夢のつり橋から畑薙ダムへ:新緑の寸又峡・井川をゆく

寸又峡 夢のつり橋
寸又峡で最大の見どころといえば「夢のつり橋」があがるだろう。寸又峡を訪れて夢のつり橋へ行かない手はない。我々も当然のごとく計画に組み込んだ。タイミングとしては2泊3日の中日午前のイベント。天気の関係で川の青さはあと一息だったが、秘境ムードを漂わすダム湖にかかるスリル満点のつり橋ってやつを楽しませてもらった。

午後は井川地域を目指し、さらに畑薙ダムまで進んだ。ところどころ集落はあるものの、こちらもなかなかの秘境感。狭いくねくね道路が延々と続くあたり、自分が運転する一人旅ではとても手に負えそうにないエリアだった。グループ旅行で正解。

本記事はそんな1日を記録した寸又峡・井川周遊記である。

2日目前半は夢のつり橋にチャレンジ

寸又峡プロムナード

旅の2日目。寸又峡温泉・朝日山荘をチェックアウトした我ら一行。宿の駐車場に車を置かせてもらい、夢のつり橋へ向かって歩き出した。幸い天気は良さそう。少なくとも雨の降る気配はない。

温泉街からつり橋までは30分。一周して戻ってくる「寸又峡プロムナード」という周遊コースの設定タイムが90分だ。途中には急な下り坂や急な上り階段があるそうだから、足腰に心配のある方は事前によく調べておかないと泣きを見る。

温泉街とプロムナード入場ゲートの間に古い駅舎の跡があった(旧大間駅跡)。いま歩いてるこの道は、かつての千頭森林鉄道の線路跡なのだ。
旧大間駅跡
最初のうちは平坦で、とくに問題はない。平坦区間の中ほどには、はるか眼下につり橋の見えるスポットがあった。あれが夢のつり橋か?…違った、説明板によれば猿並橋というらしい。
猿並橋

大間ダムと夢のつり橋

やがてトンネルが現れた。昔は列車がくぐっていたのだな。トンネル内はあちこちに水たまりあり。
千頭森林鉄道の旧トンネル跡
トンネルを出てしばらく進むとY字路がある。入場ゲートから20分くらいかな。
夢のつり橋手前のY字路
多くの観光客は右の坂を下りて、夢のつり橋を渡り、急階段を登り、ぐるーっと回って左側の道へ戻ってくる。ここで足腰に弱点を抱えたメンバーが左の道を逆回りコースで進みながらアップダウンを避けて行けるところまで行く作戦を選択し、残りは右へ。どこかで落ち合うでしょう。

右の坂を下り始めるとさっそく夢のつり橋が見えてきた。ほほう、あれか。
見えてきた夢のつり橋
水の色がよく紹介されているような輝く青さでないのは、前々日に降った大雨の影響か。まあしょうがない。ちなみに見えているのは単なる川ではなくて、寸又川を大間ダムがせき止めてできたダム湖みたい。大間ダムには近寄れなかった。
大間ダム

いよいよつり橋を渡ります

ところどころ衝撃の立て札と出くわす。「つり橋まであと200m。ここから120分待ち」とか。紅葉シーズンなど大行列ができるとはネット情報にあったが、ここまでとは。一度に10名しか渡れないためにスループットを稼げないのだろう。そんな時に行くとTDLもびっくりの大混雑で秘境ムードどころじゃないね。この日は空き空きでよかったぜ。

で、あっさりとつり橋の前に立つ(冒頭写真)。実際に渡りだすとそこそこ揺れるものの、こっちも安倍の大滝ロードなんかで鍛えられたから大丈夫だ。両手でロープをつかみ、へっぴり腰気味にそろりそろり進めば大丈夫。

ただしロープから手を離すのはいいんだけどスマホを取り出して撮影する勇気はなかった。どうしても手から滑り落ちて水にボッチャンしちゃう気がするんだよね。渡りきったらきつい急階段を延々と登る。途中につり橋の見物スポットがありました。
急階段から見える夢のつり橋

帰りの飛龍橋コースは平坦だった

急階段が終わってプロムナードの一番奥に位置するのが尾崎坂展望台…ここにY字路で別れたメンバーが待っていた。尾崎坂展望台には森林鉄道のディーゼル機関車が展示されている。
尾崎坂展望台のディーゼル機関車展示
なお展望台といっても木々が生い茂っていて眺望はいまひとつ。自販機のある休憩所ってところだ。一般人は入っちゃいけない感じだけどもっと奥地まで道は続く。廃道探索するような濃ゆい方々にしてみればまだ序の口ですらないんだろうが自分的にはここでもう十分。

帰りは平坦コース。飛龍橋からの景色が見どころになる。橋の上から撮影してみたのを今見るとなんだかよくわからんな。
飛龍橋からの眺め
Y字路近くまで戻ってくるとつり橋を含む、もっと抜けのいい景色が見える。
夢のつり橋を遠くに望む
あとは入場ゲート・温泉街へ戻ってきて終了。たしかに行列待ちがなければ90分で回れるコースだね。紅葉シーズンのよく晴れた「輝くブルーの水」の時に行けたら最高だろうけど、そういう時は大行列の大混雑でムード激減なんだろうし…なかなか悩ましいところだ。


2日目後半は井川、そして畑薙へ

熟練ドライバーでないと泣きを見る秘境の道

夢のつり橋で午前は終了。午後はどうする?と話し合って、井川の方へ行ってみようということになった。狭隘な道をひたすらドライブした記憶しかないので写真はほとんど撮ってない。前日に通った長島ダムや大井川鉄道の奥大井湖上駅、その先の閑蔵駅付近まではまだいい。川根本町から静岡市葵区へ移って閑蔵駅~終点井川駅を結ぶ道路のあたりから「あれっ?」という雰囲気に変わる。

対向車が来てもすれ違い困難な狭いくねくね道が延々と続く。やきもきする時間がとても長く感じられた。たった一駅がこんなに長いとは。

井川はいくらか開けた集落でほっとしたのもつかの間、またすぐに元の、いやもっとすごい秘境的な道路になった。たぶんダム関係者や登山者しかやって来ないんじゃないか。

目指す畑薙第一ダムのかなり手前に第二ダムがあったので休憩がてら寄ってみた。見たところ規模はそんなに大きいわけではない。気軽に見学に入れる雰囲気もない。
畑薙第二ダム

畑薙第一ダムで感じた大井川の果てしなさ

それからまた長いじりじりとした時間が続き、次に人間の存在感を示すスポットは赤石温泉・白樺荘。スルーしたけどね。映画「男はつらいよ 噂の寅次郎」(第22作)のラストで大井川鉄道の汽車に乗り合わせた新婚男女が「これから赤石温泉に行く。寅さんも一緒にどう?」と言ってたのは、ここかもしれない。新婚旅行でこんな秘境まで来るのかよ。すげーな。

それからまた長いじりじりとした時間が続き、ようやく畑薙第一ダムに着いた。ここは規模が大きい。
畑薙第一ダム
天端を歩きながらダム湖の方を眺めると、奥の方の山上にはまだ雪が残っていた。見ても山の名前は全然わからん。有名どころの聖岳・赤石岳なんかはまだまだずっと北の方だ。
畑薙湖と南アルプスの山々
かなり走って大井川源流部へ来たつもりでいても、実際はまだまだ先がある。鉄道に詳しいメンバーによればリニア新幹線の工区もまだまだずっと北の方だって。懐が深すぎるぜ。

観光向けにも整備されている井川ダム

さて午後のパートも終わり。寸又峡温泉街へ戻りましょう。最後のイベントとして井川ダムへ寄ってみた。ここは展示館が整備されていたりしていかにも観光スポットらしい雰囲気。人間の存在感になぜかホッとしつつ展示館前の展望所からダムを撮影。
井川ダム
こうして2日目を終了。夜は温泉宿で英気を養った。


最終日に訪れた寅さんゆかりの地

塩郷の吊橋もなかなかスリルあり

最後の3日目は帰り道の途中で2つの橋をチェック。手短にいきます。まずは塩郷の吊橋。秘境感はなくとも長さ・高さはなかなかのもので、ゆるゆる気分で渡れる橋ではない。
塩郷の吊橋
渡り始めに上流方向を撮ってみた(橋の半ばまで来たらもう怖くてスマホ取り出せなかった)。向こうに見えるダムは塩郷ダム。先の寅さん映画のロケ地でもあるよな、という感慨よりもつり橋の恐怖感が先に立つのであった。
塩郷の吊橋から塩郷ダムを見る

世界最長の木造歩道橋・蓬莱橋

最後の最後に訪れたのは島田市の蓬莱橋。世界最長の木造歩道橋としてギネス認定されているらしい。通行料100円。
蓬莱橋
長さ900m近くもあるから歩き通すのにそこそこ時間はかかる。橋の上から眺める大井川はなかなか。対岸に特に大きな施設などはなく、橋を見下ろす展望スポットがあった程度。
対岸の展望台から見た蓬莱橋
実はこの橋も先の寅さん映画のロケ地だ。橋の上ですれ違った旅の僧に「女難の相が出ている」と指摘されたんだっけか。映画に登場したのは序盤のシーンだったが、自分が蓬莱橋を渡ったのは旅の終盤だったおかげか、女難もなく無事に幕を閉じた。