修善寺遠征の帰りに熱海へ寄ることにした。駅から徒歩圏内にいくらでも温泉施設がありそうだし、なんなら寿司や海鮮丼で一人打ち上げってのも悪くない。最後は上りの東海道線に乗るだけと思えば気は楽だ。ここからなら新幹線を使うまでもなく各駅停車で十分でしょう。
ではどこの温泉に入るか? せっかくだから本格的な湯質のところにしよう。事前に調べてアテはあった。現在は日帰り専門で営業している日航亭大湯である。大湯間歇泉のそばに位置する源泉100%かけ流しのお風呂屋さん。うん、ここしかないでしょう。
内湯と露天風呂を備え、容赦ない熱さに圧倒される。真夏の暑さの日だったから熱い印象が勝ってしまったが、お湯は本物。冬にまた入ってみたい気がした。
(2023.12追記)2023年11月で閉館とのこと。熱海を象徴する歴史ある名湯という位置付けでずっと続いていくのだと思っていたが…。
熱海温泉「日航亭 大湯」への道
修善寺で残務をこなす=鎌倉殿関連のお墓めぐり
朝、修善寺温泉の旅館「桂川」をチェックアウトした後、すぐには熱海へ向かわない。今回の旅のきっかけが大河ドラマで蒲殿(源範頼)が退場したことだったから、徒歩で範頼の墓を目指した。旅館から15分ってとこですかね。スマホの地図アプリと道中の「北条義時ゆかりの地」のぼりをヒントに迷うことなく到着。
あんな最期を迎えることになってしまって、蒲殿すまん…。ぜんぶ鎌倉殿のせいです。あと大江広元。
さてと…うん?…なんと、安達盛長のお墓も近くにあるじゃないか。ドラマでは馬から落ちた頼朝に「佐殿!」と駆け寄ったシーンが涙を誘う。ここまで来たら行くしかあるまい。炎天下の上り坂がちょっときつかったけど頑張って到着。
まだ時間に余裕があるな。2代将軍・源頼家の墓にも行ってみよう。基本的には次の写真の指月殿を目指せばいい。
指月殿の近くに頼家の墓があります。当時はドラマがまだ頼家の最期まで進展してなくて、金剛(北条泰時)とともに成長著しい変化を見せて間もない頃だった。※ちょうど本記事公開にあわせるかのようなタイミングで頼家が退場。善児までいなくなるとはね。放送回のタイトル「修善寺」ってのがまたなんとも…。
修禅寺と日枝神社も欠かせない
修善寺まで来たら修禅寺にも行かないと意味ないよね。ってことで蒲殿すまんと比企能員に代わってお祈りしておきました。
欠かせないスポットがあと1箇所。修禅寺の隣の日枝神社である。神社そのものはもちろんだが、旅の文脈的には信功院跡として残る庚申塔がチェックポイントだ。なにせ範頼が幽閉された場所だから。
史実では、ここに梶原景時が攻めてきたため範頼が自害に及んだとのことだ。忠義に厚く安定して仕事のできる幹部だったのに排除しちゃうなんてね。景時は最も頼りになる男・上総介殿もやっちゃってるし、業が深すぎるな。だからあんなふうに鎌倉を追われちゃうんだよ。
そう考えるとよくわからなくなってくる。あれだけ鎌倉陣営内で内紛ばっかり繰り返しててよく平家を打倒できたな。平家ってそんなグダグダしながらでも崩せてしまう程度の勢力だったの? 平家にあらずんば人にあらずとまで言わしめた平家の権勢とは。
いよいよ熱海へ…現場近くには湯前神社や大湯間歇泉あり
疑問は尽きないがそろそろ熱海へ移動しよう。
はい、熱海に着きました。鎌倉殿をテーマにするなら伊豆山神社とか走り湯を見に行くべきかもしれないけど、気分的にもうお腹いっぱい。これらは徳川家康をキーワードにしてもいい場所だから、次の大河ドラマと絡めたタイミングで考えても差し支えないだろう。それでいいっすか? どうする家康。
熱海駅から当湯までは徒歩で15分くらい。真夏のような暑さで大変だった。汗びっしょりだから早く温泉に入りたい。
だがその前に近くの湯前神社をチェック。境内には源実朝の歌碑があります。
それから大湯間歇泉も見ておかなければ。昔は天然の自噴泉であったが今は枯れてしまって人工的に湯を噴出させている。かつて熱海を散歩した際に見逃してしまったスポットを、長い時を経て今回クリアすることになった。
容赦のない熱さは本物の証
レトロ旅館のような館内の大浴場
では大湯さんに入館。オブジェのような玄関前ゲートは一体なんだろう。
受付で入浴料を支払う。1000円。外観もそうだし中もレトロな旅館といった風情だ。実際に昔は宿泊もやっていたそうだ。奥へ進むと男湯、もっと奥に女湯がある。
男湯はさらに二手に分かれ、手前が露天風呂、奥が内湯だ(※日によって男女の入れ替えがあるみたい)。脱衣所もそれぞれ別個に設けられており、たとえば内湯から露天へ移動するにはいったん服を着なければならないのかと誤解してしまった。男湯エリア内とはいえ素っ裸で通路を歩くわけにはいかんだろう、と。
しかしそれは考え違い。内湯と露天は内部専用通路でつながっている。両者を行き来するのにいちいち服を着たり脱衣所を変える必要はない。
内湯は手加減なしの熱さ
ではまず内湯からいこう。脱衣所に100円戻らない式のロッカーあり(露天側も同様)。分析書があったから読んでみると「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉、等張性、弱アルカリ性、高温泉」とのこと。加水・加温・循環・消毒なしの源泉100%かけ流し。すばらしい。
浴室内の洗い場は9名分。10名以上入れそうな浴槽が奥にあって無色透明のお湯で満たされている。湯口がちょっと独特で、直接浴槽へ流れ込むのでなく、かけ湯に使うような小さい槽へいったん溜められたのからあふれ出した分が浴槽へ落ちるようになっている。加水せずに冷ます工夫だろうか。
浸かってみたらかなり熱い。うわあ、これはすごいな。粘ってもせいぜい2~3分がいいところだった。いや、あくまで体感の話であって、ちゃんと時計で測ったら1分なかったかもしれない。浴槽外でのクールダウンを挟んで短時間のアタックを繰り返すタイプかな。
お湯はさすがのクオリティ。熱いせいだけじゃない湯力を感じるし、見た目にも細かい粒や糸くず風の湯の花、炭酸的な泡ではないが一番風呂的なお湯の新鮮さによる泡が付くことがあるし、泉質相応の温泉臭がはっきりとわかる。
浴槽の一部はあぶくがボコボコと踊っていた。バイブラになってるのかな。
露天風呂も熱い…汗の出方が半端ない湯力
では次に露天風呂へ行ってみましょうか。こちらは洗い場が3名分。浴槽はL字型をしており、一部は内湯風の建物内部に位置するから半露天の雰囲気、残りが屋外に出ている真の露天風呂とでも言えばいいか。両者の接点付近に湯口があって、その周囲はバイブラ式にあぶくがボコボコしてた。
お湯の特徴は熱さも含めて内湯と一緒。屋外側で浸かると風に当たることができる分だけ粘りやすいかもしれない。もちろん繁華街の中にあるので露天風呂の周囲はがっちり塀に囲まれて眺望はない。
いやしかしガツンとくる熱さがすごいな。風呂で汗を流すそばから新たな汗がドバっと噴き出してくるかのように感じてしまう。だからといって変に加水したりしない姿勢は潔くて良し。
この湯質なら気張って長く粘る必要もあるまい。適当な頃合いであがったところ、体のほてりが尋常でない。脱衣所がエアコン完備で良かった~。なおも体がほかほかしていたので休憩所でちょっとくつろいだ際、ビールの自販機を発見。あやうく買って飲みそうになった。炎天下を駅に戻らなくちゃいけないんだから、まだ我慢我慢。
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さすが本物という感じのお湯。熱いのが好きな人にはたまらんでしょう。ぬる湯派の自分にはパワフルすぎたが、冬だったら違う感想を持ったかもしれない。
ビールについては駅前の飲食店でプハ~した。我慢した甲斐あって五臓六腑にしみわたるぜ。この点では熱い温泉に感謝しなければなるまい。