この秋は大型のグループ旅行企画が続く。第1弾は紀伊半島ツアーだ。広大な半島内に見どころはたくさんある。参加メンバーの趣味・意向を調整した結果、熊野三山と南紀海岸部の景勝地めぐりを中心に組み立てることになった。
ただし、いろいろ検討して奈良県の大和八木を起点に南下していくルートがとられたこともあって、初日は明日香村を観光することにした。少なくともかつては遠足や修学旅行の定番のひとつだったが、プライベートの旅行を含めて訪れたことがあるのかどうか、まったく記憶にない。
というわけで何を見ても新鮮という状態で古代ロマンの里へ向かったのであった。
古い時代のお寺を見学
使い方次第でお得な観光パスポート
メンバー全員が首都圏住まいであるにもかかわらず、集合は10時前に大和八木駅。その方が行動の自由度が高いからね。たとえば前もって関西入りして京都観光したメンバーもいる。このご時世で人が少なくてゆっくり見学できたし、数年前まで地獄の大混雑といわれたバスなんかも空いてたそうだ。うらやましい…そうだよなあ、今が京都へ行くチャンスではあるんだよなあ、わかっちゃいるけど。
自分は当日早朝の新幹線で京都へ。もちろん観光はせずすぐに近鉄の急行に乗り換えて(経費節減のため特急には乗らない)約1時間。約束の時間に大和八木に着いた。無事に全員集合したところでレンタカーを借りていざ出発。
まずは近鉄飛鳥駅に隣接する「道の駅 飛鳥」で情報収集。ここで飛鳥王国なる観光パスポートを入手した(100円)。各種施設や有料駐車場の割引券が付いており、いくつか周遊すれば元が取れる。準備を整えたところで飛鳥寺へ向けて発進。
飛鳥寺で見られる日本最古の仏像
途中に亀石というスポットがあったので立ち寄ってみた。うーん、亀といえば亀、かな。
周囲は田畑が広がる平坦な土地で、元からこの場所にあった岩石とは思えない。明日香村にはこうした謎の石造物が散在している。
亀石を経て飛鳥寺へ近づくにつれ、道路がどんどん狭くなっていった。当エリアの観光には自転車とかバイクとかが本来向いてるんだろうな。時間と体力に余裕があれば歩きでも面白いかもしれない。まあとにかく飛鳥寺に着きました。
蘇我氏ゆかりの寺で、本尊の飛鳥大仏は日本最古の仏像といわれる。少し面長ですね。
他に聖徳太子像も見学できる。もともとの寺院は今よりもずっと広かったとのことで、模型だか説明図だかを見たらたしかに昔の方が規模が全然大きい。ある意味で歴史の流れを感じさせる。
聖徳太子ゆかりの橘寺
続いては橘寺。直前のアプローチ道路はかなり狭いから注意。
聖徳太子生誕の地とされ、ご本尊にも聖徳太子像が。しかし本堂は撮影禁止なので境内にあった二面石を紹介すると、人間の心を表す善と悪の顔が彫刻された石だそうだ。ジキルとハイドみたいな。
橘寺は往生院の天井画も見どころだ。いろんな花の絵からなるパネルが天井に組み込まれている。ずーっとその場に留まって天井を見続けるんじゃないかと思われる人々もいた。
古墳群の見学
二上山を望む石舞台古墳
ここから古墳シリーズが始まる。橘寺の後は石舞台古墳に向かった。古墳に最も近い駐車場は満車で入れなかったから、Uターンして少し手前の夢市茶屋というレストランがある駐車場を利用した。※このUターンに結構苦労した。満車だった駐車場を過ぎると、道が急激に狭くなるわりに行き交う車がそこそこあるため、なかなかUターンする余裕を与えてもらえない。
これが石舞台古墳だ。蘇我馬子の墓との説がある。
振り返れば遠くに二上山。土地勘のない自分はいまいちピンと来ないが大阪と奈良の境にある双耳峰として親しまれている由。
石舞台古墳では石室内部に入ることもできる。今は空っぽですけど。秋にしてはやけに暑い日だったから日陰に入れてホッとしたのと、天井にカマキリがへばりついてたことが妙に印象に残っている。
ランチはご当地みどりめんを
石舞台古墳の見学後は駐車場そばの農村レストラン・夢市茶屋さんでランチタイム。古代米御膳・黒米カレーなどがある中で「みどりめんセット」を注文した。柿の葉寿司付き。
ツルムラサキを練り込んだ麺はたしかに緑色。コシがあるというよりはチュルチュルした感じですいすい食べられる。自分にしては短い時間で完食してしまった。別のメンバーが注文した黒米カレーもうまそうだったな。
高松塚古墳に残された壁画
腹を満たしたらお次は高松塚古墳へ。国営飛鳥歴史公園のところの駐車場に止めると公園内を結構歩くことになる。過去に訪問ずみのメンバーがもっと近い駐車場に心当たりがあったから、そっちを目指して走っていくと、未舗装の農作業道みたいな狭い道を経て到着。古墳に隣接する土地所有者の個人経営じゃないかな。
この駐車場だと高松塚古墳はとても近かった。古墳見学はこんもりした小山を周囲から眺める形だから時間はかからない。
高松塚古墳といえば石室内の壁画で知られるが、近くの高松塚壁画館では壁画を復元したものを展示している。劣化しつつも男子群像・女子群像・白虎・玄武・青龍が描かれていたのがわかる。ちょっと大陸文化っぽい。なお朱雀はいなかった。
キトラ古墳と四神の館
最後はキトラ古墳。駐車場から現地までは客観的にみれば距離もアップダウンもたいしたことないのに、なんだかんだで足にダメージがきていて結構しんどかった。ここはこんもり小山を一方向から見るだけ。
最も印象に残ったのが隣接する四神の館という展示館。無料なのにモダンでやたらと充実している。観光客向けに「見せよう」とする気合の入り方は、この日見た中で最も充実していた。
キトラ古墳でも壁画が見つかっており、こちらでは朱雀を含む四神が確認できる。十二支の一部もあり。天文図なんかもあってやはり大陸文化っぽい。
石室は鎌倉時代に盗掘された跡があり、南壁に盗掘用の穴を開けられてしまったのだけど、縦型に開けられたおかげでなんとか朱雀の絵は壊されずにすんだとか。学術調査時にはこの穴からファイバースコープを入れて内部を撮影した。そして壁画のはぎ取り保存作業の後、穴は埋め戻されている。
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以上で明日香村観光を終了。撮影禁止のところも多かったから何でもかんでも写真に残すわけにはいかなかった。でも自分の目で見たからいいや。ここから我々は吉野方面へ向かい、いよいよ紀伊半島の懐へと入っていく。