何かで読んだ記憶がある。茨城県日立市の国民宿舎「鵜の岬」は国民宿舎の中で利用率トップだと。あらためて調べてみると「令和3年も1位、これで33年連続1位」という昨年の資料が見つかった。2位に大きな差をつけているから、令和4年も有望でしょう。
この宿に隣接する日帰り温泉施設「鵜来来(うらら)の湯十王」がある。利用率が高い=予約が取りにくい宿に泊まることは叶わなくとも、同じ地の温泉を楽しむことはできる。人気の一端は海の見える絶景スポットとのことで、風呂から同じ景色が見えるかもしれない。期待して行ってみた。
たしかに高台から海を見渡す絶好のロケーション。施設全体も洗練された雰囲気で安心感あり。人気になるだけありますな。
鵜来来の湯十王へのアクセス
宿泊しないなら車が必要
JR常磐線・十王駅から当施設まで路線バスが運行されているが、平日で1日3便・土祝で2便、日曜は運休だから、不可能でないにせよ旅行者にはちょっと厳しいか。かといって4~5kmの距離を徒歩でカバーするのも大変すぎる。国民宿舎に泊まるなら送迎してくれるんだけど。
おっ、東京駅八重洲口から鵜の岬前までの高速バスがあるぞ。と思ったら、現地朝発と現地夕方着が1便ずつだった。宿泊者を運ぶ用だね。日帰り入浴のために行くなら車が必要だな。今回は自分の車で行ったので問題なし。
旅程の関係で五浦岬公園に寄り道する
朝、平潟港温泉の民宿かね久をチェックアウト。五浦の六角堂でも見ていくかと運転していったら、なにかミスったみたいで五浦岬公園に着いてしまった。まあいいかで見学開始。駐車場の隣に大津岬灯台があった。
反対側へ歩いていくと、ちょっとした散策ができる公園になっており、少し進むとなにやら家屋が。映画「天心」で使われたセットだそうだ。内部を見学することができて、映画に関する小道具や、主人公かつ明治期に実在した美術思想家・岡倉天心らの説明が展示されている。
公園の一番の高台には展望塔が立っていた。
塔のてっぺんから見る海と空がとてもきれい。六角堂も見えるけど、六角堂ビューという意味では別の展望所の方が木が邪魔しなくて見やすい。
鵜の岬の高台にある温泉
景色がよくて、なかなかの穴場であった。続いて立ち寄った大津港の漁業歴史資料館「よう・そろー」は割愛します。
ここで白状しておかなければならない。当初は違う温泉へ行くつもりだった。鵜来来の湯はいわばプランBだったのだ。本命扱いしなくて相すまぬ。
ともかく紆余曲折を経て最終的には鵜の岬までやって来た。国民宿舎を含む総合的に整備された敷地の中を奥へ奥へ、高台を上っていくと、鵜来来の湯が現れる。駐車場は広くて2箇所ありつつも、結構埋まっていた。人気あるね。
鵜来来の湯十王のオーシャンビュー
人気ゆえの混雑は覚悟
入口前に「本日は混雑のため云々」と注意書きがあった。そんなに混んでるのかよ。平日の昼だぞ。入場制限とかされたら困るなあ。幸いにも混雑のピークは過ぎていたようで危惧した事態にはならずにすんだ。券売機で入浴券を買う。平日830円(休日1040円)。
下足箱コーナーのところに貴重品ロッカーあり。フロントの隣にお土産コーナーあり。今回の旅を象徴するものをと思い、乾き物の炙りあんこうを買ってみた。あんこうは茨城産じゃなかったけど(そんなの手頃な値段で買えるわけない)。奥には食事処あり。海の見えるテラスに出られるつくりになってるようだった。
大浴場は1つ上のフロアに上がって二手に分かれて男湯女湯。脱衣所で服や荷物をしまうのは100円リターン式のロッカーだから小銭の用意を忘れずに。分析書を探してみると「ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉」と書いてあった。加温・循環・消毒あり。加水については記述がない。
明るく快活な雰囲気の内湯
採光にすぐれた浴室は明るく軽やかな雰囲気で良し。かけ湯は熱いのとぬるいのと2種類提供されてる。幸いにも恐れていたほどの混雑はなく、19名分の洗い場には十分に余裕があった。
サウナ・水風呂はいつも関心外なので省略しますと、手前にあるのが4名分の寝湯コーナー。まあまあ適温で、まあまあ普通の寝湯ですね。
奥にメインの内湯浴槽。四角じゃなくてUの字みたいな形をしている。だから向かい合わせになれるほどの幅はないため、1列にずらっと並んで入るとして、それでもかなりの人数を収容できそうなサイズだ。20名いけるんじゃないか。Uの字の一方の端っこはジャグジー風呂になっていた。
お湯は無色透明。湯の花・泡付き・ヌルヌル感はない。個性的な温泉臭もせず、かといって塩素臭が強いわけではない。いかにもな温泉らしさは正直薄いが、ここの強みは眺望ですから。
内湯でも海を見ることができる…目隠しの曇りガラスラインをうまくかわせば。晴れていればとても爽やかな気分になれる景色で、ぬるめのお湯とともにリラックスして日頃の疲れを癒やすのにちょうどいい。混んでなければ広々とした浴槽でもあるしね。
景観に納得の露天風呂
このロケーションなら当然のごとく露天風呂もある。こちらはバナナのような柿の種のような形をした10名サイズの岩風呂。お湯はなかなかの熱さで長湯は無理。単純にお湯に浸かることだけを考えるなら内湯に軍配が上がる。
だが露天風呂から見る海の景色は捨てがたい。窓越しではなく生だしね。それ用にチェアなんかも置いてある。高台の絶妙な俯瞰具合といい、沖まで続く一面の海ばかりでなく砂浜も見えたりで、飽きが来にくい。風呂場では撮影できないので、なんとか同じ景色を記録に残すべく帰りがけにすぐ隣の伊師浜で撮影してみた。
失敗。まず高台から下りてしまったことにより、俯瞰性が失われた。また、空がみるみる雲で覆われて暗くなりつつあるタイミングだった。風呂場で見たときはもっと白い砂浜・青く輝く海と空だったんですよ。
話にまとまりがなくなってきたんで終わりにしよう。人気スポット・鵜の岬で温泉に入ってみた結果、みんなが満足する理由がなんとなくわかった気がする。しかし本丸の国民宿舎に泊まったわけではない。そちらはもっとすごいのかもしれないね。
おまけ:山越えしてまた戻ってきた話
花貫ダムと名馬里ヶ淵
当初行くつもりだった温泉は常陸太田市の大菅温泉元湯旅館。北茨城から向かうには海沿いエリアから山ひとつ越えて里美エリアへ出なければならない。
国道461号で峠越えする途中に花貫ダムを通った。
天端の中間地点まで行くとちらっと海が見えるのが特徴。山奥に造られるイメージのダムとしては意外性あり。
その先には名馬里ヶ淵もありまして。透き通って輝く水が印象的だ。
さらに花貫渓谷にも行こうとしたが、ここは入口の駐車場に車を置いてハイキングするところじゃないかな。舗装道路が駐車場の先まで続いていたから進入していったら、さほども行かぬうちに車1台ぎりぎりの幅になったたため怖くなり、慣れないバックで戻るというプチ修羅場を経験することになった。冷や汗とともに撤退。
転んでもただでは起きない奴
もう温泉に集中しよう。あとはひたすら大菅温泉を目指した。現地付近の道路は狭い。
旅館の裏側の道路脇に車を止めるみたい。で、いよいよ入館、と思ったら今日はメンテナンスのためお休みだって。あららららら。
今日は旅の最終日。どうする? このまま帰るか? 最後が空振りで終わりってのもなあ…えーい、やったれ。ここから再び山越えして海沿いに出ればちょうど十王のあたりだ。十王といえば鵜の岬。いったんは候補に検討した鵜来来があるじゃないか。人生二度なし。やるなら今しかねえ。うららららら。
というわけで鵜の岬へ矛先を変えたのであった。