南アルプスの懐・寸又峡への旅も2泊目となった。連泊しても別にいいんだけど、体験の幅を広げてみたいし、気になるプランを見つけたからという背景があって、宿を変えた。それが「翠紅苑」。同行メンバーがいろいろ調べてくれて、かなりお得なプランを見つけたのであった。しかも口コミによればお湯はぬるめで提供されているらしいから好みに合ってる。
現地に着くと、当宿は温泉街の入口に立つ結構いい感じの旅館だった。利用したプランのお値段だとずいぶんとお得に思えてしまう。ハード面・サービス面でいい思いをしたうえに露天風呂はぬるめで大満足。平日休みを取って2泊3日にした甲斐があったってもんだ。
寸又峡温泉・翠紅苑への道
前回記事のダイジェストみたいですが
寸又峡2日目の朝。朝日山荘をチェックアウトした我ら一行は寸又峡最大の名所・夢のつり橋へ向かった。詳しくは別記事で触れるとして、深い峡谷にかかる素朴な吊り橋で揺れるから、なかなかのスリルを味わえる。橋の上でスマホを取り出して写真を撮る勇気はなかったね。
夢のつり橋から温泉街へ戻ってきてもまだ正午前。この後の計画はきっちり決めていなかった。どうしよう…どうやら翠紅苑のチェックインが14時半から可能ということがわかり、車で往復2時間ちょい程度の範囲で観光すればちょうどいいね、ってことでいったん寸又峡を離れて井川地域を目指す。
しばらく走って井川に着いた。めったに来られない奥大井、せっかくここまで来たらもっと奥へ、と畑薙ダムまで行ってみることになった。
翠紅苑チェックインまでの経緯
人が全然住んでいないような山の中の、すれ違い困難な細い道をひたすら進む。ダム関係者と登山者のためだけにあるような道路だ。自分が運転すると泣きが入りそう。他にドライバーがいてくれて良かった~、というくらいの秘境なので、自分にとっては一生に一度級のスポットだ。
目的の畑薙第一ダムに到着。かなり山奥まで走ってきた気でいたが、大井川はまだまだ先に続いてる。「リニアの工事区間ってこのへんですかね~」なんてのん気に発言したら、鉄道に詳しいメンバーが即座に否定した。まだまだずっと北の方だって。え~、そうなんですか。気が遠くなるわ。
ここで引き返して、途中の井川ダムを見学するなどして寸又峡温泉街に戻って来たら15時。翠紅苑は温泉街の入口にある目立つ建物だからすぐわかる。寸又峡エリアにはかつて森林鉄道が走っていたそうで、お向かいのバス停横には当時の車両が保存されている。
なんだかいい感じのムードある宿
ではチェックイン。館内は落ち着いた雰囲気の「ちょっといい宿」的なムードがある。とはいえ敷居の高さはなくて客層には小さい子連れのファミリーも目立つ。ロビーはやや重厚な感じ。
我々が案内された部屋のある2階の廊下が妙に凝ったつくりだったので思わず撮影した。エキゾチックジャパン風でもあり、見方によってはSFチックでもあり。
で、部屋の方は予想外に二間続きでした。我らには十分すぎる広さ。こいつはありがてえ。手前側がテレビのある6畳間。
その奥にメインの居室となる8畳間。とてもきれいにされていて居心地は抜群。布団は夕食時に敷いてくれるクラシック方式。朝は上げずにそのまま。
シャワートイレあり。洗面台が2つ設置された小部屋の扉は、最初のうち押入れか何かだと思い込んで開けずにいて気づかなかった。タオル掛けもこの小部屋にある。あとは金庫あり、空の冷蔵庫あり、WiFiもちろんあり。何の問題もありません。
駐車場側の部屋なので窓の外はこのような感じ。新緑が目にまぶしい。
寸又峡温泉の個性を残しつつ入りやすくなってるお風呂
万人向きにチューニングされた当館のお湯
翠紅苑の大浴場は1階の奥の奥にあった。我々の部屋からだと中庭の向こうにある棟を経由して回り込んで行く…言葉だけじゃなんだかわからないですね。大浴場の手前に自販機コーナーがあって、ジュースやビールはそこで買える。
男湯と女湯は夕食の時間帯を境に入れ替わる。夕方の時点ではやや広い方が男湯だった。脱衣所の様子とかはもう記憶があやふやになっちゃったなあ。特に引っかかるところはなかったはず。掲示されている分析書をチェックすると「単純硫黄温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」だった。加水なし、加温・循環・消毒あり。このへんは各旅館共通と思われる。
浴室に洗い場は8名分。旅館のグレードに合わせた雰囲気で誰もが快適に利用できるだろう。内湯浴槽は5名サイズがひとつ。前泊の朝日山荘と比べるとお湯の見た目は普通の無色透明に近く、タマゴを思わせる硫黄臭やヌルヌルした触感も弱めだと感じた。
しかし温度は熱すぎない適温で万人向き。個性の角が取れて丸くなったと言えばいいだろうか。湯の花は同じ程度に見られるし、塩素臭はしないから、よろしいのでは。
ぬるくて湯加減最高の露天風呂
続いて露天風呂へ。こちらは8~10名サイズの岩風呂。周囲は塀で目隠しされていて眺望はないが露天らしい開放感はある。ここが素晴らしかったのはお湯がぬるかったこと。結局は個人的な好みなんですけどね。同行メンバーが目をつけた「ぬるい」との口コミはこいつを指していたのか。
寸又峡温泉の泉質でぬるくて長湯できるってのはたまらんですな。他の客を観察すると、やっぱりいったん浸かり始めたら長い。あるいは一度出ていってもまた戻ってくる。温泉をじっくり楽しみたいと思う人ほどここが狙い目になるのだろう。宿泊中に体験した中ではベストな湯船だった。夕方しか入れなかったのが惜しい。
もうひとつの大浴場も基本は一緒
夜~翌朝はもう一方の大浴場が男湯。こちらは先ほどのと比べて全般に小さめ。洗い場は6名分で内湯浴槽は4~5名サイズ。ちょっと熱めだったような(特に翌朝)。お湯の特徴は基本的に一緒で、硫黄臭やヌルつきはより鮮明になっていた。まあ気のせいかもしれないし、時間帯の関係でお湯のヘタり具合が違っていたのかもしれない。
こちらの露天風呂は5名サイズ。泉質が泉質だけに足元がつるつる滑り、何度かコケそうになった。注意。ややぬるめのチューニングだが、前述の露天風呂ほどにはぬるくない。ぬる湯大好物の同行メンバーが「あと一声」と言いたげな、ちょっと物足りなさそうな顔をしていた。
それでも一般人からみればぬるい部類に入るはず。ともかくも「日本人には42℃で提供しておけば文句ないでしょ」みたいな固定観念に縛られていないのはありがたい。結構いい特徴を持った温泉だからゆっくり入りたいのよ。
秘境でありながら雅なお食事
春の味覚で攻める夕食メニュー
食事会場は大浴場へ向かう道筋の途中にあった。個室ではなく大広間風だったかと思う。ちょっと記憶があやふや。案内されてテーブル席に着くとすでにセッティングされていたスターティングメンバーがこちら。
先付に煎茶とぜんまいの白和え、前菜にたけのこ・わらび寿司と春の味覚が登場。いいじゃない、いいじゃない。後で出てきた揚げ物にも山菜あり。空っぽに見える板の上にはあまごの塩焼きが運ばれて乗る。台の物は浜名湖育ちの豚しゃぶだって。旅の高揚感とともに難なく胃袋へ収まっていった。
前夜に続いてここでも、話題は今後の構想について。こういう構想を巡らせている時が楽しいのよね。温泉めぐりはもちろんだが星空観察ツアーなんていう案も飛び出したりして、さてどうなりますか。このグループの「人生で一度は行ってみたいシリーズ」企画を原動力として、自分の時・金・体の都合がつくうちにやれるだけやっておかないとな。
朝食も優雅にどうぞ
朝食も同じ場所で。小鉢が並ぶ和定食だ。
鍋は味噌汁でないのはたしか。湯豆腐だったか、それとも違ったか…帰ってから急にいろんなことで忙しくなって文章化するのが先延ばしになってしまい、しかもいろんな用事で頭がいっぱいになってしまい、いざ時間に余裕ができて書こうとすると思い出せない。ちょっと今回は記憶に苦労しております。
なお、朝食時間は7時台から8時まで選べるので8時にしたが、朝風呂が9時までなので、朝食後に入ろうとするとやや忙しくなる。※9時までに浴場へ入ればセーフなのが救いか。
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旅館のグレードとサービス内容でずいぶんいい思いをした。それにもかかわらず、最初に書いた通り、想像されるほどお高くないプランで利用できたから、とってもお得な気分。
その点を抜きにしても、寸又峡という大自然の秘境へ行ってみたいが宿泊先には洗練された旅館を希望する向きにはちょうどぴったりくるはず。加えて、硫黄×ツルスベの寸又峡温泉をぬるめで楽しみたい方にもぴったりといえる。