必見。自然美と芸術美の競演 - 鳥取砂丘と砂の美術館

鳥取砂丘
長年の懸案であった山陰旅行をついに成し遂げた。例年、春と秋は他の企画が目白押しで割り込む余地がない。近年猛暑続きの夏はフェーン現象でくそ暑いんだろうなと思うとちょっと腰が引ける(海水浴需要で混みそうだし)。冬は雪ガー(カニ相場で高そうだし)。…そんなこんなで先送りするのが毎年恒例になっていた。

しかし今年は行楽シーズンになっても企画が目白押しではなかったので、これは天の導きに違いないと一人旅を計画したのだ。やるなら今しかねえ。

最初の入りは鳥取空港。そしたらもう鳥取砂丘へ行くしかないでしょう。鳥取砂丘=砂地がいっぱいに広がっている、そんな単純なもんじゃありません。ビーチの延長線上で考えてはいけない。それに砂の美術館という意外性たっぷりの見学施設もある。

鳥取砂丘への道

2泊3日で鳥取・島根の温泉と主な観光地を回ろうとすると相当効率良く移動しなければならない。駅近のスポットばかりじゃないし、列車とバスを乗り継ぐとどうしても接続待ちのロスが大きくなる。そこで今回は富豪的解決=レンタカーを利用することにした。時は金なり。

鳥取空港にすでにスタンバイしていた車ですぐ出発。おおこりゃええわ。鉄道の旅も好きだけど、この利便性も捨てがたい。

47都道府県の温泉制覇を目指すおじさんにとって、達成がみえてきた段階で足踏みが続くと、2泊3日で2つの県をクリアしようとか、どうしても強引になってくる。残りの未湯県はレンタカーでもなんでも使って勢いでクリアする所存だ。

空港から砂丘までは国道9号と県道265号で迷うことなく行ける。あちこちに案内標識が出ているし。20分、いやもっと早く着いたかもしれない。


当たり前だが砂だらけの世界

駐車場は事前にあてを作っておくといいかも

砂丘地区に入ってまず現れたのが砂の美術館。無料駐車場完備。あとから考えたらここに車を止めてもよかった。もう少し行ってみようと気まぐれを起こして先へ進むと、無料駐車場付きの土産物店や食事処がいっぱいあった。でも何か買わなきゃいけないんじゃないかと躊躇しているうちに一番奥の鳥取砂丘駐車場まで来た。

もうここでいいや。砂丘の目の前で便利だし。ただし駐車料金500円を要す。自然環境保全の支援金だと思うことにした。鳥取砂丘はみんなの財産です。
鳥取砂丘総合案内板
駐車場がもう直に砂丘につながっている感じ。階段を上るといきなりドーンと砂の景色が広がっていた。うおお砂だらけ。
鳥取砂丘

意外なほどの高低差あり

向こうにある丘のてっぺんに行ってみましょうかね。馬の背と呼ばれる、ほとんどの観光客が目指す場所だ。写真だと大したことない高さに見えるが、実際は40~50メートルあるし傾斜も急で、麓に着いてから見上げると壁が立ちはだかるような迫力がある。
馬の背を見上げると砂の壁
うむ、やっぱり写真じゃわかりにくい。ちなみにここは映画「男はつらいよ 寅次郎の告白」(第44作)のロケ地にもなった。マドンナ・泉の姿を見つけた満男が慌てて馬の背から転げ落ちてしまうシーンを覚えている。この坂がそうだったのかなあ。

馬の背を登る際、歩く場所によっては砂が深いため靴の中に大量の砂が入り込むおそれあり。固い地盤が露出しているところを探して歩こう。そして途中で下をのぞくとこうなる。すり鉢状の底に水と草地があってオアシスのようになっている。
鳥取砂丘のオアシス

馬の背の頂上はたそがれスポット

さあ頂上についた。めっちゃ強風にあおられるから注意。正面には日本海が広がっている。波打ち際へは馬の背から50メートル下って行かねばならず、ちょっともう気力がなかった。沖に浮かぶ島は海士島。別名くじら島。
馬の背からくじら島を望む
いまいち臨場感を伝えきれない写真しか撮れなかった中で一番砂丘らしさがわかるのはこれかな。
馬の背から東の方向
とにかく前も後ろも右も左も砂や海。他では見られない起伏とスケールに妙に感じ入ってしまい、しばらく佇んでいたくなる。同じことを感じる観光客は少なくないようで、馬の背の頂上でずっと体育座りで海を見つめている人がいた。気持ちはわかる。満男もそうやって泉を案じながら体育座りしてたよな。

砂丘入口から馬の背まで往復するだけでも30分みておいた方がいい。波打ち際まで行ったり、満男モードでたそがれたり、ラクダに乗ったり、オアシスのまわりを散策するなら1時間。自分は30分コースだけど、スケジュールの都合がつけばもっといてもよかったと思う。


絶対に外せないマストスポット「砂の美術館」

まずはリフトで見晴らしの丘へ

お次は砂の美術館へ。車を移動させずとも歩いていける距離にある。特にリフトを利用すればショートカット気味に、かつ高低差をなんなくカバーできる。片道200円・往復300円。
鳥取砂丘のリフト
リフトの終点には砂丘センター「見晴らしの丘」というお土産コーナーや食堂を備えたお店がある。店舗前の広場から砂丘を展望できるが、そこよりは店内の3階展望テラスからの景色がいい。
見晴らしの丘・展望テラスからの景色
地域経済貢献と昼ごはんを兼ねて、鳥取らしさを求めて梨のソフトクリームを買ってみた。お味は、うん、梨ですね。鳥取といえば二十世紀梨と子供の頃から刷り込まれている。今はどうなんだろう。関東だと千葉の幸水とか豊水とかよく聞くけど。

当時はチェコ&スロバキア編を展示中

いよいよ今度こそ砂の美術館。リフトに乗って来た場合、入場料600円のチケットを砂丘センターの一角にある窓口で購入し、サブゲートという裏口(?)から入ることになる。

美術館のメイン会場は学校の体育館みたい。その広い空間の中に砂を固めて作った作品がいっぱい展示されている。さっぽろ雪まつりを屋内版にして素材を砂にしたといえばいいだろうか。展示テーマは時とともに変わっていくらしい。訪れた時はチェコ&スロバキア編だった。

こいつはびっくりな作品群

いきなり一発目の作品から度肝を抜かれた。めちゃくちゃ精巧で緻密じゃないか、なんじゃこりゃあ。
砂の彫刻作品その1
やっべぇー。
砂の彫刻作品その2
観光用の見世物だと思っちゃっててすいません。普通に彫刻作品として成立している。砂を固めて大きな塊を作ってから削っていくのはわかるとして、砂が崩れないのだろうかと心配になる。間近で見たところではガチガチに固めてあって、そうやすやすと崩れなさそうではあった。

すべての作品がすごい中で個人的に最も引きつけられたのはこちら。もはや砂で作ったとは思えん。うえぇぇー、とおかしな唸り声を出しそうになる。感心したのか驚いたのか呆れたのか、自分にももうわからない。
砂の彫刻作品その3

しっかり時間を取ってじっくり見たい

一番奥にあって一番大きいラスボス的な親玉の作品がこちら。実際はもっと左右に広がっていてスマホのカメラでは収まりきらない。
砂の彫刻作品その4
物理的な奥行きがないところを遠近法の工夫でうまく演出している。しかも見学者がまず注目しないような脇の方とか影に隠れるような箇所までディテールに凝って作り込まれてる。ある意味怖いよ。

カフカの「変身」をモチーフにした作品もあった。朝目を覚ますと自分が虫になっており、しかも体が砂でできていたとしたら…この設定からどうにかして高尚な哲学的考察につなげようとしたけど無理でした。
砂の彫刻作品その5
ひと通り回って見学終了。ここは期待以上のクオリティで、はっきりいって来た甲斐があった。行くなら最低でも30分の時間を確保しておきたい。細部までじっくり鑑賞したり余韻を楽しみながら丁寧に見ていくなら1時間。砂丘とセットでぜひどうぞ。