2大スターが魅せる、驚愕のクオリティ - 加賀井温泉 一陽館

加賀井温泉一陽館付近の風景
地獄の夏がようやく終わったと思ったら、秋がなくていきなり冬の入り口に立っていた。季節のめぐりがおかしい。夏の後半からしばらくの間、週末にレジャーの予定を入れられない事情が続き、ようやく自由に動けるようになったら、もう雪の心配をしなくちゃいけないとは…信州は年内ラストチャンスかもと焦りながら計画した一人旅の1湯目は、長野市にある加賀井温泉一陽館。

※車で行きたかったし、装備と技術の問題により雪は絶対NG。

古くからの湯治宿で現在は日帰り営業のみ。かなり個性的かつ濃ゆい温泉であり、見た目も浴感も強烈な印象を植え付ける。露天風呂はぬる湯と言っていい温度だから、好きな人はハマるでしょう。

加賀井温泉一陽館へのアクセス

碓氷峠を越える時の定番弁当

前述の事情の縛りから解放されて自由な週末が戻り、温泉活動の立て直し第1弾が栃木、第2弾が伊豆(泊まった大仙家は春先にも行っていて、かぶる内容が多いからブログとしては割愛します)、秋らしい気候はこの2回のみ。第3弾の今回はどうですかねー。紅葉が残っているといいな。

てなことを思いながら、真夏に戸倉上山田温泉へ行った時ひどい目にあった関越道の渋滞を避けるべく、朝早めに出発した。にもかかわらずやっぱり渋滞に巻き込まれた。あの時よりはずいぶんマシだったけど。

目論見よりは時間を要したものの大幅な遅延なく、10時台に上信越道の横川SAに着くことができた。東信へ行く/東信を通る旅行のとき横川で峠の釜めしを食べたくなるのはなぜかしら(高崎だるま弁当さん、すいません)。このために朝から飲まず食わずを貫いた。
峠の釜めし
しかし庶民価格のレンジを超えてるからなあ。たまの自分へのご褒美的なお弁当ですな。今どきは駅弁全般がそんな価格帯だよな。かといってコンビニのおにぎりやパンだと旅情がいまいちなんで悩ましいところ。

現地は高速ICから近くて便利

横川SAを出たらあとは長野ICまで一気に走る。加賀井温泉のナイスな点として、高速からのアクセスの良さがあげられる。長野ICから車で5分くらいなのだ。真田ゆかりの松代地区をイメージしてもらえればよい。当湯の近所には松代温泉を名乗る国民宿舎・松代荘もある。

ちなみに鉄道旅であれば、須坂駅・屋代駅からの路線バスが利用できるようだ。1~2時間に1本程度の運行だから時間をうまくあわせて何とかしましょう。松代温泉入口停留所から徒歩1kmちょい。


見た目も浴感もすぐれて特徴的な内湯

初訪問客への見学ツアー

当館の敷地内は撮影禁止である。露天風呂が混浴であることも関係しているっぽい。余計な疑惑の種を避けるため、スマホの電源を切ったうえでポケットの奥深くへしまった。冒頭写真は当館付近の景色を敷地外から撮影したものだ。まだ紅葉が残ってますね。

左右に分かれて立つ建物はどちらもかなりの歴史を感じさせる。まず左側の受付で入浴料500円を支払うと、初めて来たかどうかを尋ねられ、初めてだと若旦那(?)による当湯のレクチャーが始まる。ずっと昔から続く湯治用のお風呂で、本来の湯治客もいるので、その片隅をお借りするくらいのつもりでお願いしますとのこと。

源泉井戸も見せてくれた。なんか大量にぼこぼこ湧き出してるぞ。成分の濃さは随一というが、見るからにそんな感じであった。あとは内湯の入り方や露天風呂への移動の仕方などを教わった…詳しくは後ほど。なお、入浴時間は最大90分まででお願いします。

青っぽい、金気臭のするお湯

まずは内湯へ。すぐ目についた分析書には「含二酸化炭素・鉄(II)-ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、高張性、中性、温泉」とあった。当然のごとく源泉かけ流し。中に脱衣所はなく、男湯は浴室の右側の壁に沿って脱衣棚が据え付けられている。

浴室を見た瞬間に「おー、すげー」と声を上げそうになった。床は茶色い析出物によるド派手な千枚田状態。左側に奥へ向かって長くのびる浴槽があり(長さ7mって言ってたかな)、その縁も茶色い層ですっかりコーティングされていた。

浴室手前側の湯口から豊富に流し込まれた源泉は7m浴槽の一番奥の湯尻から排出されていく。洗い場がないため、客はまず湯尻でかけ湯をし、最初に湯尻から入るという決まりになっている。こなれてきたら、ぬるめの湯尻~熱めの湯口の間で好みを場所を探してどうぞ。※実際はそんなに大きな温度差はなかったと思う。

温度は概ね、のぼせにくい・ぬるめ寄りの適温だった。湯治のつもりでじっと浸かっているのにちょうどいい感じ。お湯の見た目は青みがかったささ濁りで、湯の花や泡付きは見られず。匂いには強い金気臭あり。

お湯の鮮度は最強クラス

浴槽は深く、体育座りすると口元までお湯が来そう。ちょっとお尻を浮かせるため、底に手をついた後に指先を見たら、オレンジ色の粉状のものが付着していた。こいつが析出物の元になるのだろうか。石灰華だか鉄だかわからんが。

投入量が豊富なので、湯口から湯尻へ向かう力強い流れをお湯の中で感じることができるほどだ。つまり湯の鮮度は最強。鈍りようがない。そのおかげか、とても心地よい印象だ。こいつは効くぜ。ぬる湯に分類される温度ではないものの、心地よさ+のぼせにくいことで、いつまでも入っていられる系のお湯だ。

最も奥の壁に洗面台とコップがある。飲泉できるのだろうか。ただし蛇口や水道管を含めて相当古びている。下手に触って「やらかし」事案が発生するとまずいから触らないでおいた。


内湯と異なるベクトルで秀逸な露天風呂

茶色く濁った温泉

露天風呂にも行ってみよう。レクチャーに従い、貴重品を手にして付属のサンダルを履き、裸のままタオルで隠すべきところを隠して外へ出て、内湯の建物の向こう側へ歩いていくと露天風呂があった。露天風呂は混浴であり、御婦人方も同じ移動方法なんだとすると、ちょっと厳しいかもね。

こちらにも脱衣棚があって貴重品はそこに置く(自分を含む衆人監視によるガード)。洗い場なし。露天風呂は手前と奥の2つの浴槽からなり、大きさは双方とも向かい合わせに2名×3組=6名サイズ。どちらも内湯と全く異なる茶色く濁ったお湯だった…内湯とは別源泉らしい。見るからに強烈に濃ゆい塩化物泉って感じ。そしてやっぱりド派手な千枚田ができている。

手前側浴槽の方が濁りが強くてぬるい。かなりぬるい。ぬる湯大好きおじさんにはたまりませんな。無限に入っていられるぞ。

時間を忘れるぬる湯

奥側浴槽は相対比較でやや濁りが弱く(といっても十分濁ってる)、かなりではないがぬるい。どちらの浴槽も同じ湯口からのお湯が2筋に分かれて投入されているから、温度の違いは奥側にだけ別のパイプからの投入があることによるものだろう。

手前も奥もぬる湯に分類されるレベル。あー、爽快だー。細かい観察とか、匂いを嗅ぐとか、すっかり忘れてただひたすらに浸かってしまった。やばいですねこれは。

しばらくすると内湯の浴感を再び体験したくなり、また内湯へ戻った。すでに1時間を過ぎている。加賀井温泉に入ると90分って長いようですぐだな。退出するのが惜しくなってしまうのであった。おそろしや。

 * * *

加賀井温泉のお湯のクオリティには脱帽せざるを得ないし、建物の外観や内部から漂うノスタルジックな湯治場の雰囲気は、自分のような者には旅情をかき立てる楽しい要素でもある。

青半濁の内湯と完全茶濁りの露天風呂という2つの源泉を贅沢にかけ流し、千枚田状態の床なども個性的。なんとも非凡な温泉だ。