1年を豪華に締めくくる土肥温泉「牧水荘土肥館」への再訪

土肥温泉 牧水荘土肥館
2022年の温泉旅行のラストを飾ったのが西伊豆・土肥温泉の「牧水荘土肥館」。当館は同じ年の春先に泊まったことがあり、同一年内に同じ旅館を利用したのはここが初めてではないかと思われる。それくらい初回の好印象とお得感が強かったのだ。伊豆縦貫道のおかげでアクセスもそんなに大変じゃないし。

我ら旅行メンバーを引きつけたのは、温泉の質もさることながら、このブログでしつこく繰り返しているようにぬるいお湯が好みだから。冬だからといって熱々の温泉に浸かりたいわけではないのだ。

しかもお得なプランを活用して食事をワンランクアップしたら、西伊豆らしい海の幸を筆頭に期待以上の内容。我ながら豪華に1年を締めくくった。

梅ヶ島温泉から土肥温泉への移動

登呂遺跡を見学していくつもりが…

2泊3日の2日目は梅ヶ島温泉・旅館いちかわをチェックアウトして静岡市の中心部へ出た。静岡市から伊豆までひたすら下道を行くつもりならともかく、さすがに高速道路を利用してさくっと移動したいので、単に直行すると早く着きすぎてしまう。

そこで少し観光していくことにした。まず最初は登呂遺跡。縄文時代だっけ? 弥生時代だっけ? という会話がなされるほどに何の予備知識もない状態で現地へ向かったのであった。

すると予想外の事実が判明…今日は休業じゃん! まあとにかく現地を見てみようということで登呂遺跡駐車場に車を止めて(500円)、公園内を歩き出した。登呂博物館はお休みです。
登呂博物館
稲田が広がる公園を奥へ進んでいくと復元された住居や高床倉庫がいくつか見えてきた。
登呂遺跡
休業日でも復元住居のそばまで近寄ることはできる。解説によれば弥生時代の遺跡だそうな。
復元住居と高床倉庫
家の戸には鍵がかかっていた。営業日なら中へ入れるのかもしれない。我々は住居のまわりをうろうろするのみ。よし、できる範囲での見学はした。次へ行こう。

世界文化遺産である三保の松原へ

お次は富士の美観で知られる三保の松原。途中の久能山東照宮なんかも気になったけど、そこまでやると今度は時間を費やしすぎになってしまうため断念した。三保の松原見学には清水羽衣公園駐車場が無料で広くて近くて便利。

駐車場から浜へ向かう間に松林を通り抜けることになる。三保の松原ですから。
三保の松原の松林
浜へ出ると…おおっ、見事な富士の絶景だ。
三保の松原から見る富士山
羽車神社という小さな社もある。天女伝説の舞台にもなっている羽衣の松の近くだ。やっぱり予備知識がなくて詳しいことはさっぱりだったけれどもお参りしておいた。
羽車神社
そしてこちらが羽衣の松でございます。三代目って書いてあるが…。
羽衣の松(三代目)
他の松は海風のせいか陸側へ傾いて生えているのに、羽衣の松だけは風に立ち向かうがごとく海側へ傾いている。さすが特別な選ばれた松だ。

先ほどとは別の富士山ビュースポットがもう1箇所あったので行ってみた。こちらの見え方は三保の松原に抱くイメージそのまんまって感じがするな。
三保の松原から見る富士山 その2

あとは高速に乗るだけ

駐車場の隣には「みほしるべ」という、ちょっとした展示館+売店があり、その屋上からも富士山がばっちり望める。
みほしるべ屋上から見る富士山
なお、反対側には日本平が見えた。今回は時間がなくてパスしたので、いつか行ってみないとな。

以上で観光終わり。三保~清水IC(東名)~清水JCT~新清水JCT(新東名)~長泉沼津IC~長泉JCT(伊豆縦貫道)~月ヶ瀬ICからの国道136号で土肥へ移動した。ちなみにお金と興味があって事前にしっかり計画できて風が強くなければ、清水から土肥までフェリーを利用するってのは面白いルートかもしれない。


文豪ゆかりの歴史を感じさせる宿

ところてんと若山牧水

さて牧水荘土肥館である。前回の記憶はまだまだ鮮明でいろいろと勝手はわかっております。車は玄関前に乗り付けたらキーを預けて移動してもらう。館内はちょっとグレード高めな旅館の雰囲気。接客なんかも上品で丁寧だ。

フロント先の囲炉裏風の湯あがり休憩所では土肥名物・ところてんをどうぞ。黒蜜かなーと思ってかけたタレは酢醤油だった。自分はところてん黒蜜派なんだが、ここの酢醤油ところてんの味は認めるスタンス。
湯あがり休憩所の囲炉裏
館内の至るところに書画・陶器・由緒ありそうなものが置かれていたり、牧水ギャラリーなる一室では若山牧水に関するさまざまな展示を見ることができる。
館内にある展示物
というように現代的でリゾート風というよりは歴史の風格を感じさせる老舗宿だ。

前回と同様、いやそれ以上に豪華な部屋

案内された部屋は…前回もなかなかの高級な部屋だったはずだが、もっとすごくてたまげた。本当に我々でいいんすか? 7.5畳+10畳+3畳+広縁の超余裕空間。
牧水荘土肥館 客室
メインの10畳部分をあらためて。
客室の10畳間
いやー、語彙が貧弱なんで「すごい部屋だ」としか言いようがない。島崎藤村「小諸なる古城のほとり」の詩を書き連ねた掛け軸とかあるし。ちなみに自分がこの詩を知ったのは映画「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」(第40作)の台詞に登場したからだ。まあどうでもいいか。

シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、別途精算の飲み物・酒が入った冷蔵庫あり。WiFiあり。室内のお風呂にも温泉が供給されている。
客室内のお風呂も温泉
窓の外はこんな感じ。前回の部屋とは方角が違うようだ。
窓の外の景色

土肥館はお風呂もいいぞ

温度の異なる3種類の露天風呂

土肥館の大浴場は1階と2階にある。翌朝5時までは1階の方が男湯で2階が女湯。その後入れ替えがある。チェックイン直後に1階の男湯へ行ってみた。もう2度めなんで、ぱぱっと描写しますね。

分析書は見当たらなかった。前回訪問時の記事によれば「カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」で加水・加温なし、循環・消毒あり。内湯はパスしていきなり露天風呂へゴー。そこに掲げてあった説明板に「含石膏弱食塩泉」の記述が見える。そして大きく目立つ文字で「○歓 全国特選露天風呂の宿 迎○」と書かれた看板があった。

露天エリアには岩風呂が3つ。手前から順に、4名サイズのあつ湯(44℃)、10名サイズのほどほど湯(41℃)、20名サイズのぬる湯(38℃)が並ぶ。ぬる湯派の我々はもちろん一番奥に全集中。

広くてゆっくり楽しめるのがいい

ここのお湯がまたいいんだな。一見すると無色透明で強く訴えかけてくるものはないが、石膏泉の個性を意識させられる匂いと、ほんのり温まってくるこの感覚がたまらん。ふにゃ~っとなってしまう。大きい岩風呂に多くてぽつぽつ数名がいるだけだから、かなりのびのびできるし(平日)。理想的。

眺望はなくても庭園風の環境が整えられていて気分がいい。ぬる湯に全集中と言いつつ、たまにほどほど湯やあつ湯に浮気してみたり。あつ湯はまじで熱かった。1分耐えるのがやっと。そのかわり、あつ湯→ぬる湯のコンボにより冷温交互浴的な快感を得ることができる。

夜に内湯へ行ってみたところ、洗い場が9名分で浴槽は8名サイズ。お湯は熱すぎない適温。前回の記憶に残っていた女神像が出迎えてくれました。

洞窟ミスト風呂付きの2階大浴場

翌朝起床したら、さっそく入れ替わった2階の男湯へ。こちらの内湯は洗い場が7名分。浴槽はソーシャルディスタンスを意識するなら5名、まあもうちょっといけるとは思う。

露天エリアはメインの岩風呂ひとつと洞窟ミスト風呂。洞窟ミスト風呂は数名が同時に利用できる半身浴場で、洞窟のようなつくりになっているので湯気がこもってミストサウナ効果あるよ、って感じだ。自分は内部をちょっと偵察してすぐ引っ込みました。

メイン岩風呂はぬるめの適温でじっくりと浸かっていることができる。中央部には学校の校庭にあるような乙女の像が。端の方には小便小僧もいる。頭上はゴムの木の枝が覆われ、周辺の竹やぶとあわせて緑豊かなイメージだ。ゴムの木は精気を放ち…とかの説明書きがあったような気がする。

なんだかんだで夕方2回・夜1回・朝2回入ったのかな。1回あたりの入浴時間もそこそこ長かった。土肥温泉を十分に堪能した。


文字通り「旅先でうまいものをたらふく食べた」が実現する

楽しみすぎる豪華な夕食

土肥館の食事は朝夕とも1階の食事処で。半個室スタイルといえばいいだろうか。とりあえず他の客は一切気にならない空間が確保されている。夕食はノーマルよりワンランク上のコースを予約していた。楽しみですな。スターティングメンバーがこちら。
牧水荘土肥館の夕食
出ました、アワビの踊り焼き。くねくね動くやつを直火で(以下略)。ズワイガニもある。鍋物はすき焼きだった。肉あり魚介ありで実に頼もしい限り。そして一人ずつに出てくる刺盛り。
刺盛り
ちょ、こんなにいいんですか。ぷりぷり・コリコリ・とろーり・甘み、こいつは食感と味覚の宝石箱や~。しかもそれだけじゃない。金目鯛の煮付けまで出てきた。
金目鯛の煮付け
うおー、もう食べ切れーん。などとうれしい悲鳴を上げながらひと通りいただいたが、お腹はもうパンパン。夜中に目が覚めた時にもまだ胃もたれ感が残っていたくらい。ここで摂取した栄養で年末まで突っ走るぜ。

朝食はやっぱりところてん付き

朝食の時間になってもまだ前夜の分が消化しきれていないような感じ。なんとかなるとは思うけど。で、目にした朝のメニュー。
牧水荘土肥館の朝食
ううむ、結構ありますな。土肥らしくところてんが付いている。もちろん酢醤油だけど、黒蜜派でも受け入れられる薄めのさっぱりした味。伊豆の焼き魚はやっぱりアジの干物。さらにイカ刺しもあるよ。あと、お粥とは別に普通のご飯が用意されている。

胃もたれがどうのと言ってたわりには完食できた。だってうまいんだもん。おかげさまで、もう昼ご飯は要りません。

 * * *

同一年に再訪という自分史上初の偉業を成し遂げた牧水荘土肥館。あらゆるスペック・温泉の質・うまくプランを選んだときのお得感、まったく非の打ち所がない。もう我々の定宿ってことでいいんじゃない、との声もあがったほどだ。

伊豆に温泉旅行に行きたいけど、どこがおすすめ?と誰かに相談されたら、まず当館を思い浮かべて候補に挙げるだろう。洋風リゾート・通好み・秘湯・激安などはっきりした切り口があれば別だが、万人に安心しておすすめできる宿となると当館かな。