岩手県の一関・平泉と聞けば、その昔学校で習った奥州藤原氏や中尊寺金色堂が思い浮かぶ。学校で習ってなくても厳美渓や猊鼻渓の自然美もよく知られるところ。このうちのいくつかのスポットへは来たことがあるんだけど、はるかはるか昔のことだ。
この秋の岩手グループ旅行は陸中海岸とセットで一関・平泉を周遊することがテーマだった。久しぶりだなあ。今はどうなっているんだろう。かすかな記憶に残る当時のままの姿なのだろうか。あと毛越寺と猊鼻渓は今回が初めてとなる。どんなところなんだろう。
前日の雨から一転して晴れた朝となったが、予報によると結局は下り坂でいずれ降ってくるとのことで、降り出す前にどれだけ回れるかの勝負でもあった。結果は…ぎりぎり逃げ切り。
厳美渓の渓谷美
空飛ぶ団子が渓谷を渡る
最終日・4日目の朝。一関温泉・山桜桃の湯をチェックアウトした我々はまず最初に厳美渓を目指した。宿がちょうどいい具合のロケーションにあったから車で10分ほどで「道の駅 厳美渓」に着いた。ここに無料で止めて10分歩くのが一般的かも。しかしもっと近くまで行こうということで、天工橋を渡った先の有料駐車場に止めた(300円)。
本記事の冒頭写真は天工橋から見た厳美渓。橋の下のあたりは公園になっていて、もっと川の近くまで寄れる。おお、まさしく渓谷だ。
ここでは空飛ぶ団子が有名だ。東屋に置かれた籠に料金を入れて向こう岸のお店「かっこうだんご」に合図を送ると、空中に張ったロープを伝って籠が送られ、だんごを入れて戻ってくる仕組み。宿の朝食でお腹いっぱいだった我々は利用しなかったが面白がって買う人は多い。
御覧場橋までのお散歩コース
天工橋から下流方向に御覧場橋が見えた。あそこまで行って橋を渡って戻ってくる周遊コースが30分。我らのスケジュールにちょうどはまる所要時間ですね。行ってみましょう。
御覧場橋は吊り橋なので揺れることは揺れる。でもまあ大丈夫。橋の上から天工橋方向の景色がこちら。ちょっと影のせいで暗く…なんて言ったらせっかく日が出ているのにバチが当たるかな。
この先まだあちこち行かなきゃならないので、上流側の長者滝橋まで歩く70分周遊コースはパスして出発。厳美渓は一関の中心市街からアクセスしやすい場所だし渓谷美は一見の価値あり。
自然の造形&舟下りそのものも楽しい猊鼻渓
鴨と一緒に舟下り
お次は猊鼻渓。「げんびけい」と「げいびけい」がいつもごっちゃになりそう、ってこともないか。厳美渓からの移動中に雨が降ってきて心配したが到着したらあがっていてホッとした。鉄橋の上に虹が出ていて趣のある風景を撮影…しかし直後に列車が橋の上を通過、絶好の撮り鉄タイムを逃した、ちくしょー。
猊鼻渓の方は舟下り体験がマスト。上の写真を撮った場所は猊鼻渓の「げ」の字ですらないといっても過言ではない。とにかく舟には乗りましょう(1800円)。
素朴な舟は70人乗り。過密にならない適度な人数を乗せて出発。秋から冬に移り変わる頃だったため舟には覆いがかけられていた。もっと寒くなると「こたつ舟」になるそうだ。
舟の後を鴨が一生懸命付いてくる。餌狙いですな。50円の餌を売っているので、ばらまいてあげたければどうぞ。うまくやると手から食べさせることもできるとか。
どんどんスケールが大きくなる岩
川の両岸がそそり立つ岩の崖になっており、ところどころ洞窟のような穴があいている。毘沙門窟なる祠もあった。舟からお賽銭を投げ入れることも可。
こちらは古桃渓なる岩場。写真だとごちゃごちゃして分かりにくいか。雨の後には滝が現れるらしい。
さあ目的地が近づいてきた。壮夫岩(下の写真・左)と少婦岩(同右)に挟まれて奥に錦壁岩の見えるエリアを通過するとやがて下船して歩きとなる。
岩の高さがどんどん高くなってきてスマホのカメラじゃ1枚に収まりきらんぞ。
運試しの運玉投げ
5分くらい歩くと終着点かつラスボス級に巨大な岩が見えてきた。大猊鼻岩、高さ124mだと。
同じ場所に獅子ヶ鼻というのもある。次の写真でいうと右上の若干色が違う部分が三角に広がって見える箇所だ。
同じ写真のやや左下、岩肌にぽっかり穴が空いているのが見えるだろうか。現地で運玉(5個100円)を買って穴めがけて投げてみよう。見事入れば念願成就。見た目よりも距離があるから、球技で肩を鍛えているのでない限り、素人は山なりを意識して投げるのがコツ。外しましたけど。
猊鼻渓は岩壁のスケールはもとより、舟下りそのものも楽しい。船頭さんの笑いを誘うトークはプロ級だった。当時は紅葉が終わって特筆すべきアクセントのない時期だったけど、雪景色・桜・藤・紅葉が見られる季節は良さが倍増するだろう。個人的には藤の頃にまた行ってみたいと思わせた。
歴史の重みを感じる中尊寺
中尊寺といえば金色堂
さてお次は平泉の中尊寺。大げさに言えばちょっとした山の中にあり、一般的には麓の駐車場から坂道をずーっと登っていくのだが、体力を温存したい我々は坂の上駐車場というところまで車で進んでいった。そこからだと少し階段を上がれば本堂のそばに出る。
さっそく本堂でお参りを。正直なところ奥州藤原氏というワード以外の何の背景も知らずに来ている。いいのだろうか。まあ京都の清水寺拝観とかと一緒のノリですね。百聞は一見にしかずの実践ってことで許してほしい。
そして本堂以上に有名ともいえる金色堂へ。讃衡蔵という宝物館の前で拝観券(金色堂・讃衡蔵共通券)を売っている。先に讃衡蔵へ行ってみたら、仏像や装飾品など歴史の重みからくる威圧感がすごかった。なお館内は撮影禁止。見学後に今度こそ金色堂へ。※金色堂じたいは風雨から守るための覆堂の中にある。
こちらも撮影禁止なので言葉で説明すると、本当に金色のお堂でした。…貧弱すぎる説明ね。でもそれしか言い表しようがないのよ。付け加えるなら、ただの豪華絢爛とは様子が違う。金色に光り輝く中に阿弥陀如来・観音菩薩・勢至菩薩・地蔵菩薩他の像が安置され、さながら極楽浄土の様相。
しかも中には藤原清衡・基衡・秀衡の遺体と泰衡の首級が収められていると聞いて、なんだかこの世ではない別の時空をうっかり覗き見てしまったかのような気分だった。
他にもお堂がたくさんある
他にも見どころはたくさん。たとえば白山神社の前にある能楽殿とか。
また阿弥陀堂・地蔵堂といった「~堂」が数多く点在している。温泉ブログの観点からひとつ取り上げるならば薬師堂だ。建物じたいは新しく建て替えられた感じで、むしろ注目すべきは奉納の碑。なんと国見温泉・石塚旅館の名前があるじゃないか。非常に珍しい、鮮やかなライムグリーンの温泉だ。もう薬師堂より国見温泉のことで頭がいっぱいになっちゃった。
中尊寺は以上で完了。昔来たことを覚えているつもりで実際はたいして覚えなかった。人間の記憶なんてあてにならないね。
かつての栄華の跡・毛越寺
金色堂のあたりから空模様が怪しくなってきてポツポツ降り出していた。まだなんとか傘なしで耐えられる。あと少しもってくれと祈りながら最後の訪問地・毛越寺へ着くと雨はあがっていた。ようしラストスパート。
まず本堂。
一番奥にある開山堂。
毛越寺には大泉が池を中心とする浄土庭園のまわりに数多くの寺院が立っていたがあらかた焼失してしまった。今は跡だけが残る。たとえば金堂円隆寺跡がこちら。
大泉が池は結構大きくて浄土庭園としての美しさがあり、この池を回るように1周するのが一般的な見学コースとなる。
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以上で予定の全行程を終了。時間が余ったため、おまけとして高館義経堂へ行ってみたらいきなりのゲリラ豪雨でとても外を歩けない。これは…おまけとは何事かという義経公のお怒りか。せっかく来たからとずぶ濡れ覚悟で突き進むほどのMOTTAINAI精神は持ち合わせてないので即撤退。レンタカーを返して本当に終了。
厳美渓→猊鼻渓→中尊寺(少し降られた)→毛越寺までどうにか天気は持ちこたえた。とくに猊鼻渓の舟下りが雨じゃなくて本当に良かった。絶妙に逃げ切ったぜ、という総括から浮かれ気分で帰路についた。