時代劇のような世界で川見風呂 - かやぶきの郷 薬師温泉 旅籠

薬師温泉 旅籠
群馬への避暑旅も最終日となった。あのくそ暑い首都圏へ戻る前にもう1箇所だけ立ち寄り湯していこう。吾妻渓谷付近にいたので、そこと高崎を結ぶコース上でちょうどよさそうな温泉を探したところ、ありました。「かやぶきの郷 薬師温泉 旅籠」---浅間隠山の北麓、温川が流れる里にある。

ネットで調べたところ、名前の通りに茅葺きの家屋が並ぶテーマパーク風に見えた。ただの温泉旅館じゃなさそうだぞ、ここは。実際に現地へ行ってみたら予感は的中。他にはない演出を凝らしたユニークな温泉施設といえよう。

お風呂はロケーションを生かして川の流れを近くに見ながら入る微にごり湯。露天風呂では滝(堰堤)も見られる。コンセプトとムードを楽しむ施設とはいえなかなか侮れない。

薬師温泉「旅籠」への道

浅間隠温泉郷の当時の状況

当館を含む一帯の温泉を浅間隠温泉郷と総称する。そのひとつに鳩ノ湯温泉・三鳩楼という旅館があって、実はもともと行こうとしていたのはそっちだった。さっそうと乗り込もうとしたら玄関前に「日帰り入浴は終了しました」の札。えええ…ちょうど出てきたお母さんの説明によればコロちゃん以来日帰りをやってないとのこと。残念。
鳩ノ湯温泉 三鳩楼
事前に薬師温泉とどちらにするかで迷ってネット調査していたこともあって、代案と言っちゃあ悪いがすぐに「薬師温泉があるじゃないか」と気を取り直した。

整備完了した八ッ場ダムの見学後に

そんな経緯をふまえて朝からの流れを説明すると、前泊した川中温泉・かど半旅館をチェックアウトして、まずは八ッ場ダムへ向かった。旅の初日に訪れていたがエレベーターでダム下まで行けるようになっていると後で知ったのでね。忘れ物を取りに戻る気分で。
八ッ場ダム 天端より下流方向を見る
うむ、たしかに以前来たときと違ってダム下の工事はもう終わってるようだな。天端からエレベーターに1分ほど乗ると100m下の下流側からダムを見上げる場所に出る。建設中からの変化を見てきた身としては感慨深い。
下から見上げた八ッ場ダム
ダム見学をさせてくれる受付所みたいなのがあったけど11時~となっていたので温泉を優先してあきらめた。少し先のアガッタンという自転車型トロッコの終着駅を見てからエレベーターで上に戻る。
アガッタン終着駅
もしたっぷり時間があれば八ッ場ダム上~ダム下~吾妻峡を通しで歩いてみるのも一興だ。

それから県道377号→国道406号で三鳩楼へ。県道377の高規格なトンネルを抜けたらすぐに右折してR406への最短ショートカット道を選択したところ、これがえらく狭いくねくね道。対向車がいたらやばかった。運転しやすさを重視するならR406にぶつかるまで県道377をまっすぐ行った方が楽なはず。


時代劇の舞台のような温泉施設

大浴場へ向かうまでのエンターテイメント性が高い

さて、最初に書いた通り三鳩楼にフラレてしまったので急きょ500m先の薬師温泉に矛先を変えた。駐車場はよく整地されていて大きめで止めやすい。時代劇のセットのような入場門の自販機で入場券を買う。1000円。

あくまで雰囲気だけで言うなら温泉旅館というよりは各地にある観光用の「○○村」テーマパークを思わせる。敷地内には日本一の鐵大釜の展示とか、
日本一の鐵大釜
いろんな茅葺きの家屋があるんですよ。その内部は展示館だったり体験コーナーだったりするようだ。
茅葺きの家屋
各所を見学したいのはやまやまだが時間がない。ずんずん先へ進む。お風呂場へ行くにはまず旅籠というメインの棟に入る。館内は古民家にありそうな古道具が並んでてタイムスリップ気分。
メイン棟「旅籠」

温川を眺めながら入れる、なかなかよくできた内湯

左→右と進んだ奥にあるエレベーターで1階へ下りると浴場フロアへ出た。手近にあるのが男女の内湯だ。じゃあ入ってみよう。脱衣所の分析書によれば「ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉」。加水・加温・循環・消毒あり。

浴室はわりとモダンな感じ。カランは10台。奥の向かって右側に5~6名規模のメイン浴槽、中央に2名規模のゲルマニウム温浴槽、左側に2名分の寝湯があった。奥は全面ガラス張りで眼下に温川の流れを見せてくれる趣向になっているのはポイント高い。

メイン浴槽に浸かってみた。40℃くらいの体感でそんなに熱くないのは、宿泊客を迎える前の時間帯で本気のチューニングをしていない可能性があるにせよ、自分好みで結構なり。

お湯の見た目は無色のような茶色のようなどっちつかずのささ濁り。単純な無色透明ではない。湯の花や泡付きは見られず。匂いを嗅ぐと塩素臭はしなくてむしろいかにもな温泉臭を感知した。なかなか良いのでは。ずっと独占だったし、川をチラチラ見ながらぬるめの湯にじっくり浸かれたから満足した。

ゲルマニウム温浴と寝湯は温泉ではなく真湯だった。自分は温泉目当てだったためちょっと様子をうかがっただけでパス。

やや熱めの露天風呂も川のそばにあり

お次は露天風呂へ行ってみよう。離れた場所にあるからいったん服を着て脱衣所を出る必要がある。通路の途中にシャレオツな湯あがり休憩コーナーがあった。
湯あがり休憩コーナーかな
ここも「ゆったりと川を眺めてリラックスして下さい」なスペースになっている。窓際に座るとこのような景色が見える。スマホ撮影だと無理やり切り取った感のある風景だが、肉眼だと上流から下流までもっと広く視野に入ってきてもっと映える。
温川の流れ
露天風呂の方は男女分かれるところに無料のロッカーがある。そして男湯の脱衣所へ入ったところ、内湯よりは規模が小さそうだ。屋根付きの浴室にカランは7台。あとは5~6名規模の正方形に近い木の浴槽。奥の壁がなくて開放されているつくりで半露天に近い。

お湯の濁りは内湯よりも強いように見える。温度は適温。さっきぬるめを体験した後だから体感的に熱く感じる。匂いを嗅ぐと温泉臭が後退して塩素臭を感知した。露天風呂は景色重視で臨むとよい。

滝見のできるロケーション

そう、景色はセールスポイントになってるだけあってさすがだ。温川がただ流れるだけでなく滝を作っている場所を眺められるのだ。まあ砂防ダム的な堰堤ですけどね。情趣が増すことには変わりない。似た構図を持つ山梨・船山温泉の露天風呂を思い出した。

露天風呂の向こうに縁台(?)が付いていて、風呂を出て縁台を陣取ればもっとよく眺められるだろう。温泉にのぼせてきたら縁台へあがって滝を見ながらクールダウンするといい気分になれそうだ。

…おっと、そろそろ行かねば。関越道の渋滞に引っかからないうちに帰着したい。時代劇に描かれた世界から現代へ戻るとしようか。

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よくある温泉旅館とは一線を画す薬師温泉旅籠。失礼な物言いになっていたらすいませんが、こんな場所にこんな形で展開している施設があるとは、ちょっとした驚きであった。浅間隠山はいろんなものを隠しておるな。