やって来ました奥会津。はるか昔にJR只見線を乗り鉄したことがあるくらいで、ほとんど縁のない土地だったから、ちょっと気になるというか、いつかちゃんと行ってみたい場所の候補ではあった。とはいえ例によって一人旅だとなかなかハードルが高そうに思えて、ずっと後回しにしてきた。
そしてこれまた例のごとく仲間内の「人生で一度は行ってみたい」シリーズ企画に救われた。あるメンバーがボソッとつぶやいたのである…「奥会津ってどんなところなのか気になってるんだよな~」。ですよね、そうですよね、と自分も乗っかって企画の成立に至った次第。
広い奥会津の中で今回は檜枝岐村・田子倉ダム・只見線絶景ポイントを選んで巡ることになった。
第1章:檜枝岐村の歌舞伎文化
先に見ておくとよい歴史民俗資料館
尾瀬の玄関口・檜枝岐村には人を寄せ付けない山奥の秘境イメージを抱いていたが、雪の季節はいざ知らず、少なくとも夏場に車で会津田島側からアプローチする分には大きな問題はなかった。国道352号はそこそこ整備された道で運転に難儀することもない。※反対の新潟県魚沼側からアプローチしてはいけない。そっちは酷道として有名だから。
初日に泊まる旅館ひのえまたへのチェックイン前に寄り道したのが檜枝岐村歴史民俗資料館。無料。規模はそれほど大きなものではない。
撮影可かどうか不明だったので中の写真はありません。1階は檜枝岐歌舞伎関連の展示になっている。檜枝岐村には江戸時代から続く農村歌舞伎の伝統があるとのこと。恥ずかしながらそういう予備知識ゼロで訪れているから、いちいち「へー」という感じ。
2階へ上がる階段の先で鹿の剥製がこちらを覗き込んでいたのはちょっとした遊び心ですかね。2階は工具・漁具の展示や尾瀬の紹介コーナー。
資料館ではレンタサイクルもやっている。また、向かいにある村役場と東雲館なる公民館は「おっ?!」と目を引くデザインだ。最初はこっちが資料館かと勘違いしてしまったくらい。
歌舞伎の舞台はぜひ見たかったが…
実際に歌舞伎が演じられる舞台も村の観光スポットになっている。旅館ひのえまたのすぐ近くなので、翌朝チェックアウト後に散歩がてらに訪れてみると、シートがかかっていて見学できなかった。残念。大きなイベントが近いみたいだったから本番前の手入れかな。
すぐそばには歌舞伎伝承館千葉之家もある。我々は時間の都合でパスしちゃった。すんません。
歌舞伎舞台のある神社への参道の途中に祀られているのが「橋場のばんば」という縁結び・縁切りの神様。なんか大量のハサミがお供えされているぞ。縁結びを祈願する際は切れないハサミ、縁切りの際は切れるハサミをお供えするんだそうな。自分は…キレてないですよ(小力)。
第2章:只見川のダムめぐり
ダムの上から別のダムを見る体験ができる只見ダム
さてお次はダムを求めて只見町へ。車で1時間くらい走るから決して近くはない。広いぜ奥会津。そうしてたどり着いたのが只見ダム。ダム湖(只見湖)の向こうには田子倉ダムの姿がもう見えている。こういう景色はなかなか珍しいのでは。
天端を歩くと、ここがロックフィルダムであること・発電用ダムであることを直接視認できる。
下流方向はこんな感じだ。この夏は電力不足がよく話題になってたからなあ、頑張れ只見発電所。
詳細は割愛するがちょっとした展示館もあり。水力発電に関する解説がメインでダムカレーのような飲食・売店系はない。ダムカードはもらえるようだ。
スケールの大きい田子倉ダム
田子倉ダムはもっと大規模だ。天端や展望台のあるところまで登っていく道路が結構な急坂で、ダムの高さが相当なものであることをうかがわせた(堤高145m)。現地の迫力に期待しつつ到着。駐車場から天端の様子がよく見える。
冒頭の写真に示す通り、高さによる迫力を感じさせる重力式のダムである。発電所の規模も大きい。下流方向には先ほどの只見湖と只見ダムが見える。
ダム湖(田子倉湖)に関しては高い位置から見下ろす展望台や天端から見るよりも駐車場すぐの撮影スポットから見る景色が良かった。こいつを遡ると奥只見ダムがあるのだなあ。で、そのあたりになると魚沼とか栃尾又温泉のカラーが濃くなってくるのかあ。妙な感慨にふけるおじさん。
ダムロマンと鉄道ロマンの合わせ技
田子倉湖を見下ろし、なおかつ只見線の線路のすぐ近くに接近できるスポットがあるというので行ってみた。車で上流方向へ7~8分の田子倉無料休憩所がそれ。
近くの橋の上から田子倉湖を見る。メンバーの一人がつぶやいた…「湖じゃなくて川って感じだよね」。それを言っちゃあ…。ちなみに次の写真の左側・線路が吸い込まれていくスノーシェッドのところは廃止された田子倉駅跡だ。
で、この線路がいったんトンネルをくぐって田子倉無料休憩所のそばに出てくる場所がこれ。むろん線路内に立ち入ってはいけません。
第3章:有名撮り鉄スポットにて
鉄成分が増してきたところで、お次は有名な撮り鉄スポットへ行ってみましょうか。目的地の第一只見川橋梁ビューポイントは田子倉ダムから約1時間。広いぜ奥会津。基本的には「道の駅 尾瀬街道みしま宿」を目指し、そこの駐車場に止めればいい。我々は列車通過時刻の10分前に到着。
ビューポイントは駐車場近くの道路から見るA地点、山を1~2分登るB地点、さらに急な登りをもう5分進むC・D地点がある。Aは木が邪魔だったりしてよく見えず立ち止まる人もいない。映える写真を撮るならB~Dだけど、Bはすでにたくさんの人でにぎわっていたため、頑張ってC・Dまで登っていった。結構きついよ。
CもDも人は多かったがBに比べたらまだマシで我らの入り込む余地は残っていた。やがて予定より遅れて列車がやってキターーー!!
列車は事前に汽笛を鳴らして接近を知らせてくれたり、橋にさしかかるとスピードを落としたり、こちらの都合をいろいろ考えてくれてるみたいだ。しかし鉄マニアじゃないのに有名なアングルからの写真を撮ったというだけで喜んでしまうのはなぜなんでしょうね。
第4章:雨の妖精美術館
当時はサロメ幻想展を開催中
先ほどの撮り鉄タイムは実に幸運だったことが後に判明した。現地を去ってまもなくすると、にわかに空が暗くなってゲリラ豪雨が襲ってきたのである。途中で寄り道したり道の駅で休憩して次の列車を待つ策に出ていたら大変な目に遭うところだった。間一髪。
今宵の宿へ入る前の最後のスポットは屋根のあるところにしましょう、ということで金山町の沼沢湖にある妖精美術館へ。ひとつ注意点としては、三島町から向かう際はグーグルマップやカーナビが誘導したとしても、宮下発電所脇を抜ける県道237号を使わない方がいい。いきなり通行止めになってたりするし(経験者談)、道が狭くてUターンするのも一苦労だ(経験者談)。無難に国道252号を走るべし。
妖精美術館とは?…迷わず行けよ、行けばわかるさ。入場料300円。訪問当時はサロメ幻想展をやっていた。館内は撮影禁止の場所があるので注意。
光のクリスタルはありませんが…
アート系の素養がまったくないので正直さっぱりわかっていないが、1階はワイルドの戯曲本の挿画を描いたビアズリーに関する解説が多かったような。あとはこうしたオブジェなど。
2階は絵画・彫刻が並ぶ。
個人的にはタツノコプロ作品のキャラデザインとファイナルファンタジーのイメージイラストに結び付いてる天野喜孝先生の作品もあったぞ。そのほか常設展示もあり。こうして各作品を鑑賞してみると妖精ってかわいいというより不気味なんだな。
さて旅行2日目のイベントはおしまい。奥会津の観光候補地+αを回れてお天気面でも大ラッキー。あとは温泉宿でゆっくりしよう。
終章:再びの大内宿
翌日、旅館をチェックアウトしたらあとは帰るだけ。でも最後にもう1箇所だけ見学しましょう。かつて湯野上温泉への一人旅で訪れたことがある大内宿だ。江戸時代の宿場町風情を残す家並みが街道の両脇に並んでいる。
これらの建物のほとんどが土産物店や飲食店として営業中で、名物はネギ1本を箸代わりにするねぎそば。昔試したことあるけどなかなか扱いが難しかったな。
一番奥まで行くと小高い展望所へ登る道があって、展望所から大内宿を一望できる。記念撮影不可避。
以上で今回の旅行も無事終了。気になっていた奥会津をそこそこのお天気の中で周遊できて良かった。おかげでもうすっかり気にならなくなった、と言うには奥会津は広すぎるけど、ひとまず満足した。