大日岩が見守る栗駒の名泉は表情豊かな湯 - 須川高原温泉

須川高原温泉
一関を起点に金ケ崎~北上~西和賀~横手~東成瀬と周遊してきた旅路は再び一関へと戻ってきた。といっても秋田寄りに位置する栗駒国定公園内の須川高原だけど。今宵の宿が良質な硫黄泉で知られる須川高原温泉なのだ。須川は古くは酢川とも書かれていたそうだから、相当な酸性なんだろうね。

久しぶりの酸性硫黄泉に期待して入浴してみたところ、たしかにいいお湯だった。力強い湯力と激熱に試される小浴場、幅広いニーズをカバーするメインの大浴場、鮮やかな色が目に眩しい&ぬる湯チャンスがある巨大露天風呂、それぞれに個性的なお風呂が3つ。

泊まりで十分に温泉三昧したつもりでも、帰り際にはまだまだ入り足りないような気分だった。おそるべし。

須川高原温泉へのアクセス

東京方面から公共交通機関で行く場合、東北新幹線で一ノ関下車、そこから路線バスに乗る。往復とも1日2便。一般には行きが一ノ関駅14:30→須川高原温泉16:04、帰りが須川高原温泉11:10→一ノ関駅12:36の便を利用すると思われる。※必ず最新情報を確認されたし。

1時間半もかかるんだなあ。マイカーやレンタカーでバスと同じルートを走るのもよくあるパターンのようだが、なかなかの難路らしい。どうぞ気をつけて。

自分はレンタカーで北から東成瀬村を通ってアプローチしたので、走った距離はともかく、道路状況的にはあまり苦労せずにすんだ。それを見越して計画を組んだんだけどね。※このルートだと、SNSでバズった祭畤大橋の震災遺構を通らないので、見たい方は注意。

須川高原に着いたのが15時。当館のチェックイン開始は16時(バスに合わせたのかな)。この空白の1時間に近所の栗駒山荘へ立ち寄り入浴した。須川高原温泉からの引湯なので、基本的には同じ泉質ってことになる。当館チェックイン前の予行演習・フライングゲットみたいなもんだ。

入浴を終えて秋田県側にある栗駒山荘を出発すると、すぐに県境を越えて岩手県に入り、すぐに当湯に着いた。近っけえーーー! 車だとあっという間。徒歩でもすぐだぞ。


高原&地獄谷の雰囲気が漂う旅館

展望コーナーからの絶景

駐車場はとても広い。当館の建物も、いくつもの棟からなっており大規模に見える。冒頭写真の本館正面玄関の右側には売店と食堂が続いている。
外から見た売店と食堂の並び
まあとにかくチェックイン。こちらがロビーでございます。
ロビー
先ほどの売店の内部がこちら。結構広いスペースを割り当てられている。
売店
案内された部屋は雲海荘という棟の3階だった。売店手前を左折して奥へ進むとメイン大浴場がある。その向かいにあるエレベーターで3階へ。3階には展望コーナーができていた。南向きの景色が特徴的。
展望コーナーからの眺望
手前のプールは源泉貯湯槽であろうか。向こうに赤い鳥居、ドーム状にボコッと突き出た大日岩、栗駒の稜線…ほほう、これはこれは。

西向きの景色はあえて夕日の刻に撮ってみた。明日は雨らしいからこうした景色も今日が見納めだな。
沈む夕日

自然環境と不便さを楽しみたい

部屋は8畳和室で布団は夕食中に敷いてくれる方式。扇風機のみでエアコンないけど暑くはなかった。無問題。
須川高原温泉 雲海荘 8畳客室
シャワー付きではないトイレあり、洗面所あり。金庫あり、冷蔵庫なし。WiFiは客室だと弱いと書かれていたっけな。自分は携帯回線のみで対応。前日の夏油温泉と同じでアンテナは最大に立つも回線速度が出ないのか、画像の表示が遅い。

説明書きによれば、なかなか苦労の多いロケーションだ…水の確保が難しい・温泉のガス成分で設備や家電がすぐ傷む・修繕工事を引き受けてくれるところも少ない、など。そうだよなあ。あまり贅沢な要求をしちゃいかんね。窓の外の景色はこのような感じ。
窓から見える景色
上へ上へと伸びる別の棟が見える。手前の緑は一部紅葉しているな。秋が深まれば全体が見事に赤く染まるのだろうか。


なんかいろいろすごい、他に言葉が見つからない温泉

使い勝手が整えられたメイン大浴場

当館の浴場は3箇所。雲海荘へ行く際に前を通るメイン大浴場は朝8時で閉じる点に注意。朝食後チェックアウト前にゆっくり入ろうと思っても難しい。自分は夜と早朝に行った。泉質の「酸性-含鉄(II,III)・硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉、低張性、酸性、高温泉」は3箇所とも同じであろう。もちろん源泉かけ流し。

メイン大浴場は客室数の多い大規模宿相応の広さだし、実際に2回行ってみても他客は1~2名で全然混雑してなかった。浴室右手にカランが10台。左手には横一列に15名くらいが並んで入れそうな内湯浴槽がある。そこにあまり濁っていない透明寄りのお湯が投入されていた。やや緑色に見える。

酸性がピリピリくる適温のお湯はなんだかすごい効き目がありそう。なにせPH2.2だから、皮膚上でお肌のトラブルや体調に影響を与える悪い存在は強力な酸で一掃されたに違いない。善玉菌的な存在ごと殲滅した可能性はあるとしても、いったん全リセットからの再構築だと思えばいいよ。

露天風呂も付いている。岩風呂ではなくてどちらかと言えば木の風呂。浴槽は5名サイズでお湯はやや濁って見えたな。壁に囲まれていて基本的に眺望はないのだが、一箇所だけ窓がついていて、そこから大日岩を望むことができる。

君は激熱に耐えられるか?…霊泉小浴場

メイン大浴場のタイミングに合わせて行ってみたのが霊泉の呼び名を持つ小浴場。本館の2階にある。こちらは激熱との触れ込みだ。あつ湯が苦手なおじさんは怖いもの見たさでトライしてみたわけ。

浴室にはカランが1台と4名サイズの浴槽。パステルグリーンに見えるのはお湯の色じゃなくて浴槽の内壁や底の着色だろう。お湯じたいは透明寄り。熱いとわかっているからまず湯船からお湯をすくって慎重にかけ湯をする。うん、熱いね。大丈夫かなあ。

片足だけ突っ込んだところ、熱っちいーーー!! 早くも退散しそうになった。しかし前日の夏油温泉大湯の絶望的な熱さに比べたらまだ望みはありそうだ。大きな動きをしないように注意してゆっくり浸かっていったら何とかなった。20秒くらい入浴できた。はいクリア。

以上は夜の話。翌朝は熱さがまあまあ和らいでおり、容易に攻略できた。といっても2~3分も耐えられない。不思議なことに、ほんのちょっとしか入っていないのに、お肌の状態が入浴前後で明らかに違ってた。さすがは霊泉。ちなみに小浴場は朝9時まで利用可。

あまりに広い、あまりにきれいな色の巨大露天風呂

巨大露天風呂は明るいうちに入りたいと思い、夕方と翌朝チェックアウト前に利用した。いったん正面玄関から屋外へ出て(館内スリッパからサンダルに履き替える)、栗駒山荘方向へ歩いていくと、このような建物の前に出る。ここは栗駒山の須川コース登山口にもなっている。
大日岩を背にした露天風呂棟
建物内のコインロッカーは有料だった気が。そして手前に男湯、奥に女湯。脱衣所はそんなに大きくないが露天風呂はやたら大きい。9m×9mだって。縁に沿うだけでなく中央部も人間で埋めていけば50名はいけるだろう。

特筆すべきはお湯の色だった。すんごい鮮やかな緑。わざとらしいくらいのエメラルドグリーン。こちらから引湯している栗駒山荘のお湯は青みがかった乳白色だったのに、なにゆえこうまで輝く緑なの?

小浴槽のように内壁や底に着色している可能性もあるけど、ネットには青白とか透明に近かったという話も見られるから、やっぱりお湯の色であって、時期によって変化するのではないかな。

ぬる湯に変身することもある(称賛)

とにかくきれいな半濁の緑白色だった。きれいすぎてやばい。この色を見ただけでも来た価値があった。酸性ピリピリ、ぬるめの適温、弱いタマゴ臭、白い粒漂う湯の花、間近に見る大日岩、それらの特徴が霞んでしまったよ。

夕方はぬるめの適温。翌朝は雨が降り注いだせいもあるが、湯口付近以外はやけにぬるかった。ぬる湯の部類に入るくらいだ。個人的には望むところで、酸性泉にこんなに長く入ってて大丈夫かと思うくらい長湯してしまった。最強じゃん。

実はさらに第4のお風呂もありんす。おいらん風呂と呼ばれる天然の蒸し風呂で、登山道を5分ばかり登った先にあるらしい。自分は行かなかったためレポなし。興味があればお試しあれ。


なんかすごい温泉の後は食事でほっと一息

山の宿に求めるメニューを揃えた夕食。ブランド牛もあるよ

須川高原温泉の食事は朝夕とも本館1階の食堂で。部屋ごとに決まったテーブル席へ案内される。自分以外にも一人客が何組かいるようだった。いずれも周囲の視線を浴びる(ような気がする)中央付近を避けて隅っこに配置されるよう考えられている様子。
須川高原温泉の夕食
夕食はほぼ最初に一気出し。山の宿だから海産物は求めていない。山菜なんかがあるし、下手に多すぎないボリュームでいいのではないだろうか。鮎の塩焼きは頭から尻尾まで、骨ごとバリバリ食べられて、なぜか得した気分になっちゃった。

固形燃料で温めてるやつはたしか前沢牛って言ってた気がするぞ。とてつもないブランド牛ではないですか。はああー、ありがてえ、ありがてえ。人生最初で最後の体験でごぜえやす。テンション上がってお酒を2杯飲んでしまった。

締めのご飯と味噌汁まで完食して、お腹苦しくならない程度の満腹感でちょうどよかった。

定番系の朝食を一番乗りで

朝食も同じ場所で7時から利用可能。すっかりおっさん化が進んだ自分は早起きが苦にならなくなってしまい、どんどん朝の行動が早くなっていた。かつては朝食=8時のイメージで動いていたのに、今やなんの迷いもなく7時に食堂へ向かったら、一番乗りでした。
須川高原温泉の朝食
目を引く派手さはなくとも定番の安心感。朝はこういうのでいいんだよ。とか言いながらキラキラ系のメニューには舞い上がっちゃうんだけど…お好み海鮮丼とか…よそはよそ、うちはうち。温泉がキラキラ系なので十分でしょう。

ジュース・牛乳・お茶・水はセルフでお願いします。もしかしたらコーヒーもあったかもしれない。しっかり確認せず、食べ終わったらお茶を飲んで出てしまった。

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個性際立つ良質の温泉、緑多くて爽やかな高原のロケーション、湯治にも向きそうな落ち着いた雰囲気、庶民にも手の届くお値段、大変結構ですな。秋の紅葉シーズンなんかは最高の絶景が待ってそうだし。

ところでフロント付近にクラウドファンディングの案内があった。雪による落石で壊れてしまった温泉神社を再建するプロジェクトだった。微力ながら応援させていただきました。本当にいい温泉地なので今後も頑張っていただきたい。