極論すれば日本のどこにでも温泉がある。伊豆大島にも温泉がある。当然のことながら大島に温泉宿もあるはずだ。はい、ありました「大島温泉ホテル」。わかりやすい名前。
伊豆諸島という新しいパターンに挑戦することになった我々グループの旅の3日目は、式根島から大島へ場所を移し、宿泊先がこの大島温泉ホテルであった。最大の売りは三原山のそばというロケーション。部屋が山側で文句なしの三原山ビューだった。露天風呂からも同じくらいよく見える。
温泉は一般によくみる感じの単純温泉だが、火山だけに相当熱い源泉なんだろうなあとつい想像してしまう(湯船に提供されているお湯は適温)。
大島温泉ホテルへのアクセス
船が入る港はどっちだ?
東京方面から大島へは東京・横浜・久里浜から大型船もしくは高速ジェット船が出ている。また、熱海や伊東からの便もある。飛行機便もあるみたいね。首都圏からの距離の点でみても伊豆諸島の中では比較的アクセスが良い。
我々は前泊地の式根島から船で移動した。東海汽船の大型船に乗って式根島→新島→利島→大島で下船。フロアがいくつもある大きな船で、そのおかげなのか、あまり揺れを感じることなく船酔いの兆候が発生しなくて助かった。座席で眠ってるうちに着いた感じ。
客船が着く港は元町港・岡田港の2つがあり、当日の気象状況で使い分けているため、どちらに着くかはその日にならないとわからない。この日は岡田港だった。レンタカーの出発・返却や各施設の送迎は当日の状況にあわせて臨機応変に対応してくれるんだと思うけど、注意しておこう。
三原山登山と絡めて行くことも可能
さて、岡田港でレンタカーを借りた我ら一行は、まず本命本丸である三原山へ向かい、駐車場に車を置いて歩いて頂上まで登った。詳細は別記事にて。下山してから車でホテルへ移動。
当館は三原山登山道路の途中から分岐する道に入ってすぐ。標識や看板が出ているから迷うことはない。山慣れした人向けには、ひねりをきかせた行き方として、三原山山頂から登山道の「温泉ルート」を通って下山してくるという方法でホテルへたどり着くことも可能。
大島の特徴を存分に見せつけるホテル
山側の部屋は眺め良し
ではチェックイン。今日はお客さん多いかもしれないな。フロント付近がわちゃっとしているぞ。客層はファミリー・シニア・若者グループなどいろいろ。カジュアルな服の人、やや気合を込めた山歩き装備の人、自転車ツーリング風の人もいる。
人波が途切れた隙をみてロビーとお土産コーナーを撮影してみた。三原山噴火の写真が掲示されているのが何とも言えんね。
外観および館内は決してモダンできれいな令和物件ではないが、古すぎるということもなく、まあ普通に問題ない。玄関とフロントが2階にあたる構造で、我々の部屋は3階の10畳(実質9.5畳)+広縁和室。布団は夕食中に敷いてくれる方式。
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。フリーWiFiあり。客室もそれなりに経年しているものの管理状態は良好。お茶のサービスは普通の緑茶ティーバッグと粉末の明日葉茶があった。明日葉茶は濃い麦茶のような色で味も麦茶系。
窓から眺める景色がこちら。どうだい、三原山。
屋上が展望所になってる
海側の部屋は太平洋と伊豆半島を望めるそうだから、各自の好き好きですかね。全方角をよく見たければ屋上が「三原山テラス」として開放されているから行ってみるといい。翌朝行ってみたら…雲に覆われててあきまへん。
三原山はじめ標高の高い島中央部が雲にすっぽり覆われるパターンにはまってしまったようだ。
万人向きの温泉と非日常感ある露天風呂
源泉かけ流し、かな
大島温泉ホテルの大浴場は1階。廊下のつきあたりに卓球台・自販機・本棚・休憩コーナーと浴場入口がある。夕方と夜は奥が男湯、翌朝は男女入れ替わって手前が男湯だった。分析書によれば「単純温泉、低張性、中性、高温泉」。また「当館の温泉は加水源泉かけ流しで~」の“加水”の文字を消した跡がある説明書きあり。
夕方に突撃した際、チェックイン時の様子から考えて、ものすごく混雑してるんじゃないか・芋洗い状態だったらどうしようと恐れていたけど、普通に余裕のある人口密度で窮屈ではなかった。
浴室には9名分の洗い場。そしてそらまめのような形をした内湯浴槽がひとつ。10名か、もっと多く入れそうなサイズに見える。湯口から投入されるお湯は濁りのない無色透明。湯の花や泡付きは観測できない。匂いにも特に強烈な特徴はない。温度は適温だし、いろんな面で万人向き。
ぬるめの湯で三原山ビューがすぐれた露天風呂
じゃあ露天風呂へ行ってみますか。こちらは細長い四角形の浴槽で横一列に8名が並んで入れそう。ちょっと強引に向かい合わせを許容すれば15名程度いける。でもそんなに混むことはないし、全員が内湯側に背を向けて屋外を見る姿勢で浸かるべきだ。なぜなら三原山が見えるから。
部屋から眺めたような景色を露天風呂に入りながら楽しめてしまう。本当のところは知らないけど、大島温泉ホテルだけの特典です、と煽り文句を書いてしまおう。ホテルと山の間には邪魔な人工物が何もない、溶岩と低木がただ広がっているだけだから、旅の特別感・高揚感が盛り上がる。
浴槽の周囲に配置された岩はマットブラックでゴツゴツしており、明らかに溶岩でしょう。火山の中腹の溶岩原野に湧き出た源泉温度82℃の高温泉…これぞマグマ大使、じゃなくてマグマ風呂!
イメージはマグマでも実際のお湯はぬるめ。それはそれで好都合。自分がぬる湯好きだし、長湯可能だから景色をじっくり楽しめる。景色といえば夜に行ってみたら星が結構よく見えた。
もう一方の大浴場も似た感じ
朝起きてから入れ替わり後の男湯へ行った。こちらの洗い場は7名分。内湯は丸形で10名+αくらいのサイズ。お湯の特徴は基本一緒だね。
露天風呂は八角形だか六角形だかで8名程度のサイズ。もう記憶が薄れてきて嘘を書くかもしれないと前置きしておくと、たしか先ほどの露天風呂よりも囲われてる感があったな。屋根が付いていたせいかな。三原山は一応ちゃんと見えたはず。
お湯は万人向き、ロケーションは非凡というお風呂だった。
大島の思い出作りにもなったお食事
これは楽しい、夕食の椿フォンデュ
大島温泉ホテルは夕食と朝食で会場が違っていた。夕食は2階のお土産コーナーに近い山側。しかし外は真っ暗で何も見えない。部屋ごとに割り当てられたテーブル席にはすでにスターティングメンバーが並んでいた。その後に追加で提供されたのを含めてこちら。
旅館飯によくある陶板焼きとか海鮮鍋とかに代わって椿フォンデュなる「自分で揚げる天ぷら」があった。おー、初めてだな。さつまいも・なす・しいたけ・すり身?・ほたて?・魚・明日葉と真ん中の伊勢海老も飾りじゃなくて食べられるっぽい。
ベストの揚げ時間はさつまいもが3分、明日葉が40秒、他は1分とのこと。天つゆか地元の塩でどうぞ。塩は2種類用意されてて豆腐向けの塩も置いてある。なお醤油は青唐辛子醤油。
天ぷらがビールのお供にばっちりすぎる。自分で衣をつけて揚げるのも楽しいし。ふだんは絶対に縁のない明日葉も良かった。伊勢海老はいくつかのパーツに割って強引に揚げてしまえば何とかなる。さりげなく金目鯛の煮付けが出てきたし、なかなかの配役。締めのさざえご飯を完食した頃には80分ほどが経過していた。
三原山を眺めながらの朝食バイキング
朝食会場はフロントに近い山側。朝は明るいおかげで山(当日は雲に覆われた山)がよく見えた。バイキング形式であり、適宜補充はされるもののしばし品切れすることもあるからタイミング重要。客が集中する時間帯でてんやわんやだったのだろう。
地元の牛乳は量に限りがあるらしく、あっという間に終了していた。そんな中で取ってきたのがこちら。
やっぱり普通の白飯よりもお粥を選んでしまうなあ。ちょっとヘルシーを気取って温野菜を取ったら、いくつかは冷たかった…。まあいいや、ぬる湯派にふさわしい冷野菜ってことで。あと食後のコーヒーあります。
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大島で温泉に入れて三原山がドーンと見えて天ぷらを楽しんで、と文句なしの布陣。この上なくゴージャスとか、逆に驚きの激安とかを最優先するなら別だが、せっかく大島へ来たからには…という思いのツボをしっかり押さえてくれるリーズナブルな宿といえよう。