栗又の滝観光に便利な化石風呂の宿 - 養老渓谷温泉郷 滝見苑

養老渓谷温泉郷 滝見苑
2022年も師走に入っていよいよ終わりが見えてきた頃、千葉の養老渓谷へ行くことになった。紅葉にはもう間に合わないだろうけど房総だったらあるいは…と、かすかな期待を込めて提案された企画であった。諸般の事情で日程が後ろにずれたこともあって、やっぱり紅葉は終わってたけどね。

養老渓谷には温泉があるから宿泊先としてもちょうどいい。なおかつ今回は“おひとりさま”じゃなくてグループ旅行だから宿の選択肢はぐっと広がる。最終的に選ばれたのは粟又の滝に近い「秘湯の宿 滝見苑」。

養老渓谷の温泉は過去にも体験しており、黒湯が特徴なんだと思い込んでいたら、当館のお湯はかなり透明に近かった。へー、こういうのもあるのね。

養老渓谷温泉郷「滝見苑」へのアクセス

大多喜城へ寄り道する?…どうする忠勝

東京方面からのアクセスを考えた時、バスの運行本数にさえ注意すれば鉄道+バスでも行ける。JR内房線の五井で小湊鐵道に乗り換えて養老渓谷駅で下車、あとは粟又・ごりやくの湯行きバスで15分。粟又ノ滝停留所の前が滝見苑だ。

車だと圏央道の木更津東ICあたりから下道で養老渓谷を目指すことになるが、我々は市原鶴舞ICを出て大多喜の町へ向かった。大多喜城を見学するためである。現地に着いたら城の内部(千葉県立中央博物館大多喜城分館)は改修のため入れなかった。
大多喜城
隣の研修館を見学することはできて、武将の甲冑がいくつも展示されていた。大多喜城主だった本多忠勝のもあった。戦国系ゲームだと武力設定98とかになっちゃう猛将。
研修館の甲冑展示
お城の方は外観だけを見て終了。桜の木がいっぱい植わってたから、開花の時期に来るととても映えるのではないかと思われる。

(一部の)大人も夢中になる、いすみポッポの丘

続いて近くの「いすみポッポの丘」へ。引退した鉄道車両を保存展示している施設だ。運営は養鶏業者さんとの説あり(エビデンスは見つかってないがたぶん本当)。
丸ノ内線車両
よくこんだけ引き取ってきたなあ。
いすみポッポの丘 展示車両群
実際に数十メートルだけ走る車両があって実際に乗ることもできるので人気を集めていた。整備維持するのは大変だろうね。
実動かつ乗れる車両
市電・ブルートレイン客車・千葉モノレールの車両が売店として使われている。
売店も車両
奥の売店でカレーや牛丼を売っていた。一番人気は卵かけご飯。養鶏場の話が頭にあったから、ここでは卵を食べるべし、と思って卵かけご飯を注文。下の写真の一番奥の車両が食堂になっている。新鮮卵がうまいぜ。
奥の車両は食堂になっている
道を挟んだ向かいの斜面にはケーブルカー。何でもありやね。
ケーブルカー
斜面を上りきったら特急あずさにあさま。懐かしい顔ですねえ。
特急車両

なんとなく立ち寄ってしまう上総中野駅

まあこんな感じで往時を偲ばせる車両がいくつも置いてある。決して広くはないし子供向けのように思われがちだが、実は“あの頃”を知る大人ほどわくわくさせられてしまう施設だ。

すっかり鉄成分に染まった我ら一行は小湊鐵道・いすみ鉄道の上総中野駅に立ち寄った(個人的には半年前に来ている。まさかこんなすぐに再訪するとは予想外)。
上総中野駅
その後に見学した養老渓谷・粟又の滝については別記事に譲ります。こうして1日の観光予定を終えて滝見苑にチェックイン。宿泊客は旅館の隣にある宿泊客専用の無料駐車場に車を置いてから粟又の滝を見学するといい。付近の一般観光客向け駐車場は相場が500円だからね。


グループ旅行向きの、いい感じの旅館

斜面に立つ3つの棟がつながっている

フロントは建物の外観から想像される規模に比べて小ぢんまり。お土産コーナーも小ぢんまり。
お土産コーナー
フロントや食事処がある東館は3階の渡り廊下で南館とつながっている。大浴場のある南館は3階・4階の2フロアのみ。南館の奥には別館があって3~6階という構造。それなりに経年を感じさせる様子はあれど、とくに古いという感想を抱かせるものではない。
東館と南館をつなぐ渡り廊下
通路には東海道五十三次の盃が展示されていたりする。
東海道五十三次の盃

掘りごたつ付きの広い部屋

我々に割り当てられた部屋は南館4階。12畳+大きめの広縁を備えた部屋だった。
滝見苑 12畳客室
なんと充実した広縁だ。掘りごたつとはなかなか面白い趣向ではないか。布団は夕食時に敷いてくれる。

シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり(1人1本ずつサービスのペットボトル水が入ってた)。WiFiあり。浴衣はサイズ大が人数分置いてある。他のサイズを望む方は南館3階大浴場前に各種サイズが置いてある。窓から見える景色はこちら。
窓の外の景色
方角的にガードレールの先は粟又の滝だが、滝が崖下にあるのと木に遮られてるのとで見えない。滝の水音は聞こえる。


紅葉の時期が合いそうな大浴場

古代ロマンの化石風呂

滝見苑の大浴場は南館3階にある。入口の前に「掘っていくと1億5千万年前のウニの化石が出土しました。湧き出た鉱泉は飲用できて、多くの方から飲んだら体調が改善したとの声をいただきました。古代ロマンを感じるこの温泉を『化石風呂』と名付けました」というような文章が書かれている。

夕方~19時までは向かって左が男湯で右が女湯。19時~20時までいったん休止が入り、20時以降は男女が入れ替わる。

チェックイン直後に行った男湯の脱衣所で見た分析書には「メタケイ酸の項で温泉と認める」といった内容が書かれていた。他の張り紙には炭酸水素ナトリウムとか重曹のような語も見られた。源泉の湧出温度は20℃を下回って低かったと思う。加水なし、加温・循環・消毒あり。

黒湯ではない透明系のお湯

洗い場が9名分で、L字型の内湯浴槽は6~7名くらいの規模。お湯の見た目はほぼ透明。養老渓谷のあたりは黒湯なんだとの思い込みがあったから意表を突かれた。よくよく眺めると緑が混じった淡黄色を呈しているような気がする。

浸かってみると適温。熱くもないがぬるくもない。冬の寒い屋外からやって来て湯船に浸かるとほっとする温かさなのでいいんじゃないの。湯の花や泡付きはない。つるつるというか滑らかな感触があったかな。塩素臭はとくに感知せず。

露天風呂は2種類ある。どちらも岩風呂で、一方が「願いの湯」と名付けられた屋根付きの4名規模。露天風呂だけど開放感よりも隠れ家的な(?)おこもり感が強めだった。温度は外気に触れるせいか内湯より若干ぬるい。

もう一方は「叶いの湯」と名付けられた屋根なしの6名規模。こちらは露天風呂らしい開放感あり。位置的・方角的に養老川に面しており、渓谷が近くにある雰囲気をいくらか感じられる。ただし川や滝は直接見えない。また、日が暮れてから行ったときは付近の木々がライトアップされてた。紅葉の盛りだったらさぞかし見事だったろう。

ぬるい露天風呂を備えたもうひとつの大浴場

男女入れ替わった後の男湯も基本的には同じようなつくりだった。こちらは露天風呂のひとつが「ぬるめに設定してあります」と書かれており、ぬるいの好きだから期待して突撃。

まず洗い場は8名分。内湯浴槽は6~7名規模。「長寿の湯」なる露天風呂はやはり2種類あって、どちらも屋根付きの岩風呂。大きい方は7~8名規模でお湯はまあまあの適温。それほど混みあわずゆっくり入れるし独占チャンスも多い。

4名で一杯になる小さい方がぬるいと説明されていた方で、たしかにぬるかった。脇に生えている管から水(あるいは冷たい源泉?)がチョロチョロと投入されているからだろう。管の近くを陣取ると明らかにぬるくなる。一方で逆サイドの奥は加温したお湯の噴流口があるようで、そこを陣取るとむしろ熱い。場所によって温度差が大きい。

なんだかんだで夕方2回・夜1回・朝2回入りに行ったなあ。


食事面では安定のおいしさを提供してくれる

夕食の味噌鍋と釜飯がうまい

滝見苑の食事は朝夕とも東館2階の食事処で。別館や南館から行く場合、3階と2階の間は実際には1フロアを超える高低差がある。エレベーターを使わず階段で上り下りすると予想外に長く歩くことになるから、そのつもりで。

夕食時間に行くと、大広間を衝立で仕切ったテーブル席に主要メンバーがスタンバイしていた。
滝見苑の夕食
食前酒は杏酒。前菜はなんかいっぱいある。台の物は冬にぴったりの冬野菜を使った白味噌仕立鍋だ。千葉のお酒・腰古井の酒粕が入っているようだ。ほかに山女魚の塩焼と蓋物として豚角煮が出てきた。

締めの蟹の釜飯は着火してから出来上がりまで30分くらいかかるので、遅くならないうちに着火をお願いしよう。蟹のおかげか米がいいのか両方か、うまみが濃くてどんどんいける。いつもご飯を残してしまうのに、今日は我ながらさくっと完食したなー、と油断してたら、部屋に戻ってから急に胃にズシーンと来て苦しくなった。遅効性の満腹感。

爽やかな朝に卵かけご飯を

朝食も同じテーブル席で。ご飯はやっぱり釜飯タイプ(とくに味付けのない白飯だが)。
滝見苑の朝食
蟹に頼らなくても単体で甘みがあってうまい米。おかずなしでも全部食べ切れるレベル。しかし別途用意されている生卵を手に取ったら、前日「ぽっぽの丘」で食べた卵かけご飯のことを思い出した。もしかしたらあそこの養鶏業者さんから仕入れた卵かも…じゃあ卵かけご飯いっちゃいますか…思い込みで突っ走る奴。

しじみ汁と説明された味噌汁は、よく見ると中に緑っぽい色の麺が入っていた。めかぶそうめんだって。食後は紙コップで部屋にお持ち帰り可能なコーヒーあり。しかし帰り際に客が集中し、マシンで一杯ずつ淹れるタイプだったためかなりの待ち時間が予想され、あきらめてしまった。まあいい、その分ラストの風呂に集中しよう。

 * * *

当館の利点はまず粟又の滝至近というロケーションにある。我々はやっていないが、たとえば朝の散歩で滝まで往復するとかも全然無理のない行動である。また、わずかに残った紅葉の様子を見る限り、本当の紅葉シーズンだったらかなりいい景色が拝めるのではないかと思われる。

あわせて古代ロマンの化石風呂をどうぞ、ってところか。そういえば数年前にニュースになったチバニアンに関連する地層が養老渓谷の近隣エリアにあったな。実際関係ないだろうけど結びつけたくなってしまう。