福井県の観光名所でぱっと思いつくのは永平寺と東尋坊。大河ドラマの明智じゅうべいの影響で一乗谷朝倉氏遺跡はどうかとか、他にも若狭の方とか、いろいろあるんだろうけど、とりあえず温泉めぐりと絡めながら最初の2つには行っておきたい。
その目論見を下敷きに旅のコースを組んだ結果、2日目の午前に永平寺を訪れることになった。はっきりいって歴史や仏教に詳しくもないし、きちんと予習をして何かを語れるレベルになってから臨んだわけでもない。一介の無知な観光客にすぎない。
まあでも有名なお寺だしいっぺん見てみようじゃないか。実際に訪れてみると、建物にも雰囲気にも大変重みがある。そしてお寺全体が隅から隅まで修行の場なのであった。
永平寺への道
白峰温泉からの県境越え
旅の2日目。石川県の白峰温泉白山苑で朝を迎えた。今日はこれから県境を越えて永平寺へ向かう。その際に走った国道157号は最凶の酷道として知られる。ガードレールのない対向不可能な道、危険な落石、洗い越し、「落ちたら死ぬ!!」の看板…だが心配は無用。酷道なのは福井・岐阜県境の温見峠だ。
石川・福井県境の道はかなり整備されており、もちろんカーブやアップダウンはあっても、ペーパーあがりの自分の運転スキルで十分に対応できた。景色を楽しむ余裕は全然なかったけど。
勝山市街まで下りて来たらすっかり安心。福井といえば恐竜を売りにしていたな。恐竜博物館の看板に興味を引かれなかったわけではないが、そこに行っちゃうと温泉を組み込む余裕がなくなってしまう。また今度。
駐車場から徒歩5分
勝山から中部縦貫道に乗っても一般道と時間的に大差なさそうだから九頭竜川沿いの国道416号を走った。途中えちぜん鉄道と並走する区間あり。あちこちに案内標識が出ているしカーナビもあるしで迷うことなく永平寺の近くまで来た。
駐車場はいっぱいある。このご時世で観光客は少なく、駐車難民になりようがない。一所懸命に誘導のジェスチャーを繰り返す管理員さんのいる駐車場をスルーして自動精算機のある無人駐車場にイン。他意はないんだけど、すいませんね。料金は変わらないはず。
駐車場から門前まで、ゆるい上り坂を5分くらい歩く。坂の途中のお土産店や食事処など、永平寺にもっと近づいた地点にも相場不明ながら駐車できる場所はある。
永平寺・七堂伽藍めぐり
吉祥閣からスタート
さあ着いた。ここが曹洞宗大本山の永平寺だ。
石畳の道を少し歩くと左手に通用門があって、ここから本当の見学コースが始まる。拝観料500円。
まず最初に吉祥閣というかなり立派な建物に入る。初見だとどこへ向かって進めばいいのか迷う。床に順路を示すテープが貼ってあっても頭の中にマップをイメージできない。他の人の動きを真似して、どうにかお隣の傘松閣2階にある絵天井の間まで来た。天井の1枚(?)1枚に異なる絵が描いてある。圧巻。
静かなる東司・僧堂
この先が永平寺見学の中心部だ。七堂伽藍と呼ばれる主要な7つのお堂を巡る。すべて屋内通路でつながっており、吉祥閣で履いたスリッパのまま外へ出ることなく回れる。なお、中では修行僧の方々が日々のお勤めをなさっている。邪魔をしないのはもちろんのこと、直接カメラを向けるのもNGなので注意。
七堂伽藍の最初は東司。いわゆるお手洗い。自分はどうやら気づかずに通り過ぎてしまったようだ。
左側通行の時計回りを意識して進んだ場合、次に来るのが座禅・食事・就寝の場である僧堂。内部へは立ち入れなかった気がする。生活のすべてが修行であるとの考えから、東司と僧堂と後に見る浴室、つまりトイレ・食事・風呂の場では私語禁止だとか。
一番奥に控える法堂
お次の御本尊が祀られている仏殿はのちほど。いったん通過して一番奥にある法堂へ向かいます。しかし通路の途中で承陽殿がちらっと見えたのが気になって、まずそちらへ行ってみた。
この階段を登ってはいけない。順路に沿って屋内通路でお願いします。承陽殿は七堂伽藍ではないが、同じくらい重みを感じる建物だ。それもそのはず、道元禅師が祀られているお堂だった。中では読経(?)が行われており、見学者は外からちらっと見るところまで。もちろんカメラを向けるわけにはいかない。
さて今度こそ一番奥の法堂へ来た。朝のお勤めや説法の場。下の写真が与える印象よりも広い。
何もわかってないからそれらしいコメントはご勘弁。通りすがりの旅行者としては振り返って見える景色の方に注目してしまった。俗世間の浮ついた空気とは一線を画す環境だ。修行に打ち込むにはぴったり。たまたま見学者が少なかったのでなおさらそう思えたのかもしれない。
中心部の仏殿と、生活に直結する大庫院・浴室
そして先ほどの仏殿へ戻ってきた。お釈迦様が祀られている永平寺の中心だ。ちょうど修行僧の方々が集まってきて何かが始まりそうな雰囲気であった。邪魔になってはいけないので早々に立ち去る。
仏殿に続くのが大庫院。永平寺の台所にあたる場所だ。いかにも食事を作っていますという現場を見られるわけではないので、何も知らなければ何をする場所なのかわかるまい。はい、自分がそうです。庫裏のことだってすぐわかるでしょと言わないで。
続いては浴室。お風呂ですな。ここも七堂伽藍のひとつで上述した通り私語厳禁。入浴中に鼻歌が出てしまう人は大変なことになる。写真は撮ってません。
修行僧にとって意味深い山門
七堂伽藍めぐりのほぼスタート地点に戻ってきて最後は山門。
解説によれば本来の正門というべき出入口がこの山門で、一般人はここから出入りすることができない。修行僧であっても山門をくぐるのは二度だけだという。一度目は永平寺へ入門する時。二度目は永平寺を離れる時。深い。
山門から奥の方を見た景色がまた良い。中雀門があってその向こうに仏殿がちらりと見える。
こうして吉祥閣へ戻ってきてゴール。だが最後にもう1箇所、聖宝閣という宝物館があった。うっかり見逃さないように注意。国宝・普勧坐禅儀という道元禅師直筆の古文書がある。自分はどっちかというと数々の名高い戦国武将からの安堵状に盛り上がってしまった。
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はい、本当に見学終了。次の予定を気にしてあっさり風味で回ったにしては1時間オーバーの滞在だった。一般的にも1時間は確保しておくべき。観光客目線でいえば四季折々でそれぞれの良さがありそうなので(雪深いのは厳しそうだが)いつ訪れても感じ入るものがあるはずだし、自分好みの季節に行けばいいと思う。