源泉へのこだわりが見えた卵の湯 - 越後湯沢温泉 雪国の宿 高半

越後湯沢温泉 雪国の宿 高半
新潟旅行の帰りに越後湯沢で時間の余裕ができたので、駅から歩いて行ける範囲の温泉に立ち寄ることにした。そもそも駅構内に温泉施設があり、町の中には温泉銭湯・共同浴場がいくつかあるし、日帰り入浴を受け付けている旅館やホテルもたくさんある。

いろいろ目移りしがちな中で「これは」と思ったのが、雪国の宿・高半。歩くとちょっと時間かかりますけどね。卵の湯とも称される単純硫黄泉だというから、いかにも温泉らしい特徴があるんじゃないかと思って決めた。

実際たしかにタマゴの匂いがする、ツルツル感のあるお湯だった。熱すぎないからゆっくり入れるし、男湯は内湯のみだけど広がる景色を展望することはできる。大浴場以外の旅館全体の雰囲気もいい。

越後湯沢温泉・高半へのアクセス

駅前の温泉街よりずっと先にある

栃尾又温泉・宝巌堂でのおこもり連泊を終えて、すっかりリフレッシュしたおじさんは越後湯沢にいた。そのまま新幹線に乗れば昼すぎには東京近辺まで戻れるけど、あんまりあっさり帰り着いてしまうのは気分的に物足りない。もうちょっとこっちで粘りたい。

ここは一発立ち寄り湯でしょう、と高半へ行くことに決め、日帰り客の受け付けが13時からなので駅構内をぶらついて少し時間をつぶしてから、西口を出て線路沿いの道を歩き出した。旅館・飲食店・土産店などが続く、いわゆる温泉街。

途中には湯沢高原ロープウェイの山麓駅がある。これで上まで行っちゃうと逆に時間に余裕がなくなりそうだから今回はやめておこう。

ついでに共同浴場の場所を偵察

とにかく道なりに歩くこと20分。道路が右に大きくカーブするところまで来たら「山の湯」という共同浴場の標識が見える細い坂道の方に入る。来たついでに山の湯を写真に収めておいた。
山の湯
山の湯も硫黄感のある本格派の温泉らしいけど、お湯が熱いとの口コミが多かったため、ぬるめで提供しているとの情報があった高半にしたのだった。

ちなみにもうひとつの共同浴場「駒子の湯」は帰りに偵察してみた。山の湯から見て線路の向こう側にあり、越後湯沢駅からやっぱり徒歩20分てところかな。
駒子の湯
話を戻そう。先ほどの坂道をさらに上っていくと1分かそこらで高半に到着。ちょっとした高台に位置しており、その真下を新幹線のトンネルがぶち抜いていた。通過列車がいれば絵になるんだが撮り鉄じゃないのでこだわらない。さっさと風呂に入りますわ。
高半のある高台からの景色

本格的な源泉かけ流しを堪能できる高半

文豪ゆかりの宿

入ってすぐ左側にカフェがある。入口に映画「雪国」の上映云々と書いたパネルが立っていた。かの川端康成の名作はここ高半の部屋で書かれたらしい。なんとまあ。温泉のことしか頭になかったぜ。
カフェ
フロントで1000円を支払い、靴をスリッパに履き替えてエスカレーターで2階へ上る。ロビーと図書コーナーが合体したようなスペースが待っていた。川端先生の作品も取り揃えてあるのだろうか。こういったのがあると旅館としての格調高さや重厚感が出てくるね。
ロビー&図書コーナー
すぐそばには貴重品ロッカーと風呂あがりの休憩コーナー。かき氷の無料サービスがあるのにはちょっと驚いた。説明を読むとお子様を想定しているようだが、ようし、おじさんも頑張って食べちゃうぞ、とはならない。キンキンに冷えたものを腹に入れると後が怖いのでね(ビールを除く)。もう若くはないんじゃよ。
休憩コーナー

男湯は内湯のみ

そうしていよいよ大浴場へ。どうやら自分が一番乗りだった模様。脱衣所の窓からガーラ湯沢の駅が見えた。ずいぶん近いな…もし仮にガーラ湯沢駅まで列車に乗ることができて、駅から道がちゃんとつながってるなら、そっちから歩く方がよっぽど近そう。

掲示された分析書には「単純硫黄温泉、アルカリ性、低張性、高温泉」とあった。加水・加温・循環・消毒いずれもなしだと思う。源泉名が「湯沢温泉(湯元)」ってことは源泉の湯元ってことで期待大。

浴室内にカランはたくさん(数は失念)。女湯には露天風呂があるけど男湯は内湯のみ。まずはメイン浴槽へゴー。今の時代だと横並びに4名の規模感で、詰めればもうちょっといける。湯口から透明なお湯が注ぎ込まれているものの水深がずいぶん浅い。開店直後でまだお湯はり中みたい。

まさに卵の湯という感じ

まあいいやと気にせず浸かってみると事前の調査通り、ぬるめの適温だった。こいつはありがたい。無色透明だから見た目に強い特徴はない。しかしお湯の中をよく見ると白くて細かい湯の花があちこち漂っていた。本気出せばもっと巨大な花に成長するのではないか。というのも「とき卵を入れたような湯の花が見られることから卵の湯と呼ばれる」という表現を見かけたので。

卵らしさは他にもある。お湯の匂いを嗅ぐとはっきりとした硫黄香、つまりタマゴ臭を感じた。それも上品なほんのり系。濃厚すぎて腐卵臭から焦げタイヤ臭に達するくらいのストロング系も個人的に嫌いじゃないが、こっちの方が一般受けはいいだろうね。

しばらくしたら深さもちょうどよくなってきた。あらためてお湯の感触を確かめるとツルツル感があってお肌に良さそう。熱すぎないからゆっくり浸かることができるのは大変結構なり。

湯使いへのこだわりと展望が売り

メイン浴槽の隣には2名分のジェットバス? …当時ジェットは出てなかったけど、そんな感じの装置が付いてるっぽい。ネット情報によれば、ジェットやるなら県条例で循環消毒を~的な措置が必要だったので、それはしたくないからジェットを止めて普通の浴槽として使っているとのこと。湯使いへのこだわりがすごい。

隅っこにある清水を使った水風呂も、もとは打たせ湯だったのが同様の事情で湯使いを守るために変えたらしい。へー。恐れ入りました。

浴室の奥は全面ガラス張りみたいになってて、露天ではなくとも一種の展望風呂と呼んでいいくらいの景色を楽しめる。越後湯沢駅から隣の石打駅までの中間地点は東西から山が迫ってくる地形で、JR・国道・高速道路・魚野川が窮屈そうに寄り集まっていてなぜか妙なロマンを感じてしまう。まさにそのあたりだから向かいの山が結構近い。北側のガラス窓からは脱衣所と同様にガーラ湯沢駅を見下ろせた。

この展望を楽しんでもらいたいのか、浴室内にいくつかのチェアが外向きに置かれている。実際、次に入って来たお客さんはチェアを窓際まで移動させて思い切り展望していた。

 * * *

しばらく卵の湯を体験し、満足したので駅へ戻ることにした。正直なところ越後湯沢を温泉地としてあまり意識したことがなかった。貝掛温泉くらいまで離れれば別だけどね。駅周辺は団体ツアー全盛の時代に栄えた大観光地にありがちな加水・循環・塩素投入が当然の特徴薄い温泉なんだろうと思い込んでいたので。

だが高半の湯は我が思い込みをぶち破ってくれた。あのお湯はいいと思う。各種張り紙された説明文とかジェトバスの件から湯使いにはこだわりありそうで、今後のクオリティの維持も期待できる。行ってみたのは正解だった。