夏の道北ツアーに来ていたおじさんグループ。利尻・礼文とくれば稚内も観光したいよなあ、というわけで稚内でも1泊する計画を立てていた。
正直なところ最初は稚内に温泉宿があるのかどうか知らなかった。少し南の豊富に石油みたいな温泉があるのは知ってたけど、移動に時間をかける余裕はなく、その強い個性に難色を示すメンバーもいる中で無理強いはできない。あらためて稚内の範囲で探してみた。
ありました、日本最北を名乗る稚内温泉が(※富士見温泉の名称を使う施設もある)。宗谷パレスはなかなか面白みのある温泉を楽しめる上に、お値段以上どころではない海鮮を味わえてしまう、とても頼もしい宿だった。
富士見温泉「宗谷パレス」への道
旅の4日目の夕方。礼文島からのフェリーで稚内に着いた一行。雨はあがってるかな? 寒さは少し緩んでるかな? との期待も虚しく礼文島とさして変わらない寒さ+強風+雨だった。夏じゃなくて冬だよこれ。寒いんだよぉぉぉ!(源仲章)
さっそく1泊2日でレンタカーを借りて有名な稚内港北防波堤ドームを見学する。ほほう、ロマネスクな感じですね(適当)。
防波堤ドームといえども冷たい風は防ぎ切れなかった。あー寒い。撮影後はゆっくりぶらつく気持ちの余裕もなく速攻で車に戻りました。
それからノシャップ岬をぐるっと回り込んで日帰り温泉「童夢」に入浴して一息ついた。宗谷パレスは童夢からいくらも離れていない目と鼻の先である。湯あがりのホカホカが体に残っているうちに宗谷パレスへ移動できた。寒いのはもう勘弁。
リーズナブルなホテルで感じた気遣い
ではチェックイン。もともとセンポス=船員保険会の宿だったみたいで、老舗や高級旅館のような雰囲気ではないが必要なものはだいたい揃っているし、管理も行き届いており特に不都合はない。ロビー・食堂・大浴場への階段を視野に収めるとこうなる。
案内されたのは1階の12.5畳和室。布団は最初から敷いてあるとチェックイン時に聞いたような気がするが、実際は夕食中に敷いてくれた。
シャワートイレ・洗面台あり。金庫なし、空の冷蔵庫あり。ピカピカに新しいわけではなくとも普通に快適に過ごせた。WiFiはあったはず。ただしノートPCをよく使うメンバーが「つながりにくい」と言ってロビーへ出撃していたからちょっと弱いのかな。
窓は開かず。雨と風がひどくて開けようと頑張る気も起こらず。いつも客室から見える外の景色を写す1枚はガラス越しに無理やり撮影した。今回は雑でいいよもう。
ひとつ付け加えるなら、夕食後にご主人が「使うでしょ」と、水とたくさんの氷を持ってきてくれた。部屋で焼酎やウイスキーの水割り・ロックを作って酒盛りする一同に見えたのだろうか。実際にそんな飲み会はしなかったけど細かい気遣いに感心した…せっかくだから風呂あがりに缶チューハイを買って氷を入れて飲みました。
個性があってなかなか良き温泉
最上階の大浴場
夕方に童夢で入浴したことや到着が遅かったこともあり、先に夕食をいただいてからお風呂に入った。大浴場は3階にあって、エレベーターはないので階段での移動となる。3階に着くと大浴場の他に自販機、休憩コーナー、屋上らしきスペースがあった。客室もありそう。
男湯の脱衣所はそれほど広くない。掲示された分析書には「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、弱アルカリ性、低張性、温泉」と書かれていた。加水・加温・循環・消毒すべてあり。しかし入ってみた印象では温泉の個性はしっかり残っている。
はっきりわかるアブラ臭
浴室に入るなりムワッとアブラ臭が鼻をついた。わーお。いきなりやるじゃん。洗い場は6名分。露天風呂やサウナはなく4~5名サイズの内湯浴槽がひとつのみ。カエルが鎮座する湯口からクリアな緑がかったお湯が投入されている。浴槽内壁の白いタイルがお湯を通して見ると緑になるから緑色の温泉でしょう。
どこかに41℃の記述があったと記憶するお湯に浸かってみると、確かにぬるくはないものの数字ほどの熱さも感じない。思ったよりは長く入っていられる。利尻島の後半からここまで2日間、冬のような寒さと強風と横殴りの雨が続いて心身ともにまいっていた。いやー、ホッとするわー。
湯の花や泡付きはなく匂いはやっぱり鉱物系アブラ臭。原油試掘の際に湧出した温泉という話だし、これをもっと強烈にする方向に寄せていったのが豊富温泉かもしれないな、と思いを馳せるおじさん。
(2024.10追記)翌年に豊富温泉へ行きました。
お湯のヌルヌル度はかなりのもの
しかし最大の特徴はヌルヌルの肌触りだ。もう超ヌルヌル。同種の温泉に遭遇するとつい両手をこすりあわせてニュルニュル・トロトロ感を楽しんでしまう癖がある。ここでもやってしまった。今まで体験したヌルヌルランキングの上位に来てもおかしくないレベル。別のメンバーは「一の俣温泉よりもヌルヌルだ」と言ってたぞ。一の俣温泉行ったことないけど。
風呂場の窓から見える景色とかはノーコメント。天気が天気だし全く関心外だった。
源泉かけ流しではないけど良好な浴感だし、入浴中はヌルヌル・湯あがりには肌スベスベになる。夕食後と朝食前の2回入っただけなのがもったいないと思ってしまうお風呂だった。
予想を超える食事内容にすっかり満足
普通に豪華大スターが顔を出す夕食
宗谷パレスの食事は朝夕とも1階食堂にて。部屋ごとに決まったテーブル席に案内される。夕食のステーティングメンバーがこちら。
お高くないエコノミーな宿だから、肉じゃが・麻婆豆腐のような家庭料理系は想定内であり納得だ。しかし目を疑うのは毛ガニとウニ。あの宿泊料金で別注もしていないのに大スターを投入しちゃっていいんですか。いやーすいませんね。
今回の旅は1泊目から4泊目まですべてウニが出てきたな。4日連続ウニなんて人生最初で最後だろう。ホタテもでかくて輝いててやばい。あまりの衝撃に鍋物が何だったか忘れてしもうた。他のメンバーも「これほどの内容とは予想外だ」と喜んでいた。
旅の最後の夜もサッポロクラシックで乾杯。途中で日本酒に切り替えたり、上述の通り風呂あがりにチューハイ氷割りを飲んだりして、結構アルコールを摂取してしまったな。
朝食は万事ちょうどいい感じ
朝は同じ席でこのような布陣。牛乳・ジュース・ご飯はセルフでお願いします。もちろん味噌汁は別途出てくる。
前夜が濃ゆい系・珍味系の海鮮攻めだったから、朝は奇をてらわず淡白なくらいでちょうどいい。量もそんなにいらないし。という自分にはちょうどいいですね。
セルフで注ぐ食後のコーヒーも用意されていて抜かりなし。さあ、いよいよ最終日、元気出していこうぜ…って、あかんわ。寒さ・強風・雨、何も変わっていない。夏場の冬体験は3日に及びそうだなあ。
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宿にリゾート感やラグジュアリー感を求めない我々にとって、また温泉体験を重視する自分にとって、ふと見つけた宗谷パレスは予想以上に当たりだった。お値段を考えたら夕食は文句なし。最北の温泉に好宿ありだ。