現地で見て体験せよ、驚きの泡まみれ温泉 - ホテル昭和

ホテル昭和
中央道・甲府昭和ICの近くには多くのビジネスホテルが集まっており、温泉付きも珍しくない。そのうちのひとつであるホテル昭和も表の顔はビジネスホテル。しかし大浴場には予想を超えたレベルの温泉が待っていた。ご当地に多く見られるモール泉的な特徴に加えて、高温なのに人工炭酸泉もびっくりのものすごい泡付き。たまげた。

無料サービスの朝食も内容が良かった。かなり頑張ってるじゃないですか。正直いうと、GW付近の時期で一人泊の予約がどこも難しい状況で、「空室がまだあるからここにしよう」くらいの考えで泊まったのだが、侮ってすいませんでした。実際は温泉目当てで泊まってもいいくらい。

ホテル昭和へのアクセス

車がない場合の移動手段が考えどころ

旅の2日目。竜王ラドン温泉への立ち寄り入浴をすませて外へ出ると雨になっていた。ここからホテル昭和までは国道20号をただまっすぐに歩けばいい。ただし距離は3km以上、小一時間みておかねばならないから、雨だと厳しい。かといって20号沿いに走ってくれる路線バスはない。

そもそも今からホテルに直行してもチェックインにはまだ早い。時間つぶしをしなければならないんだったら、いったん甲府駅へ行くか、と決断してJR竜王駅まで雨の中を15分歩いた。そこから列車で隣の甲府まで移動。

せっかくの旅行だからと雨に打たれながら無理やり観光して精神を削られるのでは意味がない。竜王ラドン温泉で今日の目的はもう達成した。あとはカフェでスマホいじりとかでも全然OKですわ。ってことで駅前のチェーン系コーヒーショップにて本当にスマホいじりの午後をすごしたのである。

甲府駅からバスで行けなくもないが

15時を回った頃に今後の流れをシミュレートしてみたところ、ホテルに入ってから夕食のために傘をさしてまた外へ出るのが面倒くさくなり、今のうちに食べてしまえということで、駅に近いほうとう店で早めの夕食をすませた。

ではホテル昭和へ向かおうか。昭和通りを走る路線バスなら清水新居というバス停で下車して徒歩10分くらいで行ける。しかしこのバスは本数がとても少ない。なおかつ結構強い降りに変わってきた雨の中をたとえ10分でも歩きたくない気分だった。

結局は地域経済に貢献すると自分に言い訳してタクシーを使った。夕方の昭和通りは渋滞しており、なかなか進まない。時間でメーターが上がってしまった感じでずいぶん地域経済に貢献したな。渋滞なくすんなり行ければ2000円くらいだと思われる。


名前と違って昭和チックではない、普通の今どきホテル

ホテル昭和のチェックイン~チェックアウトまでの基本的な流れは一般のビジネスホテルと同じ。フロントの脇に枕コーナーがあって「かたい枕をご希望のお客様はどうぞ」みたいに書かれている。そばにソフトドリンクの自販機があるし、ちゃんと探せば1階にお酒の自販機もあった。

このご時世の対策として、階段は一方通行というお約束になっていた。つまり2つある階段の一方が上り専用で他方が下り専用。なおエレベーターはない。

割り当てられた部屋は2階のシングルルーム。ビジネスホテルとしての設備・機能はひと通り揃っているし、管理状態は良好で問題なし。
ホテル昭和 シングルルーム
この日は客が多い方、もしかすると満室だったと思うのだけど、上下左右からの音漏れはなかった。廊下で集団が会話するとドア越しに聞こえるが、それはどこでもそうなので。翌日晴れた朝に撮影した外の景色がこちら。幹線道路沿いに発達した市街地ですな。
窓から見える景色

いろいろとすごすぎるホテル昭和のお風呂

ここは甲府盆地のカアナパリ

大浴場は1階にひとつだけ。なので男性用の時間帯と女性用の時間帯が交互に定められている。もちろん部屋に備え付けの浴衣姿で行っていい。芋洗いを避けるにはみんなが夕食に出ていそうな18時~19時が狙い目か。しかしそこは女性用の時間帯だし…なんて姑息に計算するのが面倒になって17時頃に突撃。

幸い混んでなかった。脱衣所に掲示されている分析書をチェックすると「単純温泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」とのこと。源泉100%かけ流し浴槽と加水した浴槽があるようだ。そして源泉名が面白い。カアナパリ温泉だって。ハワイのリゾート地の名前がなぜここに。答えはわからずじまい。

浴室に9名分の洗い場あり。滞在中には洗い場が埋まるような状況は見られなかった。そもそも大浴場が芋洗いになる状況がなかった。過度におそれすぎていたかも。

メイン浴槽はぬるめで結構

浴室の真ん中に1~2名サイズの浴槽がデーンと鎮座していた。こいつが100%かけ流し浴槽ではないか。先客がいたのでいったんパスして、6~7名サイズの主浴槽と4名サイズの水風呂が隣り合って並んでいる方へと進む。

主浴槽へ入ってみますかね。うむ、ちょうどいい塩梅のぬるめ適温だ。いい具合になるよう加水で調整しているんだろう。クリアな茶褐色を呈するお湯は甲府近辺の温泉によく見られる色だ。匂いを嗅ぐとモール泉っぽい印象あり。これまたご当地に多い特徴だ。

まれにフワフワ浮遊しているのは湯の花かな。泡付きは特段強調すべきほどではないが、湯口の近くだと結構よく付いてくる。そんなのは序の口だとすぐに思い知るんですがね。ともかく入りやすい温度であることと、はっきりした温泉感のある、良好な湯船である。

強烈すぎる特徴の源泉浴槽には驚いた

おっ、真ん中の源泉浴槽が空いたようだ。ではトライしてみよう。近寄って浴槽を覗き込んだ途端に驚かされた。泡がすげえ! まるで炭酸飲料のようにシュワシュワした泡でいっぱいだった。湯口から一番遠い隅っこは泡が集まりすぎてお湯が白っぽく見える。なんじゃこりゃあ。

浸かってみたら熱い。一般に、源泉が泡を含んでいても湧出温度が高いとすぐに飛んで消えてしまうと言われる。なのになんでこいつは泡だらけなんだ。あっという間に体中が泡に包まれてしまったぞ。背中のあたりはシュワシュワが弾ける感触もあるし。なにこれ怖い(いい意味で)。

熱いけど出たくないという複雑な感情に襲われながらしばらく泡まみれになっていた。源泉100%という先入観があるからにせよ、泡を除く色・匂い・浴感などの主張も先ほどの主浴槽より強いように思われる。このお湯を体験できただけで来た甲斐があったというものだ。

インパクト大の冷凍室は使い方次第

あと個性的な設備がもうひとつ。サウナの隣にあるのが、その名も「冷凍室」。マイナス温度までガンガンに冷やされた個室だ。熱い源泉に浸かった後のクールダウンにちょうどいい。個人的には水風呂よりもなじみやすかった。

源泉浴槽→冷凍室→主浴槽を適度にローテーションするとかなりいい感じになる。観測した範囲では特定の場所に客が集中するとか、源泉浴槽の取り合いみたいな偏りもなく、各自の好みでそこそこ分散するし、自然と機会は回ってくる。長時間独占されてノーチャンスってことはなかった。

すごすぎる温泉なので勇んでたくさん入りたくなるところ、源泉濃ゆそうだから無理は禁物と思って夜は2回に控えておいた。翌朝はのん気に構えて朝食後に行ったら女性の時間帯になっていて入りそびれた。結局入ったのは2回だけ。しまった残念。


ビジネスホテルだけど食事にも満足した

夕食は外でほうとう

ビジネスホテルなので夕食は出ない(近隣の飲食店と提携した食券付きプランはあるようだ)。先に書いた通り、食堂探しで雨の中をウロウロしたくなかったので、チェックイン前に甲府駅近くですませてしまった。

甲府に来たんだからほうとうを食べますかね。ということでメジャーなチェーン店の小作・甲府駅前店へ。15時台だからさすがに空いている。ぼっち旅行者にとって気後れせずにすむ状況で、これもまた目論見のひとつだ。心理的安全性ってやつ(違います)。ほっと一息ついて豚肉ほうとうとビールを注文。
小作の豚肉ほうとう
熱々のほうとうと冷たいビールがたまりません。具だくさんの太麺でお腹も一杯になった。夜食はいらないっす。

無料サービスとは思えぬ充実した朝食(個人の感想)

無料サービスの朝食は大浴場近くの会場で。朝6時半からやっている。おそらくこのご時世の対策なんだろう、ラップをかけた各皿をひとり一つずつ取っていくスタイル。早い者勝ちの取り放題ではない。無料の軽朝食サービスってあまり利用したことないから「おー充実してる」と感心してしまったんだが、これが普通なの?
ホテル昭和の朝食サービス
自分のふだんの朝食より豪華なのは間違いない。あとはパン・味噌汁・漬物・和洋菓子・コーヒーがあった。他にもあったかな。

ちなみに有料の朝食付きプランもあって、そちらにすると典型的な和定食をいただけるようだ。プラス400円弱だから朝しっかりいきたい方はどうぞ。

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さすが温泉王国・山梨のビジネスホテルは並じゃない。記憶に残るような特徴ある温泉に入れるというだけで、当館を選ぶ理由としては十分だ。自分の仕事は出張なんかあり得ないし、世間一般だと首都圏から甲府への出張は全部日帰りにさせられてしまうだろうけど、もしホテル昭和に投宿する出張という世界線があったらさぞかし楽しみだろうと思う。