2022年の夏よ、毎日毎日暑すぎだろ。もう勘弁して。で、ちょっと遅い夏休みを取って涼しげな万座への一人旅を計画した。1ヶ月前には霧ヶ峰へ行って「高原・高地はやっぱり涼しい」と再認識したってのもあるし。
途中で立ち寄り湯しようと思ってネットで調査したところ、半出来温泉の一軒宿「登喜和荘」が目に留まった。源泉かけ流しの本物温泉だそうだし、ぬるいお湯は自分好み。口コミから伝わる鄙び感・素朴感がまた興味をかき立てる。これは行くしかないでしょう。
実際、温泉のクオリティとしては半出来どころか上出来だった…誰もが思いつくフレーズですまんがそう言わざるを得ない。旅の一発目からいきなり当たりを引いてしまった。
半出来温泉「登喜和荘」へのアクセス
駅から歩く場合は吊り橋情報に注意
半出来温泉の最寄り駅はJR吾妻線・袋倉。ただし駅と宿の間の吾妻川を渡る吊り橋が通れなくなっているとのネット情報があり、現時点でどうなっているのか不明。駅から歩くつもりの方は最新状況を確認しておいた方がよい。吊り橋を通れるなら徒歩10分程度。
自分は湯めぐりの効率を重視してレンタカーにした。このところは車の運転に慣れてきたおかげで大きな苦労もなく関越道上里SAに到達して小休止。上里は小麦が特産とのことだから朝昼兼用でうどんを食すことにした。真夏ゆえ熱いのを避けて冷麺風うどんを。
お味は…うん、冷麺ですね。それから渋川伊香保ICまで走り、あとは吾妻線や吾妻川と並走するように西進すると、八ッ場ダムの前を通りかかった。
4回目の八ッ場ダム訪問
八ッ場ダムには建設中(2017年)・堤体が完成して試験湛水中(2019年)・供用開始後(2020年)の3回訪れている。この日でもう4回目か…嬬恋/草津/吾妻エリアへ行こうとするとたいがい通るから、おなじみのスポットになるのはある意味当然で、西伊豆における馬ロックみたいなものかな。じゃあちょっと見ていくか。
水位は低めに見えた。大雨台風に備えたい夏だからでしょう。はい、八ッ場ダム4回目クリア。だがこの旅の最終日に再び八ッ場ダムを訪れることになろうとは、当時は知る由もなかった。
それから上田・鳥居峠なんていう行先標識を見ながら国道144号を走っていくと当館の看板が現れた。あまり目立たないからカーナビの助けが欲しい。また国道沿いに「登喜和荘駐車場」の看板が立つ、車数台分の未舗装空き地があるが、脇道へ曲がって旅館の真ん前まで行けば舗装された駐車場もある。ただし脇道は幅が狭く、駐車場は車の取り回しにあまり余裕がない(自分の技量では)。
素朴な風情の中で本格温泉を楽しめる
運良く独占チャンスをゲット
当館は駐車場から一見すると普通のお宅っぽいけど正面玄関の前に立てば温泉民宿らしくなる。では入館。フロントで日帰り入浴の旨を告げて支払いをする。500円。説明された通りに奥へ進んでいくと、いかにもレトロな温泉宿の雰囲気だった。
この廊下のつきあたりに分析書が掲示されていたような。「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、中性、低張性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒いずれもなし。おーグレイト。
男湯の脱衣所に他客の気配なし。これは独占チャンスじゃないか?…湯船が大きいわけではなくてお湯がぬるいとなると、長湯中の先客がぎっしりで割り込みにくい場面を心配しなきゃいけないが、今回は大丈夫。この調子だと女湯にも誰もいないと思われ、混浴扱いになっている露天風呂へ気兼ねなく入っていけそう。よっしゃ。
湯力が刻まれたレトロな内湯
まずは内湯をさくっと体験しよう。洗い場は3名分、内湯浴槽はゆったり4名~向かい合わせに詰めて6名くらいのサイズ。湯口の上にコップ風のが置いてあり、飲泉できるのかと思ってちょっと飲んでみたら微妙に塩辛かった。
お湯の見た目は薄く濁った無色。浸かってみるとぬるめだった。ただしぬる湯と呼ぶほどぬるくはない。泡付きや湯の花は見えず。匂いを嗅ぐと、なんて言うのかわからんが塩化物泉にありがちな特徴を感じた。なかなか結構なお湯だ。
カランを除く浴室全般はレトロ鄙び感が深く刻まれている。好みは分かれそうだがこういう風情を喜んじゃう客層はそれなりに多そうだ。浴槽の縁からあふれたお湯はただひたすら床の上を流れていく。その通り道になってる床の上は完全にドス黒く変色していた。こりゃすげえや。
極楽ぬる湯のメイン露天風呂
では本命の露天風呂へゴー。外へ出て少し歩いた先にある。混浴を気にしておそるおそる近寄っていくと誰もいなかった。よっしゃ独占。とっても素朴な木の浴槽で、3~4名サイズの主区画と、そこより少し高い位置に底上げされた1名サイズの小区画からなる。
最初に主区画へ入る。おー、ぬるいぬるい。37~38℃くらいかな。こいつはもうぬる湯と呼んで差し支えないレベル。お湯の特徴は内湯と似ており、とにかくぬるいので無限に入ってられそう。
露天エリアは草花や木々に囲まれ、目隠しの塀があるようには見えず、開放感と野趣に富んでいる。そう遠くないところに吊り橋を眺めることができ、そいつが例の駅に通じる吊り橋ではないだろうか。もし渡れるんだったら吊り橋から露天風呂が見えちゃうかもね。
熱いけど泡付きがとんでもない小露天風呂
おっと、小区画にも入ってみなければ。無限に居座れそうな主区画をいったん脱して小区画へ移動した。おー熱…くはないけど適温ってところ。普通の温泉の温度ですな。そのかわり泡付きが強い。微小な泡が腕などにどんどんくっつくのがわかる。こりゃすげえや。
小区画は湯口からの源泉がダイレクトに、しかも浴槽サイズに比して大量に投入されるからだろう。小区画からあふれた分が低い位置にある主区画へ流れ込み、やがて温度が下がるという寸法か。なるほどね。
ぬる湯の主区画か、泡付きの小区画か、好みでどうぞ。おすすめは両者を行き来する冷温交互浴だ。ぬるい湯(長時間)→比較的熱い湯(短時間)→ぬるい湯へ戻ると爽快感が半端ない。周りの景色とあわせてすっきり晴れ晴れとした気分になれる。
だいぶ長いこと露天風呂にいたな。やがてひとりのシニア男性客がやって来たので場所を譲ることにして内湯へ戻り、内湯をぜいたくな上がり湯として仕上げてから半出来温泉を完了。旅の1湯目を首尾良くきめて上機嫌で万座へと向かったのであった。
* * *
オリジナリティーのない言い回しですまぬが半出来温泉は上出来ですとしか言いようがない。時間が許せばもっと長く居座っただろうな。内湯ももちろん上出来だが、他客との兼ね合いになるのを承知であの露天風呂はお試しに値する。
登喜和荘は宿泊もやっており、スッポン料理が売りのようだ。レトロ旅館+温泉+スッポンとは思いもよらぬ組み合わせだ。そっちもちょっと気になるところではある。