あんこうを求める者よ、いざ集え - 平潟港温泉 温泉民宿かね久

平潟港温泉 温泉民宿かね久
冬の味覚といえばあんこう。関東民には茨城の名産というイメージがあり、大洗のあんこう祭が有名だ。久しぶりにあんこう鍋を食べたいなと思って温泉旅行と組み合わせることにした。旅の行程にちょうどはまる場所&お値段的に手が届く相場感で泊まれるだろうと頼りにしたのが北茨城市の平潟港温泉だった。

漁師町ならではのお魚づくしの料理を出してくれる民宿が集まっていて、お風呂は天然温泉を引いているんだから頼もしい。しかもあんこうを濃厚な郷土料理「どぶ汁」の形で出してくれるところが多い。今回お世話になった「温泉民宿 かね久」もそうだった。

お魚たんまりでえらいことでしたわ。ちなみに温泉は熱々。自分があんこうになった気分。

平潟港温泉「かね久」へのアクセス

駅から歩いて行けなくもないが

平潟港温泉の最寄り駅はJR常磐線・大津港。2kmほど離れているから雨でなければ徒歩でカバーできるかも。市のコミュニティバスがあるにはあるが、平日のみ3便では旅行者には厳しいか。車があった方がいいね。

自分には車があったから移動は楽である。前泊地のいわき湯本温泉を出て塩屋崎などを見学しつつ勿来温泉・関の湯の立ち寄り入浴を終えたのが15時近く。勿来から平潟港までは車で5分も走れば着いてしまう。

途中、福島・茨城県境付近に二子浦温泉の看板を見つけた。温泉通にはよく知られたマニアックな存在らしく、ちょっと興味はあったものの、今の自分にはディープすぎるかなと迷って通過してしまった。まあいいや、今日はもう宿に入ってゆっくりしよう。

平潟をちょっとうろつく

ちょっと脱線して、翌朝チェックアウトした後に付近をちょっとうろうろした件につき軽くご紹介。まず漁港がこちらです。コロちゃん対策のため漁港内には関係者以外立ち入れない。奥に見える穴の空いた崖は鵜ノ子岬。
平潟港と鵜ノ子岬
ん? あれはもしや五浦の六角堂?…んなこたーない。と、ひとりツッコミした景色もあった。平潟薬師堂だって。
平潟薬師堂
この道の先は行き止まり。基本的にこのあたりは狭い路地が多いから運転慣れしてない方は注意。海が近くても一帯は平坦でなく、鵜ノ子岬みたいな崖が随所にそそり立っている。大津港駅や勿来から向かった場合、かね久は崖を貫くトンネルを抜けた先にある。車は向かいの未舗装駐車場に置く。


あんこう料理への期待が高まる民宿

携帯ヘビーユーザーは注意

ではチェックイン。1階はフロントと素朴な風情のロビー。貼ってあるポスターはあんこう鍋か。
かね久のロビー
階段にはマスコミ関係やタレントさんの記念写真がいっぱい。やや古い時代のが多いとはいえ、実は知る人ぞ知る有名な宿なのかもしれないな。あんこう料理を食べるならここ、とか(勝手な想像)。期待しよう。
写真がいっぱいの階段
割り当てられた部屋は3階の7.5畳和室だった。布団はセルフ、ではなくて夕食の間に敷いてくれる。ありがたや。
かね久 7.5畳和室
お手洗いは共同。3階の男子トイレは小×1・大×1。2階の男子トイレはちょい広くて小が2人分あった気がする。金庫・冷蔵庫はない。自販機もない。フロントに言えばビール出してくれるかもしれないけど、自分はお茶ですませてたのでわからない。WiFiはない模様で、崖が近いせいか携帯の電波も入りにくい。アンテナ1本の状態だった。

崖を背にして立つ

角部屋というか窓が2面についており、メインの窓からの景色はこんな感じ。崖と藪です。
窓から見える景色 その1
サブ窓から見ると崖であることがよくわかる。かつて平潟港温泉へ来た時に泊まった相模屋さんも崖のそばだったな。自分の中で平潟はこういう地形のイメージになる。
窓から見える景色 その2
時おり天井の方でガッコンガッコンと機械音がする。でもうるさいわけではない(読書は捗ったし、よく眠れた)。エアコンから出る音かなーと思って一時止めてみても同じだったから、温泉の汲み上げ・排出マシンが動作してると思うことにした。実際何かは知らん。


アブラ臭のする熱いお湯

宿の規模相応のお風呂

勿来で入浴して間を置かずに着いちゃったから、少し休んでから風呂に入るか、どうするかな。今日は満室近い雰囲気なのが気になった。16時過ぎたら他の客が続々到着→夕飯前のひと風呂にみんなが集中→風呂場がごちゃつかないだろうか。うーむ、よし、もう入ってしまおう。これぞ戦略的フライング。

かね久のお風呂は2階にある。廊下に分析書が張り出されてて「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、高張性、弱アルカリ性、高温泉」だった。加水なし、加温・循環・消毒あり。男湯女湯は入れ替えなし。

旅館によくある感じの出入口ではなく、客室と同じようなドアを開けて入る。貸し切り制ではないのでドアの鍵をかけてはいけません…今思えば鍵あったかどうか記憶が怪しいな。とにかく独占を主張することはできない。脱衣所は小ぢんまりとしている。

ライオンに見守られて入るあつ湯

浴室に入るなり、明らかなアブラ臭が鼻をつ~んと刺激した。おおこれはこれは。やるじゃないか。宿の規模に見合った広さでカランは2台。左側に3名までなら入れそうな浴槽があった。お湯の見た目は完全なる無色透明。

浴槽のお湯でかけ湯をした時点でかなり熱いとわかった。相模屋さんのお湯も熱かったので平潟港温泉の想定通りというか、べつに驚くことではない。ゆっくりゆっくりと体を沈めていく。熱っちいーーー。非常によく温まるかわりに長湯するのは難しい。ふだん寒い部屋で骨の髄まで冷え切って過ごしている自分(エアコンけちりマン)には一種のショック療法、頑張って浸かっていれば血のめぐりや神経系に好影響を与えてくれるだろう。

湯の花や泡付きは見られず、特別にツルツル・ヌルヌルしているわけでもない。浴室内の空気にアブラ臭を感じたくらいだから、お湯に塩素臭はしない。

湯口はライオンさん。口からドボドボっとお湯を吐き出している。湯船に入る→お湯があふれて外へ逃げる→湯船を出る→最初よりお湯は減っている→ここでセンサーかなにかが作動するのか、吐き出すお湯が増量されるのだ。で、しばらくすると投入の勢いは元に戻る。賢いライオンだなー、おい。

他客の利用状況を想定して立ち回るべし

この浴室のサイズだと、数名のグループが複数かち合っちゃうと手狭になる。脱衣所の様子から互いに時間をずらすなど、あうんの呼吸でやりくりするのが吉。一人客が2名かぶるくらいならまあ大丈夫。

チェックイン直後の入浴ではわりとすぐに2名が連れ立ってやって来たから場所を譲って出た(熱いから短時間で十分)。夕食前は混みそうだからパス。夜は途中で1名の客がやって来るも短時間で出ていった。朝はずっと独占。

夜と朝のお湯は夕方よりもぬるくなっていた。浴槽の一端に蛇口が付いており、加水しようと思えばできる。もしかしたら前に入った客が加水したかもしれない。入りやすかったから良しとする。


めくるめく海鮮天国&どぶ汁

海の幸のオンパレード

かね久の食事は2階の大広間で。小さめの座卓前にあぐらをかいて座るスタイル。隣の客との間は衝立で仕切られている。夕食のスターティングメンバーがこちら。見た瞬間に…完食できるかの意味で…敗北を覚悟した。
かね久の夕食
こいつはすげーな。まず刺身が一人分とは思えない太っ腹。期待以上ですよ。とくに奥の皿の海老がとろりとしてうまそう。胃袋の空き容量を見極めながら完食したいのに、炭酸で膨れそうなビールを頼んでしまったが、大丈夫だろうか。

左の皿のはよくわかりません。あん肝(?)と何かの魚の身(?)を何かの魚の身(?)で巻いたみたいなやつを何かの濃厚なタレ(?)に付けていただく(全然見当違いの可能性あり)。これがやたらうまい。正体がなんであれ関係ないぜ。うまいは正義。

右のメヒカリ唐揚げも最高ですね。サクッと噛んだ後にふわっとした身の食感、淡白なようでいて最後ちょっと風味が残る。酒が進むな。さらにはヤナギガレイと聞いた気がする煮付け。これだけでお腹いっぱいになるかと思うほどの身の詰まり方。満腹感さえなければ無限に食べられそう。本当は熱いうちに手を付けたかったが、お魚いっぱいすぎてなかなか手が回らなかった。

濃厚などぶ汁がたまりません

そのうちにどぶ汁ができあがった。あんこう鍋との違いは、あん肝を溶かした濃厚なスープにある。もともとは水を使わずに作ったというから相当な濃厚さだ。
どぶ汁
当館のどぶ汁はあんこうと大根だけが入っている。今宵これらの料理を前にして、野菜のかさでお腹が膨れるのは避けたいし、むしろあんこう一本でストレート勝負してくれた方がこちらもありがたい。久しぶりにぷるぷるのあんこうを堪能した。北茨城まで来た甲斐があったよ。

右奥の蓋をした台の物は…忘れた、すまん。とにかく目前の料理は完食したものの、やはりお腹パンパン状態になって締めのご飯は一粒も食べられなかった。デザートのババロアは部屋に持って帰って翌朝食べた。

朝食はオーソドックスに

夜はもうただただ満腹感で、朝目が覚めると、どうにか胃袋に空きができていた(なのでババロアを片付けることができた)。同じ大広間の同じ席に用意されていた朝食がこちら。
かね久の朝食
おー、これならいけるかな。ご飯は自分で好きな量をよそう方式。ねんのため抑え気味にしておいた。玉子は温泉玉子。焼き魚はかれい。味噌汁の具はいわしと思われるつみれ。

前夜がかなりのボリュームだっただけに、もう消化したと油断せず、ゆっくり慎重に食べていった。急に胃がズーンとくるとまずいからね。それくらい夕食のお魚づくしはすごかったのだ。

 * * *

おひとりさまを泊めてくれて、あんこうも食べさせてくれる貴重なお宿・かね久。あんこうは2人前からという旅館や食堂が結構多いんですよ。あんこう狙いの温泉一人旅を思い描いてもなかなか実現しにくい世の中で、とても頼りになる存在だ。

メヒカリなど他の魚料理もさすがのうまさ。上では量を強調してしまったが、漁師町ならではの味は今冬のいい思い出になった。