一関・平泉観光に便利&展望自慢の風呂 - 一関温泉 桃の湯

一関温泉 山桜 桃の湯
晩秋の岩手旅は、温泉にこだわらず観光メインでいこうとの方針だったため、3泊した中で温泉宿はただひとつ、一関温泉「山桜 桃の湯」だけだった。一関が誇る厳美渓だけでなく平泉の中尊寺・毛越寺にもアクセス便利なロケーション。

印象としては高台の日帰り温泉の中にある宿泊施設といった趣き。泊まった本館は秘湯宿とか和風旅館のような感じではないので、そういった雰囲気重視の人よりも旅の利便性や手軽さを重視する人に向いている。別館「果実の森」の方はちょっと高級感があった。

温泉面はなかなか侮れない。黒い湯の花が舞う源泉かけ流しの湯船が数多く用意されている。熱いのもぬるいのもあるから選択肢は広い。下界を一望する露天風呂もある。

一関温泉「山桜 桃の湯」へのアクセス

桃の湯へのアクセスには車が必要だ。JR一ノ関駅からだと車で10分。なの花バスというのが火・金に1日2便だけ走っているけど、観光客が利用するのは難しいでしょう。宿の送迎サービスもない模様。どうしようもなければタクシーかな。

車があれば、たとえば東北道一関ICからは5分程度の距離だ。我ら一行については、旅の3日目に宮古市・ホテル近江屋を出発して遠野と水沢に立ち寄った後、国道4号を一関へ向かって南下していったのであった。

朝からずっと雨で肌寒い1日だった。あー早く温泉に入って温まりたい。その願いに応えるように、雨の中をひたすら走り続けた車が桃の湯のある高台へと続く坂道に取り付いた。あと少し。坂を上がりだすと急に霧が出てきて視界が悪くなったので、あたりの風景はよくわからない。

とりあえず無事に現地へ着いた。構内に入ると、予想していたよりも規模の大きい施設だということがわかった。いくつかの棟がポツポツと立っているし、広めの駐車場には結構たくさんの車が止まっている。日帰り客が多いのかな。そういえば本館棟の外観は見るからに日帰り温泉施設ぽいな。


日帰り温泉の中の宿泊施設

劇場付きの温泉

宿泊者用入口といったものはなく外来入浴と同じ玄関から出入りする。下足箱とフロントも共通だ。館内の雰囲気やフロントで手続きするまでの流れは完全に日帰り温泉のフォーマットそのまま。下足箱の鍵と引き換えに一括精算用の腕輪を受け取る。

フロントの向かいにお土産コーナーあり。ビールはここで売っているほか、自販機でも買える。
お土産コーナ-
駐車場に劇団のトラックが止まっていたことから察した通り、1階に劇場があった。中には入らなかったけど曲や歌声はフロント付近まで漏れ聞こえてくる。温泉と劇団…寅さん映画にたびたび登場する旅芝居一座を思い出すなあ。座長の娘・大空小百合がマドンナだったのが「男はつらいよ 幸福の青い鳥」(第37作)だっけかな。
劇場前の通路

部屋にひと通りの機能は完備

館内は絨毯や畳敷きの廊下を素足で歩ける。本館宿泊者の部屋は階段を上った2階にあった。我々の部屋は小さめの畳で12畳分のやや細長い形をしており、布団が最初から敷いてあった。
桃の湯 本館客室
座椅子であることを除けば、作業机まわりはホテルに近いスタイル。テレビがやたらでかい。
巨大なテレビと作業机
シャワートイレ・洗面台あり。暗証番号式の金庫と空の冷蔵庫あり。フリーWiFiあり。携帯の電波も普通に入る。翌朝撮ってみた窓の外の景色がこれ。
窓の外の景色
朝食会場として案内された別館「果実の森」の方は、よりグレード感のあるつくりだったから、宿のコンセプトが違うと思われる(別館はお値段もお高め)。


湯の花舞う温泉と下界の景色を楽しむ露天風呂が特徴

かけ湯にも源泉使用

では風呂へ参ろうか。部屋に備え付けの作務衣に着替え、タオル類を手提げに入れて、1階大浴場へ。夕方は手前が男湯だった。

外来客は受付時に渡された鍵に対応するロッカーを使い、宿泊客は脱衣かごを使う、という区分けになっているようだ。貴重品を持ち歩くなどしていて保管が気になる宿泊者はフロントに申し出て鍵をもらってくださいとのこと。あと大浴場前に貴重品ロッカーがあったように思う。

掲示された分析書によれば「ナトリウム-塩化物泉、低張性、弱アルカリ性、高温泉」。黒、あるいは灰色の湯の花が特徴らしい。

浴室に入るとまず源泉のかけ湯。ほう、贅沢ですな。その隣に水風呂。水風呂の近くにサウナ室があるんでしょう。それから洗い場が16名分。

ぬるめ・熱めのメリハリが効いた内湯

内湯の浴槽は3つ。一番手前が4名サイズのシルク風呂。超微細な気泡で白く濁っている。こいつは温泉なのか真湯なのか、よくわからん。温度は適温だった。

その奥にメインとなる15名サイズのぬる湯槽。大きめだから湯口から離れてシルク風呂寄りを陣取るとかなりぬるくなる。自分はぬる湯派なのでここが一番気に入った。照明の具合でお湯の色ははっきりとわからなかったが、透明にかすかな濁りが入った感じとみた。

また紹介されていた通り、たしかに数mm級の暗色系の湯の花が舞っている。色はやっぱりはっきりしない。黒のようでもあり灰のようでもあり茶のようでもあり。匂いはもう少しでインク臭と呼びたくなるような、塩化物泉にありがちのやつだった。

ぬるいから長い時間粘れるけど、5分浸かっただけでも上がるときにクラっとめまいがしたから効き目は本物だ。

メインの向かいには5~6名サイズのあつ湯槽。ここはかなりはっきりと熱い。熱いのが好きな方はどうぞ。自分の使い方としてはあつ湯1分→ぬる湯5分を繰り返す冷温交互浴にちょうど良かった。

露天風呂は4タイプ

露天エリアには浴槽が4つ。手前に1名用の壺風呂と檜風呂。お湯は適温。つねに埋まってるということもなく、ふと見ると空いてることが多い。

その奥に今どきのソーシャルディスタンス基準だと6名サイズのメイン露天風呂があった。お湯は熱め。なのでがっつり肩まで浸かっている人はあまりなく、半身だけとか、足だけとか、そういう姿が目立つ。内湯のあつ湯ほど熱くはないんだけどね。

あとは脇の方に石のくり抜き風呂があった。2名までいけるサイズ。結局入らずじまいでよくわからず。翌朝の体験から連想するとお湯はぬるめかもしれない。

男女入れ替わったもう一方の大浴場へ

さて、夕方と夜は上記のような体験だった。翌朝起きてから行ってみたら男女が入れ替わっていた。週1回入れ替えを行うとのこと。そのタイミングに期せずしてうまく乗っかれたようだ。ラッキー。

基本的な構造や特徴は前日の男湯と同じ。内湯はシルク風呂・メインぬる湯・サブあつ湯のラインナップ。シルク風呂のお湯がはっきりとぬるくて、こっちの方が好みだなあ。

露天は、メインの露天風呂が前日のやつほど熱くなかったから助かった。壺風呂と檜風呂は似たようなもの。意外に良かったのが石のくり抜き風呂で、このお湯もはっきりとぬるい。これは良い。入らなかった前日のやつも同様にぬるかった可能性があるね。知らんけど。

立ち上がれば目隠しの囲い越しに下界の風景を見下ろせる。夜明け直前に行った時は集落の灯りでちょっとした夜景を楽しむことができた。で、だんだん空が明るくなってきて…おお、日の出の頃がよく似合う環境じゃん。

眺望最強の天空露天風呂

こちらの大浴場にはもうひとつ、天空露天風呂というやつがあった。邪魔な囲いもなく下界を展望することができるすぐれもの。当館最強の風呂と思われたが、利用者が全然いない。超穴場なの?…残念なことにお湯がめっちゃ熱かった。これではわずかな時間しか入っていられない。長時間の居座りを防いでなるべく多くの人に利用してもらおうって工夫かな。それにしてももうちょっと温度を下げてもいいような。

最後は内湯のメインやシルク風呂でぬるいのを楽しんで完了。塩化物泉だから風呂上がりは身体がほかほかする。いつもよりクールダウンの時間を多く取ったほどだった。


海老が妙に印象に残った食事

肉・魚・野菜でお腹いっぱいの夕食

桃の湯の夕食は本館レストランで。外来客と同じようにその場でメニューを見て一品ずつ注文するわけではなく、すでにいくつかの料理が用意されていた。
桃の湯の夕食
鍋は豚しゃぶ。これだけで肉も野菜も摂れるし空腹は満たされる。なぜか印象に残ったのが海老天。サックリ感と濃いめの味わいがアピール度高し。他のメンバーも海老がうまかったと口々に称賛していたから気のせいではないだろう。なんでしょうね。

さらにメインディッシュの牛ステーキが出てきた。ビールとともに全部いただけば結構なボリュームでお腹は十分すぎるくらいにふくれる。そして岩手産コシヒカリで締め。汁物がお品書きにあったなめこ汁じゃなくオクラのすまし汁だったのはご愛嬌。

朝食は別館「果実の森」でバイキング

朝食はかなり頑張っていた。会場に指定された別館「果実の森」は本館以上にグレード感があって、しかも到着すると半個室に案内された。ここで夕食を食べたかったぜ。

バイキング方式で、料理の種類はめちゃくちゃ多いわけではないけど少なくもない。選択肢は十分にある。とくに朝から牡蠣を好きなだけ取れるようにしているのがすごい。びびって1個だけにしておきましたけど。
桃の湯の朝食
夕食の印象から海老フライを取ってみたら、これもまた味が濃くてうまかった。他のメンバーも海老がうまかったと口々に称賛していたから気のせいではないだろう。なんなんでしょうね。また、自分はお粥を選んだが、ご飯に乗せる明太子・漬物系・山形だし・その他の小鉢が充実しており、お好み丼で攻めてもかなり満足できそうに見えた。

 * * *

宿泊した中で印象が強かったのは、天空露天風呂や露天エリアからの(とくに夜明けの)展望と、ぬるい湯船、黒い湯の花が舞う本格温泉、果実の森での朝食、そして海老天・海老フライ。日帰りで立ち寄っただけだと見逃したに違いない要素もあるから、まあ泊まって良かったんじゃないかな。

もちろん一関・平泉観光に便利なロケーションも助かる。おかげでチェックアウト後は効率よく行動できた。いい場所に温泉があったもんだ。


おまけ:遠野と水沢の観光スポット

オシラサマとカッパ伝説の遠野

当館へ向かう途中で立ち寄った観光スポットについて手短に。まず遠野のカッパ淵。カッパが出てきそう?
遠野 カッパ淵
カッパ淵から徒歩約10分の伝承園では曲り家を見学できる。ああ、なんか遠野のイメージだなあ、って感じ。中ではエンドレスばあちゃん(録音再生機)が休みなく民話を語っている。

曲り家の奥にあるオシラ堂の中は願い事をまとった人形がびっしり。オシラサマといって蚕の神でありまた農業、馬、女性の病の治癒、その他いろいろの神である。大勢の人々の念がこもってる、こういう画像は取り扱い注意ですぞ。
オシラサマ
雨の日にちょうどいい屋内施設「とおの物語の館」も語り部さんの生の話を聞けたりしてなかなか良かったけど写真を1枚も撮ってなかった。しまった。

お子様向けと思わせてガチな国立天文台水沢VLBI観測所

天文ロマンの心をくすぐるのが水沢の国立天文台水沢VLBI観測所。一般人も敷地の一部に立ち入れる。巨大な電波望遠鏡がすげー。
国立天文台水沢VLBI観測所の電波望遠鏡
敷地内の奥州宇宙遊学館というレトロ感のある建物には天文ファンが喜びそうな各種展示が多数。宇宙や星にあまり詳しくない自分のような者にも楽しめた。
奥州宇宙遊学館
展示の説明文なんかはお子様向けの口調だけど、内容はガチ。緯度変化のZ項とか理解できるのだろうか。もっと理論を突き詰めていくと、そのうちZZ項とか逆シャア項とかハサウェイ項とか出くるんじゃないだろうな。