恐山や大間崎などの観光スポットを擁する下北半島。実は過去に行ったことがある。21世紀じゃなかったかもしれないくらいの大昔の話。長き年月を経て再び訪れる機会がやってきた。令和の下北をこの目で見てやりますよ。
2日間かけて恐山~薬研渓流~大間崎~仏ヶ浦~尻屋崎をまわった。まあ広いですね。事前の計画段階でわかっていたとはいえ、かなりの長距離ドライブだった。斧のような形をした半島の付け根から斧の刃のあたりまで北上するだけでも長い。
季節的には紅葉がちょうどいい時期で、天候は最高ならずとも悪くはなく、秋の行楽シーズンにふさわしい観光ができたのではないかと思う。
久しぶりの霊場恐山
三途の川にかかる橋
新幹線の七戸十和田駅に集合した参加メンバー一同。みんな同じ列車のバラバラの席に座ってたんだけどね。早速レンタカーで恐山を目指して北上を開始した。南関東はまだ紅葉には全然早いけど、ここらはいい具合になってきてるな。
途中の横浜町・檜屋さんで早めのランチ。横浜そばという五段重ねの冷やしそばを注文。三段重ねになってた出雲そばを思い出すなあ。しっかりした手打ちそばに山菜・とろろ・おろし・かつお節・のりのトッピング。
お腹いっぱいで再び出発。むつ市街から恐山への山道を上る。恐山展望台やむつ湾展望台への分岐道は閉鎖中だったのでメインの菩提寺へ直行すると、終着点の少し手前に三途の川にかかる太鼓橋があった(いろんな意味で渡ってはいけません)。奥に見えるのは宇曽利湖だ。
境内の地獄めぐり
霊場の雰囲気を感じながらいよいよ菩提寺の境内へと進む。昔来たことあるのに細部はすっかり忘れてる。
中には温泉小屋があって一般客も利用できてしまう。ここが狙いのひとつでもあったのだが、帰り際に寄ろうとしたら結構な混雑だったからやめようということになった。残念。どんな温泉だったんだろう。
みんながお参りする地蔵殿がこちら。ご本尊は延命地蔵尊。
地蔵殿を左へ抜けると、火山性ガスで地面が白くなった地獄地帯が広がっている。場所によっては「無間地獄」とか「重罪地獄」といった立て札が立っていた。
あちこち石が積んであるのが三途の賽の河原を思わせる。石と石の間に差し込んだ風車が独特の雰囲気を醸し出していた。写真を公開するのはちょっとやめときましょうかね。今回はなかったけど昔来た時は、ここにはちょっと書けない、生々しいお供え物やメッセージが添えてあったりしたものだ。それだけは覚えてる。
神妙な気分になる極楽浜
一番奥まで歩いていくと八葉塔があった。寺院を開いた慈覚大師円仁の像だ。
それから八角円堂や水子供養地蔵尊を経て宇曽利湖畔(極楽浜)へ至る。当時はファミリーなどでにぎやかだったけど状況次第では冥土へ来た気分になりそうな風景…写真にオーブが写っちゃってますな。
さらに歩いて坂を登った五智如来のところが展望台になっていた。向こう側の高台にも登っていけるけど、あそこまで歩く元気はなかった。
こんな感じで地獄地帯を含む境内を1周するのに約1時間。温泉に入るつもりがあるなら1時間半みておいたほうがいい。あと場所が場所だけに冬季閉山に注意。一般見学はだいたい5月~10月まで。ねんのため事前にホームページなどで確認を。あといつでもイタコさんがいるわけではありません。
薬研渓流のきれいな紅葉
恐山の次は薬研渓流。両者を結ぶ山道は思った以上に狭隘区間が長く続く。自分がドライバーでなくてよかった…。薬研温泉のちょっと先に川のそばへ下りていける歩道があったから車を置いて行ってみた。おー、いいんじゃないの。
薬研温泉郷の入口にかかる紅葉橋には小さい駐車場があって付近を歩き回るには便利。橋の上から川を見下ろすと、先ほど見たのよりも峡谷的な景色になっていた。
別の薬研橋駐車帯というところでも川まで歩いて下りていける。ショートカットできそうに踏み固められたルートは崩れかかってて危ないから遠回りでも正規の道を進むのがいいだろう。川は先の2箇所とはまた違った表情を見せていた。
時間に余裕があれば薬研温泉に立ち寄り湯したんだけどね。そこまで欲張るのはさすがに無理だった。こうして初日のイベントは終了。下風呂温泉・さが旅館に泊まって翌日に備えた。
本州最北端の大間崎と奇勝仏ヶ浦
大間崎といえばやっぱりまぐろ
翌日は曇り。下手すると一時雨かもしれない予報だった。うーん、今日は降られなければ良しとしよう。宿をチェックアウトしてまず向かったのは大間崎。本州最北端だ。ひとつ前の旅行で本州最南端の潮岬へ行っていたから一気に南北制覇ってわけだ。まあ大間崎は大昔に訪問ずみでしたがね。
現地は無料駐車場あり。いかにも「ここが最北端です」と言わんばかりの小広場があって最北端の碑が立っていた。そうそうこんな感じだったな。
まぐろ一本釣りのモニュメントもあったぞ。こいつは記憶にないな。20世紀からあったっけ? ともかくたいがいの人がここで記念撮影をしていた。大間崎へ来たってのが大変わかりやすいからな。
海の方に目をやると、近くに弁天島と大間埼灯台を見ることができたし、曇っていても津軽海峡の向こうに北海道の陸地を確認できた。函館山から恵山にかけてのエリアでしょう。
船に乗って仏ヶ浦へ上陸
お次は奇勝・仏ヶ浦だ。車で行くと駐車場から見どころの海岸まで、かなりきつくて長い下りを歩くそうなので、現地の海岸に接岸して上陸させてくれる遊覧船を利用することにした。旅のスケジュールがかっちり決まっていて融通が利かない場合は事前予約しておいた方が無難。
遊覧船は仏ヶ浦まで20kmくらい離れた「津軽海峡文化館アルサス」という施設のある港から出ている。港から仏ヶ浦まで往路30分+上陸見学30分+港まで復路30分の90分コースで2500円。2つの会社が運行しており、我々は佐井定期観光の便に乗った。途中にも見どころの岩はあるけど割愛…予定通り30分後には上陸していた。
あちこちに三角に尖った巨岩が突き出している。岸近くの海水はエメラルドブルーで、浅い海底にはウニがいるみたい。※勝手に採ってはいけません。
地蔵堂もある。車で来た人は駐車場からひたすら下って来るとこの地蔵堂へ出てくる。仏ヶ浦は恐山の奥の院とも言われているそうだ。
冒頭写真の景色が見える場所でガイドさんから衝撃の事実が。当社の遊覧船はもう事業を終了してしまうから、まもなくラストランを迎えるんだって。えええーーー、残念。コロナとかあって継続が厳しかったんでしょう。船は淡路島の方へ移籍してまだ使われるとのこと。また仏ヶ浦遊覧船としてはもう1社の仏ヶ浦海上観光が残っている。
変わった形の巨岩がいっぱい
気を取り直して見学を続けよう。1個1個に名前が付いてるくらい、それぞれユニークな形をした岩が並んでいた。いろいろありすぎて個々の名前はもうわからなくなってしまった。
次のやつは双鶏門だったかな。見ようによっては二羽の鶏が向かい合っているように見える。
上陸時間中にぎりぎり行けそうな範囲では一番奥にある蓬莱山。自分はリスクを冒さず遠くから撮影するのみ。
これは蓮華岩。形からすぐわかる。
あと1個だけ紹介。斜めにスッパーンと切れ込みが入ったような天龍岩。
他にもいろいろあった。とにかく不思議で変わった地形だし、岩のサイズが人間より圧倒的にでかいし、普通じゃない感じが強烈な印象を残す。背景の山の紅葉がまたばっちりだったし。天気が若干回復気味だったのも運が良かった。メンバー一同かなりの満足をもって帰港。遊覧船よ、長い間おつかれさまでした。
本州最涯地・尻屋崎
ちぢり浜は穴場のスポット
続いては半島西端エリアから一気に東端エリアの尻屋崎へ移動する。途中、むつ市大畑と風間浦村の境にあるちぢり浜へ立ち寄った。他に誰もいない穴場の観光スポットだった。ミニ仏ヶ浦のような岩があったりする。
こんなのとか。
静かに佇む尻屋埼灯台
ちぢり浜を出発して今度こそ尻屋崎へ。自分にとっては初物だ。すでに行ったことあるメンバーによれば寒立馬が放牧されているそうなのだけど、結局見つけられないまま尻屋埼灯台の前まで来てしまった。まあまず灯台を見ましょうか。
なんとなく気品のある立ち姿。本来なら「のぼれる灯台」のひとつのはずだったが、この年は準備が整わず一般公開を休止(敷地内に立ち入ることは可能)。しょうがない、灯台の上から見下ろすのが無理なら地上からの目線で太平洋を撮っておくか。
「本州最涯地尻屋崎」の碑と灯台のツーショットはいい感じ。この草地のところに寒立馬がいればもっと絵になったんだがなあ。
最後に出あえた寒立馬
はい、尻屋崎はここまで。もう今宵の宿へ向かう時間だ。車を出して数分ほど走ると、柵に囲われた放牧地に馬の集団が見えた。寒立馬だ。ここに集まっていたのか。
車の走行ルート選択次第では今のこの道路を使わず、別の道を走って結果的に寒立馬に出会わなかったかもしれないから、運が良かったと言うべきか。とにかく尻屋崎のシンボルである灯台と寒立馬を見られたから気持ち的にはすっきりした。
こうして2日間にわたる下北半島周遊を終えた。下風呂温泉宿泊を含めて盛り沢山だったな。これでまだ日程の半分も消化していないとは、信じられん。