再訪の宝川温泉汪泉閣:一級品の露天風呂に浸かる幸せ

宝川温泉 汪泉閣
海外からも注目を集める巨大かつワイルドな露天風呂の宿といえば群馬の宝川温泉・汪泉閣だろう。5年前に一度泊まった経験から、あの露天風呂は一見の価値ありだ。そしてお湯がぬるめで本格的な源泉かけ流しだから湯質重視で訪れても満足できる。

ただし一人旅で気軽に泊まれるかといえば、なかなかハードルが高いと思う。今回はずっと昔に宿泊ずみの体験者から「また宝川温泉へ行きたいのだけど賛同者はいますか」と呼びかけがあったので飛び乗った次第。せっかくの機会をみすみす逃すはずがない。

…やっぱり巨大かつワイルドな露天風呂だった。思い出に偽りなし。大好物のぬる湯三昧で大変よろしゅうございました。※ぬるくない湯船もあります。

宝川温泉「汪泉閣」への道

藤原ダム・奈良俣ダムへの再訪

奥利根の秘境的なロケーションにあたる宝川温泉だと車で行くイメージしか浮かばないが、宿のエレベータ内に送迎バスの案内ポスターがあった。旅館が上毛高原駅・水上駅への無料送迎を行っている模様。また上毛高原駅~水上駅~宝川温泉を結ぶ路線バスも運行されているようだ。ただし現地まで行かず、宝川温泉入口という停留所が精一杯の便もある。そうするとバス停から現地まで20分近く歩かなくてはならない。

我々はとあるメンバーの愛車で前泊地の法師温泉・長寿館を出発し、いくつかのスポットを見学しながら宝川温泉を目指した。最初の寄り道は奥利根3ダムの第1の矢である藤原ダム。個人的には4年ぶり3度目。
藤原ダム
車に戻って再び走り出すと、いつしかガッツリ眠り込んでしまい、はっと目が覚めたら奥利根3ダム第2の矢・奈良俣ダムに着いていた。個人的には4年ぶり2度目。前回は豪雨に襲われてまともに見ることができなかったから、晴れた日に来られて良かったよ。
奈良俣ダム
天端の真ん中らへんからダム湖を眺めると、ひときわ存在感を放つ高い山が視界に入った。至仏山ですかね? そういうことにしておこう。もっと天端の奥まで行き切れば笠ヶ岳が見えるかどうか、確認すればよかった…途中で引き返しちゃった。
ならまた湖

照葉峡をちょっとのぞき見る

奈良俣ダムからさらに尾瀬方面へ進んで照葉峡なるところまで来た。わかりやすい展望台が整備されているわけではないから、うっかりすると通り過ぎてしまう。とりあえず滝があったので撮影。
照葉峡付近の滝
照葉峡の主要部らしき別の場所は滝のすぐそばまで近寄れる。
照葉峡主要部の滝
時間に超余裕があるか、もしくは尾瀬に強い動機があるなら鳩待峠にタッチしてくるところだが、そろそろ宝川温泉のチェックイン時間が近い。温泉にたっぷり浸かるのが何より大事だ。ここらで引き返そう。

当館の敷地に入るとまず日帰り客用駐車場があり、そこをV字に鋭く曲がった少し先の橋を渡ったところに宿泊客用の駐車場があった。このへんは過去に宝川温泉に泊まった時と同じ。


今回のお泊りは東館

ではチェックイン。おお久しぶりじゃのう。ロビーに各種サイズの浴衣が置いてあって、各自が体格に合ったサイズの浴衣を取っていくようになっている。また客室のWiFiが弱いみたいで、メンバーの何名かはネット接続したい時にここへ出動していた。
宝川温泉のロビー
当湯の露天風呂は男女混浴である。湯浴み着は着用OK、いやむしろ必須で、チェックイン時に湯浴み着を借りることができる。以前は女性のみ湯浴み着を受け取れて、男性は頑張ってタオルで隠せっていう運用だった記憶があるけど、今回は男性用の腰巻き湯浴み着も提供されていた。

案内された部屋はフロントのある棟(東館)の4階。玄関とフロントが3階だから1つ上になる。10畳+広縁の和室だった。布団は夕食中に敷いてくれる。
宝川温泉東館客室
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。WiFiは前述のように客室内だと弱いみたい。安定して使いたいならロビーへどうぞ。窓からの景色は…なんだろう、よくわからん。窓ガラスにスマホを押し付けて撮影してみた。
窓から見える景色
すぐそばを流れる川が見えるとか、そういうわけではない。なお、喫煙OK室のため室内のタバコ臭はきつめだった。気になる方は禁煙室を押さえましょう。


宝川温泉を宝川温泉たらしめているお風呂

源泉の特徴に最も近いかもしれない内湯

浴衣に着替え、タオル類と湯浴み着を持って大浴場へゴー。洗身洗髪もしたいのでまずは内湯へ行ってみよう。同じ東館1階に男女別の内湯がある。24時間いつでも入れて男女の入れ替えはない。脱衣所に分析書が張り出されてて「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」だった。加水・加温・循環・消毒なし。

浴室にカランは6台。埋まってるのを見たことないから十分でしょう。あとは6~7名サイズの浴槽。旅館の規模からすると小さい気もしつつ、混雑している状況に出くわしたことがない。やっぱりみんな露天風呂に入り浸りで内湯は必要最低限の利用なんだろうね。

無色透明のお湯は微硫黄香が感じられ、温泉らしさは十分にある。見方によっては一番温泉らしいお湯。温度は適温。ぬるい印象のある宝川温泉にしては熱い方だ。分析書に高温泉って書いてあったから、これが本来の源泉に近いのかもしれない。玄人さんは内湯狙いで…ってことはないな、さすがに。

ちょっとしたお散歩になってる露天風呂への道

なんだかんだでやっぱり主目的は露天風呂でしょう。内湯を早めに切り上げて、そそくさと露天風呂へ移動したのであった。まず東館と1階の渡り廊下でつながる本館に入る。
宝川温泉本館
本館の裏口みたいなところで館内スリッパから屋外サンダルに履き替える。ここに無料の貴重品ロッカーあり。露天風呂のロッカーは有料だから注意。外へ出ると、いきなり吊り橋があるので渡る。
吊り橋(渡った対岸側から撮影)
吊り橋がまたいでいる川が温泉名になっている宝川だ。上流方向は本館と組み合わさった風景が良し。露天風呂のある下流方向にスマホを向けると炎上しかねないんでやめておこう。
本館と宝川の流れ

やたらと広い摩訶の湯、お湯がぬるめの般若の湯

さて、吊り橋からちょっと歩いた先に2つの混浴露天風呂=摩訶の湯・般若の湯と脱衣所が並び、もっと奥に摩耶の湯(女性専用)がある。そこでまた別の吊り橋を渡ってこっち岸へ戻った地点に最大サイズを誇る子宝の湯(混浴)と脱衣所が控えている。いずれも洗い場は備わってない。

近い方から紹介すると、摩訶の湯は120畳相当。何名サイズだか想像もつかない広さだ。お湯は温度を除けば内湯と同様。摩訶の湯はそんなにぬるくなくて適温に近い。自分の好みを勘案して夜にちょっと入った程度ですませてしまった。すまんす。

隣の般若の湯の広さは50畳相当。お湯はぬるめで好みに近い。しかし夜に摩訶の湯に入ったついでにちょっと体験しただけで深掘りせずに終わってしまった。すまんす。摩耶の湯は女性専用だから当然パス。

感覚が狂うほどの広さを持つ子宝の湯はぬる湯天国

結局は子宝の湯に入浴時間の大半を費やしたことになる。だってぬるいんだもん。200畳相当もの広さで気分もいいしね。脱衣所で湯浴み着をつけて子宝の湯へ突入すると、出だしは湯口が近いから熱く感じるが、奥へ進むほどにぬるくなる。真ん中付近で体温前後となり、最奥付近は体温より低いんじゃないかと感じる場所も現れた。

沸かし湯とは明らかに異なる、スムーズに肌に馴染む感じのお湯、微かな硫黄香、時には腕などに泡が付き、そして場所を選べば最強の不感温度帯。こりゃーたまりませんな。1時間でも入っていられるぞ。ぼーっとしているだけで極楽だし、うっかりすると眠ってしまう。

景色もお見事だ。視界を遮るものはなく、岩風呂のすぐ隣を川が流れる様がそのまま目に映る。川の水面が結構近い距離にあるように見えた。インフィニティ風呂とは言わないまでも、川と一体化した露天風呂の趣きが強くて、とってもワイルド。

自然の中の露天風呂の宿命として、周囲の木から落ちる葉や小枝や種子が湯面を漂うのは避けられない。たまに昇天した羽虫さんもおるんで潔癖症だとアレかもね。良い悪いではなくそういう風呂だと認識して浸かるのが吉。

なお、海外からの観光客が大勢いた。アジア系よりも欧米系の方が多い。何らかの経緯で欧米では日本旅行の周遊先として宝川温泉が有名な存在になっているのだろう。


東館レストランでいただく食事

二枚看板の鍋が並ぶ夕食

前回泊まったのは本館だったので食事の場所は本館1階の個室食事処「竹庭」だった。今回は東館に泊まったから食事は東館1階のレストラン「月光」にて。こちらは個室ではないものの、テーブル同士の間隔は十分に取ってある。入口で部屋番号を告げ、案内されたテーブル席に用意されていた夕食がこちら。
宝川温泉の夕食
風呂はワイルドだが料理は手仕事を加えたお上品系。法師温泉でも出てきた山フグ磯部巻があるぞ。鍋物は一人につき2品ずつ。それらが横一列にずらっと並ぶ光景は妙に圧巻であった。鍋が仕上がるとこうなります。
宝川温泉の夕食 その2
牛肉鍋と豚肉鍋の両方を提供とは、やってくれる。たしかどちらも上州ブランドだったはず。久しぶりに牛肉の旨味を堪能したぜ。そしてスープがやたらうまい。メンバー全員がほぼ飲み干す勢いだった。あとは岩魚(だったかな?)が塩焼きじゃなくて唐揚げで出てきた。パリパリと頭まで全部食べられてビールにも合ってて良かった。

他にもいろいろ出てきたはずなのに忘れちゃてすいません。全体的な量は十分多めながら、お腹パンパンで後々まで膨満感を引きずる一歩手前くらいで終わってくれて絶妙だった。

ご飯おかわり必至な朝食(自分は敗北)

朝食も同じ席で。すでに下焼きのすんでいる魚・かまぼこ・しいたけを自分で鍋の上で温めるおかずが出てきた。湯豆腐・温泉玉子といった定番メニューもあり。
宝川温泉の朝食
うーん、これは悩ましいなあ…。ご飯のお供がいくつもあるじゃないか。焼魚、ねぎとろ、明太子、いずれもそれ単体で食すには惜しい。ご飯にあわせると必然的におかわりすることになるよな。他のメンバーは当然のようにおかわりしていた。

しかし我が胃の容量がそれを許さない。明らかにバランスを欠いた「おかず:米」比の混合物を口元へ運びながら、おかずの濃厚な味で口の中を一杯にするおじさん。悔しいのう。最後にデザートとコーヒーで終了。

 * * *

二度目の宝川温泉を大変に堪能した。露天風呂の場所と大きさと湯浴み着混浴という性格から、最初はレジャー施設・プールのようなノリで捉えがちだけど、純粋に温泉として結構なお点前だとわかってくるはずだ。世界の皆さんもきっとわかってくれるに違いない。


おまけ:矢木沢ダムと吹割の滝

ここまで来たら外せない矢木沢ダム

チェックアウト後は奥利根3ダムの第3の矢・矢木沢ダムへ。かなりのスケールを誇るアーチ式ダムだ。個人的に4年ぶり2度目。天端を歩いて奥側から撮影してみた。やっぱり高さがあってでかいな。
矢木沢ダム
ダム湖のはるか向こうに初夏でもまだ雪の残る山々を望む。巻機山はもっとずっと左に外れてて見えないみたいだから、なんだろう、わかりません。
奥利根湖
帰り道で須田貝ダムにも寄ってみた。奥利根4ダムという言い方をする時はこれが入る。個人的には初めて来た。ダム本体まで行くことはできず、見学施設が整っているわけでもないが、なかなか見栄えのするダムだ。
須田貝ダム

最後は吹割の滝で締めくくる

旅の最後に沼田を経由して吹割の滝へ。個人的に3年ぶり2度目。観瀑台の看板に誘導されると山登りをさせられることは体験ずみだ。もうその手には乗らないぞ。最短距離で滝の現地へゴー。まず鱒飛の滝を通って吹割渓谷を歩く。
吹割渓谷
はい、こちらが東洋のナイアガラ・吹割の滝でございます。3年前の見学は秋の夕刻で、目視でも写真でも薄暗い印象になってしまったから、晴れた昼間という意味で来た甲斐はあったな。
吹割の滝
ただロープで立ち入り制限されていて、あんまり近寄れないのよねー。滝壺を見られないのが残念。上流側に回り込んだアングルだとこうなる。
吹割の滝 その2
以上で群馬秘湯計画は無事完了。法師温泉も宝川温泉もお湯・風呂場・旅館いずれの満足度も大変高かった。何度でも行きたいね。