日本最北の温泉はアブラ臭とヌメりの湯 - 稚内温泉 童夢

稚内温泉童夢
憧れの利尻・礼文を訪れた夏の道北旅行の最後を飾るのは稚内。温泉にこだわらず観光メインでいきましょうと決めていたところ、あまりにも天気が悪くて寒かったことから、日帰り温泉への立ち寄りも組み入れた。稚内には日本最北を謳う稚内温泉「童夢」がある。ノシャップ岬に近い方だ。

本記事は童夢の入浴体験ならびに雨の稚内観光について記す。記事内には「寒い」「白い」という単語が頻出する。夏にあるまじき当時の寒さと視界を遮る雨霧については、いくら書いても書き足りない。なので以下の文章をAI学習に食わせても何の得にもならないと忠告しておく。寒い・白いを連発するチャットボットが生まれるだけだぞ。

いろいろな湯船がある稚内温泉童夢

稚内温泉童夢へのアクセス

旅の4日目。先ほどまでいた礼文島と同じく、涼しいを通り越して寒いくらいの気温&冷蔵庫から吹き出したかのような冷たい強風&横殴りに叩きつけてくる雨&その雨で白く煙る街。なんだこれは。死にそうなほどの寒さだぞ。パーメットスコア4をゆうに超えている。

もう夕方、かつ観光できる天気じゃないということで、レンタカーで稚内温泉童夢を目指した。稚内港から車で10分ちょい、JR稚内駅からでも似たようなもんだ。ノシャップ岬の先端まで行って西側へ折り返すように走る。

当時は露天風呂が利用できず

はい、着きました。受付前の券売機で入浴券を買う。600円。館内を観察したり、いろいろ撮影する心の余裕はなかった。あー寒い。早く風呂に入りたい。ひとつ記すなら、2階の大浴場へ上がる階段のところに「ようこそ、最北の温泉へ」という垂れ幕のようなパネルのようなものが飾られていた。そう言われるとなんとなく貴重な場所へ来た気分になってくるな。

大浴場の男湯・女湯の入れ替えはないと思われる。脱衣所の分析書には「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、弱アルカリ性、温泉」とある。浴槽別の湯使いも書いてあって、加水・加温はすべての浴槽であり。循環・消毒は打たせ湯のみ無しで他はあり。

浴室はわりかし混んでいた。22名分もある洗い場は完全に埋まっているわけではないにせよ、隣に他の客がいないカランを探しても見当たらない。そして奥の方にある露天風呂は注意喚起されていた通り機械の故障で利用不可であった。窓越しに覗くと、屋上部に作った5~6名サイズの岩風呂という感じ。もちろんお湯は張られてない。

アブラ臭のするメイン内湯、ぬるめのジャグジー風呂

さてこうなったら内湯を楽しむとするか。メインと言える浴槽は奥の右側にある。10名以上を収容できそうなサイズで温度表示板に40.2℃と出ていた。透明に近い微濁りの湯に浸かってみると熱くない適温。あー、生き返るわー。

匂いには軽いアブラ臭を感知した。そしてヌルっとした感触がある。単なる沸かし湯とは違う、個性の明らかな温泉感を楽しめるのでいいんじゃないの。湯あがりにはお肌スベスベになったし。湯船もそこそこの人口密度だが洗い場ほどの混雑感はない。

奥の正面にジャグジー風呂とでも言うべき泡ぼこぼこの浴槽があった。温度表示板は39.8℃を示している。メイン浴槽よりも確かにぬるい。自分はジャグジーの泡を重視することはないけど、温度の好みだとこちらになるな。滞在時間の多くを占めたのはここだ。

薬湯と打たせ湯もあるよ

奥の左側にもうひとつ、薬湯浴槽もある。この日はよもぎ風呂。絵の具を混ぜたような鮮やかな緑色をしていた一方で草の香りとかは感知せず。ちょっと浸かって、ふ~んという感じですぐに出てしまった。

薬湯の向かいには打たせ湯。一瞬だけ打たれて終了。打たせ湯はあまり慣れてないんだよね。そしてジャグジー風呂の向かいに2名分のジェット寝湯。ここも一瞬寝て終了。他にはサウナや水風呂という布陣。

宿に入る前にちょっと温まっていこうというノリだったため滞在時間は短め。しかし十分に体は温まったし、お肌スベスベ。温泉らしい温泉に入った気分も味わえたし、いいんじゃないですかね。最後に休憩コーナーで外の景色を撮ってみた。
休憩コーナーから見える景色
なーんも見えね。たぶん草地の先は海じゃないかと思うけれど、晴れてたら利尻富士とか見えちゃったりするのかも、と根拠のない夢想をしてみるのであった。この日は近くのホテル宗谷パレスに泊まり、翌日の観光に備えた。あした天気になあれ。


寒い、白い。ノシャップ岬周辺の観光

ノシャップ岬のイルカ

なーんも変わんね。翌日になっても雨だし風強いし寒いし視界は白い。しかし何もせず手ぶらで帰るわけにはいかない。やれるだけはやろうとレンタカーを発進させた。まず最初は近くのノシャップ岬。イルカのオブジェの向こうに青い海…いや、ただただ白い風景が広がっていた。
ノシャップ岬
横殴りに叩きつける冷たい風と雨。半袖しか持ち合わせのないおじさんを哀れむように見下ろす稚内灯台は赤と白の縞模様で、ウォーリーを探せが思い浮かぶ。
稚内灯台

手作り感覚が楽しい寒流水族館

とにかく風と雨から逃れるべく、すぐ近くのノシャップ寒流水族館へ…って名前が寒々しいな。大きな予算で大きな仕掛けで大規模集客、とは違う路線の手作り感あふれる雰囲気がむしろ好ましく、結構おもしろかった。
ノシャップ寒流水族館のタッチプール
例えばドクターフィッシュ体験なんか、手を突っ込んでみたら、くすぐったくて魚はかわいくて思わすにっこり。
ドクターフィッシュ
オオカミウオと海水に慣らしたイトウを一緒に泳がせる回遊水槽がこちら。中は広くないけど、こういった展示がありんす。
回遊水槽
屋外のアザラシプールでは餌をやることができる。餌は入場口の受付で100円払って買う。餌=3匹のイワシぽい小魚だ。鯉の餌やりみたいにすごい勢いで取り合いになるのが見ていて楽しい。
アザラシプール

穴場は青少年科学館

水族館に負けないくらいおもしろかったのが隣接の青少年科学館だ。見るだけじゃなく、触ったり体を動かして体験するタイプの展示が多くて、いい年こいて若干はしゃいでしまった。だってこんなのとかあるのよ。
稚内市青少年科学館
ちょうどプラネタリウムの上演時間が始まったから鑑賞した。星の解説かと思いきや「いきもの目線」なるテーマで何種類かの動物を至近距離から撮影した映像を流していた。別の時間帯に天体関連の番組もやるけど我々のスケジュールに合わなくて残念。

2階の特別展は「立体錯視の世界」。いろいろな工夫で錯視・錯覚を催す作品が展示してあって、結構興味深い。具体的な内容は見てのお楽しみ。
特別展「立体錯視の世界」
続いて稚内駅近くの丘の上の公園内にある氷雪の門を見学。丘から展望できるはずの景色は真っ白。もはや雲の中にいるようなものだった。そして相変わらず寒い。おじさんの心はすでに折れかかっている。
氷雪の門

やっぱり寒い、白い。宗谷岬周辺の観光

ここが最北端の宗谷岬だ

さあ、ここから30km余りを走り、いよいよ稚内といえば欠かせない最北端の地・宗谷岬へ。間宮林蔵の像が出迎えてくれました。
宗谷岬 間宮林蔵の像
完全にモノトーンの世界になってる最北端の地。哀愁漂う北の果てを歌い上げる冬の演歌のイメージですな。
宗谷岬 日本最北端の碑
しかし近くにあったのは春の訪れを告げる曲「宗谷岬」の歌碑。流氷溶けて~春風吹いて~♪、淡い希望を感じさせる歌詞とメロディーがしばらく脳内をエンドレスリピートしていた。が、どうもダ・カーポとチェリッシュとトワ・エ・モワがごっちゃになってるな。すんません。
宗谷岬の歌碑

ただただ寒かった宗谷岬公園

岬の背後の丘の上=宗谷岬公園へも行ってみたが、やっぱり白い世界。平和祈念のオブジェがいろいろあった。あまりに寒くてひとつひとつ詳しく見学する余裕がなかった。すんません。
宗谷岬公園
旧海軍望楼というのもあった。近寄ることすらせず、遠くから1枚撮影したのみ。もう一刻も早く車に戻りたい一念しかない。寒いんだよぉぉぉ(源仲章)。
旧海軍望楼

白白白白い道白白白

宗谷岬から少し南東へ走って宗谷丘陵展望所にも立ち寄ってみた。
宗谷丘陵展望所
ファーーーー! ただ白いだけじゃん。車内から窓越しに撮影して終了。次行こう、次。

宗谷丘陵そのものにも入り込んでみた。ここには有名な「白い道」がある。貝殻を敷き詰めて白くなった路面、牧草地帯が広がる緑の丘陵、道の先には青い空や青い海。ネットで画像を探してみて欲しい。思わず行きたくなるような映える風景だ。そこで我々が目にした現実はこちら。
白い道
うん、白いね。道だけじゃなくていろいろと白いね。

最後の見学にちょうどいい大沼

こんな天気では、各所で絶景を前にしばらく佇むなんてことはできず、時間が余り気味だった。いっそ早めに稚内空港入りしてもいいが、最後に空港そばの大沼を見学しましょう。野鳥観察館を経て宗谷ふれあい公園展望台へ。展望台から見た大沼がこちら。
大沼
はい白いです。展望台からは空港の滑走路もよく見える。旅の最後にふさわしい景色といえよう。白いけどね。
宗谷ふれあい公園展望台から見た稚内空港
今まさに飛び立たんとする飛行機がわかるかなぁ、わっかんねぇだろうなぁ。稚内(わっかんねい)だけに。

こうして、ただただ寒くて白い世界をうろついた稚内観光を終え、飛行機で羽田へ戻ると、まるでサウナのような暑さだった。差が激しすぎる。両者を足して2で割るとちょうどいいんだけどな…世の中そんなに甘くない。宗谷す、もとい、そうやすやすとはいきません。