秋田・岩手・宮城3県にまたがる栗駒山の須川高原に湧く、すばらしい温泉を体験できる宿のひとつが栗駒山荘だ。住所としては秋田県になる。お風呂の口コミを読むと、眺望と泉質が高いレベルで両立していると好評を得ている。あー行ってみたいね。しかし一人旅だと泊めてもらうのはなかなか難しいようだ。
一方、岩手県側には須川高原温泉という旅館があり、今回はそちらに泊まることになっていた。現地に着いたらチェックイン開始時刻まで1時間くらい余裕があったので、このチャンスを活かせとばかりに栗駒山荘へ立ち寄り入浴させてもらうことにしたのだ(ついでみたいな物言いですいません)。本当に眺望と泉質にすぐれたお風呂で、行ってみて正解。
須川温泉「栗駒山荘」への道
大人も楽しめる増田まんが美術館
巣郷温泉を出た後は横手市の雄平フルーツラインという道路を走って「横手市増田まんが美術館」を目指す。しかしなぜかカーナビが国道13号を通るようにしつこく誘導してきて、ついに屈してしまった。フルーツラインをそのまま進むのが一番近かったと思うんだけど。
増田まんが美術館は常設展のみなら見学無料。当時やっていたエヴァンゲリオン企画展(1000円)をパスして常設展に絞ったが…地域経済に貢献しなくてすいません…常設展だけでも十分すぎるボリュームだった。いろんな作家の原画がこれでもかと展示されている。最終地点は読み放題のコミックライブラリーになっていて、いくらでも時間を費やせそう。ちなみに館内は撮影禁止。
成瀬ダムの自動化工事に驚く
いかんいかん、メインの温泉めぐりに意識を戻そう。適度に切り上げて国道342号で須川高原へゴー。山道とはいえ片側1車線が確保された、よく整備された道路だから大丈夫。途中には建設中の成瀬ダムを見学できる展望台が2箇所あった。下流側の展望台からの眺めはこうなる。
これは重力式?…よくわからんが台形CSGという型式らしい。工事が自動で行われているという解説があって驚いた。なんかすげーな。AI時代極まれり(違う)。
数km先の上流展望台だとダムそのものはちょっと遠くて見えにくくなる。
はい、寄り道はここまで。あとは須川高原へ直行。だんだん上り勾配がきつくなる中を頑張って運転していると、T字路にぶつかり、左折したらすぐに当館が現れた。宿泊先の須川高原温泉も近い。
うーむ、まだ15時か。須川高原温泉はチェックインが16時からなんだよな。早めに入れてもらえる可能性はあれど、この1時間を使って栗駒山荘に立ち寄り入浴する手もあるよな。以前から関心を持ってた栗駒山荘のお風呂を体験する、またとないチャンスなのでは?…と考えて寄ってみることにしたのである。
これが夢の栗駒山荘だ
モダン秘湯の安心感
栗駒山荘はモダン秘湯といった風情で正面顔はカッチョいい。鄙びすぎず俗っぽすぎず、こういう雰囲気であれば誰に対しても安心感を与えるだろう。入ると右手がお土産売店、左手がフロントで、日帰り客向けの券売機が設置されている。800円。
※須川高原温泉の宿泊客は栗駒山荘の無料入浴券をもらえるらしい(その逆もまた可)。後で気付いた。しまったあああーーー! 情弱おじさん涙目。
フロントのちょっと奥には絵や写真や何かの像の展示あり。
ここを左へ進むと100円リターン式のロッカーが並んでいる場所がある。あと休憩室もあったけど有料であった。さらに奥へ進んだ先が大浴場。手前が男湯だったかと思う。日や時間による男女の入れ替えは不明、直感で言えば入れ替えなしの気がする。
ピリピリくる酸性の湯
脱衣所や浴室は木の湯小屋風情を醸し出す一方でモダンな清潔感もあり、なかなかいい感じだ。掲示された分析書には「酸性-含鉄(II)・硫黄-ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉(硫化水素型)」とあった。成分豊富な酸性硫黄泉、期待が高まるね。ちなみにPH2.2。
浴室に洗い場は13名分。埋まることはなさそうに見えた。内湯浴槽は、その気になれば向かい合わせを許容できるくらいの奥行きがあり、そこまでしなくても横並びに15名くらいは入れそうな収容力十分のサイズ。真ん中に設定された湯口から、サイズに見合った量のお湯が投入されている。
やっほーい、と浸かってみたらいきなりピリピリとした刺激を感じた。あー、酸性泉だもんな、そりゃそうだ。
白濁硫黄泉の王道
お湯は乳白色、あえて言うなら青みがかった白い濁り湯だ。白濁硫黄泉の王道ですな。浴槽の半分くらいの深さまでは見通せるが、半分から先は濁って見えない。そして同類の泉質によくあるように白い粒々の湯の花がいっぱい漂っている。匂いも想定通りにタマゴ臭だった。とはいえ強烈な腐卵臭まではいかない。おとなしい方かと。
温度は適温。熱め寄りなのか泉質のためなのか残暑の季節だからなのか、浸かっているとすぐにジワーっと熱気が襲いかかってくるので長湯はできない。浴槽の脇に設置されてるベンチ状の休憩椅子でクールダウンしながらの入浴となる。
浴室の奥が全面ガラス張りになっているおかげで露天風呂から見えるのと同様の眺望を内湯からでも楽しめるのはグッド。
露天風呂ならではの魅力をこれでもかと放つ
では露天風呂へ行ってみましょうか。こちらも内湯と同じくらいのサイズで横並びに15名いける。お湯の特徴や温度は内湯と同じ。露天の開放感+窓を通さず直接に眺望を楽しめるのが売りかな。こういう趣向が好きな人にはたまらないだろう。自分は内湯と露天を交互に行き来したけど、ずっと露天一筋の客もいたし。
露天風呂で見る景色のすばらしさをどう表現したら良いか。風呂内で撮影するわけにはいかないので、入館前に当館の右手に広がる景色を撮影してみたのだが、これとも違うんだよな。
山とブナ原生林が広がる大パノラマ、って言葉だけでは十分でない。百聞は一見にしかず、現地で見てください、としか言いようがない。当時は全く意識してなかった点として、遠くに鳥海山が見えるらしいね。そういう知識を予習して臨めばよかったな。
宿泊のお客さんがうらやましい
せっかくよくできた露天風呂にもかかわらず、直接差してくる西日が結構きつい。熱く感じるお湯との合わせ技でなかなか長く粘ることができなかったのは我が不徳の致すところであります。内湯と露天を行き来しつつ40分くらい経過したところで出た。久しぶりの酸性硫黄泉でお肌の大掃除完了。
最後に付け加えると、露天風呂にアブ・ブヨはまったくいなかった。あと想像で言うなら、夜は星がすごくよく見えるんじゃないかと思った。宿泊客がうらやましいですね。