あつ湯と庄内の味と古き良き風情 - あつみ温泉 かしわや旅館

あつみ温泉 かしわや旅館
温海と書いて“あつみ”。いかにも温泉がありそうな地名だ。そして実際に長い歴史を持つ温泉場が存在する、それがあつみ温泉。どんなところなんだろう、行ってみましょうかね。てなわけで庄内遠征の2泊目をあつみ温泉に決めた。

お世話になったのは、かしわや旅館さん。近代的なホテル風じゃなくて昔ながらの和風木造建築なのが逆に興味をそそられる。料理面の評判も良さそうで期待大。お湯は熱いらしいが自由に加水OKだそうだから、まあうまく対応すれば大丈夫でしょう。

なるほど、お湯はかなり熱い部類だった。温海じゃなくて熱海ですな(それじゃ“あたみ”になっちゃうか)。しかしいいお湯なのは間違いない。ぬる湯派の自分も認めざるを得ないクオリティだった。

あつみ温泉「かしわや旅館」へのアクセス

空港から高速道路で一本

JR羽越本線にあつみ温泉駅がある。ただし駅から温泉街までは3km近く離れている。元気があれば歩くも可。一応、鶴岡駅~あつみ温泉駅を経由する路線バスが日に数便運行されているようだ。

空路で庄内空港へ飛ぶ旅行者目線でいうと、日本海東北自動車道を使って庄内空港IC→あつみ温泉ICまで高速道路だけでほぼ到達できてしまう。しかも鶴岡西ICから先は無料区間。このルートの後半はほとんどがトンネルで、合理化精神の塊みたいなのがすごい。関東平野住民の感覚だと笹子トンネル4.7kmでかなり長いと思うのに(山手トンネルや東京湾アクアラインは特殊なので除く)、あつみトンネル6kmとか普通にあるからな。

自分は羽根沢温泉から移動して湯田川温泉に立ち寄った後、鶴岡西IC~あつみ温泉ICを走り、さらに30kmほど南下して新潟県の笹川流れを観光してから、あつみ温泉まで戻ってきた。

温泉街と朝市

温泉街について、翌朝チェックアウト後にちょっと散歩してみたので先に紹介しておこう。温海川沿いと1本隣りの県道44号沿いに旅館やお店が立ち並んでいる。両者を結ぶ小道に飲泉所+足湯コーナーあり。飲んでみたらちょっとタマゴ風味があった。
飲泉所&足湯
風情や情緒でいうならやっぱり川沿いかな。下の写真は葉月橋からの眺め。
葉月橋からみた温海川
反対側から撮るとこうなる。
温海川と葉月橋
ご当地では朝市が有名だ。泊まった翌朝が小雨だったのでどうしようか迷ったが、せっかくだから行ってみた。温泉神社の参道の両側が店舗になっている。当時は2軒だけ開いていて残りはシャッター街。往時は活況だったが現在は寂しくなっちゃったパターンではないかと想像する。
朝市が開かれる温泉神社
朝市であつみ名物の元禄餅を買いました。その店は鶴岡の名物である孟宗も置いていた。ずっしりとした重さを感じさせる立派な大きさだね。
朝市で売っていた孟宗

長い歴史を感じさせる旅館

館内は相当にレトロ

かしわや旅館は県道沿いにあり、道路を挟んで向かい側が駐車場になっている。上述の朝市会場から至近のロケーション。外観は冒頭写真の通り、すばらしきレトロ調で、こういうのは嫌いじゃない。館内のロビーは以下のような感じ。
かしわや旅館のロビー
ロビー脇で温泉の素や温泉むすめグッズを売っていた。ご当地の温泉むすめは、あつみ詩鶴ちゃん。
温泉むすめ あつみ詩鶴
館内ももちろんレトロ感たっぷり。2階と3階をつなぐ階段の様子がこうだから。
階段の踊り場

部屋の内部は近代化ずみ

案内された部屋は3階の6畳+ミニ3畳からなる和室。適度に設備更新されているためか、外観や廊下から想像されるほど古びてはいない。布団は最初から敷いてあった。
かしわや旅館 6畳+ミニ3畳客室
新しいシャワートイレ、洗面台あり。金庫あり、別途精算のドリンク・お酒入り冷蔵庫あり。WiFiは確かあったはず。部屋の中は特に古いとか年季が入ってるとかいうことはなくて十分に快適である。泊まった部屋は窓が2方向に付いており、一方は中庭を向いている。
窓の外 その1
もう一方からは温泉街の小路が見えた。
窓の外 その2
歴史ある温泉地の、これまた歴史を感じさせる旅館に泊まる非日常感が何ともいえず良い。


熱いがくせになる、あつみの湯

自分で加水OKのあつ湯

かしわや旅館のお風呂は1階にある。男湯女湯は固定。廊下に分析書が掲示されてたと思うけども、「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」であった。5号泉・6号泉・7号泉を使っているらしい。源泉温度は51~72℃だからかなり熱いね。加温・循環・消毒なし、さすがに加水あり。

脱衣所の前でサンダルを脱いで入る。電気が消灯されていることがあるから、利用中は自分で点灯して、出る時に消灯すればいいんじゃない。やはり源泉の熱さを意識してか、「熱いようなら加水して調整してください」という旨の張り紙がしてある。

浴室には3名分の洗い場と浴槽が1つ。L字型をした浴槽は4名サイズとみた。まったく濁りのないピュアな無色透明のお湯で満たされている。湯口からの投入量はそこそこ多い。

あえて加水なしのお湯をじかに味わう

熱いのはわかっていたから心の準備はできていた。浴槽のお湯を洗面器ですくってかけ湯をする…熱っちーーーー!! 試しに足を突っ込んでみたら熱すぎて数秒で退散した。どうする? 加水するか? ふと見ると、隅っこに湯かき棒が置いてあったので、そいつで草津をイメージしながら湯もみモミモミしたら、肩まで浸かれるようになった。

結局、何度か入浴しに来る中で一度も加水することはなかったのである。なんかその方が温泉のクオリティをそのまま味わえるような気がしたのでね。自分が納得できるなら、提供されるお湯をそのままダイレクトに体感したいスタンス。

いったん浸かってしまえば、じっとして動かなければ1~2分はどうにかなるものである。よくよく見れば湯の花が少しだけ確認できるし、匂いを嗅ぐと微硫黄香を感知する。熱さの中にもすんごい効いてくる感じはあるし、本格温泉といってよかろう。旅の経緯的に「湯田川温泉正面湯の温度を高くするとこうなるのかな」って思った。

短くていいから何度も入ろう

ちょっと入って、いったん出てから浴槽脇で一時休憩する間に投入されるお湯があっという間に浴槽を満たしてしまうようで、再び入った時にザッバァァーーと豪快にあふれ出す様も見どころだ。いやあ愉快愉快。

こういうあつ湯に対して取る作戦は「短時間×多数回」に限る。折をみては浴場へ、しつこいくらいに何度も出撃した。強烈な匂いや濁りがないから出る前にシャワーで洗い流す必要もない。何度も入った累積効果でお肌がかなりスベスベになった。


細かいこと抜きで庄内グルメを味わう

夕食は海の幸と日本酒を部屋食で

一人泊の客の夕食は部屋出しだった。運ばれてきたお料理がこちら。海が近いから海産物の方も期待できますな。
かしわや旅館の夕食
お造りの素材は…なんだっけ。鯛、ソイ、ヒラマサっていう単語は記憶にあるが。こんなテキトーでいいんだろうかと思うけど、細けえことはいいんだよ。本人が美味しけりゃいいのよ。鍋は豚しゃぶ的なやつだった気がするけど違うかもしれない(テキトー)。

お酒どうしようと思ってメニューを見たら、2019年の山形県沖地震で被害を受けた鶴岡大山の4酒蔵飲み比べセットがあったから、応援のつもりで注文してみた。大山 特別純米 十水・出羽の雪 特別純米 和田来・羽前白梅  純吟 俵雪・栄光富士 純米吟醸 朝顔ラベルだって。恥ずかしながらすべで初耳です→気にしない。

もちろん上記写真の内容だけでなく後から追加の料理もあったはず(テキトー)。なにせ途中で完食できるか心配になったくらいにボリュームたっぷりだった。量ばかりでなくお味もグッド。庄内は飯がうまいという、なぜか行ったことないのに脳内に醸成されたイメージを立証してくれた。

朝食は食事処へどうぞ

うっかり夕食の流れで朝も部屋食だと思い違いして待ちの態勢になりかけていた。危ない危ない。事前に希望を伝えた時間が来たら1階の食事処へ行きましょう。案内された席に着いて運ばれてきたのがこちら。
かしわや旅館の朝食
オーソドックスな内容ながら、一点着目するとしたら味噌汁が海老汁だった。うおー朝からやってくれるぜ。日本海ばんざい。

お米はうまいし、おかずとあわせてパクパクいけてしまった。はい、ごちそうさま。これだけいただいたら、もうお昼ご飯いらないっすわ。

 * * *

レトロな風情を好む向きにとってはうってつけの温泉旅館になり得る。熱い温泉をどう思うかは各自にてご判断を。お湯そのものは良いです。ご主人と女将の対応は丁寧で好感が持てる。

なお訪れたのは時期外れだったが、夏季は岩牡蠣が推しの一品となるようだ。あーなんかうまそう。岩牡蠣目当てで訪れてみたい気もしてくるなあ。