房総半島の真ん中らへんに亀山湖がある。亀山ダムによってできたダム湖だ。亀山湖じたいは今回の遠征目的地ではなかったが、近辺に温泉宿があり、宿泊先として旅程にうまくはまる場所だった。しかも最寄り駅が上総亀山、つまり上総の地ということで、この旅で掲げたキーワード「鎌倉殿の上総広常」に合致する。ちょうどいいじゃないか。
お世話になった「亀山湖 湖畔の宿 つばきもと」は、主に釣り人向けのように思われるものの、もちろん違う目的で泊まったってかまわない。お風呂は小ぢんまりしたもので、運用スタイルの関係から長時間・回数多く入ることは難しい。それでも結構しっかりした黒湯に入ることができて、なおかつ炭酸泉、しかも貸し切り。ある意味で恵まれている。
亀山温泉「湖畔の宿 つばきもと」へのアクセス
ローカル線以外に高速バスを使う手がある
つばきもとの最寄り駅はJR久留里線の終点・上総亀山。ここから1.6km・徒歩20分になる。無料送迎もしてくれるみたい。久留里線に乗ったことがないから実際はわからないが、きっとのんびりローカル線の旅を楽しめるのではないかと思う。
ちなみに上総亀山駅がこちら。チェックアウト後に写真を撮りに寄ってみた。残念ながら車両はいなかった。
他に東京駅や千葉駅から高速バスが出ている。笹(亀山湖入口)あるいは藤林大橋バス停下車。こちらも送迎があるようだ。
なぜか鉄道駅へ寄り道してしまう
自分はレンタカーを利用。上総広常ゆかりの玉前神社へお参りし、勝浦つるんつるん温泉に入浴した後、勝浦タンタンメンを食してから当宿へ向かった。車のアクセルを踏み込むたびにエンジン音が「ぶえいー」と聞こえるのは大河ドラマの見過ぎか。
主に国道465号を通るルートのため、いすみ鉄道と並行する区間が続いたから、思いつきで上総中野駅へ寄り道してみた。いすみ鉄道と小湊鐵道双方の終着駅という点がローカル鉄道ロマンを感じさせる。
両路線の車両が一緒に止まっていたらいい風景だろうなとの期待に反して駅はがらんどう。何もいない。
自分は鉄ちゃんではないので、ここでずっと張り込むつもりはない。あとはもう、つばきもとへ直行しましょう。武衛武衛と唸り声を上げる車を駆って亀山湖を目指した。R465は大多喜町から君津市へ抜けるごく短い区間が狭いだけで基本的に非熟練者でも問題なく運転できる。当宿の最後のアプローチ100mほどがすれ違い困難な狭い道だけど、よほど運が悪くない限り対向車とご対面にはならないはず。
亀山湖はこんな感じ
亀山湖まで行ったのにまともに見学していない。チェックアウト後に宿の周辺をちょっと散歩しただけだ。すぐ近くにあったのがボート乗り場。
振り返ればつばきもとの建物が見える。
隣地がキャンプ場と芝生の広場で、ここから見える赤い橋が印象的だ。水の上には釣り人を乗せたボートがいくつか浮かんでいた。
まさに湖畔の宿だった
いかにも釣り人の宿の雰囲気あり
ではチェックイン。フロントにお風呂の時間割表が置いてあって、いくつかの時間帯には早い者勝ちで部屋番号が記入ずみだった。なるほど、時間別の貸し切り制なのね。夕方の男湯はもう埋まっていたから、夕食を19時にしてもらって、その直前の時間帯をゲット。勝浦タンタンメンでお腹いっぱいだから夕食は遅い方が好都合。
釣り人の宿だけあって、ロビーは釣具や釣り関係の冊子に囲まれている。自分にはよくわからない世界だが、なんだかすごいぞ。
客室は2階。部屋ごとに個別の下足箱が用意され、開けると1階をうろつく用のサンダルと2階をうろつく用のスリッパが中に入っている。スリッパに履き替えて2階へ上がるとこのような感じ。お酒を含む自販機があります。
温泉目的の客も十分快適に過ごせる
割り当てられた部屋は8畳和室。布団はセルフでお願いします。
上の写真だけだと非常に素っ気なく見えてしまうので別角度のやつも。空の冷蔵庫・テレビ・電気ポット・浴衣・丹前といった旅館的なアイテムはひと通りある。金庫はない。シャワートイレ・洗面台あり。フリーWiFiあり。
窓から外を眺めると上述のボート乗り場やキャンプ場がすぐそこ。
キャンプに興じるファミリーの声が聞こえたりはするが気になるものではないし夜はとても静か。そういえばチェックインの際に22時消灯と説明を受けた。釣り人の朝は早いし、夜遅くまでガヤガヤする傾向はなさそうに思う。温泉目当てで静かに過ごしたい自分には都合がいい。
もっとたくさん入りたくなってしまうお風呂
入浴時間はきっちり管理されている
つばきもとのお風呂は1階の食堂を突き抜けた奥にある。先に書いた通り、夕方~夜は一定時間ごとの枠(自分の順番が45分間だったから45分枠かな)に区切って貸し切りにする方式。チェックイン時に空いてる中から希望の時間帯を選ぶ。夜は22時まで。
ちなみに朝は枠指定がなかった。自由なのかなと思い、ネット情報で6:30~8:00と知って朝一番で行ってみると(すいません、勘違いで6時過ぎに行っちゃいました)、フロントに「当面朝風呂は休止します」と書いてあった。あきらめつつ悪あがきで「朝はだめなんですね」と聞くと「ああ、どうぞ」とのことで入ることができた。ありがてえ。
※たまたまのご厚意かもしれず、各位におかれましては最新ルールを確認の上、当然入れるものとして要求しないようにお願いします。
モール泉的な匂いのする黒湯
1階つきあたりの右が男湯、左が女湯。つきあたりの壁に分析書が貼ってあり、「ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、低張性、アルカリ性、低温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒あり。低温泉でも加温しているためにぬる湯というわけではなさそうだ。
脱衣所を経て小さめの浴室に入るとカランは2台。浴槽は2名、いくらか詰める感じで3名程度のサイズ。濃い茶色のお湯で満たされ、底はどうにか見えるものの、透明度はそんなに高くない。浸かってみるとやはりぬる湯の部類ではなく、熱くない適温といったところ。
ヌルヌル・ツルツルの感触はなかった。匂いの面では軽い鉱物臭を感知した。昼に体験した勝浦つるんつるん温泉ほどの尖りはなく、マイルドさが加わっており、どちらかといえばモール臭と呼びたい印象だ。これはこれでしっかりした黒湯であって悪くない。
炭酸泉を独占で楽しめてしまう
湯口は枯れているのにお湯の中に噴流を感じる。さらに湯面にあぶくが浮かんでいる。こいつは浴槽の中のどこかからお湯を入れているに違いない、と探してみたらたしかに噴出孔があった。どうやら気泡を混ぜたジェットバス風にしているようだ。だからあぶくが浮かんでいるのだ。
しかも腕を中心にまるで炭酸泉のように細かい泡がびっしりと付着した。ジェットバスにありがちな気泡なんてもんじゃなく、まさに炭酸泉のレベル。スーパー銭湯なんかでつねに人気を集める人工炭酸泉のアレを取り入れてるんだと思うが、もし仮に温泉由来の天然の泡だったらかなりすごいぞ。
黒湯+炭酸+熱すぎない+独占ってことで満足度高く楽しめるお風呂ではないかと思う。
釣果を眺めながらいただく食事
魚がうまい「お手軽定食」の夕食
つばきもとの食事は朝夕とも1階の食堂で。テーブル席をアクリル板で区切って相席感が出ないように工夫してある。希望した19時に行ってみると、誘導先の席にスターティングメンバーが並んでいた。スタンダートの「お手軽定食」プランだ。
お手軽といっても結構ボリュームあるぞ。豚肉は着席時点でほとんど出来上がっており、すぐに蓋を取ってくれる。これらのおかずが相手だとご飯をおかわりしたくなるけど、14時台に食べた勝浦タンタンメンの影響が…。むしろご飯を少なめに抑えて、ビールのつまみとして各品をいただくことになった。
焼き魚がもし亀山湖で釣れたものならロマンいっぱいだが(海の魚か川の魚かもわからないおじさん)、そこはまあおいといて、オリーブオイルと合わせた調理がよくできてるなと思った。これはうまい。さすが釣り人の宿は魚をおいしく仕立てる術を知っている。
朝食も結構ボリュームある
朝も決してお手軽ではない内容。十分オブ十分でしょう。
焼き魚は海でとれたアジの干物、それくらいはわかります。目玉焼きチームは着席時点ですっかり固形燃料が尽きた状態で出来上がっていた。ヨーグルトはマザー牧場?…いや知らんけど。千葉で酪農品といえばマザー牧場を連想してしまうのは古い人間の性か。
ところで食堂付近には亀山湖でブラックバス等の大物を釣り上げた記念写真(?)がたくさん掲示されていた。50~60cmのやつが多かったな。それらを眺めながらの食事もなかなか面白い。
* * *
純粋に温泉目的の宿泊は、もしかすると本来の趣旨から外れた利用法かもしれないなあ、と思いながらもお世話になったつばきもと。露天風呂だのサウナだの広くてたくさんの湯船だのはない代わり、黒湯の炭酸泉を独占で楽しむことができるのは、割り切れる人にとっては狙い目とも考えられる。
欲を言えば運用の関係で夕方~夜にかけて各自1回しか入れないのを希望者だけでもチャンス拡大できれば。そう思ってしまうくらい、もっと体験してみたかった温泉であった。
※コロちゃん事情による期間限定の運用スタイルかもしれないので、その点は最新情報をご確認ください。