鹿児島旅行の2日目は指宿へ行こうと決めていた。有名温泉地だけど行ったことなかったし、冬でも暖かそうなイメージがあったので。昼の間に立ち寄るのにちょうどいい温泉はないかと探してみたら、旧山川町の方にありました。ヘルシーランド露天風呂・たまて箱温泉。口コミによれば露天風呂から見える景色がとても良いらしい。
いや本当にすごいっすよ。海との一体感が楽しいインフィニティ風呂、砂浜の向こうにそびえる開聞岳…この世の楽園かというほどの絶景だった。ボーッと見ていて全然飽きない。熱めのお湯にもかかわらずついつい長居してしまった。
いろいろな種類の風呂が用意されているわけではなく基本的には単一の露天風呂のみ。でもあの風呂だけで十分すぎる。
ヘルシーランド露天風呂・たまて箱温泉への道
イッシー伝説の池田湖を見学
旅の2日目。国民宿舎レインボー桜島をチェックアウトしたおじさんはフェリーで鹿児島港へ渡った。市街地を抜けたら海沿いの国道226号を南下。しかし指宿の温泉街やたまて箱には直行しない。時間はたっぷりあるから、まずは観光らしきことをしようと、指宿岩本の交差点を内陸へ折れて池田湖へ向かった。
池田湖といえば大昔に謎の生物イッシーで騒がれたところだ。ネッシーのパクリやんけ、とドライに反応しがちなのは大人になって心がすさんでしまったからだろう。当時の記憶ではロマンと夢のある話であった。たぶん。
今はどうなっているんだろう。調べるとイッシー展望台とかビジターセンターのような観光整備はされていない。一方でパワースポット・黄金の鳥居というのを見つけたから、行ってみることにした。最後の100mくらいは非舗装の狭い道になり、つきあたりに駐車場あり。温泉黒にんにくの無人販売所もある。
はい、これが黄金の鳥居です。池田湖と開聞岳を正面に見据えたロケーションが運気を呼び込むパワースポットってことかな。
池田湖には鯉がたくさんいた。100円で餌を売っている。このところ旅先でこの手の餌やりをするようになってしまい、ここでもやった。どこもそうであるように、たくさん群がってきましたよ。
日本最南端の西大山駅
池田湖は以上で終了。湖畔を走りながら、途中に展望所があったら立ち寄ってみようと思ってたけど、ドライブイン以外にそれらしきスポットは見当たらず。道中には菜の花畑なんかがあってのどかで和やかでのんびりした雰囲気だった。
続いて訪れたのがJR指宿枕崎線の西大山駅。沖縄ゆいレールを除けば日本最南端の駅だ。自分は決して鉄ちゃんでないといえども、ここまで来たら立ち寄らないわけにはいかない。観光客を意識した駅前整備はそこそこなされており、駐車場や物産店があるし、ホームには自由に立ち入れる。
記念にご当地から手紙を出してみよう、的な。
そうしてようやくたまて箱へ向かった。道中に案内標識は一応あるから迷うことはない。でも大通りに面したわかりやすい場所ではないからカーナビがあれば万全だと思う。駐車場は規模に対して余裕ある広さ。すぐ近くに竹山という特徴的な形の岩山が見える。別名スヌーピー山。
絶景露天風呂とはまさにこのこと
復活が待たれる砂むし温泉「砂湯里」
入館する前に山川製塩工場跡を見学しに行った。駐車場から歩いてすぐだ。跡地だから工場の建物はもうない。奥の方には温泉源があると思われ、噴気による白い煙がもうもうと立ち上っていた。
当館は砂むし温泉「砂湯里」も併設しており、実は工場跡の奥に砂むし場がある。しかし訪問当時は法面崩れにより営業休止中だった。工場跡の先はロープが張ってあって進入禁止。営業してれば露天風呂とセットで行ってただろうにな。残念。
一種のインフィニティ風呂に熱めの湯
お待たせしました。入館します。自販機で利用券を購入(510円)して男湯と書かれた右手へ進む。露天風呂は開聞岳側の和風風呂と先ほどの竹山側の洋風風呂があり、偶数日は和風が男湯、奇数日は逆になる。この日は和風が男湯だった。
いったん屋外に出てまた浴場棟に入る。中はすごく新しくもないが古びてもいない。脱衣所には鍵付きロッカーあり。掲示された説明板には「塩化物泉、高張性、中性、高温泉」とあった。湧出温度は100℃だって。さっき工場跡で見た白煙の勢いを思い出せば納得の数字。
浴室に入るとまず洗い場専用スペースがある。8台のカランだけが並び、内湯浴槽などはない。その奥の扉を抜けると屋外で大きな露天風呂が待っていた。
ひ、広い。めちゃくちゃ広いぞ。50名くらい入れちゃうんじゃないの。そして誰もいない。独占かよ、贅沢すぎるぜ、すいませんね。
ただ広いだけじゃなく、ロケーションと演出がすぐれている。浴槽からあふれ出すレベルまで満杯にされたお湯の向こうに海の景色が続くので、目線を少し下げればお湯と海がつながっているように見えてくる。インフィニティ風呂ってやつだ。
すげー、と浮かれた気分で湯船に入っていくと、適温の範疇ながらも熱めだった。お湯は無色透明のようでもあり薄い褐色のようでもあり。泡付きは見られず湯の花は白っぽいのが少々あるかなーどうかなー程度。匂いに温泉らしさは感じるものの強い特徴はない。
絶景すぎてやばい
景色については向かって右手の伏目海岸が特に良い。海と工場跡の煙と砂浜、そして遠くに開聞岳、組み合わせが素晴らしい。ちなみに入館前に工場跡の手前で撮った写真がこちら。こんな感じでもっと海に近寄った風景が見える。
露天風呂は独占だし、施設の周囲にも人の気配はなくて静かだし、波は穏やかで天気はいいし、いたってのどかな環境で風呂に浸かりながらこの風景だからたまりませんな。ずーっと見ていられる。
向かって正面方向も良い。大隅半島の佐多岬まで見えそうだし、水平線のあたりにはうっすらと薩摩硫黄島や竹島も確認できる。うまくいけば屋久島も見えるそうだが、さて。
そんな海の沖合に一艘の小さな舟が現れた。漁かな。雄大な絶景の中にただひとつの舟が悠々と浮かぶのを露天風呂に入って見ている。いとをかし。平安貴族なら一首詠んだに違いない。
さすがに熱めだから長時間浸かりっぱなしというわけにもいかない。時々はあがってベンチでクールダウンする必要がある。その間もずーっと海を見てますけどね。
時を忘れて浦島太郎になってしまう
で、熱いからもう終わりにしようとはならず、何かに引き寄せられるがごとく、また湯船の中へ戻ってしまう。そしてボーッと景色を眺める。うーむ、時を忘れて長居してしまうな。まさに竜宮城じゃないかと思ってしまった、たまて箱温泉だけに。※実際は近くの観光名所・長崎鼻が浦島伝説発祥の地であることにちなんだ温泉名だと思われる。
風呂についてもう少しだけ補足しておこう。露天風呂には3箇所の湯口があってそれぞれから十分な量のお湯が投入されている。お湯の通り道はドス黒く変色しているから、熱湯の源泉を冷ますために加水しているとしても結構な成分なんじゃない。またメインの露天風呂の隣に6名サイズの高温湯もある。ちょっと試したらやっぱり熱かったのですぐに出た。
そうこうするうちに1時間近くが経過。我ながら熱いのによく粘るよ。やがて客が1名、2名とやって来たタイミングでもう潮時だろうと決断した。
* * *
洋風風呂の方がどうなっているのかはわからないが同様の体験ができるとすると、指宿エリアを湯めぐりするなら絶景露天風呂という観点から当館をおすすめしたい。だってすごいもん。砂むし温泉の方も再開したならセットでチャレンジするとより楽しめるのではないかと思う。