名湯砂湯にも近いアットホームなお宿 - 湯原温泉 かじか荘

湯原温泉 かじか荘
このたびの岡山遠征の初日で、美作三湯のうち湯郷と奥津温泉を昼の間に立ち寄り、残る湯原温泉で宿を取ることにした。ネットでおひとりさまOKの空室を探して予約したのが「かじか荘」。外観はちょっと昭和チックだが、部屋の中の設備はしっかり新しくされている。

小さい内湯のみとはいえ熱いお湯は本格的で間違いなし。ひとり~少人数が昔ながらの気取らない宿でのんびりしようというパターンに向いている。湯原という山里にもかかわらず魚介豊かな夕食はボリュームたっぷり。食事の満足度は高い。

そしてかじか荘のすぐ近くには有名な砂湯がある。ダムのすぐ下流に位置する足元湧出の露天風呂だ。もちろん体験してみました。露天風呂だしぬるいのがあるから、宿のお風呂とはまた別の楽しみ方ができる。

湯原温泉「かじか荘」へのアクセス

湯原までは、まあたいがい車で行くことになるだろう。岡山の北端近くでざっくり蒜山高原エリアになるから行くのが大変そうなイメージがある。でも米子自動車道・湯原ICの存在が利便性を大幅にアップしてくれる。湯原ICから温泉街までは10分弱。

自分は奥津温泉に立ち寄ってから向かったため高速を活用できなかった。所要時間と道路整備状況のバランスから、国道179→482→313号をリレーする北回りルートを選択。途中で県境を越えて鳥取県三朝町に入り、下西谷というところから岡山県復帰を目指して南下し始めるが、そこからだと湯原より三朝温泉の方が近い。三朝か…数ヶ月前に三朝温泉に泊まったんだよな、懐かしいぜ。

などと思い出に浸りつつ、奥津温泉から1時間そこらで湯原温泉に到着。温泉街の道は狭くてごちゃついている。対向車が来るとすれ違いに気を使う。有名な砂湯の方へ川沿いを走っていくと、河原に作られた大きめの無料駐車場があるから、そこへ車を止める(かじか荘に専用駐車場はない)。

この駐車場をスルーして先へ進むべきではない。砂湯の手前で車両行き止まりだ。Uターンはもちろん可能だが切り返しするスペースが十分あるわけじゃない。入り込むとなかなか面倒だぞ。無事に駐車場まで来たら奥の方へ止めるといい。見上げると、かじか荘はすぐそこ。
河原の駐車場から見えるかじか荘

川を望む、落ち着ける部屋

今日は温泉いっぱい入ったから砂湯は明日にして宿でゆっくりしよう。さっそくチェックイン。客室は2階にあり、案内された部屋は旭川を望む6畳+3畳和室。食事処にあるようなテーブル席が部屋の中央に置かれていたのが面白いと思った。
かじか荘 6畳+3畳和室
実際のところ当宿は部屋食であり、テーブルに料理が並ぶから合理的ではある。夕食後にテーブルを脇に寄せて布団を敷いてくれる。

諸設備は新しい。3畳側に接する洗面台とトイレはかなり新しかった(ただしシャワートイレではない)。なんら不都合なく快適に過ごせる。金庫なし、空の冷蔵庫あり。WiFiはよくわからん。ネット情報だとあるみたい。携帯のアンテナ強度は十分。

窓の外はこのような感じ。川と駐車場と向こう岸に油屋という老舗旅館。川の中に入って釣りをしている人がいました。目の前の道を右方向へ2分ほど歩くと砂湯に到達する。
窓の外には旭川
ずっと部屋にこもりきりで館内を探検することはなかった。雰囲気からしてロビーとか読書室とか自販機とか卓球コーナーはなさそうに思われる。そもそも5室の小規模宿だし。


湯力を感じる熱いお湯

小さなお風呂を貸し切りで

お風呂は2階にある。客室の並びのすぐ向かい。予約不要の自由貸し切り方式だ。誰もいないことを確認したら扉を閉めて内鍵をかける。スリッパを室外へ脱いでおくので、それが利用中の目印になるだろう。

脱衣所は2名分くらいの広さ。いろいろ張り紙してある中に、浴室の扉を開けておくと熱気で火災報知器が反応して大変なことになるのでやめて、と注意書きしてあった。了解です。分析書ぽいのを見ても泉質ははっきりしないが、おそらくアルカリ性単純温泉のはず。低張性、弱アルカリ性、高温泉。源泉かけ流し。

浴室も小さめ。カランは1台で浴槽は2名までのサイズ。壁や浴槽の素材のおかげで岩風呂的な雰囲気になっているから家庭風呂とは明らかに違う。

結構な容赦のないあつ湯

お湯の見た目は無色透明。壁から2本の蛇口が生えており、それぞれにつながったホースが湯の中へ引き込まれて合流し、1本のホースとなって少し延びた後、浴槽の底で終わっている。そこから源泉が吐き出されて湯船に溜まっていくんだろう。

2本の蛇口の一方には消えそうな字で「湯」と書かれた小さな木札がかけられていた。じゃあ他方は温度調整の加水用かな。勝手にいじって変なことになるとまずいから下手に触らないでおいた。熱いなら熱いなりに、そのまま体験しようじゃないか。

では入ります。あちい。これは見事なあつ湯でござる。しばらく体を慣らすと肩まで浸かることができるようになる。うむ、なかなかいい感じじゃないの。ぱっと見てすぐわかる特徴はないものの単なる沸かし湯ではない浴感はあった。またアルカリ性によるヌルつきも若干ある。

効き目はばっちりあった

あー効くぜー。温度が温度だけに、かつ室内の湯気や熱気ムンムンも作用して、長く浸かっていることはできない。ちょっと入っては洗い場で休憩、を何度か繰り返すことになる。基本的に1回の入浴を短時間にして回数でカバーするタイプの温泉だ。自然と回転率が高くなるから貸し切り方式には向いている。

根性で粘ったって意味ないし、適当に切り上げて出た。この温泉はやはり温まり方が半端なく、脱衣所でも部屋に戻ってからも汗がなかなか引かない。相当効いたね。肘にできていた汗疹の成れの果てのかさぶたが全部きれいになくなっていた。こいつは本物だぜ。

ちなみに入ろうと思ったら誰かが利用中だったというケースは滞在中に起きなかった。もし満室の日だとしても、ずっと貸し切られてばかりで入りたくても入れない、なんてことにはならないと思う。


いろいろと印象に残った食事

食べきれないほどの夕食は意外と魚が多い

お待ちかねの夕食です。時間はある程度は融通が利く。時間が来ると部屋に料理が運ばれてテーブルの上に並ぶ。スターティングメンバー及びちょっと遅れて配膳されたのがこれ。やばいっす。種類と量がすごい。
かじか荘の夕食
湯原の山のイメージとは裏腹に魚介系が少なくない。日本海からやって来たイカの沖漬けはお酒のつまみにピッタリ。漁船で獲れたてを醤油漬けにする。船ごとに味が違うそうだ。少し残しておいてご飯に乗せて食べるのも良し。

山の温泉宿の定番・鮎の塩焼きに加え、酢の物にも魚(何かは知らん)。一番の特徴はポン酢でいただく黒媛鯛の薄造り。へー初めて見た、珍しい。濃厚というよりはさっぱり系の味。1枚1枚は薄くとも数が多いから結構食べごたえあり。

あと燻製系もあるし(卵と地鶏)、天ぷら・そば・鴨鍋まであってもう大変。締めのご飯はほんの一口が精一杯だった。味噌汁はあさり汁ね。夜遅くまで膨満感が尾を引くほどのボリュームであった。しかし味は自分好みにマッチしていたから、残したくないとぎりぎりまで頑張ってしまったのだ。お値段を考えたら相当なもんじゃないの。

おとなしめの朝食でバランスを取る

朝はおとなしめ。ゆうべの勢いを考えたらこれくらいで十分でしょう。そんなにもう入りませんので。
かじか荘の朝食
蓋をしてある鍋は湯豆腐。なお、夕食も朝食も女将さんが料理の説明をしてくれるのだが、次から次へといろんな話が飛び出す感じで面白い。この点だけでも気さくでホスピタリティ精神にあふれた宿だなあという印象を持った。

 * * *

話を聞いていると、このご時世に対応すべく各種対策にはずいぶん気を配って完璧を期していることがわかった。その安心感からリピートするお客さんも多いという。そうでなくても温泉・料理・サービスが気に入って再訪する客は少なくなさそうだ。

で、やっぱり降雪地のため冬は勝山からバスという手段になってしまうとのこと。湯原も夏は暑いからおすすめは春か秋だって。まあそりゃそうか。いくらか肌寒い季節の方があの熱いお湯に向いているんじゃないかな。


おまけ:露天風呂の西の横綱・砂湯

かじか荘からさくっと行ける

当宿から徒歩2分の砂湯は有名な混浴の露天風呂。地元ボランティアの方々による管理の下、24時間無料で開放されている。朝食の後、チェックアウト前の時間帯に行ってみた。道路が車両通行止めとなる区間の開始地点にお湯を流しているところがあった。手湯? 飲泉場? 何も書いてないからわからない。
お湯が湧き出す何か
こんな看板もあるんですけど。
微妙にシュールな看板
やがて砂湯が見えてくる。はっきりいって入浴者の姿が丸見えだ。撮影するわけにはいきません。朝の時間でまだ人は少なく、まったり系のおじさん・お兄さんばかりで、怪しげな行動パターンの人もいない。とりあえずまわりに気を散らされることなく温泉に集中できそうだ。

入口には露天風呂番付が掲げてあり、砂湯は西の横綱だった。ほほう。ちなみに東の横綱は群馬の宝川温泉

温度が異なる3つの露天風呂

分析書によれば「アルカリ性単純温泉、低張性、アルカリ性、高温泉」。先ほどの看板のこともあるから脱衣所から先は腰にタオル巻きで行動。8名~10名いけそうな3つの岩風呂があり、一番手近な「長寿の湯」は屋根付きでお湯は熱い。

その向こうの「美人の湯」はぬるくて長湯向き。ここは気に入った。湯面を見ていると、ところどころでプクプクとあぶくが上がってくる場所がある。底から源泉が湧出しているんだろう。川のすぐそばで頭上を遮るものもなく開放的で気分がいい。上流方向には湯原ダムが見える。下の写真は別の時に砂湯よりもっと先…ダムにかなり近づいた地点…まで歩いていって撮影したもの。
湯原ダム
残る「子宝の湯」は中間的な温度。こうして20分ほどであったが名湯砂湯を好条件下で体験できた。一風変わったロケーションの無料露天風呂ということで訪れる人は多い。夜はむしろ人が多かったりするらしい。混雑するとそれ自体がストレスになるし、どうしてもお湯が鈍っちゃったりするんで、できれば平日とか朝とかを狙いたいところだ。