青森県東北町にある上北温泉郷。このたびの青森遠征にて、下北半島を周遊した後の2泊目としてちょうどいい場所にあった。モール泉を特徴とし、気取らないリーズナブルな宿がいくつかありそうだ。旅のメンバー各員が好むぬるいお湯を提供するところもある模様。
そういった背景からいろいろ調べて決めたのが「温泉旅館 松園(しょうえん)」だ。モール臭のする良質のお湯を源泉かけ流しにしている。しかも露天風呂はちょうどいい塩梅にぬるくなっていた。こいつはありがてえ。
加えてお財布に優しい価格設定だったのもありがたい。もちろん何もかもが豪華絢爛とはいかないが、我々にとっては十分に満足のいくものだった。
上北温泉郷「松園」へのアクセス
下北半島の付け根よりちょっと南くらい、小川原湖の西の端あたりに上北温泉郷がある。首都圏から鉄道で行く前提だと東北新幹線の八戸で青い森鉄道に乗り換えて上北町で下車。徒歩7分で着く。鉄道派にもわりとアクセスしやすい。
一方、初日に新幹線の七戸十和田駅前でレンタカーを借りて出発した我ら一行、そのまま上北温泉郷へ向かうなら比較的近距離だったが、実際は2日間かけて下北半島を周遊し、日が落ちてくる頃に小川原湖付近まで戻ってきた。
なので当館はまさにちょうどいい場所にあった。まあそれにしても下北半島のビヨーンと伸びた首(?)は長い。尻屋埼灯台から当館まで2時間近く走ったんじゃないか。
東北町に入ると緩やかな丘陵地帯が広がり、田んぼよりは畑が目立つ。それぞれの農地は広くて、イメージ的には北海道の風景を思わせる。黄色い葉っぱが人間の背の高さくらいまでの壁を作っている畑がちょいちょいあって「なんだろう?」と思ったら長芋なんですね。知らんかった。
上北温泉郷の各旅館は互いに密集して温泉街を形成しているわけではなく、上北町駅前の町中にポツポツ点在しており、松園の周辺も普通の市街地のように見える。また隣駅の範囲までを含めた広いくくりで、モール温泉おがわら湖温泉郷という呼び名で扱われることもあるようだ。
利便性と気楽さを重視した部屋
松園には冒頭写真に示した本館と下に示す別館があって両者は2階の通路でつながっている。
今回は本館の部屋を予約した。本館のフロントでチェックイン。ロビーはこのようになっております。ソフトドリンクの自販機とは別にお酒の自販機があったかどうか覚えていない。なかったかもしれない。そもそも夕食前に自販機でビールを買って飲んだかどうかを覚えていない。
割り当てられた部屋は1階奥の12畳和室。広いし新しい感じだぞ。老舗旅館の重厚さはないものの、そういう雰囲気にこだわらないならハード面はひと通り揃っていて居住性はばっちり。布団はセルフでお願いします。
シャワートイレ・洗面台あり。金庫あり、空の冷蔵庫あり。WiFiあり。ビジネス旅館としての利用も結構あるみたいで(フロントで「仕事で来たの?」と訊かれたし職場の同僚チームらしき集団も泊まっていた)、ネット環境はちゃんとしているんじゃないかな。
窓の外はちょっと先が一般のお宅の敷地のように見える。一応気をつけてカメラを下に向けて撮ってみた。都会の住宅密集地とは違い開放感はある。
良好モール泉を楽しめる
本館にあるのは露天風呂
松園の大浴場は2つ、ある意味では3つある。本館露天風呂、別館内湯、そして100mほど離れた温泉銭湯「まつのゆ」だ。まつのゆは当館宿泊者なら無料で利用できるが我々は結局行かずじまいだったのでレポートすることはできない。
チェックイン後はまず本館露天風呂へ行った。1階廊下のつきあたりの扉を開けると男湯・女湯の各入口がある(男女の入れ替えはない)。脱衣所は3名分くらいの広さ。分析書を探してみたけど別館内湯共々見つけることはできなかった。後日の調べによるとアルカリ性単純温泉のようだ。源泉かけ流し。
露天エリアは広めの屋根付きカーポートを岩風呂に改造したような印象。単に屋根の素材を見て勝手にイメージしちゃっただけなんですけどね。カランは3台でシャワーは付いてない。
浴槽は4~5名規模で、お湯を注ぎ込む典型的な湯口ではなく、浴槽内に管が引き込まれていてそこから源泉を流し入れているようだ。時おりボコボコッという音とともに管の出口から大きな気泡が上ってくるのが見える。
ぬる湯チャンス大のモール泉がGood
お湯に濁りはなくて透明。明るい時間帯に来ると微褐色を呈していることがわかる。浸かってみるとぬるかった。38℃とみた。我ら一同ぬるいのは好きだから願ったり叶ったり。その気になればずっと入っていることができる。この日は露天風呂で他の客とかち合ったことがないから、なおさらだ。
手でお湯をすくって鼻を近づけてみた。おー、モール臭がするぞ。匂いの強さとしては控えめなので気品ある芳香といったところか。さすがモール温泉おがわら湖温泉郷。
周囲は町中の一角で民家も近く、ゆえに目隠しの囲いがされて眺望はない。しかし窮屈な感じはしない。リラックスできるモール泉の源泉かけ流しや適度なぬるさ込みで“当たり”といえるお風呂であった。利用可能時間が夕18時~朝10時という、宿泊者は好きなだけ入ってくれと言わんばかりの設定なのも良し。
※注…メンバーの一人が夜単独で入りに行ったら普通の熱さだったそうだ。一方、朝はぬるかった。当館の露天風呂はたいがいぬるいと思うけど、いつも必ずそうとは限らないかもしれない。
適温でヒバ香る別館内湯
次に内湯。まず本館2階へ上がり、連絡通路で別館へ移動してから1階へ下りると大浴場がある。こちらも男女の入れ替えはなし。利用可能時間は朝6時~夜24時。
こちらはヒバ風呂の名前が付いており、浴室に入ったとたんヒバの香りがしてきた。カランは8台のうちシャワー付きは5台。右手前の角にある浴槽は3名規模。典型的な湯口からお湯がジャーッと投入されている。
浸かってみたら普通の熱さだった。ぬるいのが苦手な方は内湯メインで利用するのがよさげ。微褐色は露天風呂と一緒で匂いも一緒のはずだけど、モール臭がすぐにヒバの匂いで上書きされる印象だった。露天風呂との違いはお湯にはっきりとヌメリ感があったこと。このヌルつきのためか浴室の奥の床を歩くとツルッと滑りそうになる。
浴槽の向かいの壁はガラス越しに庭園風の装飾が見えるようになっている。
かなりお得感のある食事
夕食は質・量とも十分だと思う
松園の食事は朝夕とも1階の食堂で。予約したのはスタンダードプラン。夕食の時刻に食堂へ行くと部屋番号に対応したテーブル席にすでに料理が並んでいた。
とてもお得なお値段だったので、これほどのおかずが並ぶとは正直予想していなかった。これはうれしい誤算。質・量ともにまったくもって大満足。こんなにいただいちゃってええんですかい。
焼魚はカレイの系統だったように思う。言い当てられるほどの味覚も食材知識もありませんが。なお、しっかりした鍋があったし、ビールを飲みながらおかずをつまんでいったら結構お腹いっぱいになった。自分的にはご飯をおかわりしなくても十分だった。
ご当地をイメージさせた朝食
朝食も同じテーブル席でオーソドックスな和定食。
豆腐が白ではなくやや緑色をしている。トロロに見えたのは長芋に卵の黄身を落としたものだった。東北町の丘の長芋畑のイメージに結び付く。味噌汁はしじみ汁だった。これは小川原湖のイメージですな。
今日は奥入瀬をたくさん歩かねばならない。そのためのエネルギーはばっちり補充した。朝食の後に軽く露天風呂に入ったら、さあ出発だ。
* * *
上質のモール泉をぬるめで楽しめる露天風呂がヒットだった松園。しかもくどいようだがとってもお得感のあるお値段。出発後の車内では「ビール・入湯税込みで本当にこの値段でいいのかよ」的な会話が弾んでしまった。
今回は諸々の都合で“まつのゆ”へ出撃することはなかった。どんなお風呂だったのだろう。松園に止まる機会のある方で、時間に余裕のある方・温泉めぐりを極めたい方は是非まつのゆを体験してみていただきたく。
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