ぬるくない、熱き想いで復活遂げた湯宿 - 温湯温泉 佐藤旅館

温湯温泉 佐藤旅館
宮城県北端の栗原市に栗駒五湯と呼ばれる温泉郷があった。2008年岩手・宮城内陸地震による打撃でいくつかは廃業してしまったものの、復活して営業を続けているところもある。温湯(ぬるゆ)温泉・佐藤旅館はそのひとつだ。休業を乗り越えて再開するまでには長い年月を要したようですね。

今回の旅の最終日が須川高原温泉からレンタカーで一ノ関駅へ戻るというものだったから、あえて最短ルートを取らず、栗原市側を回りつつ途中で佐藤旅館に立ち寄り湯する計画にした。

温湯温泉という名前だけどお湯はぬるくない(事前に調べて知っていた)。源泉かけ流しの食塩泉はさっぱりとしていて、強力な酸性硫黄泉である須川高原温泉の仕上げ湯・なおし湯としてちょうどよい。

温湯温泉「佐藤旅館」への道

最終日の朝は雨だった。今日は終日雨らしい。こんな日は内湯の温泉や屋内施設の見学が向いてるね。須川高原温泉をチェックアウトして秋田県湯沢市方面へ車を走らせると、まもなく須川湖が現れた。屋外だけどせっかくだから見ておこう。あー、やっぱり白く霞んじゃいますね。
雨の須川湖
雨に打たれながら粘ったところで仕方がないのですぐ出発。T字路にぶつかったら左折して栗原市方面へ。ちなみに右折すると小安峡や川原毛地獄につながる。

そこからの国道398号は山道だけど、対向車とすれ違える程度の幅はあるし、まあなんとかなります。宮城県に入る手前に栗駒神水なる水場があった。栗駒のおいしい水。
栗駒神水
宮城県に入ってしばらくすると栗駒五湯のひとつである湯浜温泉・三浦旅館の駐車場に遭遇した。駐車場から旅館まではちょっとしたトレッキング道を10分弱歩く必要がある。まさに秘湯ですな。時おり土砂降りのように降る今日の天気だと歩くのがつらそう。また今度。
湯浜温泉・三浦旅館へ続く道
温湯温泉の直前が激しいつづら折りの下り坂となっていたのが最大の難所だった。つづら折りが終わってすぐに分岐があり、脇道に入ればまもなく温湯温泉だ。最後の狭い道に注意。対向車が来るとつらい。


雨の佐藤旅館でひとり仕上がる

本格的な源泉かけ流し

宿の前が駐車スペースになっており、他に第2・第3駐車場もあった。当時は全然混んでなくて一番近いところに止められた。入館してフロントでお支払い。500円。レトロな雰囲気の残る旅館で、売店コーナーは古い駄菓子屋と雑貨屋と掘り出し物市を合わせたような風情だ。
売店コーナー
ご主人(?)が大浴場まで案内してくれた。廊下には佐藤旅館再開への長い苦難の道のりを紹介するストーリーが掲示されている。不屈のスピリットと多くの人の支援あってこその復活と読んだ。
再開に至るストーリー
大浴場の前には鍵付きのロッカーが設置されている。男湯の脱衣所はどうやら2部屋に分かれているようだった。もともと男女別だった内湯をひとつに統合して新たな男湯にしたパターンだろう。で、女湯は別に新設したんだな。

分析書には「ナトリウム-塩化物泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒いずれもなしの源泉かけ流し(清掃時のみ消毒剤を使用)。すばらしい。

万人向きのお湯を湛えるニコイチ風呂

浴室に入ると…ほうら、やっぱり…いかにも2つの浴室の仕切りを取っ払って大きな浴室にしましたというつくり。洗い場は2名分×2箇所=計4名分。2つの浴槽がくっついてひとつになったと言うべきか、大きな浴槽が軽く仕切られて2区画になっていると言うべきか、まあそんな感じの内湯浴槽が奥にデーンと構えている。

浴槽の手前には腰掛けるのにちょうどよさそうな石が2つ並び、析出物がこびりついて白くなっている様子だった。浴槽の奥の壁際は石が積まれていて岩風呂のような雰囲気になっている。左右どちらの区画にも湯口が付いており、一方は岩から流れ込む形、もう一方は突き出したパイプから流れ込んでいる形だったかなあ、たしか…記憶があいまい。

まず向かって左側の5~6名サイズの区画に入ってみた。適温。ぬるくはない。お湯は清澄な無色透明でたまに湯の花らしき白っぽいものを見かける。泡付きなし。特に強い匂いもしない。尖った個性やくどさのない万人向きの泉質である。塩化物泉だから温まりがよく、適温の印象以上に体がぽかぽかしてくる。ふぃー。

いつまでもポカポカ、すっきりさっぱり

右の区画も5~6名サイズで同様のお湯だ。温度に違いがあるわけでもない。窓から近い/遠いの違いにより、明るい/暗い印象の差があって、陽と陰みたいな対比になっていた。強いて言えばね。

さっぱりした浴感はなかなか結構だ。体がしゃきっとしそう。先客が早い段階で出て行って独占となったので、左右区画を行き来しながら広い湯船でのんびりさせてもらいました。温まりのよさは入浴後にも現れた。脱衣所でクールダウンに努めるも、汗が全然引かない。夏だからというだけではない温泉効果だろう。

旅の最後の仕上げ湯ですっきりさっぱりして、雨の佐藤旅館を後にした。


おまけ:栗原から一関への帰りで観光

夏でもヒンヤリ、細倉マインパーク

入浴後は国道398号を南下。途中に制限速度30kmでめちゃくちゃ狭隘な区間があった。しかもちょうどダンプとすれ違うことになったのはいい思い出。その先は普通の片側1車線道路になるも、ゲリラ豪雨に巻き込まれて滝のような雨の中を走る羽目に。前がろくに見えないよー。

怒涛の展開を乗り越えて着きました、細倉マインパーク。かつての鉱山跡につくられたテーマパークだ。
細倉マインパーク
見どころはいろいろあるようだけど雨だし、時間の都合もあるから坑道見学に絞ろう。500円。では入ります。
坑道入口
入った瞬間から寒くなった。年間通じて14℃に保たれている坑道内には操業当時を再現する人形や模型などが展示されている。
坑内の展示
もっと生の壁むき出しみたいな箇所もある。
坑道そのままの場所
しっかり見て歩くと30~40分。思ってたより本格的だしボリュームあったな。雨の日・夏の暑い日にちょうどいいスポットだ。

特殊な建て方の達谷窟毘沙門堂

一関市に戻ってきたらまだ時間に余裕があったため、過去の平泉観光で見逃した達谷窟毘沙門堂へ。拝観料500円。雨が弱いうちにさくっと見てしまおう。
達谷窟毘沙門堂
岩壁に食い込むように建てられたお堂が目を引く。中を見学することもできる(撮影禁止)。他に、岩壁に掘られた巨大な岩面大仏というのもあった。わかりますかね。
岩面大仏
達谷窟毘沙門堂は征夷大将軍・坂上田村麻呂が蝦夷討伐を記念して建てたという由緒。この蝦夷側を率いたリーダーはアテルイじゃないかな。もしそうなら…初日の永岡温泉とつながった! すべては輪のようにつながって繰り返すのだ!(悟りの境地)…じゃあこの温泉旅も2周目に入らせていただきます、ってわけにはいかないのよね。