噌汁のかわりにつみれ汁を、白米のかわりに自分でアレンジする薬膳粥にしてみた。でも白米+とろろも捨てがたくてご飯をおかわりしちゃった。自分には珍しいパターンだぞ。我にご飯を2杯食べさせるとは遊膳亭、侮りがたし。
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仮に一人旅だったら、はなからあきらめてスルーしていたであろう黒川温泉に泊まることができたのは、大変に喜ばしい。優彩はこちらの期待に十二分に応えてくれた。しつこいようだが空間の雰囲気づくりがうまい。さり気なくこのようなスペースがあったりするのだ。
お客さんの中にはアジア系・欧米系の方々も目立った。アフターコロちゃんで客足が戻ってきたのだろうか。黒川温泉はディスカバリージャパンみたいな良き風情が国内外問わず人を惹きつけるからね。それは当館にもあてはまる。